魯迅 狂人日記③

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(し せいざしていると、ちんろうごがめしをはこんできた。)

四 静坐していると、陳老五が飯を運んで来た。

(やさいがひとさら、むしがひとさら。)

野菜が一皿、蒸しが一皿。

(このさかなはめだまはしろくてかたく、くちをぱくりとあけて、)

この魚は眼玉は白くて硬く、口をぱくりと開けて、

(それがちょうどひとをくいたいとおもっているひとたちのようだ。)

それがちょうど人を食いたいと思っている人達のようだ。

(はしをつけてみると、つるつるぬらぬらしてさかなかしらん、ひとかしらん。)

箸をつけてみると、つるつるぬらぬらして魚かしらん、人かしらん。

(そこではらわたぐるみそっくりはきだした。)

そこではらわたぐるみそっくり吐き出した。

(「ろうご、あにきにそういってくれ。)

「老五、アニキにそう言ってくれ。

(おれはきがくさくさしてたまらんからていないをあるこうとおもう」)

乃公は気がくさくさして堪らんから庭内を歩こうと思う」

(ろうごはへんじもせずにでていったが、すぐにかえってきてもんをあけた。)

老五は返事もせずに出て行ったが、すぐに帰って来て門を開けた。

(わたしはみうごきもせずにかれらのてはいをけんきゅうした。)

わたしは身動きもせずに彼等の手配を研究した。

(かれらははなすはずはない。)

彼等は放すはずはない。

(はたしてあにきはひとりのおやじをひっぱってきてぶらぶらあるいてきた。)

果たしてアニキは一人のおやじを引っ張って来てぶらぶら歩いて来た。

(かれのめにはきみわるいひかりがみち、わたしのみやぶりをおそれるように、)

彼の眼には気味悪い光が満ち、わたしの看破りを恐れるように、

(ひたすらあたまをさげてちにむかい、めがねのよこべりからちらりとわたしをながめた。)

ひたすら頭を下げて地に向い、眼鏡の横べりからチラりとわたしを眺めた。

(あにきはいった。 「おまえ、きょうはだいぶいいようだね」)

アニキは言った。 「お前、きょうはだいぶいいようだね」

(「はい」 「きょうはかせんせいにきていただいたから、みてもらいな」)

「はい」 「きょうは何先生に来ていただいたから、見てもらいな」

(「ああそうですか」)

「ああそうですか」

(じっさいわたしはこのおやじがくびきりやくであるのをしらずにいるものか。)

実際わたしはこの親爺が首斬役であるのを知らずにいるものか。

(みゃくをみるのをつけたりにしてにくづきをはかり、)

脈を見るのをつけたりにして肉付を量り、

(そのてがらでいちぶのにくのぶんぱいにあずかろうというのだ。)

その手柄で一分の肉の分配にあずかろうというのだ。

など

(おれはもうおそれはしない。にくこそくわぬが、きもたまはおまえたちよりよっぽどふといぞ。)

乃公はもう恐れはしない。肉こそ食わぬが、胆魂はお前達よりよっぽど太いぞ。

(ふたつのげんこをさしだしてかれがどんなふうにしごとをするかみてやろう。)

二つの拳固を差出して彼がどんな風に仕事をするか見てやろう。

(おやじはすわっていながらめをとじて、しばらくさすってみたり、)

親爺は坐っていながら眼を閉じて、しばらくさすってみたり、

(またぽかんとながめてみたり、そうしておにのめたまをむきだし)

またぽかんと眺めてみたり、そうして鬼の眼玉を剥き出し

(「あんまりいろんなことをかんがえちゃいけません。)

「あんまりいろんな事を考えちゃいけません。

(しずかにしているとじきによくなります。」)

静かにしているとじきに好くなります。」

(ふん、あんまりいろんなことかんがえちゃいけません、しずかにしているとふとりまさあ!)

フン、あんまりいろんな事考えちゃいけません、静かにしていると肥りまさあ!

(かれらはよけいにたべるんだからいいようなもののおれにはなんのいいことがある。)

彼等は余計に食べるんだからいいようなものの乃公には何のいいことがある。

(じきに「よくなります」もないもんだ。)

じきに「好くなります」もないもんだ。

(このおおぜいのひとたちはひとをくおうとおもってかげになりひなたになり、)

この大勢の人達は人を食おうと思って陰になり陽になり、

(こだてになるべきほうほうをかんがえて、なかなかてっとりばやくかたづけてしまわない、)

小盾になるべき方法を考えて、なかなか手取り早く片附けてしまわない、

(ほんとうにおわらいぐさだ。)

本当にお笑草だ。

(おれはがまんしきれなくなっておおごえあげてわらいだし、すこぶるゆかいになった。)

乃公は我慢しきれなくなって大声上げて笑い出し、すこぶる愉快になった。

(じぶんはよくしっている。このしょうせいのなかにはぎゆうとしょうきがある。)

自分はよく知っている。この笑声の中には義勇と正気がある。

(おやじとあにきはかおいろをうしなった。おれのゆうきとしょうきのためにちんあつされたんだ。)

親爺とアニキは顔色を失った。乃公の勇気と正気のために鎮圧されたんだ。

(だがこのゆうきがあるためにかれらはますますおれをくいたくおもう。)

だがこの勇気があるために彼等はますます乃公を食いたく思う。

(つまりゆうきにあやかりたいのだ。)

つまり勇気に肖りたいのだ。

(おやじはもんをまたいででるととおくもいかぬうちに「はやくたべてしまいましょう」)

親爺は門を跨いで出ると遠くも行かぬうちに「早く食べてしまいましょう」

(とこごえでいった。あにきはがてんした。さてはおまえがもとなんだ。)

と小声で言った。アニキは合点した。さてはお前が元なんだ。

(このいちだいはっけんはいがいのようだがけっしていがいではない。)

この一大発見は意外のようだが決して意外ではない。

(なかまをあつめておれをくおうとするのは、とりもなおさずおれのあにきだ。)

仲間を集めて乃公を食おうとするのは、とりもなおさず乃公のアニキだ。

(ひとをくうのはおれのあにきだ! おれはひとくいのきょうだいだ!)

人を食うのは乃公のアニキだ! 乃公は人食の兄弟だ!

(おれじしんはひとにくわれるのだが、それでもやっぱりひとくいのきょうだいだ!)

乃公自身は人にくわれるのだが、それでもやっぱり人食の兄弟だ!

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