浜村通信とウィザードリィ

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投稿者投稿者オハイオいいね1お気に入り登録
プレイ回数342難易度(5.0) 4023打 長文
こんなにすばらしい世界があったのか。これほど人を虜にできるものか
昔のファミ通から

関連タイピング

問題文

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(しょうじきにこくはくすると、だいがく4ねんのころまで、てれびげーむはほとんど)

正直に告白すると、大学4年のころまで、テレビゲームはほとんど

(やったことがなかった。「いんべーだーげーむ」や「ぶろっくくずし」を)

やったことがなかった。「インベーダーゲーム」や「ブロック崩し」を

(きっさてんでひまつぶしにあそんだことはあったが、げーむせんたーに)

喫茶店で暇つぶしに遊んだことはあったが、ゲームセンターに

(しんけんにかよったことはなかった。)

真剣に通ったことはなかった。

(とうじふぁみこんはすでにぶーむとなっていた。)

当時ファミコンはすでにブームとなっていた。

(でも、もうすぐしゃかいじんになるぼくには、げーむせんたーのめいさくがあそべる)

でも、もうすぐ社会人になるボクには、ゲームセンターの名作が遊べる

(といううたいもんくは、それほどみりょくとはならなかった。)

という謳い文句は、それほど魅力とはならなかった。

(しゅうしょくのきぼうさきとしてかんがえていたのは、しゅっぱんしゃだった。)

就職の希望先として考えていたのは、出版社だった。

(しかし、だいがくでのせいせきは、おせじにもゆうしゅうとはいえない。)

しかし、大学での成績は、お世辞にも優秀とはいえない。

(さーくるもなんじゃくはいきんぐさーくるだったから、たいりょくやきりょくをうりに)

サークルも軟弱ハイキングサークルだったから、体力や気力をウリに

(できるわけでもない。つまり、しゅうしょくであぴーるできるぽいんとはなにもなかった。)

できるわけでもない。つまり、就職でアピールできるポイントは何もなかった。

(どうすべきか?いまからでもせーるすぽいんとになるものがないかとかんがえて、)

どうすべきか?いまからでもセールスポイントになるものがないかと考えて、

(おもいあたったのがぱそこんだった。べーしっくをつかえるとか、)

思い当たったのがパソコンだった。ベーシックを使えるとか、

(わーぷろができるとか。そんなことがしゅうしょくのうりになると、とうじのぼくは)

ワープロができるとか。そんなことが就職のウリになると、当時の僕は

(しんけんにかんがえていた。さいしょにかったぱそこんはpc6001というしょしんしゃむけの)

真剣に考えていた。最初に買ったパソコンはPC6001という初心者向けの

(ぱそこんだった。もちろんさいしょはぷろぐらむをべんきょうしようと)

パソコンだった。もちろん最初はプログラムを勉強しようと

(おもったのだけど、ましんじたいせいのうもひくかったし、なによりぶんがくぶしゅっしんのぼくには)

思ったのだけど、マシン自体性能も低かったし、なにより文学部出身のボクには

(ぷろぐらむはあまりにむずかしすぎた。しだいにべんきょうにあきて、いきつくさきは)

プログラムはあまりに難しすぎた。しだいに勉強に飽きて、行きつく先は

(げーむのせかい。)

ゲームの世界。

(それまであまりふれていなかったからこそ、しんせんだったのだろう。)

それまであまり触れていなかったからこそ、新鮮だったのだろう。

など

(ぱそこんざっしにけいさいされたぷろぐらむをうちこんではあそぶ。)

パソコン雑誌に掲載されたプログラムを打ち込んでは遊ぶ。

(そんなまいにちがながくつづいた。)

そんな毎日が長く続いた。

(ひととおりのげーむにあきて、そろそろぱそこんをてばなそうかとかんがえはじめたころ)

