『怪人二十面相』江戸川乱歩19
○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文
(「さあ、ゆっくりたべてくれたまえ。きみのほうで)
「さあ、ゆっくり食べてくれたまえ。きみのほうで
(だいかさえはらってくれたら、いくらでもごちそうして)
代価さえ払ってくれたら、いくらでもごちそうして
(あげるよ。おひるごはんには、こんどはだいやもんどだぜ。)
あげるよ。お昼ご飯には、今度はダイヤモンドだぜ。
(せっかくてにいれたのを、きのどくだけれど、ひとつぶずつ)
せっかく手に入れたのを、気の毒だけれど、一粒ずつ
(ちょうだいすることにするよ。いくらざんねんだとしても、)
ちょうだいすることにするよ。いくら残念だとしても、
(くうふくにはかえられないからね。つまり、その)
空腹には変えられないからね。つまり、その
(だいやもんどをすべてかえしてもらうというわけ)
ダイヤモンドを全て返してもらうという訳
(なんだよ。ひとつぶずつひとつぶずつ、ははは、ほてるの)
なんだよ。一粒ずつ一粒ずつ、ハハハ、ホテルの
(しゅじんも、なかなかたのしいものだねえ」にじゅうめんそうは、)
主人も、なかなか楽しいものだねえ」二十面相は、
(このきみょうなとりひきが、ゆかいでたまらないようです。)
この奇妙な取り引きが、愉快でたまらないようです。
(しかし、そんなきのながいことをいっていて、ほんとうに)
しかし、そんな気の長いことを言っていて、本当に
(だいやもんどがとりかえせるのでしょうか。)
ダイヤモンドが取り返せるのでしょうか。
(そのまえに、かれじしんがつかまってしまうようなことは、)
その前に、彼自身が捕まってしまうようなことは、
(ないでしょうか。)
ないでしょうか。
(「こばやししょうねんのしょうり」)
「小林少年の勝利」
(にじゅうめんそうは、おとしどのところにしゃがんだまま、)
二十面相は、落し戸の所にしゃがんだまま、
(いまとりあげたばかりのぴすとるを、てのひらのうえで)
今取り上げたばかりのピストルを、手のひらの上で
(ぴょいぴょいとはずませながら、とくいのぜっちょうでした。)
ピョイピョイと弾ませながら、得意の絶頂でした。
(そして、なおもこばやししょうねんをからかってたのしもうと、)
そして、なおも小林少年をからかって楽しもうと、
(なにかいいかけたときでした。ばたばたとにかいから)
何か言いかけた時でした。バタバタと二階から
(かけおりるおとがして、こっくのきょうふにひきつったかおが)
駆け下りる音がして、コックの恐怖に引きつった顔が
(あらわれました。「たいへんです。じどうしゃがさんだい、おまわりが)
現れました。「大変です。自動車が三台、おまわりが
(うじゃうじゃのっているんです。にかいのまどから)
ウジャウジャ乗っているんです。二階の窓から
(みていると、もんのそとでとまりました。)
見ていると、門の外で止まりました。
(はやくにげなくっちゃ」ああ、これはぴっぽちゃんが)
早く逃げなくっちゃ」ああ、これはピッポちゃんが
(しめいをはたしたのでした。そして、こばやしくんのかんがえて)
使命を果たしたのでした。そして、小林君の考えて
(いたよりもはやく、もうけいかんたいがとうちゃくしたのでした。)
いたよりも早く、もう警官隊が到着したのでした。
(ちかしつで、このさわぎをききつけたしょうねんたんていは、)
地下室で、この騒ぎを聞きつけた少年探偵は、
(うれしさにとびたつばかりです。このふいうちには、)
嬉しさにとびたつばかりです。 この不意打ちには、
(さすがのにじゅうめんそうもぎょうてんしないではいられません。)
さすがの二十面相も仰天しないではいられません。
(「なに」と、うめいて、すっくとたちあがると、)
「なに」と、うめいて、スックと立ち上がると、
(おとしどをしめることもわすれて、いきなりおもての)
落し戸を閉めることも忘れて、いきなり表の
(いりぐちへかけだしました。でも、もうおそかったのです。)
