青いルビー 5

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投稿者投稿者大樹野いいね7お気に入り登録
プレイ回数3996難易度(5.0) 4284打 長文
【シャーロック・ホームズの冒険】より
長文なので、読書感覚でお楽しみください

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問題文

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(「これらのしなものをすうじつかんあずかっていました」ほーむずはいった。)

「これらの品物を数日間預かっていました」ホームズは言った。

(「あなたのほうから、じゅうしょをつうちするこうこくがあるものとよそうしていたのです。)

「あなたの方から、住所を通知する広告があるものと予想していたのです。

(どうしてこうこくがでなかったのか、ちょっとふしぎなきがしています」)

どうして広告が出なかったのか、ちょっと不思議な気がしています」

(ほうもんしゃはめんぼくないというようすでわらった。「むかしのようにかねまわりに)

訪問者は面目ないという様子で笑った。「昔のように金回りに

(よゆうがあるわけではないので」べーかーしはいった。「おそわれたあくとうに)

余裕があるわけではないので」ベーカー氏は言った。「襲われた悪党に

(ぼうしととりをもちさられたとおもいこんでいましたので、とりもどせる)

帽子と鳥を持ち去られたと思い込んでいましたので、取り戻せる

(あてもなしに、これいじょうむだなおかねをつかうきになれなかったのです」)

あてもなしに、これ以上無駄なお金を使う気になれなかったのです」

(「たしかにそうですね。ところで、とりについてですが、)

「確かにそうですね。ところで、鳥についてですが、

(やむをえずたべてしまいました」「たべた!」ほうもんしゃはこうふんして)

やむを得ず食べてしまいました」「食べた!」訪問者は興奮して

(いすからはんぶんおきあがった。「そうです。たべなかったとしても、)

椅子から半分起き上がった。「そうです。食べなかったとしても、

(だれのとくにもならなかったでしょうからね。しかししょっきだなにおいてある)

誰の得にもならなかったでしょうからね。しかし食器棚に置いてある

(あのがちょうですが、ほぼおなじおもさでひじょうにしんせんだとおもいます。)

あのガチョウですが、ほぼ同じ重さで非常に新鮮だと思います。

(あれであなたのがちょうのかわりになりますか?」)

あれであなたのガチョウの換わりになりますか?」

(「ああ、なります、なりますとも」べーかーしはほっとしたようすでこたえた。)

「ああ、なります、なりますとも」ベーカー氏はほっとした様子で答えた。

(「もちろん、まだあなたのとりのはね、あし、えさぶくろ、)

「もちろん、まだあなたの鳥の羽、足、餌袋、

(それほかのぶぶんはのこっていますよ。もしおのぞみなら・・・」)

それ他の部分は残っていますよ。もしお望みなら…」

(おとこはたからかにわらいだした。「わたしのじけんのおもいでにはなるかもしれませんが」)

男は高らかに笑い出した。「私の事件の思い出にはなるかもしれませんが」

(べーかーしはいった。「しかしそれいがいには、じぶんのものになるはずだった)

ベーカー氏は言った。「しかしそれ以外には、自分のものになる筈だった

(ばらばらのてあしをどうつかえばよいか、そうぞうもつきません。)

バラバラの手足をどう使えばよいか、想像もつきません。

(いえ、けっこうです。そちらにもんだいがなければ、しょっきだなのうえにみえる)

いえ、結構です。そちらに問題がなければ、食器棚の上に見える

など

(そのすばらしいとりだけをいただきたいとおもいます」)

その素晴らしい鳥だけをいただきたいと思います」

(しゃーろっくほーむずはかるくかたをすくめ、するどいめでわたしをちらっとみた。)

シャーロックホームズは軽く肩をすくめ、鋭い目で私をちらっと見た。

(「それではこれがあなたのぼうしです。そしてこのとりをおもちください」)

「それではこれがあなたの帽子です。そしてこの鳥をお持ちください」

(ほーむずはいった。「ところで、あのとりをどこでてにいれたか)

ホームズは言った。「ところで、あの鳥をどこで手に入れたか

(おしえていただけませんか。わたしはちょっとしたとりのあいこうかでして、)

