魯迅 狂人日記⑤
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | りく | 5822 | A+ | 6.0 | 96.9% | 620.3 | 3731 | 119 | 59 | 2024/11/07 |
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問題文
(はち じっさいこのしゅのどうりはいまになってみると、かれらもわかりきっているのだ。)
八 実際この種の道理は今になってみると、彼等もわかり切っているのだ。
(ひょっくりひとりのおとこがきた。としごろはにじゅうぜんごで、)
ひょっくり一人の男が来た。年頃は二十前後で、
(にんそうはあまりはっきりしていないが、)
人相はあまりハッキリしていないが、
(かおじゅうにわらいをうかべてわたしにむかっておじぎをした。)
顔じゅうに笑いを浮かべてわたしに向かってお辞儀をした。
(かれのわらいはほんとうのわらいとはみえない。わたしはきいてみた。)
彼の笑いは本当の笑いとは見えない。わたしは訊いてみた。
(「ひとくいのしごとはうまくいったかね」かれはやっぱりわらいながらはなした。)
「人食いの仕事は旨く行ったかね」彼はやっぱり笑いながら話した。
(「がきんねんじゃあるまいし、ひとをくうことなどできやしません」)
「餓饉年じゃあるまいし、人を食うことなど出来やしません」
(わたしはかれがなかまであることにすぐにきがついた。ひとをくうのをよろこぶのだろうと)
わたしは彼が仲間であることにすぐに気がついた。人を食うのを喜ぶのだろうと
(おもうと、ゆうきひゃくばいしてむりにもきいてやろうとおもう。 「うまくいったかえ」)
思うと、勇気百倍して無理にも訊いてやろうと思う。 「うまく行ったかえ」
(「そんなことをきいてどうするんだ。おまえはほんとうにわかるのかね。じょうとうをいって)
「そんなことを訊いてどうするんだ。お前は本統わかるのかね。冗当を言って
(いるんじゃないかな。きょうはたいそういいてんきだよ」)
いるんじゃないかな。きょうは大層いい天気だよ」
(てんきもいいしつきもあかるい。だがおれはおまえにきくつもりだ。)
天気もいいし月も明るい。だが乃公はお前に訊くつもりだ。
(「うまくいったかえ」かれはいけないとおもっているのだろう。)
「うまく行ったかえ」彼はいけないと思っているのだろう。
(あいまいのへんじをした。「いけ・・・」「いけない?)
あいまいの返辞をした。「いけ・・・」「いけない?
(あいつらはもうくってしまったんだろう」「ありもしないこと」)
あいつ等はもう食ってしまったんだろう」「ありもしないこと」
(「ありもしないこと?ろうそんではげんざいたべているし、ほんにもちゃんとかいてある。)
「ありもしないこと?狼村では現在たべているし、本にもちゃんと書いてある。
(できたてのほやほやだ」かれはかおいろをかえててつのようにあおくなり)
出来立てのほやほやだ」彼は顔色を変えて鉄のように青くなり
(めをみはっていった。「あるかもしれないが、まあそんなものさ・・・」)
目を瞠って言った。「あるかもしれないが、まあそんなものさ・・・」
(「まあそんなものだ。じゃうまくいったんだね」)
「まあそんなものだ。じゃ旨く行ったんだね」
(「わたしはおまえとそんなはなしをするのはいやだ。どうしてもおまえはまちがっている。)
「わたしはお前とそんな話をするのはいやだ。どうしてもお前は間違っている。
(はなしをすればするほどまちがってくる」わたしはとびあがってめをあけると、)
話をすればするほど間違って来る」わたしは跳び上って眼を開けると、
(からだじゅうがあせびっしょりになり、そのひとのすがたはみえない。としごろはわたしの)
体じゅうが汗びっしょりになり、その人の姿は見えない。年頃はわたしの
(あにきよりもずっとわかいがこいつはてっきりなかまのひとりにちがいない。)
アニキよりもずっと若いがこいつはテッキリ仲間の一人に違いない。
(きっとかれらのおやたちがかれにおしえて、そうしてまたかれのこどもにつたえるのだろう。)
きっと彼等の親達が彼に教えて、そうしてまた彼の子供に伝えるのだろう。
(だからちいさなこどもらがみなにくらしげにわたしをみる。)
だから小さな子供等が皆憎らしげにわたしを見る。
(く じぶんでひとをくえば、ひとからくわれるおそれがあるので、)
九 自分で人を食えば、人から食われる恐れがあるので、
(みなうたがいぶかいめつきをしてかおとのぞきあう。このこころさえのぞきされば)
皆疑い深い目付をして顔と覗き合う。この心さえ除き去れば
(あんしんしてしごとができ、みちをあるいてもめしをくってもすいみんしても、)
安心して仕事が出来、道を歩いても飯を食っても睡眠しても、
(なんとほがらかなものであろう。ただこのいっぽんのしきい、ひとつのせきしょがあればこそ、)
何と朗らかなものであろう。ただこの一本の閾、一つの関所があればこそ、