入り口へ駆けだしました。でも、もう遅かったのです。
(いりぐちのとを、そとからはげしくたたくおとがきこえて)
入り口の戸を、外から激しく叩く音が聞こえて
(きました。とのそばにもうけてある、のぞきあなに)
きました。戸のそばに設けてある、のぞき穴に
(めをあててみると、そとはせいふくけいかんのひとがきでした。)
目をあててみると、外は制服警官の人垣でした。
(「ちくしょう」にじゅうめんそうは、いかりにみをふるわせ)
「ちくしょう」 二十面相は、いかりに身を震わせ
(ながら、こんどはうらぐちにむかってはしりました。しかし、)
ながら、今度は裏口に向かって走りました。しかし、
(とちゅうまでもいかないうちに、そのうらぐちのどあにも、)
途中までも行かないうちに、その裏口のドアにも、
(はげしくたたくおとがきこえてきたではありませんか。)
激しく叩く音が聞こえてきたではありませんか。
(ぞくのそうくつは、いまやけいかんたいによって、かんぜんにほうい)
賊の巣窟は、今や警官隊によって、完全に包囲
(されてしまったのです。「かしら、もうだめです。)
されてしまったのです。「かしら、もうだめです。
(にげみちはありません」こっくがぜつぼうのさけびを)
逃げ道はありません」 コックが絶望の叫びを
(あげました。「しかたがない、にかいだ」にじゅうめんそうは、)
あげました。「仕方がない、二階だ」二十面相は、
(にかいのやねうらべやへかくれようというのです。)
二階の屋根裏部屋へ隠れようと言うのです。
(「とてもだめです。すぐみつかってしまいます」)
「とてもダメです。すぐ見つかってしまいます」
(こっくはなきだしそうなこえでわめきました。)
コックは泣きだしそうな声でわめきました。
(ぞくはそれにかまわず、いきなりおとこのてをとって、)
賊はそれに構わず、いきなり男の手を取って、
(ひきずるようにして、やねうらべやへのかいだんを)
引きずるようにして、屋根裏部屋への階段を
(かけあがりました。ふたりのすがたがかいだんにきえると)
駆け上がりました。二人の姿が階段に消えると
(ほどなく、おもてぐちのどあがはげしいおとをたてて、)
ほどなく、表口のドアが激しい音をたてて、
(たおれたかとおもうと、すうめいのけいかんがおくないに)
倒れたかと思うと、数名の警官が屋内に
(なだれこんできました。それとほとんどどうじに、)
なだれこんできました。それとほとんど同時に、
(うらぐちのともあいて、そこからもすうめいのせいふくけいかん。)
裏口の戸もあいて、そこからも数名の制服警官。
(しきかんは、「けいしちょうのおに」と、うたわれた)
指揮官は、「警視庁の鬼」と、うたわれた
(なかむらそうさかかりちょうです。かかりちょうは、おもてとうらの)
中村捜査係長です。係長は、表と裏の
(ようしょようしょにみはりのけいかんをたたせておいて、)
要所要所に見張りの警官を立たせておいて、
(のこるぜんいんにさしずし、へやというへやをかたっぱしから)
残る全員に指図し、部屋という部屋を片っ端から
(そうさくさせました。「あ、ここだ。ここがちかしつだ」)
捜索させました。「あ、ここだ。ここが地下室だ」
(ひとりのけいかんが、おとしどのうえでどなりました。)
一人の警官が、落し戸の上でどなりました。
(たちまちかけよるひとびと。そこにしゃがんで、うすぐらい)
たちまち駆けよる人々。そこにしゃがんで、薄暗い
(ちかしつをのぞいていたひとりが、こばやししょうねんのすがたを)
地下室をのぞいていた一人が、小林少年の姿を
(みとめて、「いるいる。きみがこばやしくんか」と)
みとめて、「居る居る。きみが小林君か」と
(よびかけると、まちかまえていたしょうねんは、)
呼びかけると、待ち構えていた少年は、
(「そうです、はやくはしごをおろしてください」と)
「そうです、早くハシゴを下ろしてください」と
(さけぶのでした。いっぽう、かいかのへやは、くまなく)
叫ぶのでした。 一方、階下の部屋は、くまなく
