太宰治 斜陽10

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投稿者投稿者藤村 彩愛いいね2お気に入り登録1
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超長文です
太宰治の中編小説です

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問題文

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(したのさきが、がいけんはなんのかわりもないのに、うごかすといたくてならぬと)

舌の先が、外見はなんの変りも無いのに、うごかすと痛くてならぬと

(おっしゃって、おしょくじも、うすいおかゆだけで、おいしゃさまにみて)

おっしゃって、お食事も、うすいおかゆだけで、お医者さまに見て

(いただいたら?といっても、くびをふって、「わらわれます」とにがわらいしながら、)

いただいたら?と言っても、首を振って、「笑われます」と苦笑いしながら、

(おっしゃる。るごーるをぬってあげたけれども、すこしもききめがないようで、)

おっしゃる。ルゴールを塗ってあげたけれども、少しもききめが無いようで、

(わたしはみょうにいらいらしていた。そこへ、なおじがきかんしてきたのだ。なおじは)

私は妙にいらいらしていた。そこへ、直治が帰還して来たのだ。直治は

(おかあさまのまくらもとにすわって、ただいま、といっておじぎをし、すぐにたちあがって、)

お母さまの枕元に坐って、ただいま、と言ってお辞儀をし、すぐに立ち上って、

(ちいさいいえのなかをあちこちとみてまわり、わたしがそのあとをついてあるくと、「どう?)

小さい家の中をあちこちと見て廻り、私がその後をついて歩くと、「どう?

(おかあさまは、かわった?」「かわった、かわった。やつれてしまった。はやくしにゃ)

お母さまは、変った?」「変った、変った。やつれてしまった。早く死にゃ

(いいんだ。こんなよのなかに、ままなんて、とてもいきていけやしねえんだ。)

いいんだ。こんな世の中に、ママなんて、とても生きて行けやしねえんだ。

(あまりみじめで、みちゃおれねえ」「わたしは?」「げびてきた。おとこがにさんにんも)

あまりみじめで、見ちゃおれねえ」「私は?」「げびて来た。男が二三人も

(あるようなかおをしていやがる。さけは?こんやはのむぜ」わたしはこのぶらくでたった)

あるような顔をしていやがる。酒は?今夜は飲むぜ」私はこのブ落でたった

(いっけんのやどやへいって、おかみさんのおさきさんに、おとうとがきかんしたから、おさけを)

一軒の宿屋へ行って、おかみさんのお咲さんに、弟が帰還したから、お酒を

(すこしわけてください、とたのんでみたけれども、おさきさんは、おさけはあいにく、)

少しわけて下さい、とたのんでみたけれども、お咲さんは、お酒はあいにく、

(いまきらしています、というので、かえってなおじにそうつたえたら、なおじは、)

いま切らしています、というので、帰って直治にそう伝えたら、直治は、

(みたこともないたにんのようなひょうじょうのかおになって、ちえっ、こうしょうがへただから)

見た事も無い他人のような表情の顔になって、ちえっ、交渉が下手だから

(そうなんだ、といい、わたしからやどやのあるばしょをきいて、にわげたをつっかけて)

そうなんだ、と言い、私から宿屋の或る場所を聞いて、庭下駄をつっかけて

(そとにとびだし、それっきり、いくらまってもいえへかえってこなかった。わたしはなおじの)

外に飛び出し、それっきり、いくら待っても家へ帰って来なかった。私は直治の

(すきだったやきりんごと、それから、たまごのおりょうりなどこしらえて、しょくどうのでんきゅうも)

好きだった焼き林檎と、それから、卵のお料理などこしらえて、食堂の電球も

(あかるいのととりかえ、ずいぶんまって、そのうちに、おさきさんが、おかってぐちから)

明るいのと取りかえ、ずいぶん待って、そのうちに、お咲さんが、お勝手口から

(ひょいとかおをだし、「もし、もし。だいじょうぶでしょうか。しょうちゅうをめしあがっている)