ひととおりのゲームに飽きて、そろそろパソコンを手放そうかと考え始めたころ

(ふとめにしたぱそこんざっしでだいだいてきにしょうかいされていたのが、あめりかで)

ふと目にしたパソコン雑誌で大々的に紹介されていたのが、アメリカで

(だいひっとしているという「うぃざーどりぃ」というげーむだった。)

大ヒットしているという「ウィザードリィ」というゲームだった。

(それまであくしょんげーむしかしたことのなかったぼく。)

それまでアクションゲームしかしたことのなかったボク。

(きゃらくたーがせいちょうする?ものがたりがある?ろーるぷれいんぐ?)

キャラクターが成長する?物語がある?ロールプレイング?

(それは、まったくそうぞうもつかないせかいだった。でも、あめりかのふぁんは、)

それは、まったく想像もつかない世界だった。でも、アメリカのファンは、

(なんにちもてつやしてぷれいしているという。 ”あくまのげーむ”とよばれ、)

何日も徹夜してプレイしているという。 "悪魔のゲーム"と呼ばれ、

(げーむからぬけだせなくなっているひともいるという。)

ゲームから抜け出せなくなっている人もいるという。

(しりたくてしりたくてしかたない。しょうげきをおさえられなくなったぼくは)

知りたくて知りたくてしかたない。衝撃を抑えられなくなったボクは

(もっているばいくをうりとばしておかねをくめんし、applellという)

持っているバイクを売り飛ばしてお金を工面し、Applellという

(はくらいのぱそこんをかった。)

舶来のパソコンを買った。

(そしてさっそく「うぃざーどりぃ」をはじめた。ざっしにかかれていたうわさは)

そしてさっそく「ウィザードリィ」を始めた。雑誌に書かれていた噂は

(うそではなかった。またたくまにぼくは「うぃざーどりぃ」のとりことなった。)

嘘ではなかった。瞬く間にボクは「ウィザードリィ」の虜となった。

(ちゅうやをとわず「うぃざーどりぃ」。ばいともきゃんせるして「うぃざーどりぃ」)

昼夜を問わず「ウィザードリィ」。バイトもキャンセルして「ウィザードリィ」

(いちにちのすべてを「うぃざーどりぃ」についやすまいにちだった。)

一日のすべてを「ウィザードリィ」に費やす毎日だった。

(さいしょのかんもん、ちか4かいにあるこんとろーるせんたーで、)

最初の関門、地下4階にあるコントロールセンターで、

(はいれべるのがーどたちをたおしたときは、まよなかにひとりでかんせいをあげた。)

ハイレベルのガードたちを倒したときは、真夜中にひとりで歓声をあげた。

(だいじにそだてたせんしが、にんじゃにてんしょくできたときは、うれしさでめになみだがにじんだ。)

大事に育てた戦士が、忍者に転職できたときは、うれしさで目に涙がにじんだ。

(そんなとらのこのにんじゃが、いどうまほうにしっぱいし、いしのなかにとじこめられて)

そんな虎の子の忍者が、移動魔法に失敗し、石の中に閉じ込められて

(ろすとしたときは、ほうしんじょうたいになり、まるいちにちなにもてにつかなかった。)

ロストしたときは、放心状態になり、丸一日何も手につかなかった。

(きがつけば、ゆうじんたちはみな、しゅうしょくさきがきまり、)

気がつけば、友人たちはみな、就職先が決まり、

(そつぎょうりょこうのけいかくをたてはじめていた。)

卒業旅行の計画を立て始めていた。

(ぼくはだいがくのそつぎょうろんぶんさえていしゅつしていなかった。)

ボクは大学の卒業論文さえ提出していなかった。

(でも、ぼくには、まったくこうかいはなかった。)

でも、ボクには、まったく後悔はなかった。

(げーむというめでぃあのかのうせいをしることができたから。)

ゲームというメディアの可能性を知ることができたから。

(こんなにすばらしいせかいがあったのか。これほどひとをとりこにできるものが)