(そうさくされましたが、ぞくのすがたはどこにもみえません。)
捜索されましたが、賊の姿はどこにも見えません。
(「こばやしくん、にじゅうめんそうはどこへいったか、きみは)
「小林君、二十面相はどこへ行ったか、きみは
(しらないか」やっとちかしつからはいあがった、)
知らないか」 やっと地下室から這い上がった、
(いようなころもすがたのしょうねんをつかまえて、なかむらかかりちょうが)
異様な衣姿の少年を捕まえて、中村係長が
(あわただしくたずねました。「ついいましがたまで、)
慌ただしくたずねました。「つい今しがたまで、
(このおとしどのところにいたんです。そとへにげたはずは)
この落し戸の所に居たんです。外へ逃げたはずは
(ありません。にかいじゃありませんか」こばやししょうねんの)
ありません。二階じゃありませんか」 小林少年の
(ことばがおわるかおわらないかのあいだに、そのにかい)
言葉が終わるか終わらないかの間に、その二階
(からただならないさけびごえがひびいてきました。)
からただならない叫び声が響いてきました。
(「はやくきてくれ。ぞくだ、ぞくをつかまえたぞ」)
「早く来てくれ。賊だ、賊を捕まえたぞ」
(そういうので、ひとびとはなだれのように、ろうかのおくの)
そう言うので、人々はなだれのように、廊下の奥の
(かいだんへさっとうしました。どかどかというはげしいくつおと、)
階段へ殺到しました。ドカドカという激しい靴音、
(かいだんをあがると、そこはやねうらべやで、ちいさなまどが)
階段を上がると、そこは屋根裏部屋で、小さな窓が
(たったひとつ、まるでゆうがたのようにうすぐらいのです。)
たった一つ、まるで夕方のように薄暗いのです。
(「ここだ、ここだ。はやくかせいしてくれ」)
「ここだ、ここだ。早く加勢してくれ」
(そのうすぐらいなかでひとりのけいかんが、はくはつにしろいひげの)
その薄暗い中で一人の警官が、白髪に白いヒゲの
(ろうじんをくみしいて、どなっています。ろうじんは、)
老人を組みしいて、どなっています。老人は、
(なかなかてごわいらしく、きをぬけばはねかえし)
なかなか手ごわいらしく、気を抜けば跳ね返し
(そうで、くみしいているのがやっとのようです。)
そうで、組みしいているのがやっとのようです。
(さきにたったに、さんにんが、たちまちろうじんにくみついて)
先に立った二、三人が、たちまち老人に組みついて
(いきました。それをおってよにん、ごにん、ろくにん、)
いきました。それを追って四人、五人、六人、
(けいかんがのこらずぜんいん、おりかさなって、ぞくのうえに)
警官が残らず全員、折り重なって、賊の上に
(おそいかかりました。もうこうなっては、)
おそいかかりました。 もうこうなっては、
(いかなるぞくもていこうのしようがありません。)
いかなる賊も抵抗のしようがありません。
(みるみるうちにてをうしろにまわされ、くびからひじ、てくびに)
みるみるうちに手を後ろに回され、首から肘、手首に
(なわをかけられて、げんじゅうにしばられてしまいました。)
縄をかけられて、厳重にしばられてしまいました。
(はくはつのろうじんがぐったりとして、へやのすみに)
白髪の老人がグッタリとして、部屋の隅に
(うずくまったとき、なかむらかかりちょうがこばやししょうねんをつれて)
うずくまった時、中村係長が小林少年を連れて
(あがってきました。ぞくほんにんであるか、かくにんする)
上がってきました。賊本人であるか、確認する
(ためです。「にじゅうめんそうは、こいつにちがいない)
ためです。「二十面相は、こいつに違いない
(だろうね」かかりちょうがたずねると、しょうねんはそくざに)
だろうね」 係長がたずねると、少年は即座に
(うなずいて、「そうです、こいつです。にじゅうめんそうが)
うなずいて、「そうです、こいつです。二十面相が
(こんなろうじんにへんそうしているのです」とこたえました。)
こんな老人に変装しているのです」と答えました。