ひょいと顔を出し、「もし、もし。大丈夫でしょうか。焼酎を召し上っている

など

(のですけど」と、れいのこいのめのようなまんまるいめを、さらにつよくみはって、)

のですけど」と、れいの鯉の眼のようなまんまるい眼を、さらに強く見はって、

(いちだいじのように、ひくいこえでいうのである。「しょうちゅうって、あの、ちめる?」)

一大事のように、低い声で言うのである。「焼酎って、あの、チメル?」

(「いいえ、ちめるじゃありませんけど」「のんでも、びょうきにならないので)

「いいえ、チメルじゃありませんけど」「飲んでも、病気にならないので

(しょう?」「ええ、でも、・・・」「のませてやってください」おさきさんは、)

しょう?」「ええ、でも、・・・」「飲ませてやって下さい」お咲さんは、

(つばきをのみこむようにしてうなずいてかえっていった。わたしはおかあさまのところに)

つばきを飲み込むようにしてうなずいて帰って行った。私はお母さまのところに

(いって、「おさきさんのところで、のんでいるんですって」ともうしあげたら、)

行って、「お咲さんのところで、飲んでいるんですって」と申し上げたら、

(おかあさまは、すこしおくちをまげておわらいになって、「そう。あへんのほうは、)

お母さまは、少しお口を曲げてお笑いになって、「そう。阿片のほうは、

(よしたのかしら。あなたは、ごはんをすませなさい。それからこんやは、さんにんで)

よしたのかしら。あなたは、ごはんをすませなさい。それから今夜は、三人で

(このへやにおやすみ。なおじのおふとんを、まんなかにして」わたしはなきたいような)

この部屋におやすみ。直治のお蒲団を、まんなかにして」私は泣きたいような

(きもちになった。よふけて、なおじは、あらいあしおとをさせてかえってきた。わたしたちは、)

気持になった。夜ふけて、直治は、荒い足音をさせて帰って来た。私たちは、

(おざしきにさんにん、ひとつのかやにはいってねた。「なんぽうのおはなしを、おかあさまに)

お座敷に三人、一つの蚊帳にはいって寝た。「南方のお話を、お母さまに

(きかせてあげたら?」とわたしがねながらいうと、「なにもない。なにもない。)

聞かせてあげたら?」と私が寝ながら言うと、「何も無い。何も無い。

(わすれてしまった。にほんについてきしゃにのって、きしゃのまどから、すいでんが、)

忘れてしまった。日本に着いて汽車に乗って、汽車の窓から、水田が、

(すばらしくきれいにみえた。それだけだ。でんきをけせよ。ねむられやしねえ」)

すばらしく綺麗に見えた。それだけだ。電気を消せよ。眠られやしねえ」

(わたしはでんとうをけした。なつのげっこうがこうずいのようにかやのなかにみちあふれた。)

私は電燈を消した。夏の月光が洪水のように蚊帳の中に満ちあふれた。

(あくるあさ、なおじはねどこにはらばいになって、たばこをすいながら、とおくのうみのほうを)

あくる朝、直治は寝床に腹這いになって、煙草を吸いながら、遠くの海のほうを

(ながめて、「したがいたいんですって?」と、はじめておかあさまのおかげんのわるいのに)

眺めて、「舌が痛いんですって?」と、はじめてお母さまのお加減の悪いのに

(きがついたみたいなふうのくちのききかたをした。おかあさまは、ただかすかに)

気がついたみたいなふうの口のきき方をした。お母さまは、ただ幽かに

(おわらいになった。「そいつあ、きっと、しんりてきなものなんだ。よる、くちをあいて)

お笑いになった。「そいつあ、きっと、心理的なものなんだ。夜、口をあいて

(おやすみになるんでしょう。だらしがない。ますくをなさい。がーぜに)

