海が呼んだ話 小川未明 ②
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問題文
(「あのひとは、おりていって、せんしつのなかへはいって、さがしたそうだ。)
「あの人は、降りていって、船室の中へ入って、さがしたそうだ。
(けれど、ひとりのしたいもみつからない。おかしいなとおもったが、)
けれど、一人の死体も見つからない。おかしいなと思ったが、
(あがってそのことをほうこくした。すると、いやそんなはずはない。)
上ってそのことを報告した。すると、いやそんなはずはない。
(ふねといっしょにしずんだのだから、せんしつのなかにいるにそういないというので、)
船といっしょに沈んだのだから、船室の中にいるに相違ないというので、
(あのひとは、またうみのそこへもぐったのだ。」)
あの人は、また海の底へもぐったのだ。」
(「おそろしいなあ、おじさん、きみがわるくなかったろうか。」)
「怖ろしいなあ、おじさん、気味が悪くなかったろうか。」
(「みつかったんですか。」と、いっしょに、おとうさんのはなしを)
「見つかったんですか。」と、いっしょに、お父さんの話を
(きいていらしたおかあさんが、いいました。)
聞いていらしたお母さんが、いいました。
(「また、せんしつへはいって、すみからすみまで、かいちゅうらんぷでてらして、)
「また、船室へ入って、すみからすみまで、懐中ランプで照らして、
(さがしたけれど、やはりひとりのしたいもみつからない。)
さがしたけれど、やはり一人の死体も見つからない。
(まったくおかしなことがあるものだとおもって、あきらめてでようとしたとたん、)
まったくおかしなことがあるものだと思って、あきらめて出ようとしたとたん、
(ちょっとうえをみると、はちにんのしたいが、ぴったりとてんじょうについて、)
ちょっと上を見みると、八人の死体が、ぴったりと天じょうについて、
(じっとじぶんのほうをみおろしていた。このときばかりは、さすがに、あのひとも)
じっと自分の方を見下ろしていた。このときばかりは、さすがに、あの人も
(ぎょっとして、もうすこしでうしろへひっくりかえりそうになった。)
ぎょっとして、もうすこしで後へひっくり返りそうになった。
(それから、せんすいぎょうというものが、いやになって、おかでくらしたいというきが)
それから、潜水業というものが、いやになって、陸で暮らしたいという気が
(おこったというはなしなんだよ。」)
起こったという話なんだよ。」
(おとうさんのはなしは、おわりました。きいていたおかあさんも、おねえさんも、せいきちも、)
お父さんの話は、終わりました。聞いていたお母さんも、お姉さんも、清吉も、
(「そうだったでしょうね。」と、そのときの、おじさんのきもちに、)
「そうだったでしょうね。」と、そのときの、おじさんの気持に、
(どうじょうされたのでありました。せいきちは、このことを、おじさんのみせへ)
同情されたのでありました。清吉は、このことを、おじさんの店へ
(あそびにいっても、けっして、くちにはしなかった。)
遊びにいっても、けっして、口にはしなかった。
(おじさんが、そのときのことをおもいだすとわるいとおもったからです。)
おじさんが、そのときのことを思い出すと悪いと思ったからです。
(じてんしゃやのあとへかんぶつやができてから、にかげつばかりたつと、)
自転車屋の後へ乾物屋ができてから、二か月ばかりたつと、
(ゆうちゃんのおじさんは、ふしぎなびょうきにかかりました。)
勇ちゃんの叔父さんは、不思議な病気にかかりました。
(それは、ふいにげんいんのわからぬねつがでて、)
それは、ふいに原因のわからぬ熱が出て、
(てあしがしびれてきかなくなるのでした。とりわけ、にしのそらがゆうやけをする、)
手足がしびれてきかなくなるのでした。とりわけ、西の空が夕焼けをする、
(ひぐれがたにねつがでるというのであります。そして、きんじょのいしゃに)
日暮れ方に熱が出るというのであります。そして、近所の医者に
(みてもらったけれど、なんのびょうきかわからないというのでした。)
見てもらったけれど、なんの病気かわからないというのでした。
(このことが、またきんじょのうわさになったのです。)
このことが、また近所のうわさになったのです。
(「ゆうちゃんのおじさん、きょうびょういんへいったよ。」と、しょうじが、いいました。)
「勇ちゃんの叔父さん、きょう病院へいったよ。」と、正二が、いいました。
(せいきちとしょうじは、がっこうのかえりに、かんぶつやのまえをとおると、)
清吉と正二は、学校の帰りに、乾物屋の前を通ると、
(おじさんが、みせにすわっていました。ふたりは、はいってそばへこしかけました。)
おじさんが、店にすわっていました。二人は、入ってそばへ腰かけました。
(「おじさん、かおいろがわるいね。」「びょういんへいって、みてもらってきたの?」)
「おじさん、顔色がわるいね。」「病院へいって、見てもらってきたの?」
(おじさんは、ふたりのこどものかおをみてわらいながら、)
おじさんは、二人の子供の顔を見て笑いながら、
(「うみが、おれをよぶんだよ、こどものじぶんから、みずをもぐってきたものが、)
「海が、おれを呼ぶんだよ、子供の時分から、水をもぐってきたものが、
(おかへあがりきってしまうとからだがきかなくなっておそろしいことだな。」)
陸へ上りきってしまうと体がきかなくなって怖ろしいことだな。」
(「そんなら、おじさん、またうみへかえるの。」)
「そんなら、おじさん、また海へ帰るの。」
(「ああ、うみへかえって、もぐりたくなった。そうすれば、)
「ああ、海へ帰って、もぐりたくなった。そうすれば、
(からだもじょうぶになるということだ。そうしたら、ふたりともあそびにきな。)
体もじょうぶになるということだ。そうしたら、二人とも遊びにきな。
(はまはかぜがあって、なつはすずしいぜ。えびでもたこでも、)
浜は風があって、夏は涼しいぜ。えびでもたこでも、
(あたらしいさかなをたべさせるから。」「おじさん、このおみせはどうするの。」)
新しい魚を食べさせるから。」「おじさん、このお店はどうするの。」
(「このいえか、またまえのひとたちがきてはいるだろう。)
「この家か、また前の人たちがきて入るだろう。
(やはり、きゅうにまちから、いなかへいっても)
やはり、急に町から、田舎へいっても
(くらしがたたないのだよ。」と、おじさんが、いいました。)
暮らしが立たないのだよ。」と、おじさんが、いいました。
(「そんなら、また、ゆうちゃんとあそべるんだね。」と、しょうじは、)
「そんなら、また、勇ちゃんと遊べるんだね。」と、正二は、
(にっこりしました。)
にっこりしました。
(みせをでると、「ぼく、おじさんにわかれるの、かなしいや。」と、せいきちは、)
店を出でると、「僕、おじさんに別れるの、悲しいや。」と、清吉は、
(あるきながら、しょうじをかえりみて、いいました。)
歩きながら、正二をかえりみて、いいました。
(とんぼが、とんでいました。)
とんぼが、飛んでいました。