洒落怖《オキテル》
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問題文
(むかしね、ともだちとうみにいったときのはなしなんだけど。)
昔ね、友達と海に行った時の話なんだけど。
(すなぶろをやろうとして、あんまりひとめがおおいばしょだとちょっとはずかしいから)
砂風呂をやろうとして、あんまり人目が多い場所だとちょっと恥ずかしいから
(あんまりひとけのないところで、ともだちにすなかけてうめてもらったんだ。)
あんまりひとけのないところで、友達に砂かけて埋めてもらったんだ。
(かおにはひよけのぱらそるがかかるようにしてもらってかいてきだったし、)
顔には日よけのパラソルがかかるようにしてもらって快適だったし、
(すぐにうとうとしはじめた。)
すぐにウトウトし始めた。
(そのとき、ふいにだれかがちかづいてくるけはいがして、)
その時、ふいに誰かが近づいてくる気配がして、
(「おきてたらやる」と、わかくはないじょせいのこえでしゃべったのよ。)
「オキテタラヤル」と、若くはない女性の声で喋ったのよ。
(ともだちのこえじゃなかったし、みょうによくようがないしゃべりかただった。)
友達の声じゃなかったし、妙に抑揚が無い喋り方だった。
(かなりねむかったからむししたんだけど、)
かなり眠かったから無視したんだけど、
(けっきょくそれきりこえはかけてこなくて、けはいもすぐたちさった。)
結局それきり声はかけてこなくて、気配もすぐ立ち去った。
(しばらくして、すなからでてうみであそんでたんだけど、)
しばらくして、砂から出て海で遊んでたんだけど、
(ひともすくなくなったかえりのじかんに、ぱらそるをあのばしょに)
人も少なくなった帰りの時間に、パラソルをあの場所に
(おいてきてしまったことをおもいだして、とりにいったのね。)
置いてきてしまったことを思い出して、取りに行ったのね。
(いいわすれてたけど、あのときにすなからでるさい、)
言い忘れてたけど、あの時に砂から出る際、
(ひとがまだいるかのようにすなをもりあげて、)
人がまだいるかのように砂を盛り上げて、
(ぱらそるも、かおにあたるぶぶんがみえないようにはいちしていたわけよ。)
パラソルも、顔に当たる部分が見えないように配置していたわけよ。
(ともだちをおどろかそうとしていたんだけど、)
友達を驚かそうとしていたんだけど、
(けっきょくまつのがめんどうくさくて、すぐにべつのばしょでごうりゅうしてしまったんだけどね。)
結局待つのが面倒くさくて、すぐに別の場所で合流してしまったんだけどね。
(で、ぱらそるをとりにもどったおれがみたのは、)
で、パラソルを取りに戻った俺が見たのは、
(おれのじゃないべつのぱらそるがすなのもりあがったぶぶんに)
俺のじゃない別のパラソルが砂の盛り上がった部分に
(なんぼんもつきささっていたのね。)
何本も突き刺さっていたのね。
(あとなぜかかみそりが、あたまのどうたいのあいだにめりこんでいた。)
あとなぜかカミソリが、頭の胴体の間にめり込んでいた。
(しょうじきこわかったし、こわいはなしのてんぷれみたいだなともかんがえるじぶんもいた。)
正直怖かったし、怖い話のテンプレみたいだなとも考える自分もいた。
(とりあえずごみはまずいから、じぶんのぶんのぱらそるのざんがいは)
とりあえずゴミはまずいから、自分の分のパラソルの残骸は
(もってかえろうとおもっておもいっきりふかくささっていたそれを)
持って帰ろうと思って思いっきり深く刺さっていたそれを
(かるいいかりとともにひきぬいたのね。)
軽い怒りと共に引き抜いたのね。
(そしたらさ、とおくからなんかこえがきこえてきて、しせんをむけると)
そしたらさ、遠くからなんか声が聞こえてきて、視線を向けると
(けっこうながいすなはまのむこうから、ものすごいいきおいではしってくるやつがいるのよ。)
結構長い砂浜の向こうから、物凄い勢いで走ってくる奴がいるのよ。
(で、そいつがなんかさけんでるの。)
で、そいつがなんか叫んでるの。
(まだのこっていたひとたちが、そいつからあとずさっているのはよくみえた。)
まだ残っていた人たちが、そいつから後ずさっているのはよく見えた。
(もうおれもすぐにはしってくるまにもどって、)
もう俺もすぐに走って車に戻って、
(よくわかんないかおしてるともだちをくるまにのせてさっさとにげた。)
よくわかんない顔してる友達を車に乗せてさっさと逃げた。
(あせってはいたが、きょりはかなりあったからけっこうよゆうではあったが、)
焦ってはいたが、距離はかなりあったから結構余裕ではあったが、
(わらいながら「おきてる」「おきてる」とはしってくるすがたはわすれない。)
笑いながら「オキテル」「オキテル」と走ってくる姿は忘れない。