(かれらはおやこ、きょうだい、ふうふ、ほうゆう、してい、きゅうてき、おのおのあいしらざるものまでも)
彼等は親子、兄弟、夫婦、朋友、師弟、仇敵、各々相識らざる者までも
(みないちだんにかたまって、たがいにすすめあいたがいにけんせいしあい、)
皆一団にかたまって、互に勧め合い互に牽制し合い、
(しんでもこのいっぽをまたぎさろうとはしない。)
芯でもこの一歩を跨ぎ去ろうとはしない。
(じゅう あさはやくあにきのところへいってみると、かれはどうもんのそとでそらをながめていた。)
十 朝早くアニキの所へ行ってみると、彼は堂門の外で空を眺めていた。
(わたしはかれのうしろからちかよってもんぜんにたちふさがり、いともしずかにいともしたしげに)
わたしは彼の後ろから近寄って門前に立ち塞がり、いとも静かにいとも親しげに
(かれにむかっていった。「にいさん、わたしはあなたにいいたいことがある」)
彼に向って言った。「兄さん、わたしはあなたに言いたいことがある」
(「おまえ、いってごらん」かれはかおをこちらにむけてあたまをうごかした。)
「お前、言ってごらん」彼は顔をこちらに向けて頭を動かした。
(「わたしはふたつみっつはなしをすればいいのだが、うまくいいだせるかしら。)
「わたしは二つ三つ話をすればいいのだが、旨く言い出せるかしら。
(にいさん、たいていはじめのやばんじんはみなひとをくっていた。あとになるとこころのもちかたが)
兄さん、大抵初めの野蛮人は皆人を食っていた。後になると心の持ち方が
(ちがってきて、なかにはひとをくわぬものもあり、そのひとたちはたちのいいほうでにんげんになり)
違って来て、中には人を食わぬ者もあり、その人達は質のいい方で人間に成り
(かわり、しんのにんげんになりかわった。またあるものはむしけらどうようにいつまでも)
変わり、真の人間に成り変わった。またある者は虫けら同様にいつまでも
(ひとをくっていた。またあるものはさかなとりやさるにへんかし、それからにんげんに)
人を食っていた。またある者は魚鳥や猿に変化し、それから人間に
(なりかわった。またあるものはよいことをしようとはおもわず、)
成り変わった。またある者は善いことをしようとは思わず、
(いまでもやはりむしけらだ。このひとをくうひとたちはひとをくわぬひとたちにくらべてみると、)
今でもやはり虫けらだ。この人を食う人達は人を食わぬ人達に比べてみると、
(いかにもいまわしいはずべきものではないか。)
いかにも忌まわしい愧ずべき者ではないか。
(おそらくむしけらがさるにおとるよりももっとはなはだしい。)
おそらく虫けらが猿に劣るよりももっと甚だしい。
(えきががかれのこどもをむしてけっちゅうにくわせたのはずっとむかしのことでだれだって)
易牙が彼の子供を蒸して桀紂に食わせたのはずっと昔のことで誰だって
(よくわからぬが、ばんこがてんちをかいびゃくしてから、ずっとえきがのじだいまで)
よくわからぬが、盤古が天地を開闢してから、ずっと易牙の時代まで
(こどもをくいつづけ、えきがのこからずっとじょしゃくりんまで、)
子供を食い続け、易牙の子からずっと徐錫林まで、
(じょしゃくりんからろうそんでつかまったおとこまでずっとくいつづけてきたもかもしれない。)
徐錫林から狼村で捉まった男までずっと食い続けて来たもかもしれない。
(きょねんもじょうないではんにんがころされると、ろうしょうやみのひとがかれのちをまんじゅうにしてくった。)
去年も城内で犯人が殺されると、癆症病みの人が彼の血を饅頭にして食った。
(あのひとたちがわたしをくおうとすれば、まったくあなたひとりではほうがえしがつくまい。)
あの人達がわたしを食おうとすれば、全くあなた一人では法返しがつくまい。
(しかしなにもむこうへいってなかまいりをしなければならぬということはあるまい。)
しかし何も向こうへ行って仲間入をしなければならぬということはあるまい。
(あのひとたちがわたしをくえばあなたもまたくわれる。けっきょくなかまどうしのくいあいだ。)
あの人達がわたしを食えばあなたもまた食われる。結局仲間同志の食い合いだ。
(けれどちょっとほうしんをかえてこのばですぐにあらためれば、ひとびとはぶじで、)
けれどちょっと方針を変えてこの場ですぐに改めれば、人々は無事で、
(たといいままでもしきたりがどうあろうとも、)
たとい今までも仕来りがどうあろうとも、
(わたしどもはこんにちとくべつのかいりょうをすることができる。なに、できないとおっしゃるのか。)
わたしどもは今日特別の改良をすることが出来る。なに、出来ないと仰るのか。
(にいさん、あなたがやればきっとできるとおもう。こないだこさくにんがげんそをようきゅう)
兄さん、あなたがやればきっと出来ると思う。こないだ小作人が減租を要求
(したとき、あなたができないとはねつけたように」)
した時、あなたが出来ないと撥ね付けたように」
(かれらのひみつをときやぶったころにはかおじゅうがまっさおになった。)
彼等の秘密を解き破った頃には顔じゅうが真青になった。