ちくしょう谷 ㉙

投稿者ヒマヒマ マヒマヒプレイ回数781
難易度(4.5) 4770打 長文 長文モードのみタグ山本周五郎 小説 長文 文学 文豪
隼人は罪人が暮らした流人村へ役で赴くことになる。
現在、流人村に罪人はおらず子孫だけが独特な風習で暮らす。
そこには兄の仇の西沢半四郎がいた。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 おちり 7729 8.0 95.9% 583.9 4714 201 81 2021/10/25
2 ュー 7314 7.6 95.9% 624.1 4764 199 81 2021/10/13
3 ♪♪^^ 6928 S++ 7.1 96.3% 660.2 4752 178 81 2021/10/08
4 でこぽん 6495 S 6.6 97.1% 708.0 4738 139 81 2021/12/07
5 pechi 5291 B++ 5.7 92.1% 843.2 4879 417 81 2021/10/11

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問題文

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(「かけはしはいかがでした」としょうないろうじんがきいた、)

「かけはしはいかがでした」と正内老人が訊いた、

(「かけなおしができそうですか」「したみをしてきましたがやれそうです」)

「架け直しができそうですか」「下見をして来ましたがやれそうです」

(とはやとがこたえた、「くらがやけたので、しょくりょうのほきゅうをしなければなりませんから、)

と隼人が答えた、「倉が焼けたので、食糧の補給をしなければなりませんから、

(あしたいってやるつもりです」「おやくにたてるといいのですが」)

明日いってやるつもりです」「お役に立てるといいのですが」

(とろうじんはひくいこえでいった、「ここのにんげんはごめいわくをかけるばかりで、)

と老人は低い声で云った、「ここの人間は御迷惑をかけるばかりで、

(まことにおわびのもうしあげようもございません」)

まことにお詫びの申しあげようもございません」

(「むらのひとたちをこのようにしたのははんのせきにんです」とはやとはこたえた、)

「村の人たちをこのようにしたのは藩の責任です」と隼人は答えた、

(「おんぎょくのことでも、こうちのことでも、じつをいうといくたびも)

「音曲のことでも、耕地のことでも、じつを云うと幾たびも

(なげたくなるのですが、はんのしおきにせきにんがあったことをおもうと、)

投げたくなるのですが、藩の仕置に責任があったことを思うと、

(やはりおよぶかぎりやってみようというきもちになるのです」)

やはり及ぶ限りやってみようという気持になるのです」

(「わたしはしっぱいいたしました」とろうじんがふかいこえでいった、)

「私は失敗致しました」と老人が深い声で云った、

(「こんなことをもうしあげるのはいかがかとおもいますが、)

「こんなことを申上げるのはいかがかと思いますが、

(あさださまもしっぱいなさるかもしれません、そんなことのないように)

朝田さまも失敗なさるかもしれません、そんなことのないように

(いのりますけれども、かんじんなことはしっぱいするかしないかではなく、)

祈りますけれども、肝心なことは失敗するかしないかではなく、

(あなたがげんにそれをなすっている、ということだとおもうのです」)

貴方が現にそれをなすっている、ということだと思うのです」

(ろうじんはそこでことばをきった。じぶんのいったことのいみが、)

老人はそこで言葉を切った。自分の云ったことの意味が、

(そのとおりはやとにりかいされるかどうかをうかがうかのように。)

そのとおり隼人に理解されるかどうかをうかがうかのように。

(そしてはやとがだまってうなずくのをみると、しつれいなことをいってもうしわけがない、)

そして隼人が黙って頷くのを見ると、失礼なことを云って申し訳がない、

(きにさわったらゆるしていただきたい、とじぎをした。)

気に障ったらゆるして頂きたい、と辞儀をした。

(「いや、こちらこそ」とはやとはえしゃくをかえした、)

「いや、こちらこそ」と隼人は会釈を返した、

など

(「こんなじこくにごそくろうをかけてすみません、)

「こんな時刻に御足労をかけて済みません、

(かけはしをなおしたらまたごそうだんにあがります」)

かけはしを直したらまた御相談にあがります」

(「おまちもうしております」といって、ろうじんはそらをあおいだ、)

「お待ち申しております」と云って、老人は夜空を仰いだ、

(「あしたははれるようでございますな」)

「明日は晴れるようでございますな」

(よくちょう、はやとはよじにおきた。ろうじんのいったとおり、まだくらいそらは)

翌朝、隼人は四時に起きた。老人の云ったとおり、まだ暗い空は

(いちめんのほしで、びふうもなかったが、さむさはまふゆのようにきびしく、)

