怪人二十面相60

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問題文
(ぞくは、ふきんからかけつけた、ふたりのおまわりさんと、とつかのこうばんの)
賊は、付近からかけつけた、ふたりのおまわりさんと、戸塚の交番の
(わかいおまわりさんと、さんにんにまわりをとりまかれ、しかりつけられて、)
若いおまわりさんと、三人にまわりをとりまかれ、しかりつけられて、
(もうていこうするちからもなくうなだれています。)
もう抵抗する力もなくうなだれています。
(「にじゅうめんそうがつかまった!」)
「二十面相がつかまった!」
(「なんて、ふてぶてしいつらをしているんだろう。」)
「なんて、ふてぶてしいつらをしているんだろう。」
(「でも、あのおまわりさん、えらいわねえ。」)
「でも、あのおまわりさん、えらいわねえ。」
(「おまわりさん、ばんざーい。」)
「おまわりさん、ばんざーい。」
(ぐんしゅうのなかにまきおこるかんせいのなかを、けいかんとぞくとは、ついせきしてきたくるまに)
群衆の中にまきおこる歓声の中を、警官と賊とは、追跡してきた車に
(どうじょうして、けいしちょうへといそぎます。かんかつのけいさつしょにりゅうちするには、あまりに)
同乗して、警視庁へと急ぎます。管轄の警察署に留置するには、あまりに
(おおものだからです。)
大物だからです。
(けいしちょうにとうちゃくして、ことのしだいがはんめいしますと、ちょうないにはどっとかんせいが)
警視庁に到着して、ことのしだいが判明しますと、庁内にはドッと歓声が
(わきあがりました。てをやいていたきたいのきょうぞくが、なんとおもいがけなく)
わきあがりました。手をやいていた希代の凶賊が、なんと思いがけなく
(つかまったことでしょう。これというのも、いまにしけいじのきびんなしょちと、)
つかまったことでしょう。これというのも、今西刑事の機敏な処置と、
(とつかしょのわかいけいかんのふんせんのおかげだというので、ふたりはどうあげされん)
戸塚署の若い警官の奮戦のおかげだというので、ふたりは胴あげされん
(ばかりのにんきです。)
ばかりの人気です。
(このほうこくをきいて、だれよりもよろこんだのは、なかむらそうさかかりちょうでした。)
この報告を聞いて、だれよりも喜んだのは、中村捜査係長でした。
(かかりちょうははしばけのじけんのさい、ぞくのためにまんまとだしぬかれたうらみを、)
係長は羽柴家の事件のさい、賊のためにまんまと出しぬかれたうらみを、
(わすれることができなかったからです。)
わすれることができなかったからです。
(さっそくしらべしつで、げんじゅうなとりしらべがはじめられました。)
さっそく調べ室で、げんじゅうな取りしらべがはじめられました。
(あいては、へんそうのめいじんのことですから、だれもかおをみしったものがありません。)
相手は、変装の名人のことですから、だれも顔を見知ったものがありません。
(なによりもさきに、ひとちがいでないかどうかをたしかめるために、しょうにんを)
何よりも先に、人ちがいでないかどうかをたしかめるために、証人を
(よびださなければなりませんでした。)
呼びださなければなりませんでした。
(あけちこごろうのじたくにでんわがかけられました。しかし、ちょうどそのとき、)
明智小五郎の自宅に電話がかけられました。しかし、ちょうどそのとき、
(めいたんていは、がいむしょうにでむいて、るすちゅうでしたので、かわりにこばやししょうねんが)
名探偵は、外務省に出むいて、るす中でしたので、かわりに小林少年が
(しゅっとうすることになりました。)
出頭することになりました。
(やがてほどもなく、いかめしいしらべしつに、りんごのようなほおの、)
やがてほどもなく、いかめしい調べ室に、りんごのようなほおの、
(かわいらしいこばやししょうねんがあらわれました。そして、ぞくのすがたをひとめみる)
かわいらしい小林少年があらわれました。そして、賊の姿を一目見る
(やいなや、これこそ、がいむしょうのつじのしとぎめいした、あのじんぶつに)
やいなや、これこそ、外務省の辻野氏と偽名した、あの人物に
(ちがいないとしょうげんしました。)
ちがいないと証言しました。
(「わしがなんぼのもんじゃ」)
「わしがなんぼのもんじゃ」
(「このひとでした。このひとにちがいありません。」)
「この人でした。この人にちがいありません。」
(こばやしくんは、きっぱりとこたえました。)
小林君は、キッパリと答えました。
(「ははは・・・・・・、どうだね、きみ、こどものがんりきにかかっちゃかなわんだろう。)
「ハハハ……、どうだね、きみ、子どもの眼力にかかっちゃかなわんだろう。
(きみが、なんといいのがれようとしたって、もうだめだ。きみは)
きみが、なんといいのがれようとしたって、もうだめだ。きみは
(にじゅうめんそうにちがいないのだ。」)
二十面相にちがいないのだ。」
(なかむらかかりちょうは、うらみかさなるかいとうを、とうとうとらえたかとおもうと、)
中村係長は、うらみかさなる怪盗を、とうとうとらえたかと思うと、
(うれしくてしかたありませんでした。かちほこったように、こういって、)
うれしくてしかたありませんでした。勝ちほこったように、こういって、
(ましょうめんからぞくをにらみつけました。)
真正面から賊をにらみつけました。
(「ところが、ちがうんですよ。こいつあ、こまったことになったな。)
「ところが、ちがうんですよ。こいつあ、こまったことになったな。
(わしは、あいつがゆうめいなにじゅうめんそうだなんて、すこしもしらなかったのですよ。」)
わしは、あいつが有名な二十面相だなんて、少しも知らなかったのですよ。」
(しんしにばけたぞくは、あくまでそらとぼけるつもりらしく、へんなことを)
紳士に化けた賊は、あくまでそらとぼけるつもりらしく、へんなことを
(いいだすのです。)
いいだすのです。
(「なんだって?きみのいうことは、ちっともわけがわからないじゃないか。」)
「なんだって?きみのいうことは、ちっともわけがわからないじゃないか。」
(「わしもわけがわからんのです。すると、あいつがわしにばけてわしを)
「わしもわけがわからんのです。すると、あいつがわしに化けてわしを
(かえだまにつかったんだな。」)
替え玉に使ったんだな。」
(「おいおい、いいかげんにしたまえ。いくらそらとぼけたって、もうその)
「おいおい、いいかげんにしたまえ。いくらそらとぼけたって、もうその
(てにはのらんよ。」)
手には乗らんよ。」
(「いやいや、そうじゃないんです。まあ、おちついて、わしのせつめいを)
「いやいや、そうじゃないんです。まあ、落ちついて、わしの説明を
(きいてください。わしは、こういうものです。けっして、にじゅうめんそう)
聞いてください。わしは、こういうものです。けっして、二十面相
(なんかじゃありません。」)
なんかじゃありません。」