こんなに素晴らしい世界があったのか。これほど人を虜にできるものが

(あったのか。それをかくしんできたことが、なによりぼくにはたいせつなざいさんとなった。)

あったのか。それを確信できたことが、なによりボクには大切な財産となった。

(1ねんがすぎ、やがてぼくはしゅっぱんしゃにしゅうしょくした。いろんなしゅっぱんしゃをうけもしたし、)

1年が過ぎ、やがてボクは出版社に就職した。いろんな出版社を受けもしたし、

(ないていももらった。でも、ぼくには、どうしてもはいりたいかいしゃがあった。)

内定ももらった。でも、ボクには、どうしても入りたい会社があった。

(ぼくに「うぃざーどりぃ」があることをおしえてくれたろぐいんという)

ボクに「ウィザードリィ」があることを教えてくれたログインという

(ぱそこんざっしをしゅっぱんしているかいしゃだ。かいしゃにはいるもくてきはひとつ。)

パソコン雑誌を出版している会社だ。会社に入る目的はひとつ。

(そこで、げーむざっしをつくること。)

そこで、ゲーム雑誌を作ること。

(えいがでもしょうせつでもない、まったくあたらしいめでぃあであるげーむが、こんなにも)

映画でも小説でもない、まったく新しいメディアであるゲームが、こんなにも

(ひとをむちゅうにさせる。それを、げーむをけいけんしたことのないひとにつたえたい。)

人を夢中にさせる。それを、ゲームを経験したことのない人に伝えたい。

(「いまのじだいにいきてて、げーむをしらないなんてふこうですよ」。)

「いまの時代に生きてて、ゲームを知らないなんて不幸ですよ」。

(そんなめっせーじをつたえることを、これからのじぶんのしごととしたいと、)

そんなメッセージを伝えることを、これからの自分の仕事としたいと、

(ぼくはかたくこころにきめていたのだ。)

ボクは固く心に決めていたのだ。

(そのご、ぼくはろぐいんのへんしゅうしゃをへて、ふぁみこんつうしんのそうかんに)

その後、ボクはログインの編集者を経て、ファミコン通信の創刊に

(たずさわるというこううんにめぐりあった。いつのまにか、そのざっしのへんしゅうちょうをひきうけ)

携わるという幸運に巡り合った。いつのまにか、その雑誌の編集長を引き受け

(さまざまなめいさくとのであいをへて、いま、ここにいる。)

さまざまな名作との出会いを経て、いま、ここにいる。

(へんしゅうのげんばのしごとは、ゆうしゅうなこうしんたちにゆずった。)

編集の現場の仕事は、優秀な後進たちに譲った。

(げーむのすばらしさをつたえたいというしょうどうは、じつはまだおさまっていない。)

ゲームのすばらしさを伝えたいという衝動は、じつはまだ治まっていない。

(だから、このこらむをかいている。)

だから、このコラムを書いている。

(ちなみに「どらごんくえすと」をつくったほりいゆうじさんも、)

ちなみに「ドラゴンクエスト」を作った堀井雄二さんも、

(「ff」しりーずのうみのおや、さかぐちひろのぶさんも、ぼくとほぼおなじころ、)

「FF」シリーズの産みの親、坂口博信さんも、ボクとほぼ同じころ、

(「うぃざーどりぃ」にみせられ、そのごのじんせいをげーむについやした。)

「ウィザードリィ」に魅せられ、その後の人生をゲームに費やした。

(そんな、おなじげーむぎょうかいのりゅうせいをつくってくれた。だからだろう。)

そんな、同じゲーム業界の隆盛を作ってくれた。だからだろう。

(ぼくは、かれらのかつやくを、こころのどこかでせんゆうのようなきもちでみまもっている。)

ボクは、彼らの活躍を、心のどこかで戦友のような気持ちで見守っている。

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