日本婦道記 春三たび 山本周五郎  ⑤

投稿者ヒマヒマ マヒマヒプレイ回数179
難易度(4.2) 3020打 長文タグ山本周五郎 小説 長文 文学 文豪
伊緒は和地家に嫁いで間もないが、夫・伝四郎が戦に行くことになる。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 おちり 7146 7.4 96.4% 403.3 2991 109 67 2021/03/23
2 nao 6832 S++ 7.0 97.2% 429.7 3022 86 67 2021/03/10
3 HAKU 6752 S++ 7.0 95.9% 428.0 3019 129 67 2021/03/06
4 subaru 6414 S 6.8 93.7% 436.7 3000 199 67 2021/03/09
5 おっ 6413 S 6.8 94.1% 438.9 3000 185 67 2021/03/08

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問題文

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(「はいたしかにしょうちしております」すぎじょはおちついてこたえた、)

「はいたしかに承知しております」すぎ女はおちついて答えた、

(「このうえもないよいよめじょで、)

「このうえもないよい嫁女で、

(わたくしのほうからりべつなどとはもうしかねますけれど、)

わたくしのほうから離別などとは申しかねますけれど、

(おおせのとおりでんしろうとしゅうげんをいたしましてさんじゅうにちたらず、)

仰せのとおり伝四郎と祝言を致しまして三十日足らず、

(いえにはあとをつぐべきいくのすけもおりますことゆえ、)

家には跡を継ぐべき郁之助もおりますことゆえ、

(よめじょのなにきずのつかぬようおひきとりくださいましたら、)

嫁女の名にきずのつかぬようおひきとり下さいましたら、

(そうほうのしあわせとぞんじます」)

双方のしあわせと存じます」

(「それをうかがってあんどした」)

「それをうかがって安堵した」

(げんばはほんとうにかたのにをおろしたというようすだった、)

玄蕃は本当に肩の荷をおろしたというようすだった、

(「なろうことならいちねんもしてとおもうが、)

「なろうことなら一年もしてと思うが、

(でんしろうどのについてあらぬひょうばんもあるおりから、)

伝四郎どのについてあらぬ評判もあるおりから、

(はやしどのごいちぞくのごつごうもあろうとかんがえる、)

林どの御一族のご都合もあろうと考える、

(きょうはこれだけのはなしでおいとまもうすが、)

今日はこれだけの話でおいとま申すが、

(いずれきんじつうちにひどりをきめてごそうだんにまいりましょう」)

いずれ近日うちに日どりをきめてご相談にまいりましょう」

(「なにごともおまかせもうしまする、どうぞよろしくおはからいくださいますよう」)

「なにごともおまかせ申しまする、どうぞよろしくおはからい下さいますよう」

(すぎじょがそうえしゃくをかえしたとき、はじめていおが、)

すぎ女がそう会釈を返したとき、はじめて伊緒が、

(「おまちくださいまし」としずかにいった、)

「お待ち下さいまし」としずかに云った、

(「わたくしそのおはなしはいやでございます」)

「わたくしそのお話はいやでございます」

(「・・・・・」げんばもあにのせいのしんもふいをつかれて)

「・・・・・」 玄蕃も兄の正之進もふいをつかれて

(おどろいたようにふりかえった、)

おどろいたようにふりかえった、

など

(いおはふたりのかおをきっとみすえ、)

伊緒はふたりの顔をきっと見すえ、

(ちからのあるはっきりとしたくちょうでつづけた。)

ちからのあるはっきりとした口調でつづけた。

(「こなたさまはいまでんしろうにあらぬうわさがあるとおおせられました、)

「こなたさまはいま伝四郎にあらぬ噂があると仰せられました、

(いやともうしあげるまえにそれをうかがいたいとぞんじます、)

いやと申上げるまえにそれをうかがいたいと存じます、

(あらぬうわさとはどのようなうわさでございますか」)

あらぬ噂とはどのような噂でございますか」

(「いおなにをもうす、ひかえておらぬか」)

「伊緒なにを申す、ひかえておらぬか」

(せいのしんがきびしくせいしした、するとかのじょはあにのほうへむきなおり、)

正之進がきびしく制止した、するとかの女は兄のほうへ向きなおり、

(「ではあにうえにうかがいます、あらぬうわさとはでんしろうが)

「では兄上にうかがいます、あらぬ噂とは伝四郎が

(せんじょうからにげたということをさしておいでなのでございましょう、)

戦場から逃げたということを指しておいでなのでございましょう、

(それならわたくしもみみにしております」)

それならわたくしも耳にしております」

(そういいかけていおはさっとあおくなった、)

そう云いかけて伊緒はさっと蒼くなった、

(ひざのうえにかさねたてがわなわなとふるえた、)

