契りきぬ 山本周五郎 ⑬

投稿者ヒマヒマ マヒマヒプレイ回数588
難易度(3.9) 2995打 長文タグ山本周五郎 小説 長文 文学 文豪
不遇を脱する一心で、ある侍を口説く賭けにのる花街の女の話。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 subaru 6938 S++ 7.3 94.3% 403.1 2974 177 75 2021/11/11
2 berry 6704 S+ 6.9 96.9% 428.2 2965 94 75 2021/11/20
3 ナナンママ 4633 C++ 4.7 97.3% 626.7 2984 80 75 2021/10/24

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問題文

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(しょくじのすんだあとしばらくやすんでから、)

食事の済んだあと暫く休んでから、

(さいじょはほんとうにおなつといっしょにふろへはいった。)

妻女は本当におなつといっしょに風呂へはいった。

(いくたびもじたいしたのであるが、いよまでそばについてすすめるので、)

幾たびも辞退したのであるが、伊代まで側についてすすめるので、

(ついにことわりきれなくなり、おもいきっていわれるとおりにした。)

ついに断わりきれなくなり、思いきって云われるとおりにした。

(ふろへはいってまもなくさいじょがそれとなく)

風呂へはいってまもなく妻女がそれとなく

(じぶんのしたいをながめるのにおなつはきがついた。)

自分の肢体を眺めるのにおなつは気がついた。

(それはたんじゅんなしせんではない、なにかしらさぐるような、)

それは単純な視線ではない、なにかしらさぐるような、

(ためすようなものがちょっかんされた。)

ためすようなものが直感された。

(「さあ、こんどはわたくしがながしてあげましょう」)

「さあ、こんどはわたくしがながしてあげましょう」

(「いいえそんなもったいのうございますから」)

「いいえそんな勿体のうございますから」

(「えんりょはいりませんよ、さあいらっしゃい、)

「遠慮はいりませんよ、さあいらっしゃい、

(いいからそちらへおむきなさいな」)

いいからそちらへお向きなさいな」

(なかばむりやりにせへまわった。)

半ば無理やりに背へまわった。

(「あなたはおからだもいいし、おはだもきめがこまかくておうつくしいのね、)

「あなたはお体もいいし、お肌もきめがこまかくてお美しいのね、

(びょうきなんぞなすったことはないでしょ、)

病気なんぞなすったことはないでしょ、

(ほら、こんなにすべすべして、)

ほら、こんなにすべすべして、

(かたちよくしまっていて、にくらしいようね」)

かたちよく緊っていて、にくらしいようね」

(どういうわけであろう、そのとききゅうにおなつはのどがつまり、)

どういうわけであろう、そのとき急におなつは喉が詰り、

(はげしくこみあげてくるおえつをとめることができなかった。)

激しくこみあげてくる嗚咽を止めることができなかった。

(「おやどうなすって、あなたないていらっしゃるの」)

「おやどうなすって、あなた泣いていらっしゃるの」

など

(さえぐさふじんはびっくりしたのだろう、)

三枝夫人はびっくりしたのだろう、

(てをはなしてこちらをのぞいた。)

手を放してこちらを覗いた。

(そのこえでおなつはじぶんのとつぜんなかんどうのいみがわかった。)

その声でおなつは自分のとつぜんな感動の意味がわかった。

(かのじょははずかしさのあまりりょうてでかおをおさえ、)

彼女は恥かしさのあまり両手で顔を押え、

(なおすすりあげながらきれぎれにこたえた。)

なお啜りあげながらきれぎれに答えた。

(「おゆるしくださいまし、わたくし、こんなにしていただくのは、)

「おゆるし下さいまし、わたくし、こんなにして頂くのは、

(はじめてでございますの、あんまりうれしゅうございまして」)

初めてでございますの、あんまりうれしゅうございまして」

(「ああそうだったの」さいじょはあきらかにこころうたれたようすだった。)

「ああそうだったの」妻女は明らかに心うたれたようすだった。

(けれどもすぐあかるいちょうしにかえり、わざとてあらくせをながした。)

けれどもすぐ明るい調子にかえり、わざと手荒く背をながした。

(「こんなことでよろこんでもらえるならいいわね、)

「こんなことで喜んで貰えるならいいわね、

(うちのむすめにいただいてゆこうかしら、ねえなつさん、)

うちの娘に頂いてゆこうかしら、ねえなつさん、

(あなたわたくしたちのむすめになるきはなくって」)

あなたわたくしたちの娘になる気はなくって」

(「もったいないことをおっしゃいます、)

