第四解剖室 スティーヴン・キング 6

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問題文

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(「このおとこをはっけんしたふぉあさむのなかにいしゃがいたんです。)

「この男を発見したフォアサムのなかに医者がいたんです。

(いちぺーじめに、そのいしゃのさいんがありますよ・・・。)

一ページ目に、その医者のサインがありますよ・・・。

(ほら」かみをがさがさいわせるおと。つづいてーー「よりにもよって)

ほら」紙をガサガサ言わせる音。つづいてーー「よりにもよって

(じぇにんぐすですって?どんないしゃかはしっているわ。)

ジェニングスですって?どんな医者かは知っているわ。

(はこぶねがあららとやまのてっぺんにひょうちゃくしたあとで、のあのけんこうしんだんを)

箱舟がアララト山のてっぺんに漂着した後で、ノアの健康診断を

(おこなったいしゃよ」らすてぃにはこのじょーくがりかいできないようだが、)

おこなった医者よ」ラスティにはこのジョークが理解できないようだが、

(それでもわたしのかおのまんまえでばかわらいをあげる。らすてぃのいきが)

それでも私の顔の真ん前で馬鹿笑いをあげる。ラスティの息が

(たまねぎくさい。ちゅうしょくのちょっとしたのこりがか。)

玉ねぎ臭い。昼食のちょっとした残り香か。

(たまねぎのにおいがかぎとれるなら、すなわちこきゅうをしているということだ。)

玉ねぎのにおいが嗅ぎ取れるなら、すなわち呼吸をしているということだ。

(まちがいないよな?ただしーー)

間違いないよな?ただしーー

(そのおもいがさいごまでいきつかないうちに、らすてぃがさらにかおを)

その思いが最後まで行きつかないうちに、ラスティがさらに顔を

(ちかづけてくる。だしぬけに、きぼうがとっぷうとなってふきつけてくる。)

近づけてくる。だしぬけに、希望が突風となって吹き付けてくる。

(らすてぃはなにかをめにしたのだ!なにかをめにして、わたしに)

ラスティは何かを目にしたのだ!何かを目にして、私に

(まうすとぅまうすのじんこうこきゅうをおこなうきにちがいない。)

マウス・トゥ・マウスの人工呼吸をおこなう気に違いない。

(ああ、らすてぃにかみのしゅくふくを!らすてぃと、そのたまねぎくさいいきに)

ああ、ラスティに神の祝福を!ラスティと、その玉ねぎ臭い息に

(かみのしゅくふくあれ!しかし、ばかまるだしのえがおはいささかもへんかしない。)

神の祝福あれ!しかし、バカ丸出しの笑顔はいささかも変化しない。

(らすてぃはわたしのくちにくちをつけてくるどころか、かたてでわたしのあごを)

ラスティは私の口に口をつけてくるどころか、片手で私の顎を

(なでまわすだけ。ついで、おやゆびとほかのよんほんのゆびとであごをさゆうから)

撫でまわすだけ。ついで、親指と他の四本の指とで顎を左右から

(はさみこむ。「こいつはいきてるぞ!」らすてぃはさけぶ。)

挟み込む。「こいつは生きてるぞ!」ラスティは叫ぶ。

(「いきているんだ。これから、まいけるぼるとんふぁんくらぶ)

「生きているんだ。これから、マイケル・ボルトン・ファンクラブ

など

(のだいよんしぶのために、うたをひろうしてくれるぞ!」)

の第四支部のために、歌を披露してくれるぞ!」

(らすてぃはゆびにちからをこめるとーーきょくしょますいやくをうたれたときのような、)

ラスティは指に力をこめるとーー局所麻酔薬を打たれた時のような、

(そこはかとないいたみをかんじるーーわたしのしたあごをじょうげにうごかして、)

そこはかとない痛みを感じるーー私の下あごを上下に動かして、

(はをかちかちとならしはじめる。)

歯をかちかちと鳴らし始める。

(「たとえあのこがわるだとしても、あいつにゃちっともみえてなああい」)

「たとえあの子がワルだとしても、あいつにゃちっとも見えてなああい」

(らすてぃは、おぞましいちょうしっぱずれのこえでうたいはじめる。)

ラスティは、おぞましい調子っぱずれの声で歌い始める。

(このこえをきけば、かのそうるかしゅのぱーしーすれっじも)

この声を聴けば、かのソウル歌手のパーシー・スレッジも

(あたまがはれつしてしまうだろう。)

頭が破裂してしまうだろう。

(「あのこはわるいことしないいいい・・・」)

「あの子は悪いことしないいいい・・・」

(らすてぃのらんぼうなてつきにいたぶられるまま、わたしのくちはかいへいを)

ラスティの乱暴な手つきにいたぶられるまま、私の口は開閉を

(くりかえす。したが、ふあんていなうぉーたーべっどのうえのいぬのしたいのように、)

繰り返す。舌が、不安定なウォーターベッドの上の犬の死体のように、

(はねてはおちてくる。「やめなさい!」)

跳ねては落ちてくる。「やめなさい!」

(じょいがぴしゃりとらすてぃにくぎをさす。ほんきでしょっくをかんじている)

女医がぴしゃりとラスティにくぎを刺す。本気でショックを感じている

(くちょう。らすてぃはこのじょいのしょっくをかんじとったのだろう。)

口調。ラスティはこの女医のショックを感じ取ったのだろう。

(やめるどころか、ますますたのしげにてをうごかしつづける。)

やめるどころか、ますます楽し気に手を動かし続ける。

(いまやらすてぃのゆびは、わたしのほおのにくにくいこんでいる。)

今やラスティの指は、私の頬の肉に食い込んでいる。

(こおりついたわたしのめは、ひたすらうえをみあげているばかり。)

凍り付いた私の眼は、ひたすら上を見上げているばかり。

(そこにじょいがすがたをあらわす。みどりいろのしゅじゅつぎすがたで、くびのまわりにぼうしの)

そこに女医が姿を現す。緑色の手術着姿で、首の周りに帽子の

(ひもをまきつけ、ぼうしそのものは、あにめのしすこきっどのそんぶれろ)

紐を巻き付け、帽子そのものは、アニメのシスコ・キッドのソンブレロ

(よろしくせなかにたらしている。みじかいちゃいろのかみは、)

よろしく背中に垂らしている。短い茶色の髪は、

(ひたいからうしろにながしてある。かおだちはととのっているが、)

ひたいからうしろに流してある。顔立ちは整っているが、

(いかめしいふんいきもあるーーあいらしいというより、)

いかめしい雰囲気もあるーー愛らしいというより、

(うつくしいというけいようがにあうかおだ。じょいはつめのみじかいてで)

美しいという形容が似合う顔だ。女医は爪の短い手で

(らすてぃのからだをつかむと、わたしからひきはがす。)

ラスティの体をつかむと、私から引きはがす。

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