膝の上にかさねた手がわなわなと震えた、

(かのじょはおさえにおさえていたくちおしさがどっとむねへつきあげ、)

かの女は抑えに抑えていた口惜しさがどっと胸へつきあげ、

(いいかえしたいことばがいちどにのどへあふれだすのをどうしようもなかった。)

云いかえしたい言葉がいちどに喉へ溢れだすのをどうしようもなかった。

(「けれどもそのうわさはたしかなものでしょうか」)

「けれどその噂はたしかなものでしょうか」

(いおはひたとあにのめをみつめながらいった、)

伊緒はひたと兄の眼をみつめながら云った、

(「したいのみあたらぬということが、)

「死躰のみあたらぬということが、

(どのようなじじつのうえにあるのかぞんじませぬ、)

どのような事実の上にあるのか存じませぬ、

(またわたくしはおんなのことゆえせんじょうのありさまもしかとはんだんはできませぬ、)

またわたくしは女のことゆえ戦場のありさまもしかと判断はできませぬ、

(でもあにうえ・・・かっせんというものは、)

でも兄上・・・合戦というものは、

(おばばうちでむしゃおしをするのとはちがうのではございませんか、)

お馬場うちで武者押しをするのとは違うのではございませんか、

(てきもみかたもひっしをきして、じょうるいをくずしやぐらをやき、)

敵も味方も必死を期して、城塁を崩し矢倉を焼き、

(ここをせんどとたたかうばあい、くずれるどせきにうめられるものはございますまいか、)

ここを先途と戦うばあい、崩れる土石に埋められる者はございますまいか、

(やけおちるじょうかくのなかでほねものこさずはいになるものはございませぬか、)

焼け落ちる城郭の中で骨ものこさず灰になる者はございませぬか、

(そのようなものはけっしてないとおっしゃることができますか」)

そのような者は決してないと仰しゃることができますか」

(「・・・・・」おそらくそのようなことはまれでございましょう」)

「・・・・・」 「おそらくそのような事は稀でございましょう」

(いおはけんめいにたかぶるこえをおさえながらつづけた、)

伊緒はけんめいに昂ぶる声を抑えながらつづけた、

(「けれどまれではあっても、ないことではないとぞんじます、)

「けれど稀ではあっても、無いことではないと存じます、

(それがいくさだとぞんじます」)

それが戦だと存じます」

(それがいくさだとおもうといいきったいおのことばに、)

それが戦だと思うと云いきった伊緒の言葉に、

(げんばもせいのしんもわれしらずめをふせた。)

玄蕃も正之進もわれ知らず眼を伏せた。

(いおのあおざめたほおにそのときうつくしくちがみなぎり、)

伊緒の蒼ざめた頬にそのとき美しく血が漲ぎり、

(まゆがあがって、へいじょうとはまるでみちがえるような、)

眉があがって、平常とはまるで見ちがえるような、

(つよいかしゃくのないりんれつなひょうじょうをしめした)

つよい仮借のない凜烈な表情を示した

(そしてやがてこんどはげんばのほうへむかって、)

そしてやがてこんどは玄蕃のほうへむかって、

(「このいえにあととりがあるというおおせですけれど、)

「この家に跡取りがあるという仰せですけれど、

(いくのすけさまはあのようなごびょうしんで、)

郁之助さまはあのような御病身で、

(ふきつなことをもうすようですがかめいをたてとおせるかどうかわかりません、)

不吉なことを申すようですが家名を立てとおせるかどうかわかりません、

(ましておっとのせいしがわからぬというではございませんか、)

まして良人の生死がわからぬというではございませんか、

(わちのいえをたててゆき、ははうえさまのゆくすえをおみとりもうすのは)

和地の家を立ててゆき、姑上さまのゆくすえをおみとり申すのは

(いおのやくめでございます、どうぞそうおぼしめして、)

伊緒のやくめでございます、どうぞそうおぼしめして、

(ふたたびかようなおはなしはごむようにねがいます」)

ふたたびかようなお話はご無用にねがいます」

(それだけいうと、かのじょはしずかにたってつぎのまへさった、)

それだけ云うと、かの女はしずかに立って次の間へ去った、

(そして、はじめてりょうてでおもてをおおいながらむせびあげた。)

そして、はじめて両手で面を掩いながらむせびあげた。

(まだまだいいたりない、もっともっといってやりたい、)

まだまだ云いたりない、もっともっと云ってやりたい、

(そうおもうけれどもいおはまだわかく、)

そう思うけれども伊緒はまだ若く、

(それいじょうにはどういいあらわすすべもしらなかったのである。)

それ以上にはどう云いあらわす術も知らなかったのである。

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