『怪人二十面相』江戸川乱歩18

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(ぴっぽちゃんは、こばやししょうねんのてのこうにとまって、)

ピッポちゃんは、小林少年の手の甲に止まって、

(かわいいめをきょろきょろさせて、)

可愛い目をキョロキョロさせて、

(じっときいていましたが、ごしゅじんのめいれいがわかった)

ジッと聞いていましたが、ご主人の命令が分かった

(とみえて、やがていさましくはばたき、)

とみえて、やがて勇ましく羽ばたき、

(ちかしつのなかをに、さんどいったりきたりすると、)

地下室の中を二、三度行ったり来たりすると、

(つーっとまどのそとへとびだしてしまいました。)

ツーッと窓の外へ飛び出してしまいました。

(「ああ、よかった。じゅっぷんもすれば、ぴっぽちゃんは、)

「ああ、よかった。十分もすれば、ピッポちゃんは、

(あけちせんせいのおばさんのところへとんでいくだろう。)

明智先生のおばさんの所へ飛んで行くだろう。

(おばさんはてがみをよんで、さぞびっくり)

おばさんは手紙を読んで、さぞビックリ

(なさるだろうなあ。でも、すぐにけいしちょうへでんわを)

なさるだろうなあ。でも、すぐに警視庁へ電話を

(かけてくれるにちがいない。それからけいかんが)

かけてくれるに違いない。それから警官が

(ここへかけつけるまでさん、よんじゅっぷんかな。)

ここへ駆けつけるまで三、四十分かな。

(なんにしても、いまからいちじかんいないに、ぞくが)

なんにしても、今から一時間以内に、賊が

(つかまるんだ。そしてぼくは、このあなから)

捕まるんだ。そしてぼくは、この穴から

(でることができるんだ」こばやししょうねんは、)

出ることが出来るんだ」小林少年は、

(ぴっぽちゃんがきえていったそらをながめながら、)

ピッポちゃんが消えていった空をながめながら、

(むちゅうになって、そんなことをかんがえていました。)

夢中になって、そんなことを考えていました。

(あまりにもむちゅうになっていたので、)

あまりにも夢中になっていたので、

(いつのまにか、てんじょうのおとしあなのふたがあいた)

いつのまにか、天井の落とし穴のフタがあいた

(ことに、すこしもきづきませんでした。「こばやしくん、)

ことに、少しも気づきませんでした。「小林君、

など

(そんなところで、なにをしているんだね」ききおぼえの)

そんな所で、何をしているんだね」 聞き覚えの

(あるにじゅうめんそうのこえが、まるでかみなりのようにしょうねんのみみを)

ある二十面相の声が、まるで雷のように少年の耳を

(うちました。ぎょっとしてそこをみあげると、)

うちました。 ギョッとしてそこを見あげると、

(てんじょうにぽっかりあいたしかくのあなから、)

天井にポッカリあいた四角の穴から、

(ゆうべのままの、しらがあたまのぞくのかおが)

ゆうべのままの、しらが頭の賊の顔が

(さかさまになって、のぞいていたではありませんか。)

逆さまになって、のぞいていたではありませんか。

(あ、それじゃ、ぴっぽちゃんがとんでいくのを、)

あ、それじゃ、ピッポちゃんが飛んで行くのを、

(みられたかもしれない。こばやしくんは、おもわず)

見られたかもしれない。 小林君は、思わず

(かおいろをかえて、ぞくのかおをみつめました。)

顔色を変えて、賊の顔を見つめました。

(「きみょうなとりひき」)

「奇妙な取り引き」

(「しょうねんたんていさん、どうだったね、ゆうべのねごこちは。)

「少年探偵さん、どうだったね、ゆうべの寝心地は。

(ははは、おや、まどになんだかくろいひもが)

ハハハ、おや、窓に何だか黒いヒモが

(ぶらさがっているじゃないか。ははあ、)