おやすみになるんでしょう。だらしがない。マスクをなさい。ガーゼに

(りばのーるえきでもひたして、それをますくのなかにいれておくといい」わたしはそれを)

リバノール液でもひたして、それをマスクの中にいれて置くといい」私はそれを

(きいてふきだし、「それは、なにりょうほうっていうの?」「びがくりょうほうっていうんだ」)

聞いて噴き出し、「それは、何療法っていうの?」「美学療法っていうんだ」

(「でも、おかあさまは、ますくなんか、きっとおきらいよ」おかあさまは、ますくに)

「でも、お母さまは、マスクなんか、きっとおきらいよ」お母さまは、マスクに

(かぎらず、がんたいでも、めがねでも、おかおにそんなものをつけることはだいきらいだった)

限らず、眼帯でも、眼鏡でも、お顔にそんなものを附ける事は大きらいだった

(はずである。「ねえ、おかあさま。ますくをなさる?」とわたしがおたずねしたら、)

筈である。「ねえ、お母さま。マスクをなさる?」と私がおたずねしたら、

(「いたします」とまじめにひくくおこたえになったので、わたしは、はっとした。)

「致します」とまじめに低くお答えになったので、私は、はっとした。

(なおじのいうことなら、なんでもしんじてしたがおうとおもっていらっしゃるらしい。)

直治の言う事なら、なんでも信じて従おうと思っていらっしゃるらしい。

(わたしがちょうしょくのあとに、さっきなおじがいったとおりに、がーぜにりばのーるえきを)

私が朝食の後に、さっき直治が言ったとおりに、ガーゼにリバノール液を

(ひたしなどして、ますくをつくり、おかあさまのところにもっていったら、)

ひたしなどして、マスクを作り、お母さまのところに持って行ったら、

(おかあさまは、だまってうけとり、おやすみになったままで、ますくのひもをりょうほうの)

お母さまは、黙って受け取り、おやすみになったままで、マスクの紐を両方の

(おみみにすなおにおかけになり、そのさまが、ほんとうにもうおさないどうじょのようで、わたしには)

お耳に素直におかけになり、そのさまが、本当にもう幼い童女のようで、私には

(かなしくおもわれた。おひるすぎに、なおじは、とうきょうのおともだちや、ぶんがくのほうの)

悲しく思われた。お昼すぎに、直治は、東京のお友達や、文学のほうの

(ししょうさんなどにあわなければならぬといってせびろにきがえ、おかあさまから、)

師匠さんなどに逢わなければならぬと言って背広に着換え、お母さまから、

(にせんえんもらってとうきょうへでかけていってしまった。それっきり、もうとおかちかく)

二千円もらって東京へ出かけて行ってしまった。それっきり、もう十日ちかく

(なるのだけれども、なおじは、かえってこないのだ。そうして、おかあさまは、まいにち)

なるのだけれども、直治は、帰って来ないのだ。そうして、お母さまは、毎日

(ますくをなさって、なおじをまっていらっしゃる。「りばのーるって、いいくすり)

マスクをなさって、直治を待っていらっしゃる。「リバノールって、いい薬

(なのね。このますくをかけていると、したのいたみがきえてしまうのですよ」と、)

なのね。このマスクをかけていると、舌の痛みが消えてしまうのですよ」と、

(わらいながらおっしゃったけれども、わたしには、おかあさまがうそをついていらっしゃる)

笑いながらおっしゃったけれども、私には、お母さまが嘘をついていらっしゃる

(ようにおもわれてならないのだ。もうだいじょうぶ、とおっしゃって、いまはおきて)

ように思われてならないのだ。もう大丈夫、とおっしゃって、いまは起きて

(いらっしゃるけれども、しょくよくはやっぱりあまりないごようすだし、くちかずもめっきり)

いらっしゃるけれども、食慾はやっぱりあまり無い御様子だし、口数もめっきり

(すくなく、とてもわたしはきがかりで、なおじはまあ、とうきょうでなにをしているのだろう、)