いちめんの星で、微風もなかったが、寒さは真冬のようにきびしく、

(じめんはすっかりこおっていた。さくやのうちにそろえさせておいた、)

地面はすっかり凍っていた。昨夜のうちに揃えさせておいた、

(かけはしにつかうわたりいたは、まっしろにしもをかぶってい、かぞえてみると、)

かけはしに使う渡り板は、まっ白に霜をかぶってい、数えてみると、

(めいじておいたよりじゅうまいもおおくあった。)

命じておいたより十枚も多くあった。

(「あなをこじるものとつちだな」はやとはせんめんをしながらつぶやいた、)

「穴をこじる物と槌だな」隼人は洗面をしながら呟やいた、

(「つちがあればいいが」ちょうしょくのまえに、はやとははかたのおとこおびにほんで)

「槌があればいいが」朝食のまえに、隼人は博多の男帯二本で

(またあてをつくった。つなでからだをしばるだけでは、どうさがじゆうにいかないことが)

股当てを作った。綱で躯を縛るだけでは、動作が自由にいかないことが

(わかったからである。おびにほんでふたつのわをつくり、それをつなのせんたんへ)

わかったからである。帯二本で二つの輪を作り、それを綱の先端へ

(つなぐようにする。わのひとつひとつへあしをいれてからだをつれば、)

繋ぐようにする。輪の一つ一つへ足を入れて躯を吊れば、

(りょうてがつかえるからしごとがらくにできる、とかんがえたのであった。)

両手が使えるから仕事が楽に出来る、と考えたのであった。

(あなをこじるためのかなてこやつちは、こものたちがもっていた。)

穴をこじるための鉄梃や槌は、小者たちが持っていた。

(どうぐるいはくらにあったのでやけたが、それでもおのやておの、のこぎりなど、)

道具類は倉にあったので焼けたが、それでも斧や手斧、鋸など、

(ひつようなしなはたいていそろえることができ、ろくじちょっとすぎにはきどをでかけた。)

必要な品はたいてい揃えることができ、六時ちょっと過ぎには木戸をでかけた。

(にんずうはおかむらしちろうべえにいぬいとうきちろう、まつききゅうのすけとあしがるろくにんで、)

人数は岡村七郎兵衛に乾藤吉郎、松木久之助と足軽六人で、

(べんとうをもったこものがふたりついた。)

弁当を持った小者が二人付いた。

(はれてはいるが、さむけのつよいため、みちはこおっていてすべりやすく、)

晴れてはいるが、寒気の強いため、道は凍っていて滑りやすく、

(おもいいたをはこぶのにかなりくろうした。だいいちのかけはしをわたってから、)

重い板を運ぶのにかなり苦労した。第一のかけはしを渡ってから、

(いたをはこぶくみはわかれて、そのままみちをくだり、はやとらのくみはきのうのはざまをのぼった。)

板を運ぶ組は別れて、そのまま道を下り、隼人らの組は昨日のはざまを登った。

(そして、にほんすぎまでいって、しるしをつけたすぎをきり、)

そして、二本杉までいって、印を付けた杉を伐り、

(しちゅうにするくいをつくっていると、いたをはこんだくみがのぼってきた。)

支柱にする杭を作っていると、板を運んだ組が登って来た。

(はやとはひのあたるところで、つなのさきにまたあてをつないだり、)

隼人は陽の当るところで、綱の先に股当てを繋いだり、

(つちやかなてこをかたからつるように、かわひもでむすんだりした。)

槌や鉄梃を肩から吊るように、革紐で結んだりした。

(「きょうはわたしにやらせてくれませんか」とおかむらしちろうべえがきていった、)

「今日は私にやらせてくれませんか」と岡村七郎兵衛が来て云った、

(「あなたにできることならわたしにもできるでしょう、なにもあなたが)

「貴方に出来ることなら私にも出来るでしょう、なにも貴方が

(ひとりじめにすることはないとおもいますがね」はやとはめもあげなかった。)

一人占めにすることはないと思いますがね」隼人は眼もあげなかった。

(「おまえがばんをのばすことを、こばむけんりはおれにはないそうだが」)

「おまえが番を延ばすことを、拒む権利はおれにはないそうだが」

(とはやとはいった、「おれがばんがしらとしてとうぜんやるべきしごとをするのに、)

と隼人は云った、「おれが番頭として当然やるべき仕事をするのに、

(よけいなくちだしをするけんげんは」「きさまにはない、ですか」)

