【分割】バイオ：アイバーン　~豊緑の神秘~　４

(それは、あいばーんがそのじんせいでみてきたなによりもうつくしいこうけいだった。)

それは、アイバーンがその人生で見てきた何よりも美しい光景だった。

(せいめいはあらゆるかたちをとり、)

生命はあらゆる形をとり、

(ありえないほどふくざつなむすびめのようにたがいにからまりあい、)

あり得ないほど複雑な結び目のように互いに絡まり合い、

(もとめあうようにつながっていた。)

求めあうように繋がっていた。

(じぶんのおかしてきたあやまちを、)

自分の犯してきた過ちを、

(たにんにたたきつけてきたざんこくさをふりかえると、)

他人に叩きつけてきた残酷さを振り返ると、

(どとうのようにこうかいとかなしみがわきおこった。)

怒涛のように後悔と悲しみが沸き起こった。

(あいばーんがすすりなくと、)

アイバーンがすすり泣くと、

(じゅもくのようになったかれのからだをおおうじゅひとはには、)

樹木のようになった彼の体を覆う樹皮と葉には、

(つゆのようななみだがうかんだ。)

露のような涙が浮かんだ。

(じぶんはかみやなぎになったのだろうか？かれはじもんした。)

自分はカミヤナギになったのだろうか？彼は自問した。

(ふたたび、うちなるこえがきこえた。「きけ」あいばーんはしたがった。)

再び、内なる声が聞こえた。「聴け」　　アイバーンは従った。

(さいしょは、なにのおともきこえなかった。)

最初は、何の音も聞こえなかった。

(やがてかぞえきれないけものたちのおえつに、)

やがて　　数えきれない獣たちの嗚咽に、

(かせんのどせいに、きぎのあいごうに、)

河川の怒声に、木々の哀号に、

(こけがこぼすなみだのおとにあいばーんはきづいた。)

苔がこぼす涙の音にアイバーンは気付いた。

(それはかみやなぎのしをなげくあいとうのこうきょうきょくだった。)

それはカミヤナギの死を嘆く哀悼の交響曲だった。

(かれはりょうしんのかしゃくにゆるしをこうてなきさけんだ。)

彼は良心の呵責に赦しを乞うて泣き叫んだ。

(すると、ちいさなりすがかれのあしにみをよせてきた。)

すると、小さなリスが彼の脚に身を寄せてきた。

(かれはちかくにいるどうぶつたちのしせんをかんじた。)

彼は近くにいる動物たちの視線を感じた。