少く、とても私は気がかりで、直治はまあ、東京で何をしているのだろう、

(あのしょうせつかのうえはらさんなんかといっしょにとうきょうじゅうをあそびまわって、とうきょうのきょうきの)

あの小説家の上原さんなんかと一緒に東京中を遊びまわって、東京の狂気の

(うずにまきこまれているのにちがいない、とおもえばおもうほど、くるしくつらくなり、)

渦に巻き込まれているのにちがいない、と思えば思うほど、苦しくつらくなり、

(おかあさまに、だしぬけにばらのことなどほうこくして、そうして、こどもがないからよ、)

お母さまに、だしぬけに薔薇の事など報告して、そうして、子供が無いからよ、

(なんてじぶんにもおもいがけなかったへんなことをくちばしって、いよいよ、いけなくなる)

なんて自分にも思いがけなかったへんな事を口走って、いよいよ、いけなくなる

(ばかりで、「あ」といってたちあがり、さて、どこへもいくところがなく、)

ばかりで、「あ」と言って起ち上り、さて、どこへも行くところが無く、

(みひとつをもてあまして、ふらふらかいだんをのぼっていって、にかいのようまに)

身一つをもてあまして、ふらふら階段をのぼって行って、二階の洋間に

(はいってみた。ここは、こんどはなおじのへやになるはずで、し、ごにちまえにわたしが、)

はいってみた。ここは、こんどは直治の部屋になる筈で、四、五日前に私が、

(おかあさまとそうだんして、したののうかのなかいさんにおてつだいをたのみ、なおじの)

お母さまと相談して、下の農家の中井さんにお手伝いをたのみ、直治の

(ようふくだんすやつくえやほんばこ、また、ぞうしょやのーとぶっくなどいっぱいつまった)

洋服箪笥《だんす》や机や本箱、また、蔵書やノートブックなど一ぱいつまった

(きのはこいつつむっつ、とにかくむかし、にしかたまちのおうちのなおじのおへやにあったもの)

木の箱五つ六つ、とにかく昔、西片町のお家の直治のお部屋にあったもの

(ぜんぶを、ここにもちはこび、いまになおじがとうきょうからかえってきたら、なおじのすきな)

全部を、ここに持ち運び、いまに直治が東京から帰って来たら、直治の好きな

(いちに、たんすほんばこなどそれぞれすえることにして、それまではただざつぜんとここに)

位置に、箪笥本箱などそれぞれ据える事にして、それまではただ雑然とここに

(おきっぱなしにしていたほうがよさそうにおもわれたので、もう、あしのふみばもない)

置き放しにしていたほうがよさそうに思われたので、もう、足の踏み場も無い

(くらいに、へやいっぱいちらかしたままで、わたしは、なにげなくあしもとのきのはこから、)

くらいに、部屋一ぱい散らかしたままで、私は、何気なく足もとの木の箱から、

(なおじののーとぶっくをいっさつとりあげてみたら、そののーとぶっくのひょうしには、)

直治のノートブックを一冊取りあげて見たら、そのノートブックの表紙には、

(ゆうがおにっし)

夕顔日誌

(とかきしるされ、そのなかには、つぎのようなことがいっぱいかきちらされて)

と書きしるされ、その中には、次のような事が一ぱい書き散らされて

(いたのである。なおじが、あの、まやくちゅうどくでくるしんでいたころのしゅきのようで)

いたのである。直治が、あの、麻薬中毒で苦しんでいた頃の手記のようで

(あった。)

あった。

(やけじにぬるおもい。くるしくとも、くるしとひとこと、はんく、さけびえぬ、こらい、)

焼け死ぬる思い。苦しくとも、苦しと一言、半句、叫び得ぬ、古来、

(みぞう、ひとのよはじまっていらい、ぜんれいもなき、そこしれぬじごくの)