教えていただけませんか。私はちょっとした鳥の愛好家でして、

(あれよりいいがちょうはあまりみたことがないので」)

あれよりいいガチョウはあまり見たことがないので」

(「かまいませんよ」べーかーしはたちあがり、あたらしいがちょうをつかんで)

「かまいませんよ」ベーカー氏は立ち上がり、新しいガチョウをつかんで

(わきのしたにかかえるといった。「なかまのすうにんとよくのみにいく)

脇の下に抱えると言った。「仲間の数人とよく飲みにいく

(はくぶつかんちかくのあるふぁ・いんです。ひるまははくぶつかんですごしています。)

博物館近くのアルファ・インです。昼間は博物館で過ごしています。

(うぃんでぃげーとというきのいいしゅじんが、ことしはまいしゅうすうぺんすつみたてると、)

ウィンディゲートという気のいい主人が、今年は毎週数ペンス積み立てると、

(ぜんいんにいちわずつくりすますにがちょうをうけとれるという)

全員に一羽ずつクリスマスにガチョウを受け取れるという

(がちょうくらぶをつくりました。わたしはちゃんとおかねをしはらい、)

ガチョウクラブを作りました。私はちゃんとお金を支払い、

(あとはあなたもごぞんじのとおりです。ほんとうにおせわになりました。)

後はあなたもご存知の通りです。本当にお世話になりました。

(このとしでにっとぼうをかぶっているとかるいにんげんにみられますからね」)

この歳でニット帽を被っていると軽い人間に見られますからね」

(みょうにそんだいなたいどでおごそかにおじぎをすると、べーかーしはさっそうとあるきさった。)

妙に尊大な態度で厳かにお辞儀をすると、ベーカー氏は颯爽と歩き去った。

(「へんりー・べーかーについてはこれでいいだろう」)

「ヘンリー・ベーカーについてはこれでいいだろう」

(べーかーしのうしろでどあをしめてほーむずはいった。)

ベーカー氏の後ろでドアを閉めてホームズは言った。

(「かれがこのけんについてなにひとつしらないというのはまちがいない。)

「彼がこの件について何一つ知らないというのは間違いない。

(わとそん、はらがすいているか?」「それほどもない」)

ワトソン、腹が空いているか?」「それほどもない」

(「それならゆうしょくはかんたんなものにして、このてがかりが)

「それなら夕食は簡単なものにして、この手がかりが

(まだあついうちにおわないか」「もちろんそうしよう」)

まだ熱いうちに追わないか」「もちろんそうしよう」

(そのよるはさむかったので、あるすとらーがいとうをひきだし、くびまきをした。)

その夜は寒かったので、アルストラー外套を引き出し、首巻をした。

(そとにでると、くものないそらにほしがつめたくかがやき、つうこうにんのはくいきが)

外に出ると、雲の無い空に星が冷たく輝き、通行人の吐く息が

(けんじゅうをはっしゃするけむりのようだった。いきおいよくあるくと、かつかつと)

拳銃を発射する煙のようだった。勢いよく歩くと、カツカツと

(おおきなおとでくつがなった。いしゃのくかく、うぃんぽーるがい、はーれーがい、)

大きな音で靴が鳴った。医者の区画、ウィンポール街、ハーレー街、

(そしてうぃぐもあがいをぬけておっくすふぉーどがいにはいった。じゅうごふんで、)

そしてウィグモア街を抜けてオックスフォード街に入った。十五分で、

(ぶるーむずべりのあるふぁ・いんについた。それはほーるぼーんに)

ブルームズベリのアルファ・インに着いた。それはホールボーンに

(つながるみちのいっかくにあるちいさなさかばだった。ほーむずはさかばのとびらを)

つながる道の一角にある小さな酒場だった。ホームズは酒場の扉を

(おしひらき、あからがおのしろいえぷろんをつけたしゅじんにびーるをにはいちゅうもんした。)

押し開き、赤ら顔の白いエプロンをつけた主人にビールを二杯注文した。

(「おたくのがちょうとおなじくらいだったらびーるもさぞうまいだろう」)

