透明猫 6(完) 海野十三
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | saty | 4690 | C++ | 4.9 | 94.4% | 603.6 | 3006 | 175 | 44 | 2024/10/01 |
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問題文
(「ああっーー」「きゃあーー」えらいさわぎがたった。 むつさんはいっぺんに)
「ああっ――」「きゃあ――」えらいさわぎが起った。 六さんは一ぺんに
(さけのよいがさめてしまうし、おんなたちはひめいのこえをひきながらそのざしきから)
酒のよいがさめてしまうし、女たちは悲鳴の声をひきながらその座敷から
(にげだした。 なぜ。せいじのぼうしのしたには、なんにもなかった。くびのない)
にげだした。 なぜ。青二の帽子の下には、なんにもなかった。首のない
(せいじが、そこにめいわくそうにうごいているだけだった。 むつさんは、こしを)
青二が、そこにめいわくそうに動いているだけだった。 六さんは、腰を
(ぬかしてしまって、くちをぱくぱくひらくがひとこともいえなかった。 さて、)
ぬかしてしまって、口をぱくぱく開くがひとこともいえなかった。 さて、
(そのよるのさわぎもどうやらかたづいて、むつさんとせいじは、そこをひきあげた。)
その夜のさわぎもどうやら片づいて、六さんと青二は、そこを引きあげた。
(そのときむつさんは、くちどめりょうとして、そのうちへ5まんえんをだした。)
そのとき六さんは、口どめ料として、そのうちへ五万円を出した。
(ふたりはほてるへとまった。 ろくさんはべっどのうえで、せいじにそうだんをかけた。)
二人はホテルへとまった。 六さんはベッドの上で、青二に相談をかけた。
(どうだせいじもとうめいなものなら、とうめいねこのみせものよりも「とうめいにんげんあらわる」の)
どうだ青二も透明なものなら、透明猫の見世物よりも「透明人間あらわる」の
(ほうが、ひとがたくさんあつまるから、せいじがおもいきってみせものになるようにすすめた)
方が、人がたくさん集まるから、青二が思い切って見世物になるようにすすめた
(「いやです。ぼくはいやです」 「ばかだねえ、おまえさんは。こんなすばらしい)
「いやです。ぼくはいやです」 「ばかだねえ、お前さんは。こんなすばらしい
(もうけぐちはまたとないよ。どうやすくみつもってもおくえんのけたのもうけしごとだ。)
儲け口は又とないよ。どうやすく見つもっても億円のけたのもうけ仕事だ。
(それをにがすほうはない。さあ、とうめいにんげんでやってください」 したから)
それをにがす法はない。さあ、透明人間でやってください」 下から
(おがまんばかりに、むつさんはくどいた。しかしせいじは、しょうちしなかった。)
おがまんばかりに、六さんはくどいた。しかし青二は、しょうちしなかった。
(そのよるはそのままとなり、つぎのひのあさがきた。せいじはべっどからおりて)
その夜はそのままとなり、次の日の朝が来た。青二はベッドから下りて
(せのびをしたが、ふと、となりのべっどをみておどろいた。 なんということ)
背のびをしたが、ふと、となりのベッドを見ておどろいた。 なんということ
(だろう。たしかにむつさんとおもわれるじんぶつが、そのべっどのうえにねむっていたので)
だろう。たしかに六さんと思われる人物が、そのベッドの上にねむっていたので
(あるが、かおもてあしももうろうとしていた。そしておおきなふたつのめのたまだけが)
あるが、顔も手足ももうろうとしていた。そして大きな二つの眼の玉だけが
(ひかっていた。むつさんもとうめいにんげんになりつつあるらしい。 さわぎはそのひに)
光っていた。六さんも透明人間になりつつあるらしい。 さわぎはその日に
(ぜんしへひろがった。 それはあっちでもこっちでも、にんげんがかげがうすくなる)
全市へひろがった。 それはあっちでもこっちでも、人間がかげがうすくなる
(じけん、だんだんからだがきえてみえなくなってゆくじけんがはっせいして、おおさわぎと)
事件、だんだんからだが消えて見えなくなってゆく事件が発生して、大さわぎと