未曾有《みぞう》、人の世はじまって以来、前例も無き、底知れぬ地獄の

(けはいを、ごまかしなさんな。しそう?うそだ。しゅぎ?うそだ。りそう?うそだ。)

気配を、ごまかしなさんな。思想?ウソだ。主義?ウソだ。理想?ウソだ。

(ちつじょ?うそだ。せいじつ?しんり?じゅんすい?みなうそだ。うしじまのふじは、じゅれいせんねん、)

秩序?ウソだ。誠実?真理?純粋?みなウソだ。牛島の藤は、樹齢千年、

(ゆやのふじは、すうひゃくねんととなえられ、そのかほのごときも、ぜんしゃでさいちょうきゅうしゃく、)

熊野《ゆや》の藤は、数百年と称えられ、その花穂の如きも、前者で最長九尺、

(こうしゃでごしゃくあまりときいて、ただそのかほにのみ、こころがおどる。あれもひとのこ。)

後者で五尺余と聞いて、ただその花穂にのみ、心がおどる。アレモ人ノ子。

(いきている。ろんりは、しょせん、ろんりへのあいである。いきている)

生キテイル。論理は、所謂《しょせん》、論理への愛である。生きている

(にんげんへのあいではない。かねとおんな。ろんりは、はにかみ、そそくさとあゆみさる。)

人間への愛では無い。金と女。論理は、はにかみ、そそくさと歩み去る。

(れきし、てつがく、きょういく、しゅうきょう、ほうりつ、せいじ、けいざい、しゃかい、そんながくもんなんかより、)

歴史、哲学、教育、宗教、法律、政治、経済、社会、そんな学問なんかより、

(ひとりのしょじょのほほえみがとうといというふぁうすとはかせのゆうかんなるじっしょう。がくもんとは、)

ひとりの処女の微笑が尊いというファウスト博士の勇敢なる実証。学問とは、

(きょえいのべつめいである。にんげんがにんげんでなくなろうとするどりょくである。)

虚栄の別名である。人間が人間でなくなろうとする努力である。

(げえてにだってちかっていえる。ぼくは、どんなにでもうまくかけます。)

ゲエテにだって誓って言える。僕は、どんなにでも巧《うま》く書けます。

(いっぺんのこうせいあやまたず、てきどのこっけい、どくしゃのめのうらをやくひあい、)

一篇《いっぺん》の構成あやまたず、適度の滑稽、読者の眼のうらを焼く悲哀、

(もしくは、しゅくぜん、いわゆるえりをたださしめ、かんぺきのおしょうせつ、ろうろうおんどくすれば、)

若《も》しくは、粛然、所謂襟を正さしめ、完璧のお小説、朗々音読すれば、

(これすなわち、すくりんのせつめいか、はずかしくって、かけるかっていうんだ。)

これすなわち、スクリンの説明か、はずかしくって、書けるかっていうんだ。

(どだいそんな、けっさくいしきが、けちくさいというんだ。しょうせつをよんでえりをただす)

どだいそんな、傑作意識が、ケチくさいというんだ。小説を読んで襟を正す

(なんて、きょうじんのしょさである。そんなら、いっそ、はおりはかまでせにゃ)

なんて、狂人の所作《しょさ》である。そんなら、いっそ、羽織袴でせにゃ

(なるまい。よいさくひんほど、とりすましていないようにみえるのだがなあ。ぼくは)

なるまい。よい作品ほど、取り澄ましていないように見えるのだがなあ。僕は

(ゆうじんのこころからたのしそうなえがおをみたいばかりに、いっぺんのしょうせつ、わざと)

友人の心からたのしそうな笑顔を見たいばかりに、一篇の小説、わざと

(しくじって、へたくそにかいて、しりもちついてあたまかきかきにげていく。)

しくじって、下手くそに書いて、尻餅ついて頭かきかき逃げて行く。

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