「勿体ないことをおっしゃいます、

(どうぞもう、おねがいでございますから」)

どうぞもう、お願いでございますから」

(おなつはあいてのきもちがよくわからず、)

おなつは相手の気持がよくわからず、

(そのうえないたりしたはずかしさで、)

そのうえ泣いたりした恥かしさで、

(ふろをでるまでさえぐさふじんのかおがみられなかった。)

風呂を出るまで三枝夫人の顔が見られなかった。

(そのよる、ふうふがかえって、いつもよりはやくねまへさがってから、)

その夜、夫婦が帰って、いつもより早く寝間へさがってから、

(おなつはなかなかねむることができず、)

おなつはなかなか眠ることができず、

(いつまでもいつまでもまじまじとものおもいにふけっていた。)

いつまでもいつまでもまじまじともの思いに耽っていた。

(ふろでじぶんのからだをためすようにみた、)

風呂で自分の体をためすように見た、

(あのさいじょのまなざしはなんのいみだったろう。)

あの妻女のまなざしはなんの意味だったろう。

(いきなりうちのむすめになれなどといったが)

いきなりうちの娘になれなどと云ったが

(それにはなにかわけがあったのか、)

それには何かわけがあったのか、

(それともこちらをからかっただけだろうか。)

それともこちらをからかっただけだろうか。

(すこしもあくいはかんじられなかった。)

少しも悪意は感じられなかった。

(からかってわらうようなふうはみえなかった。)

からかって嗤うようなふうはみえなかった。

(でもそれならあのめはなんだろう。)

でもそれならあの眼はなんだろう。

(あのことばはどういうつもりだったのだろう。)

あの言葉はどういうつもりだったのだろう。

(ずっとふけるまで、おなつはどうどうめぐりをするように、)

ずっと更けるまで、おなつは堂々めぐりをするように、

(おなじことをいつまでもかんがえつづけていた。)

同じことをいつまでも考え続けていた。

(やくそくのひはせまってきた。)

約束の日は迫って来た。

(さんじゅうにちというきげんが、いつかとなりよっかとせまってゆく。)

三十日という期限が、五日となり四日と迫ってゆく。

(おなつはあせりだした、そしてきもちがせいてくるにしたがって、)

おなつはあせりだした、そして気持がせいてくるにしたがって、

(しだいにじしんがなくなり、ふあんな、)

しだいに自信がなくなり、不安な、

(おそれのようなかんじょうがおおきくなった。)

怖れのような感情が大きくなった。

(「みよし」のおんなあるじのいったことはほんとうだ、)

『みよし』の女あるじの云ったことは本当だ、

(あのひとはほかのひととはまるでちがう、)

あのひとはほかのひととはまるで違う、

(じぶんなどにはおよびもつかないことだ。)

自分などには及びもつかないことだ。

(こういうかんがえがだんだんおもくむねをふさぐのである。)

こういう考えがだんだん重く胸を塞ぐのである。

(だがいっぽうではそれにはんすうするきもちもつよくなった。)

だが一方ではそれに反撥する気持もつよくなった。

(いやそんなことはない、ともだちづきあいとはいえ、)

いやそんなことはない、友達づきあいとはいえ、

(「みよし」などへあそびにくるからには、)

『みよし』などへ遊びに来るからには、

(まったくきょうみがないわけではなかろう、)

まったく興味がないわけではなかろう、

(まだうぶなので、じぶんからきかいをつかむことができないだけだ。)

まだ初心なので、自分から機会を把むことができないだけだ。

(そうだ、こっちをみるめつきの、)

そうだ、こっちを見る眼つきの、

(ときにもえるようなはげしさは、たしかにこころひかれているしょうこだ、)

ときに燃えるような激しさは、たしかに心ひかれている証拠だ、

(こっちからとびこんでゆけばいいのだ。)

こっちからとびこんでゆけばいいのだ。

(こんやこそおもいきって、そんなふうにじぶんをけしかけ、)

今夜こそ思いきって、そんなふうに自分を唆しかけ、

(そのときはめをつぶってもとおもうのだが、)

そのときは眼をつぶってもと思うのだが、

(そのあとではきまってけっしんがゆらぎ、)

そのあとではきまって決心がゆらぎ、

(どうしてもおくしてしまうのであった。)

どうしても臆してしまうのであった。

(もういけない、やっぱりごまめのはぎしりだった。)

もういけない、やっぱりごまめの歯ぎしりだった。

(いよいよきげんがあしたというひになって、)

いよいよ期限が明日という日になって、

(おなつはついにこうあきらめた。)

おなつはついにこう諦めた。

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