【分割】バイオ：アイバーン　~豊緑の神秘~　５

(あいばーんがついにうごきだしたときには、)

アイバーンがついに動き出した時には、

(すでにいっせいきがすぎさっており、)

すでに一世紀が過ぎ去っており、

(せかいはあたらしいもののようにかんじられた。)

世界は新しいもののように感じられた。

(かつてのじぶんじしんのぼうぎゃくとざんこくは、)

かつての自分自身の暴虐と残酷は、

(こころのおくのざんきょうとなっていた。)

心の奥の残響となっていた。

(おおくのはかいをもたらしていたむかしのじぶんにはけっしてもどるまい。)

多くの破壊をもたらしていた昔の自分には決して戻るまい。

(しかしうちなるこえにといかけた。)

しかし　　内なる声に問いかけた。

(なぜじぶんなのか？なぜじぶんはゆるされたのか？)

なぜ自分なのか？なぜ自分は赦されたのか?

(みたび、こえがひびいた。「そだてよ」)

三たび、声が響いた。「育てよ」

(かれはとまどった。かれじしんにそだてといっているのか、)

彼は戸惑った。彼自身に育てと言っているのか、

(それともせかいをそだてるたすけをせよといっているのか？)

それとも世界を育てる助けをせよと言っているのか？

(おそらくりょうほうだろうそううけとめた。)

おそらく両方だろう　　そう受け止めた。

(それに、もうすこしそだったとしてもわるいことはないし、)

それに、もう少し育ったとしても悪いことはないし、

(むしろなにかのやくにたつのではないだろうか？)

むしろ何かの役に立つのではないだろうか？

(あいばーんはみおろしてみたじぶんじしんを、)

アイバーンは見下ろしてみた　　自分自身を、

(じゅひのようなはだを、うでにはえたきのこを、)

樹皮のような肌を、腕に生えたキノコを、

(かつてけんをはいていたあたりにすみついているりすのいっかを。)

かつて剣を佩いていたあたりに住み着いているリスの一家を。

(このあたらしいにくたいは、まさにきょういだった。)

この新しい肉体は、まさに驚異だった。

(つまさきでふかくつちをほると、ねやむしたちとはなしができることにきづいた。)

爪先で深く土を掘ると、根や虫たちと話ができることに気付いた。

(つちさえも、じぶんじしんのいけんをもっていた！)

土さえも、自分自身の意見を持っていた！