ぶら下がっているじゃないか。ははあ、

(なわばしごというやつだね。かんしんかんしん。きみは、)

縄バシゴというやつだね。感心感心。きみは、

(じつにかんがえぶかいこどもだねえ。だが、そのまどの)

実に考え深い子どもだねえ。だが、その窓の

(てつぼうは、きみのちからじゃはずせないだろう。)

鉄棒は、きみの力じゃ外せないだろう。

(そんなところにたって、いつまでもまどをにらんでても、)

そんな所に立って、いつまでも窓をにらんでても、

(にげだせはしないんだよ。きのどくだね」ぞくは、)

逃げ出せはしないんだよ。気の毒だね」賊は、

(にくにくしくあざけるのでした。「やあ、おはよう。)

憎々しくあざけるのでした。「やあ、おはよう。

(ぼくはにげだそうなんておもってやしないよ。)

ぼくは逃げ出そうなんて思ってやしないよ。

(いごこちがいいんだもの。このへやはきにいったよ。)

居心地がいいんだもの。この部屋は気に入ったよ。

(ぼくはゆっくりたいざいするつもりだよ」こばやししょうねんも)

ぼくはゆっくり滞在するつもりだよ」 小林少年も

(まけてはいませんでした。いま、まどからでんしょばとを)

負けてはいませんでした。今、窓から伝書バトを

(とばしたのを、ぞくにかんづかれたのではないかと、)

飛ばしたのを、賊に感づかれたのではないかと、

(むねをどきどきさせていたのですが、にじゅうめんそうのくちぶり)

胸をドキドキさせていたのですが、二十面相の口ぶり

(では、そんなようすもみえませんので、)

では、そんな様子も見えませんので、

(すっかりあんしんしてしまいました。ぴっぽちゃん)

すっかり安心してしまいました。ピッポちゃん

(さえ、ぶじにたんていじむしょへついてくれたら)

さえ、無事に探偵事務所へ着いてくれたら

(よいのです。にじゅうめんそうが、どんなにどくぜつを)

良いのです。二十面相が、どんなに毒舌を

(たたいたって、なんともありません。さいごのしょうりは)

たたいたって、なんともありません。最後の勝利は

(こっちのものだとわかっているからです。)

こっちのものだと分かっているからです。

(「いごこちがいいって、ほんとうかい。ははは、)

「居心地がいいって、本当かい。ハハハ、

(ますますかんしんだねえ。さすがはあけちのかたうでといわれる)

ますます感心だねえ。さすがは明智の片腕と言われる

(ほどあって、いいどきょうだ。だがこばやしくん、すこししんぱいな)

ほどあって、いい度胸だ。だが小林君、少し心配な

(ことがありゃしないかい。え、きみは、もうおなかが)

ことがありゃしないかい。え、きみは、もうお腹が

(すいているころだろう。うえじにしてもいいという)

すいている頃だろう。飢え死してもいいと言う

(のかい」なにをいっているんだ。いまにぴっぽちゃんの)

のかい」 何を言っているんだ。今にピッポちゃんの

(ほうこくで、けいさつからたくさんのおまわりさんが、)

報告で、警察からたくさんのお巡りさんが、

(かけつけてくるのもしらないで。こばやしくんはなにも)

駆けつけて来るのも知らないで。小林君は何も

(いわないで、こころのなかであざわらっていました。)

言わないで、心の中であざわらっていました。

(「ははは、すこしげんきがなくなったようだね。)

「ハハハ、少し元気が無くなったようだね。

(いいことをおしえてやろうか。きみはだいかをはらうんだよ。)

いいことを教えてやろうか。きみは代価を払うんだよ。

(そうすれば、おいしいあさごはんをたべさせてあげるよ。)

そうすれば、おいしい朝ご飯を食べさせてあげるよ。

(いやいや、おかねじゃない。しょくじのだいかというのはね、)

いやいや、お金じゃない。食事の代価というのはね、

(きみがもっているぴすとるだよ。そのぴすとるを、)

