風立ちぬ 堀辰雄 ⑤

投稿者ヒマヒマ マヒマヒプレイ回数000
難易度(4.4) 2444打 長文タグ堀辰雄 小説 長文
ジブリの「風立ちぬ」作成に当たり、参考とされた小説です。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 nao 7193 7.3 97.3% 330.3 2443 67 49 2020/11/25
2 おっ 6806 S++ 7.1 94.9% 337.6 2426 128 49 2020/11/26
3 でこ 6463 S 6.6 97.7% 367.9 2433 55 49 2020/12/27
4 うねりん 5878 A+ 6.0 97.0% 400.8 2429 73 49 2020/11/27
5 ぷち 4837 B 4.9 97.8% 494.3 2444 53 49 2020/11/26

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問題文

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(「なにをしていらしゃるの?」)

「何をしていらっしゃるの?」

(わたしのはいごで、びょうにんのすこししゃがれたこえがした。)

私の背後で、病人のすこししゃがれた声がした。

(それがふいにわたしをそんないっしゅのまひしたようなじょうたいからかくせいさせた。)

それが不意に私をそんな一種の麻痺したような状態から覚醒させた。

(わたしはかのじょのほうにはせなかをむけたまま、いかにもなにかほかのことでも)

私は彼女の方には背中を向けたまま、いかにも何か他のことでも

(かんがえていたような、とってつけたようなちょうしで、)

考えていたような、取ってつけたような調子で、

(「おまえのことだの、やまのことだの、それからそこでぼくたちのくらそうとしている)

「お前のことだの、山のことだの、それからそこで僕達の暮らそうとしている

(せいかつのことだのを、かんがえているのさーー」ととぎれとぎれにいいだした。)

生活のことだのを、考えているのさーー」と途切れ途切れに言い出した。

(が、そんなことをいいつづけているうちに、わたしはなんだかほんとうに)

が、そんなことを言い続けているうちに、私はなんだか本当に

(そんなことをいましがたまでかんがえていたようなきがしてきた。)

そんな事を今しがたまで考えていたような気がしてきた。

(そうだ、それからわたしはこんなこともかんがえていたようだ。)

そうだ、それから私はこんなことも考えていたようだ。

(「むこうへいったら、ほんとうにいろいろなことがおこるだろうなあ。)

「向うへいったら、本当にいろいろな事が起るだろうなあ。

(ーーしかしじんせいというものは、おまえがいつもそうしているように、)

ーーしかし人生というものは、お前がいつもそうしているように、

(なにもかもそれにまかせきっておいたほうがいいのだ。ーーそうすればきっと、)

何もかもそれに任せ切って置いた方がいいのだ。ーーそうすればきっと、

(わたしたちがそれをねがおうなどとはおもいもおよばなかったようなものまで、)

私達がそれをねがおうなどとは思いも及ばなかったようなものまで、

(わたしたちにあたえられるかもしれないのだ。ーー」)

私達に与えられるかも知れないのだ。ーー」

(そんなことまでこころのうちでかんがえながら、それにはすこしもじぶんではきがつかずに、)

そんなことまで心の裡で考えながら、それには少しも自分では気がつかずに、

(わたしはかえってなんでもないようにみえるささいないんしょうのほうに)

私はかえって何んでもないように見える些細な印象の方に

(すっかりきをとられていたのだ。ーー)

すっかり気をとられていたのだ。ーー

(そんなにわもはまだほのあかるかったが、きがついてみると、)

そんな庭面はまだほの明るかったが、気がついて見ると、

(へやのなかはもうすっかりうすぐらくなっていた。)

部屋のなかはもうすっかり薄暗くなっていた。

など

(「あかりをつけようか?」わたしはきゅうにきをとりなおしながらいった。)

「明りをつけようか?」私は急に気をとりなおしながら言った。

(「まだつけないでおいてちょうだいーー」)

「まだつけないでおいて頂戴ーー」

(そうこたえたかのじょのこえはまえよりもしゃがれていた。)

そう答えた彼女の声は前よりも嗄れていた。

(しばらくわたしたちはことばもなくていた。)

しばらく私達は言葉もなくていた。

(「わたし、すこしいきぐるしいの、くさのにおいがつよくてーー」)

「私、すこし息ぐるしいの、草のにおいが強くてーー」

(「じゃ、ここもしめておこうね」)

「じゃ、ここも締めて置こうね」

(わたしは、ほとんどかなしげなちょうしでそうおうじながら、)

私は、殆ど悲しげな調子でそう応じながら、

(とびらのにぎりにてをかけて、それをひきかけた。)

扉の握りに手をかけて、それを引きかけた。

(「あなたーー」かのじょのこえはこんどはほとんどちゅうせいてきなくらいにきこえた。)

「あなたーー」彼女の声は今度は殆ど中性的なくらいに聞えた。

(「いま、ないていらしったんでしょう?」)

「いま、泣いていらしったんでしょう?」

(わたしはびっくりしたようすで、きゅうにかのじょのほうをふりむいた。)

私はびっくりした様子で、急に彼女の方をふり向いた。

(「ないてなんかいるものか。ーーぼくをみてごらん」)

「泣いてなんかいるものか。ーー僕を見て御覧」

(かのじょはしんだいのなかからわたしのほうへそのかおをむけようともしなかった。)

彼女は寝台の中から私の方へその顔を向けようともしなかった。

(もううすぐらくってそれとはさだかにみとめがたいくらいだが、)

もう薄暗くってそれとは定かに認めがたい位だが、

(かのじょはなにかをじっとみつめているらしい。)

彼女は何かをじっと見つめているらしい。

(しかしわたしがそれをきづかわしそうにじぶんのめでおってみると、)

しかし私がそれを気づかわしそうに自分の目で追って見ると、

(ただくうをみつめているきりだった。)

ただ空を見つめているきりだった。

(「わかっているの、わたしにも)

「わかっているの、私にも

(ーーさっきいんちょうさんになにかいわれていらしったのが」)

ーーさっき院長さんに何か言われていらしったのが」

(わたしはすぐなにかこたえたかったが、なんのことばもわたしのくちからはでてこなかった。)

私はすぐ何か答えたかったが、何んの言葉も私の口からは出て来なかった。

(わたしはただおとをたてないようにそっととびらをしめながらふたたび、)

私はただ音を立てないようにそっと扉を締めながら再び、

(ゆうぐれかけたにわもをみいりだした。)

夕暮れかけた庭面を見入り出した。

(やがてわたしは、わたしのはいごにふかいためいきのようなものをきいた。)

やがて私は、私の背後に深い溜息のようなものを聞いた。

(「ごめんなさい」かのじょはとうとうくちをきいた。)

「御免なさい」彼女はとうとう口をきいた。

(そのこえはまだすこしふるえをおびていたが、まえよりもずっとおちついていた。)

その声はまだ少しふるえを帯びていたが、前よりもずっと落着いていた。

(「こんなこときになさらないでねーー。)

「こんなこと気になさらないでねーー。

(わたしたち、これからほんとうにいきられるだけいきましょうねーー」)

私達、これから本当に生きられるだけ生きましょうねーー」

(わたしはふりむきながら、かのじょがそっとめがしらにゆびさきをあてて、)

私はふりむきながら、彼女がそっと目がしらに指先をあてて、

(そこにそれをじっとおいているのをみとめた。)

そこにそれをじっと置いているのを認めた。

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