「お宅のガチョウと同じくらいだったらビールもさぞうまいだろう」

(ほーむずはいった。「がちょうですか!」おとこはおどろいたようすだった。)

ホームズは言った。「ガチョウですか!」男は驚いた様子だった。

(「そうだ。ぼくはつい30ふんまえにへんりー・べーかーさんとはなしをしていたんだ。)

「そうだ。僕はつい30分前にヘンリー・ベーカーさんと話をしていたんだ。

(かれはこちらのがちょうくらぶのかいいんだったね」)

彼はこちらのガチョウクラブの会員だったね」

(「ああ、なるほど。しかし、あれはうちのがちょうじゃないんで」)

「ああ、なるほど。しかし、あれはうちのガチョウじゃないんで」

(「そうなのか!じゃだれのとこのやつだ?」)

「そうなのか!じゃ誰のとこのやつだ?」

(「こべんと・がーでんのしょうにんからにだーすかったんで」)

「コベント・ガーデンの商人から二ダース買ったんで」

(「そうなのか?ぼくもなんにんかしっているが。どいつだろうな?」)

「そうなのか?僕も何人か知っているが。どいつだろうな?」

(「ぶれっきんりっじというなまえでしたが」「ああ!そのひとはしらないな。)

「ブレッキンリッジという名前でしたが」「ああ!その人は知らないな。

(それじゃ、けんこうをしゅくして、ごしゅじん、しょうばいはんじょうをいのるよ。それじゃ」)

それじゃ、健康を祝して、ご主人、商売繁盛を祈るよ。それじゃ」

(「つぎは、ぶれっきんりっじか」ほーむずはこおりつくような)

「次は、ブレッキンリッジか」ホームズは凍りつくような

(がいきのなかにでていくとき、くびもとまでぼたんをとめながらいった。)

外気の中に出て行く時、首元までボタンを留めながら言った。

(「おぼえておいてくれ、わとそん。いまてにしているくさりは、)

「覚えておいてくれ、ワトソン。今手にしている鎖は、

(かたほうのはしにはがちょうのようなひじょうにかていてきなものがついていて、)

片方の端にはガチョウのような非常に家庭的な物がついていて、

(もうかたほうには、われわれがむじつをじっしょうしないかぎり、まちがいなくななねんは)

もう片方には、我々が無実を実証しない限り、間違いなく七年は

(ちょうえきをくらうだろうというおとこがぶらさがっている。もちろん、)

懲役を食らうだろうという男がぶら下がっている。もちろん、

(そうさしたところで、けっきょくこのおとこのゆうざいをりっしょうすることになるという)

捜査したところで、結局この男の有罪を立証することになるという

(かのうせいもあるがね。しかしなににしても、われわれはけいさつがみのがした)

可能性もあるがね。しかし何にしても、我々は警察が見逃した

(そうさのいとぐちをにぎっている。そして、これはじつにきみょうなぐうぜんによって)

捜査の糸口を握っている。そして、これは実に奇妙な偶然によって

(てにいれたものだ。さいごのさいごまでてっていてきにこのてがかりおいかけてみよう。)

手に入れたものだ。最後の最後まで徹底的にこの手がかり追いかけてみよう。

(じゃあ、みなみにむかっていそぐぞ!」われわれはほるぼーんをぬけ、えんでるがいをくだり、)

じゃあ、南に向かって急ぐぞ!」我々はホルボーンを抜け、エンデル街を下り、

(こべんと・がーでん・まーけっとのすらむがいをじぐざぐにぬけた。)

コベント・ガーデン・マーケットのスラム街をジグザグに抜けた。

(もっともおおきなばいてんのいっけん、ぶれっきんりっじというかんばんをかかげたみせで、)

最も大きな売店の一軒、ブレッキンリッジという看板を掲げた店で、

(きちんとととのえられたほおひげをはやしたうまづらでするどいかおのけいえいしゃが、)

きちんと整えられた頬髯を生やした馬面で鋭い顔の経営者が、

(みせじまいするしょうねんをてつだっていた。)

店じまいする少年を手伝っていた。

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