怪人二十面相61

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問題文

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(しんしはそういいながら、いまさらおもいだしたように、ぽけっとからめいし)

紳士はそういいながら、今さら思いだしたように、ポケットから名刺

(いれをだして、いちまいのめいしをさしだしました。それには「まつしたしょうべえ」)

入れを出して、一枚の名刺をさしだしました。それには『松下庄兵衛』

(とあって、すぎなみくのあるあぱーとのじゅうしょも、いんさつしてあるのです。)

とあって、杉並区のあるアパートの住所も、印刷してあるのです。

(「わしは、このとおりまつしたというもので、すこししょうばいにしっぱいしまして、)

「わしは、このとおり松下というもので、少し商売に失敗しまして、

(いまはまあしつぎょうしゃというみのうえ、あぱーとずまいのひとりものですがね。)

今はまあ失業者という身のうえ、アパート住まいのひとり者ですがね。

(きのうのことでした。ひびやこうえんをぶらぶらしていて、ひとりの)

きのうのことでした。日比谷公園をブラブラしていて、ひとりの

(かいしゃいんふうのおとことしりあいになったのです。そのおとこが、みょうなかねもうけ)

会社員ふうの男と知りあいになったのです。その男が、みょうな金もうけ

(があるといって、おしえてくれたのですよ。)

があるといって、教えてくれたのですよ。

(つまり、きょういちにち、じどうしゃにのって、そのおとこのいうままに、とうきょうじゅうを)

つまり、きょう一日、自動車に乗って、その男のいうままに、東京中を

(のりまわしてくれれば、じどうしゃだいはただのうえに、ごせんえんのてあてをだす)

乗りまわしてくれれば、自動車代はただのうえに、五千円の手あてを出す

(というのです。うまいはなしじゃありませんか。わしはこんなみなりはして)

というのです。うまい話じゃありませんか。わしはこんな身なりはして

(いますけれど、しつぎょうしゃなんですからね、ごせんえんのてあてがほしかったですよ。)

いますけれど、失業者なんですからね、五千円の手あてがほしかったですよ。

(そのおとこは、これにはすこしじじょうがあるのだといって、なにかくどくどと)

その男は、これには少し事情があるのだといって、何かクドクドと

(はなしかけましたが、わしはそれをおしとどめて、じじょうなんかきかなくても)

話しかけましたが、わしはそれをおしとどめて、事情なんか聞かなくても

(いいからといって、さっそくしょうちしてしまったのです。)

いいからといって、さっそく承知してしまったのです。

(そこで、きょうはあさからじどうしゃでほうぼうのりまわしてな。おひるは)

そこで、きょうは朝から自動車でほうぼう乗りまわしてな。おひるは

(てつどうほてるでしょくじをしろという、ありがたいいいつけなんです。)

鉄道ホテルで食事をしろという、ありがたいいいつけなんです。

(たらふくごちそうになって、ここでしばらくまっていてくれという)

たらふくごちそうになって、ここでしばらく待っていてくれという

(ものだから、ほてるのまえにじどうしゃをとめて、そのなかにこしかけてまって)

ものだから、ホテルの前に自動車をとめて、その中にこしかけて待って

(いたのですが、さんじゅっぷんもしたかとおもうころ、ひとりのおとこがてつどうほてる)

いたのですが、三十分もしたかとおもうころ、ひとりの男が鉄道ホテル

など

(からでてきて、わしのくるまをあけて、なかへはいってくるのです。わしは、)

から出てきて、わしの車をあけて、中へはいってくるのです。わしは、

(そのおとこをひとめみて、びっくりしました。きがちがったのじゃないかと)

その男を一目見て、びっくりしました。気がちがったのじゃないかと

(おもったくらいです。なぜといって、そのわしのくるまへはいってきたおとこは、)

思ったくらいです。なぜといって、そのわしの車へはいってきた男は、

(かおから、せびろから、がいとうからすてっきまで、このわしといっぷんいちりんも)

顔から、背広から、がいとうからステッキまで、このわしと一分一厘も

(ちがわないほど、そっくりそのままだったからです。まるでわしがかがみに)

ちがわないほど、そっくりそのままだったからです。まるでわしが鏡に

(うつっているような、へんてこなきもちでした。)

うつっているような、へんてこな気持でした。

(あっけにとられてみていますとね、ますますみょうじゃありませんか。)

あっけにとられて見ていますとね、ますますみょうじゃありませんか。

(そのおとこは、わしのくるまへはいってきたかとおもうと、こんどははんたいがわのどあ)

その男は、わしの車へはいってきたかと思うと、こんどは反対がわのドア

(をあけて、そとへでていってしまったのです。)

をあけて、外へ出ていってしまったのです。

(つまり、そのわしとそっくりのしんしは、じどうしゃのきゃくせきを、とおりすぎただけ)

つまり、そのわしとそっくりの紳士は、自動車の客席を、通りすぎただけ

(なんです。そのとき、そのおとこは、わしのまえをとおりすぎながら、みょうな)

なんです。そのとき、その男は、わしの前を通りすぎながら、みょうな

(ことをいいました。)

ことをいいました。

(「さあ、すぐにしゅっぱつしてください。どこでもかまいません。ぜんそくりょくで)

「さあ、すぐに出発してください。どこでもかまいません。全速力で

(はしるのですよ。」)

走るのですよ。」

(こんなことをいいのこして、そのまま、ごぞんじでしょう、あの)

こんなことをいいのこして、そのまま、ごぞんじでしょう、あの

(てつどうほてるのまえにある、ちかしつのりはつてんのいりぐちのまえにとまって)

鉄道ホテルの前にある、地下室の理髪店の入り口の前にとまって

(いたのですよ。)

いたのですよ。

(なんだかへんだなとはおもいましたが、とにかくせんぽうのいうままになると)

なんだかへんだなとは思いましたが、とにかく先方のいうままになると

(いうやくそくですから、わしはすぐうんてんしゅに、ふるすぴーどではしるように)

いう約束ですから、わしはすぐ運転手に、フル・スピードで走るように

(いいつけました。)

いいつけました。

(それから、どこをどうはしったか、よくもおぼえませんが、わせだだいがくの)

それから、どこをどう走ったか、よくもおぼえませんが、早稲田大学の

(うしろのへんで、あとからおっかけてくるじどうしゃがあることにきづきました。)

うしろのへんで、あとから追っかけてくる自動車があることに気づきました。

(なにがなんだかわからないけれど、わしは、みょうにおそろしくなりましてな。)

なにがなんだかわからないけれど、わしは、みょうにおそろしくなりましてな。

(うんてんしゅにはしれはしれとどなったのですよ。)

運転手に走れ走れとどなったのですよ。

(それからあとは、ごしょうちのとおりです。おはなしをうかがってみると、)

それからあとは、ご承知のとおりです。お話をうかがってみると、

(わしはたったごせんえんのれいきんにめがくれて、まんまとにじゅうめんそうのやつの)

わしはたった五千円の礼金に目がくれて、まんまと二十面相のやつの

(かえだまにつかわれたというわけですね。)

替え玉に使われたというわけですね。

(いやいや、かえだまじゃない。わしのほうがほんもので、あいつこそ)

いやいや、替え玉じゃない。わしのほうがほんもので、あいつこそ

(わしのかえだまです。まるで、しゃしんにでもうつしたように、わしのかおや)

わしの替え玉です。まるで、写真にでもうつしたように、わしの顔や

(ふくそうを、そっくりまねやがったんです。)

服装を、そっくりまねやがったんです。

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