虹猫の話3(完) 宮原晃一郎

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虹色をしたおとぎの国の猫が、雲の国へ冒険するお話

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問題文

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(「うん、こいつはおどろいた。おまえ、そのじゅつをおれにおしえてくれないか。」)

「うん、こいつは驚いた。お前、その術をおれに教えてくれないか。」

(「それはむろんおしえてあげよう。が、まずみこみがあるかないかしけんを)

「それはむろん教えてあげよう。が、まず見こみがあるかないか試験を

(してからでないといけない。おすわんなさい。」 かみなりさまはそこにすわりました。)

してからでないといけない。お坐んなさい。」  雷様はそこに坐りました。

(なないろのにじねこはそのまわりをさんべんまわって、なにやらくちのなかでわけのわからぬことを)

七色の虹猫はそのまわりを三べん廻って、何やら口の中でわけの分らぬことを

(ぶつぶついいました。 「さあ、いってごらん。わたしがいまなにをかんがえているか。」)

ぶつぶつ言いました。 「さあ、言ってごらん。私が今何を考えているか。」

(と、ねこはききました。 おおおとこのかみなりさまはぼんやりして、ねこのかおをみあげていました)

と、猫はききました。 大男の雷様はぼんやりして、猫の顔を見上げていました

(かみなりさまはあんまりりこうではないのです。 「たぶん、おまえはおれがここに)

雷様はあんまり利口ではないのです。 「たぶん、おまえはおれがここに

(ぼんやりすわっているのは、ばかげているとおもっているんだろう。」 「えらい。)

ぼんやり坐っているのは、馬鹿げていると思っているんだろう。」 「えらい。

(たまげた。それじゃしゅぎょうしてものになるみこみはじゅうぶんにある。わたしはまだ)

たまげた。それじゃ修業して物になる見こみは十分にある。私はまだ

(こんなりこうなでしをとったことがない。」 「じゃ、もいちどやってみようか。」)

こんな利口な弟子を取ったことがない。」 「じゃ、も一度やってみようか。」

(かみなりさまは、じぶんがたいへんりこうだとおもったのです。 「よろしい。では、わたしはいまなにを)

雷様は、自分が大へん利口だと思ったのです。 「よろしい。では、私は今何を

(かんがえているかあててごらん。」 かみなりさまは、かしこそうなふりをして、そのちいさな)

考えているか当ててごらん。」  雷様は、賢そうなふりをして、その小さな

(ばかげためで、ぼんやりとにじねこのかおをみました。 「びふてきとたまねぎ。」と)

馬鹿げた目で、ぼんやりと虹猫の顔を見ました。 「ビフテキと玉葱。」と

(かみなりさまはとつぜんいいました。 「これはえらい。」と、ねこはわざとおどろいたように)

雷様は突然言いました。 「これはえらい。」と、猫はわざと驚いたように

(いって、しりもちをつきました。 「すっかりあたった。どうしてそんなことが)

いって、尻もちをつきました。 「すっかり当った。どうしてそんなことが

(わかるのだい。」 「いや、なにね、ふっとこころにおもいついただけさ。」とかみなりさまは)

分るのだい。」 「いや、なにね、ふっと心に思いついただけさ。」と雷様は

(いいました。 ねこはまじめくさって、「あなたはそのさいをこれからそだて)

言いました。  猫はまじめくさって、「あなたはその才をこれから育て

(あげていかなけりゃならんぜ。すばらしいものだ。」 「どうして)

あげて行かなけりゃならんぜ。すばらしいものだ。」 「どうして

(そだてるんだ。」と、かみなりさまはききました。ひとのこころをよむということは、たいへんゆかい)

育てるんだ。」と、雷様はききました。人の心をよむということは、大へん愉快

(なものだとおもったのでした。 「なんでもないさ。」と、ねこは、もうしめたと)

なものだと思ったのでした。 「なんでもないさ。」と、猫は、もうしめたと

など

(おもったので、いよいよでたらめをいいました。「いえへいって、にさんじかん)

思ったので、いよいよ出たら目を言いました。「家へ行って、二三時間

(ねるんだ。それからめがさめてからおちゃをいっぱい、あつくしてのむんだよ。)

寝るんだ。それから目がさめてからお茶を一ぱい、あつくして飲むんだよ。

(しかし、おとなしくじっとしていないとだめだよ。そうさえすれば)

しかし、おとなしくじっとしていないとだめだよ。そうさえすれば

(あしたのあさ、あなたはきっとひとのこころがぞうさなくよめるようになるから。」)

明日の朝、あなたはきっと人の心が雑作なく読めるようになるから。」

(かみなりさまはすぐにもいえへはしっていきたいのでした。けれども、さすがにれいぎだけは)

雷様はすぐにも家へ走って行きたいのでした。けれども、さすがに礼儀だけは

(わすれません。 「おおきにありがとう。だがね、にゃんぷうこせんせい、これを)

忘れません。 「大きにありがとう。だがね、ニャンプウ子先生、これを

(おしえていただいたおれいにはなにをあげましょうか。」 なないろのにじねこはしばらく)

教えていただいたお礼には何を上げましょうか。」  七色の虹猫はしばらく

(かんがえていましたが、 「わたしはちっとばかりいなづまがほしいから、ちょっぴり)

考えていましたが、 「私はちっとばかりいなづまが欲しいから、ちょっぴり

(とください。」 おおおとこのかみなりさまはぽけっとにてをいれて、)

と下さい。」  大男の雷様はポケットに手を入れて、

(「おやすいことだ。それならここにひとたばあるから、これをもっておいで。)

「お安いことだ。それならここに一たばあるから、これを持っておいで。

(ようがあるときには、そのむすんであるひもをとけば、おもしろいようにいなづまが)

用があるときには、その結んである紐を解けば、面白いようにいなづまが

(でるから。」 「どうも、ありがとう。」)

出るから。」 「どうも、ありがとう。」

(そういって、なないろのにじねこはいなづまをひとたばもらい、ふたりはていねいにあくしゅして)

そう言って、七色の虹猫はいなづまを一たば貰い、二人はていねいに握手して

(わかれました。 おおおとこのかみなりさまはおおいそぎでいえへかえると、いいつけられた)

別れました。  大男の雷様は大いそぎで家へ帰ると、言いつけられた

(とおりにしました。それからあとというものは、じぶんはなんでもひとのこころをあてる)

とおりにしました。それから後というものは、自分はなんでも人の心を当てる

(ことができるとしんじています。おかげで、かみなりさまはすっかりおさまりかえって、)

ことができると信じています。おかげで、雷様はすっかりおさまりかえって、

(もうだれにも、べつだんがいをしません。 なないろのにじねこは、いなづまのたばをもって、)

もう誰にも、別だん害をしません。  七色の虹猫は、いなづまの束をもって、

(すぐにおしろへかえってきました。そこにいたひとたちはねこがしてくれたことを)

すぐにお城へ帰って来ました。そこにいた人たちは猫がしてくれたことを

(たいへんよろこんで、くちぐちにおれいをいいました。にじねこもすっかりまんぞくして)

たいへんよろこんで、口々にお礼を言いました。虹猫もすっかり満足して

(いっしゅうかん、くものおみやにいて、それからじぶんのおとぎのくにへかえりました。)

一週間、雲のお宮にいて、それから自分のお伽の国へ帰りました。

(そののち、なにごとがおこったかは、またこのつぎにおはなししましょう。)

そののち、何事が起ったかは、又この次にお話しましょう。

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