きみが持っているピストルだよ。そのピストルを、

(おとなしくこっちへひきわたせば、こっくにいいつけて、)

大人しくこっちへ引き渡せば、コックに言いつけて、

(さっそくあさごはんをはこばせるんだがねえ」ぞくは)

さっそく朝ご飯を運ばせるんだがねえ」 賊は

(おおきなことはいうものの、やっぱりぴすとるを)

大きなことは言うものの、やっぱりピストルを

(きみわるがっているのでした。それをしょくじのだいかとして)

気味悪がっているのでした。それを食事の代価として

(とりあげるとは、うまいことをおもいついたものです。)

取り上げるとは、上手いことを思いついたものです。

(こばやししょうねんは、やがてすくいだされることをしんじて)

小林少年は、やがて救い出されることを信じて

(いたので、それまでしょくじをがまんするのは)

いたので、それまで食事を我慢するのは

(なんでもないのですが、へいきなかおをしていて、)

何でもないのですが、平気な顔をしていて、

(あいてにうたがいをもたれては、まずいとかんがえました。)

相手に疑いを持たれては、まずいと考えました。

(それに、どうせぴすとるには、もうようじがない)

それに、どうせピストルには、もう用事がない

(のです。「ざんねんだけれど、きみのもうしでにおうじよう。)

のです。「残念だけれど、きみの申し出に応じよう。

(ほんとうは、おなかがぺこぺこなんだ」わざと)

本当は、お腹がペコペコなんだ」 わざと

(くやしそうにこたえました。ぞくは、それをおしばい)

悔しそうに答えました。 賊は、それをお芝居

(とはおもわず、けいりゃくがうまくいったとばかりに)

とは思わず、計略が上手くいったとばかりに

(とくいになって、「うふふ、さすがのしょうねんたんていも、)

得意になって、「ウフフ、さすがの少年探偵も、

(くうふくには、かなわないとみえるね。よしよし、)

空腹には、かなわないとみえるね。よしよし、

(いますぐ、しょくじをよういするからね」といいながら、)

今すぐ、食事を用意するからね」と言いながら、

(おとしあなをしめてすがたをけしました。やがて、)

落とし穴を閉めて姿を消しました。やがて、

(こっくにめいじているらしいこえが、てんじょうから、)

コックに命じているらしい声が、天井から、

(かすかにきこえてきました。あんがい、しょくじのよういが)

かすかに聞こえてきました。 案外、食事の用意が

(てまどって、ふたたびにじゅうめんそうがおとしあなを)

手間取って、再び二十面相が落とし穴を

(ひらいてかおをだしたのは、それからにじゅっぷんもたった)

ひらいて顔を出したのは、それから二十分も経った

(ころでした。「さあ、あたたかいごはんをもってきて)

頃でした。「さあ、温かいご飯を持ってきて

(あげたよ。だが、まずだいかのほうを、さきにちょうだい)

あげたよ。だが、まず代価のほうを、先にちょうだい

(することにしよう。さあ、このかごにぴすとるを)

することにしよう。さあ、このカゴにピストルを

(いれるんだ」つなのついたちいさなかごが、)

入れるんだ」 つなの付いた小さなカゴが、

(するするとおりてきました。こばやししょうねんが、)

スルスルと下りてきました。小林少年が、

(いわれるままにぴすとるをそのなかへいれると、)

言われるままにピストルをその中へ入れると、

(かごはてばやくてんじょうへあげられ、それから、)

カゴは手早く天井へ上げられ、それから、

(もういちどおりてきたときには、そのなかにゆげの)

もう一度下りてきた時には、その中に湯気の

(たっているおにぎりがみっつと、はむ、なまたまご、)

たっているおにぎりが三つと、ハム、生卵、

(おちゃのびんがならべてありました。)

お茶のビンが並べてありました。

(とらわれのみにしては、なかなかのごちそうです。)

囚われの身にしては、なかなかのごちそうです。

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