よけいな口出しをする権限は」「きさまにはない、ですか」

(おかむらはわざとにくたらしいちょうしでいった、「わたしにはどうもあなたが)

岡村はわざと憎たらしい調子で云った、「私にはどうも貴方が

(りんざいかなにかのしゅぎょうそうのようにみえてしようがないんですがね」)

臨済かなにかの修行僧のようにみえてしようがないんですがね」

(はやとはだまっていた。そしえ、おかむらしちろうべえがことばをつごうとすると、)

隼人は黙っていた。そして、岡村七郎兵衛が言葉を継ごうとすると、

(そのでばなをくじくようにいった。「そうひとをおだてないでくれ」)

その出ばなを挫くように云った。「そう人をおだてないでくれ」

(おかむらはくちをつぐみ、それから、ひそめたこえでいった、)

岡村は口をつぐみ、それから、ひそめた声で云った、

(「わたしはときどきあなたのかおを、げんこでおもうさまなぐりつけたくなることがある」)

「私はときどき貴方の顔を、拳固で思うさま殴りつけたくなることがある」

(「どうしてやらないんだ」「まえならやってますよ、しかしいまはだめです、)

「どうしてやらないんだ」「まえならやってますよ、しかしいまはだめです、

(いまのあなたはなぐりかえさないでしょうからね」とおかむらはいった、)

いまの貴方は殴り返さないでしょうからね」と岡村は云った、

(「はんこうのどうじょうで、わたしがけいこをつけてもらっていたころのあなたは、)

「藩校の道場で、私が稽古をつけてもらっていたころの貴方は、

(もっときっぱりとおとこらしかった、けいこのつけかたもきびしくみずぎわだっていたし、)

もっときっぱりと男らしかった、稽古のつけかたもきびしく水際立っていたし、

(おこったときのあなたのめを、みかえすことのできるものはひとりもいなかった、)

怒ったときの貴方の眼を、見返すことのできる者は一人もいなかった、

(ところがいまはまったくちがう、あなたはけっしておこらないし、)

ところがいまはまったく違う、貴方は決して怒らないし、

(きのよわいははおやのようなめでひとをみる、あさださん」おかむらはそこで)

気の弱い母親のような眼で人を見る、朝田さん」岡村はそこで

(もっとこえをひそめた、「いったいあなたはなにをかんがえているんですか」)

もっと声をひそめた、「いったい貴方はなにを考えているんですか」

(はやとははじめてかおをあげた。「にしざわをどうするんです」とおかむらがいった、)

隼人は初めて顔をあげた。「西沢をどうするんです」と岡村が云った、

(「はくじょうしますが、このまえこいけたてわきさんがみえたとき、)

「白状しますが、このまえ小池帯刀さんがみえたとき、

(じつはおふたりのはなしをきいてしまったんです」はやとはめをつむった、)

じつはお二人の話を聞いてしまったんです」隼人は眼をつむった、

(「どういうわけだ」「しりたかったからです」とおかむらはいった、)

「どういうわけだ」「知りたかったからです」と岡村は云った、

(「あなたがばんがしらになってこられるときいたときから、わたしはおよその)

「貴方が番頭になって来られると聞いたときから、私はおよその

(じじょうをさっしていました」「そのはなしはまえにすんでいる」)

事情を察していました」「その話はまえに済んでいる」

(「そのとおりですが、わたしはそのままはしんじなかった、)

「そのとおりですが、私はそのままは信じなかった、

(わたしはあなたがほんしんをかくしているとおもいました」とおかむらはいった、)

私は貴方が本心を隠していると思いました」と岡村は云った、

(「それいらいずっと、わたしはあなたのなさることをゆだんなくみまもっていたんです、)

「それ以来ずっと、私は貴方のなさることをゆだんなく見まもっていたんです、

(そこへこいけさんがこられたので、これはなにかあるとおもうのがとうぜんでしょう」)

そこへ小池さんが来られたので、これはなにかあると思うのが当然でしょう」

(そうおもったのはじぶんひとりではない、にしざわはんしろうもふあんそうなようすで、)

そう思ったのは自分一人ではない、西沢半四郎も不安そうなようすで、

(すきがあればはやとのへやへちかづこうとしていた。そうさせないためもあって、)

隙があれば隼人の部屋へ近づこうとしていた。そうさせないためもあって、

(じぶんはわざとにしざわにみえるように、へやのそとにたって、)

自分はわざと西沢に見えるように、部屋の外に立って、

(ふたりのはなしをきいたのである、とおかむらしちろうべえはいった。)

二人の話を聞いたのである、と岡村七郎兵衛は云った。

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