(なった。 そういうひとたちは、しらべてみると、みんなまえのひに、)
なった。 そういう人たちは、しらべてみると、みんな前の日に、
(「とうめいねこ」のみせものをみて、そのあやしいねこにさわったものばかりであったが、)
「透明猫」の見世物を見て、そのあやしい猫にさわった者ばかりであったが、
(そういうことがはっきりするには、それからいつかもかかった。 そのあいだに、)
そういうことがはっきりするには、それから五日もかかった。 その間に、
(ぜんしのとうめいにんげんは、ますますかずがふえていった。とうめいになったものがだれかの)
全市の透明人間は、ますますかずがふえていった。透明になった者が誰かの
(からだにさわると、かならずそのひとのからだがやがてもうろうとなってとうめいか)
からだにさわると、かならずその人のからだがやがてもうろうとなって透明化
(することがわかった。つまりでんせんせいがあるのだ。 おおきなきょうふがひろがって)
することが分った。つまり伝染性があるのだ。 大きな恐怖がひろがって
(いった。だが、このさわぎは、じけんはっせいごなのかめにきゅうにかいけつすることとなった。)
いった。だが、このさわぎは、事件発生後七日目に急に解決することとなった。
(というのは、はじめの「とうめいねこ」をつくったはねきはかせというがくしゃが、)
というのは、はじめの「透明猫」をつくった羽根木博士という学者が、
(そのすじへなのりでたからである。 はかせのけんきゅうは、にくたいのとうめいかにあった。)
その筋へ名乗り出たからである。 博士の研究は、肉体の透明化にあった。
(からだを、くうきとおなじはんしゃりつ、くっせつりつをもたせることにあった。はかせは、かびの)
からだを、空気と同じ反射率、屈折率をもたせることにあった。博士は、かびの
(いっしゅが、そういうことにつよいはたらきのあることをはっけんし、じぶんのけんきゅうしつでその)
一種が、そういうことに強い働きのあることを発見し、自分の研究室でその
(かびをばいようしては、いろいろなむしやもるもっとやねこにうえていたのである。)
かびを培養しては、いろいろな虫やモルモットや猫に植えていたのである。
(れいのねこも、まえあしとうしろあしとをそれぞれしばり、かびをうえたちょくごだったが、)
例の猫も、前足と後足とをそれぞれしばり、かびを植えた直後だったが、
(そのあとあしのひもがとけたので、けんきゅうしつからそとへにげだし、がけのしたへおちた。)
その後足のひもがとけたので、研究室から外へにげだし、崖の下へおちた。
(そのときせいじがとおりかかってねこをひろったわけだ。 しかしせいじはねこに)
そのとき青二が通りかかって猫を拾ったわけだ。 しかし青二は猫に
(さわったので、せいじもまたとうめいになった。みせものごやでこのねこにさわったれんちゅうも)
さわったので、青二もまた透明になった。見世物小屋でこの猫にさわった連中も
(みなおなじことだった。はかせは、そのかびをころすくすりをよういしていたので、それを)
みな同じことだった。博士は、そのかびを殺す薬を用意していたので、それを
(ちゅうしゃすることによって、とうめいにんげんたちはみんなもとのふとうめいにもどること)
注射することによって、透明人間たちはみんなもとの不透明にもどること
(ができた。 せいじもいまはうれしくじぶんのいえへもどることができた。)
が出来た。 青二も今はうれしく自分の家へもどることができた。
(むつさんもこころをあらため、もうけをほんとうにやまわけにした。せいじのおかあさんも、)
六さんも心を改め、もうけをほんとうに山わけにした。青二のお母さんも、
(せいじがもどってきたのでおおよろこびであった。のこるもんだいは、はねきはかせの)
青二がもどってきたので大よろこびであった。のこる問題は、羽根木博士の
(けんきゅうのことであるが、はかせはいままではっけんしていなかったこのけんきゅうのけっかを、)
研究のことであるが、博士は今まで発見していなかったこの研究の結果を、
(どういうほうめんにいかしてつかおうかと、いま、かんがえちゅうだそうである。)
どういう方面に活かして使おうかと、今、考え中だそうである。