怪人二十面相_8

背景
投稿者投稿者kikiいいね0お気に入り登録
プレイ回数1難易度(4.5) 2192打 長文 長文モード推奨

関連タイピング

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(そういちくんも、ひざのうえに、にぎりこぶしをかためて、)

壮一君も、ひざの上に、にぎりこぶしをかためて、

(はをくいしばるようにしています。)

歯をくいしばるようにしています。

(ふたりのいきづかいや、うでどけいのびょうをきざむおとまでがきこえるほど、)

ふたりの息づかいや、腕時計の秒をきざむ音までが聞こえるほど、

(へやのなかはしずまりかえっていました。)

部屋のなかはしずまりかえっていました。

(「もうなんぷんだね。」)

「もう何分だね。」

(「あとじゅっぷんです。」)

「あと十分です。」

(するとそのとき、なにかちいさなしろいものが、じゅうたんのうえをことこと)

するとそのとき、何か小さな白いものが、じゅうたんの上をコトコト

(はしっていくのが、ふたりのめのすみにうつりました。)

走っていくのが、ふたりの目のすみにうつりました。

(おやっ、はつかねずみかしら。)

おやっ、はつかネズミかしら。

(そうたろうしはおもわずぎょっとして、うしろのつくえのしたをのぞきました。)

壮太朗氏はおもわずギョッとして、うしろの机の下をのぞきました。

(しろいものは、どうやらつくえのしたへかくれたらしくみえたからです。)

白いものは、どうやら机の下へかくれたらしく見えたからです。

(「なあんだ、ぴんぽんのたまじゃないか。だが、こんなものが)

「なあんだ、ピンポンの玉じゃないか。だが、こんなものが

(どうしてころがってきたんだろう。」)

どうしてころがってきたんだろう。」

(つくえのしたからそれをひろいとって、ふしぎそうにながめました。)

机の下からそれを拾いとって、ふしぎそうにながめました。

(「おかしいですね。そうじくんが、そのへんのたなのうえにおきわすれておいたのが、)

「おかしいですね。壮二君が、そのへんの棚の上におきわすれておいたのが、

(なにかのはずみでおちたのじゃありませんか。」)

何かのはずみで落ちたのじゃありませんか。」

(「そうかもしれない・・・・・・。だがじかんは?」)

「そうかもしれない・・・・・・。だが時間は?」

(そうたろうしのじかんをたすねるかいすうが、だんだんひんぱんになってくるのです。)

壮太朗氏の時間をたすねる回数が、だんだんひんぱんになってくるのです。

(「あとよんぷんです。」)

「あと四分です。」

(ふたりはめとめをみあわせました。)

ふたりは目と目を見あわせました。

など

(びょうをきざむおとがこわいようでした。)

秒をきざむ音がこわいようでした。

(さんぷん、にふん、いっぷん、じりじりと、そのときがせまってきます。)

三分、二分、一分、ジリジリと、その時がせまってきます。

(にじゅうめんそうはもうへいをのりこえたかもしれません。)

二十面相はもう塀を乗りこえたかもしれません。

(いまごろはろうかをあるいているかもしれません・・・・・・。)

今ごろは廊下を歩いているかもしれません・・・・・・。

(いや、もうどあのそとにきて、じっとみみをすましているかもしれません。)

いや、もうドアの外に来て、じっと耳をすましているかもしれません。

(ああ、いまにも、いまにも、おそろしいおとをたてて、)

ああ、今にも、今にも、おそろしい音をたてて、

(どあがはかいされるのではないでしょうか。)

ドアが破壊されるのではないでしょうか。

(「おとうさんどうかなすったのですか。」)

「おとうさんどうかなすったのですか。」

(「いやいや、なんでもない。わしはにじゅうめんそうなんかにまけやしない。」)

「いやいや、なんでもない。わしは二十面相なんかに負けやしない。」

(そうはいうものの、そうたろうしは、もうまっさおになって、)

そうはいうものの、壮太朗氏は、もうまっさおになって、

(りょうてでひたいをおさえているのです。)

両手でひたいをおさえているのです。

(さんじゅうびょう、にじゅうびょう、じゅうびょうと、ふたりのしんぞうのこどうをあわせて、)

三十秒、二十秒、十秒と、ふたりの心臓の鼓動をあわせて、

(いきづまるようなおそろしいびょうじが、すぎさっていきました。)

息づまるようなおそろしい秒時が、すぎさっていきました。

(「おい、じかんは?」)

「おい、時間は?」

(そうたろうしの、うめくようなこえがたずねます。)

壮太朗氏の、うめくような声がたずねます。

(「じゅうにじいっぷんすぎです。」)

「十二時一分すぎです。」

(「なに、いっぷんすぎた?・・・あはは・・・、どうだそういち、にじゅうめんそうのよこくじょうも、)

「なに、一分すぎた?…アハハ…、どうだ壮一、二十面相の予告状も、

(あてにならんじゃないか。ほうせきはここにちゃんとあるぞ。なんのいじょうもないぞ。)

あてにならんじゃないか。宝石はここにちゃんとあるぞ。なんの異常もないぞ。

(そうたろうしは、かちほこったきもちで、おおごえにわらいました。)

壮太朗氏は、勝ちほこった気持で、大声に笑いました。

(しかし、そういちくんはにっこりともしません。)

しかし、壮一君はニッコリともしません。

(「ぼくはしんじられません。ほうせきには、はたしていじょうがないでしょうか。)

「ぼくは信じられません。宝石には、はたして異状がないでしょうか。

(にじゅうめんそうはいやくなんかするおとこでしょうか。」)

二十面相は違約なんかする男でしょうか。」

(「なにをいっているんだ。ほうせきはめのまえにあるじゃないか。」)

「なにをいっているんだ。宝石は目の前にあるじゃないか。」

(「でも、それははこです。」)

「でも、それは箱です。」

(「すると、おまえは、はこだけがあって、なかみのだいやもんどが)

「すると、おまえは、箱だけがあって、中身のダイヤモンドが

(どうかしたとでもいうのか。」)

どうかしたとでもいうのか。」

(「たしかめてみたいのです。たしかめるまではあんしんできません。」)

「たしかめてみたいのです。たしかめるまでは安心できません。」

(そうたろうしはおもわずたちあがって、しゃくどうのこばこを、りょうてでおさえつけました。)

壮太郎氏は思わずたちあがって、赤銅の小箱を、両手でおさえつけました。

(そういちくんもたちあがりました。ふたりのめが、ほとんどいっぷんのあいだ、)

壮一君も立ちあがりました。ふたりの目が、ほとんど一分のあいだ、

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告