時計のない村3 小川未明

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時計のない村に時計を持ち込んだ者がいた。
日本のアンデルセンといわれる小川未明の童話。

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問題文

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(「このとけいはくるっていない。ひょうじゅんじにあっているのだ。」 と、ひとりのかねもちが)

「この時計は狂っていない。標準時に合っているのだ。」 と、一人の金持ちが

(いいますと、 「このとけいこそあっているのだ。じょうとうのきかいで、まちのとけいに)

いいますと、 「この時計こそ合っているのだ。上等の機械で、町の時計に

(ちゃんとあわしてきたのだ。」 と、ほかのかねもちがいいました。)

ちゃんと合わしてきたのだ。」 と、他の金持ちがいいました。

(ふたりのかねもちは、たがいにじぶんのとけいをただしいといってゆずりませんでした。)

二人の金持ちは、たがいに自分の時計を正しいといって譲りませんでした。

(ちょうど、ふたつのとけいはおごそかなおきてのように、むらのものは、ふたつにわかれて、)

ちょうど、二つの時計は厳かなおきてのように、村のものは、二つに分かれて、

(いっぽうは、こうのかねもちのとけいをただしいといいました。いっぽうは、おつのかねもちのとけいを)

一方は、甲の金持ちの時計を正しいといいました。一方は、乙の金持ちの時計を

(ただしいといいました。 いままで、へいわであったむらが、とけいのために、)

正しいといいました。  いままで、平和であった村が、時計のために、

(ふたつにわかれてしまいました。とけいはかみさまのようになってしまったのです。)

二つに分かれてしまいました。時計は神さまのようになってしまったのです。

(「こんや、6じからあつまる。」 と、いいあわしても、いっぽうのものは、)

「今夜、六時から集まる。」 と、いい合わしても、一方のものは、

(おつのかねもちのとけいが6じになるとかいじょうにあつまりましたが、いっぽうのものは、)

乙の金持ちの時計が六時になると会場に集まりましたが、一方のものは、

(こうのかねもちのとけいが6じにならないのであつまりませんでした。それで、)

甲の金持ちの時計が六時にならないので集まりませんでした。それで、

(30ふんあまりも、ふたつのとけいのじかんがちがっていましたから、まえにあつまったものは)

三十分あまりも、二つの時計の時間が違っていましたから、前に集まったものは

(あとからきたものにたいして、またされたこごとをいいました。 「おれたちは、)

後からきたものに対して、待たされた小言をいいました。 「俺たちは、

(ちゃんと6じにきたのだ。こちらのとけいにくるいはないはずだ。)

ちゃんと六時にきたのだ。こちらの時計に狂いはないはずだ。

(それは、おまえさんたちのとけいがまちがっているからだ。」 と、あとから)

それは、おまえさんたちの時計がまちがっているからだ。」 と、後から

(きたものはいいました。 「いいや、わたしたちのほうのとけいはまちがっていない。)

きたものはいいました。 「いいや、私たちのほうの時計はまちがっていない。

(おまえさんたちのほうのとけいこそまちがっているのだ。」 と、まえにあつまった)

おまえさんたちのほうの時計こそまちがっているのだ。」 と、前に集まった

(ものがいいました。 こうして、とけいによってそうほうがあらそったのです。)

ものがいいました。  こうして、時計によって双方が争ったのです。

(「まってやって、りくつをいわれるようじゃつまらない。さっさとじかんがきたら、)

「待ってやって、理屈をいわれるようじゃつまらない。さっさと時間がきたら、

(しごとをはじめてしまうがいい。」 と、はやいじかんをしんずるくみは、おくれたじかんを)

仕事を始めてしまうがいい。」 と、早い時間を信ずる組は、遅れた時間を

など

(しんずるものにかまわずに、そうだんをすすめるようになりました。)

信ずるものにかまわずに、相談を進めるようになりました。

(こんなようなことで、つねにじかんから、そうほうのあらそいがたえませんでした。)

こんなようなことで、つねに時間から、双方の争いが絶えませんでした。

(そのうちに、ふとしたことから、おつのほうのとけいがこわれてしまいました。)

そのうちに、ふとしたことから、乙のほうの時計が壊れてしまいました。

(いままで、まいにちまわっていたはりが、まったくうごかなくなってしまったのです。)

いままで、毎日まわっていた針が、まったく動かなくなってしまったのです。

(かみさまのように、そのとけいのじかんをしんじていたおつのほうのくみは、そのひから)

神さまのように、その時計の時間を信じていた乙のほうの組は、その日から

(まっくらになったように、まったくじかんというものがわからなくなりました。)

真っ暗になったように、まったく時間というものがわからなくなりました。

(そうかといって、いままで、あらそっていたこうのほうへいって、じかんをきくのもはじと)

そうかといって、いままで、争っていた甲のほうへいって、時間をきくのも恥と

(かんじましたから、 「おれたちには、もうじかんがないのだ。」といって、)

感じましたから、 「俺たちには、もう時間がないのだ。」といって、

(むらのそうだんがあっても、じこくがつねにまとまりませんでした。)

村の相談があっても、時刻がつねにまとまりませんでした。

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