踊る人形1

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投稿者投稿者桃仔いいね0お気に入り登録
プレイ回数6649難易度(4.2) 5562打 長文 かな 長文モード可
シャーロック・ホームズシリーズ
アーサー・コナンドイルの作品です。句読点以外の起動は省いています。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 降谷零 4162 C 4.5 91.9% 1210.7 5523 484 81 2024/09/29

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問題文

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(ほーむずはだまりこんだまま、そのほそくながいからだをねこぜにして、なんじかんも)

ホームズは黙り込んだまま、その細く長い身体を猫背にして、何時間も

(かがくじっけんしつにむかっていた。なにかひどくいやなにおいのするものを)

化学実験室に向かっていた。何かひどくいやな臭いのするものを

(せいせいしているのだ ふかぶかとうつむくそのさまが、わたしには、ひょろながいかいちょうに)

生成しているのだ―深々とうつむくその様が、私には、ひょろ長い怪鳥に

(みえた。くすんだはいいろのけと、くろいとさかをもったかいちょう だからわとそん と)

見えた。くすんだ灰色の毛と、黒い鶏冠を持った怪鳥―「だからワトソン―」と

(ほーむずがとつぜんくちをひらく。きみは、みなみあふりかのしょうけんへとうしを)

ホームズが突然口を開く。「君は、南アフリカの証券へ投資を

(おもいとどまった。わたしはおどろきのあまりみをふるわせた。このほーむずのふしぎな)

思いとどまった。」私は驚きのあまり身を震わせた。このホームズの不思議な

(ちからになれているとはいえ、どうしてわたしのむねのうちのかんがえにもぐりこめたのか、)

力に慣れているとはいえ、どうして私の胸のうちの考えに潜り込めたのか、

(かいもくけんとうがつかなかった。いったい、どうしてそのことを?と、わたしは)

皆目見当がつかなかった。「いったい、どうしてそのことを?」と、私は

(ききかえす。ほーむずはいすをくるりとまわし、てにしけんかんをもったまま、そのふかく)

聞き返す。ホームズは椅子をくるりと回し、手に試験管を持ったまま、その深く

(くぼんだひとみをおもしろそうにかがやかせるのであった。さあわとそん、ぐうのねも)

くぼんだ瞳を面白そうに輝かせるのであった。「さあワトソン、ぐうの音も

(でまい まったくだ。では、このけんについて、きみにしょうもんを)

出まい」「まったくだ。」「では、この件について、君に証文を

(かいてもらわねば。なぜかね?ごふんごには、きみはきっとひどくかんたんな)

書いてもらわねば。」「なぜかね?」「五分後には、君はきっと『ひどく簡単な

(はなしだなどというからだ。いやいや、そんなことはいわんよ。その、)

話だ』などと言うからだ。」「いやいや、そんなことは言わんよ。」「その、

(わとそんくん。ほーむずはしけんかんをたてかけて、きょうじゅがこうどうでがくせいたちに)

ワトソンくん。」ホームズは試験管を立てかけて、教授が講堂で学生たちに

(こうぎでもするていではなしだした。それぞれぜんごをつなげて、ひとつひとつ)

講義でもするていで話し出した。「それぞれ前後をつなげて、ひとつひとつ

(たんじゅんにかんがえれば、すじみちだったすいりも、けっしてそうむずかしいことではない。)

単純に考えれば、筋道だった推理も、決してそう難しいことではない。

(たとえば、そのようなすいりをしておいて、そのすじのまんなかをすこしむこうへ)

たとえば、そのような推理をしておいて、その筋の真ん中を少し向こうへ

(やって、ききてにそのはじまりとけつろんだけをみせようものなら、ひとをあっと)

やって、聞き手にその始まりと結論だけを見せようものなら、人をあっと

(いわせることができるわけだが、まあ、ほんのこけおどしだ。さよう、)

言わせることができるわけだが、まあ、ほんのこけおどしだ。さよう、

(むずかしいことではない。きみのひだりのひとさしゆびとおやゆびのあいだのすりきれたひふを)

難しいことではない。君の左の人差し指と親指の間のすり切れた皮膚を

など

(かんがえれば、きみがきんこうのかぶのこうにゅうをおもいとどまったとかくしんできる。どういう)

考えれば、君が金鉱の株の購入を思いとどまったと確信できる。」「どういう

(みゃくらくかね。そうおもってとうぜん。だが、ぼくにはそのふかいみゃくらくをてみじかに)

脈絡かね。」「そう思って当然。だが、僕にはその深い脈絡を手短に

(せつめいできる。そこには、ごくたんじゅんなれんさのあいだの、うしなわれたわがある。いち、)

説明できる。そこには、ごく単純な連鎖のあいだの、失われた輪がある。一、

(きみはひだりのひとさしゆびとおやゆびのあいだにちょーくをつけて、さくばんくらぶからかえってきた。)

君は左の人差し指と親指の間にチョークをつけて、昨晩クラブから帰ってきた。

(に、きみはびりやーどのさい、きゅーがすべらないよう、いつもそのぶぶんには)

二、君はビリヤードの際、キューがすべらないよう、いつもその部分には

(ちょーくをつける。さん、きみのびりやーどのあいては、さーすとんだけ。よん、きみは)

チョークをつける。三、君のビリヤードの相手は、サーストンだけ。四、君は

(よんしゅうかんまえ、さーすとんから、あるみなみあふりかのかぶしきについていっかげつきげんの)

四週間前、サーストンから、ある南アフリカの株式について一ヶ月期限の

(おぷしょんをもっているが、できればきみときょうどうこうにゅうしたいともちかけられた、)

オプションを持っているが、できれば君と共同購入したいと持ちかけられた、

(といった。ご、きみのこぎってちょうは、ぼくのじょうのおりたひきだしのなかだが、きみはその)

と言った。五、君の小切手帳は、僕の錠の下りた引き出しの中だが、君はその

(かぎをほしいといっていない。ろく、かくしてきみは、とうしをおもいとどまった。)

鍵を欲しいと言っていない。六、かくして君は、投資を思いとどまった。」

(まったく、ひどいはなしじゃないか!とわたしはさけんだ。むろんね!と、)

「まったく、ひどい話じゃないか!」と私は叫んだ。「無論ね!」と、

(ほーむずがすこしきげんをわるくする。どんなもんだいも、いったんきみにときあかせば、)

ホームズが少し機嫌を悪くする。「どんな問題も、いったん君に解き明かせば、

(みなこどもだましという。だが、ここにいまだとかれぬものがある。これを)

みな子どもだましという。だが、ここにいまだ解かれぬものがある。これを

(どうおもうかね、わとそんくん?ほーむずはいちまいのかみをつくえのうえにほうりだして、)

どう思うかね、ワトソンくん?」ホームズは一枚の紙を机の上に放り出して、

(またかがくのぶんせきのほうにむきなおった。わたしはそれをみておどろいた。かみのうえには、)

また化学の分析の方に向き直った。私はそれを見て驚いた。紙の上には、

(でたらめなしょうけいもじのようなものがかいていたのだ。おい、ほーむず、)

でたらめな象形文字のようなものが書いていたのだ。「おい、ホームズ、

(こどものらくがきかね!とわたしはおおごえでいった。ほう、そうかんがえるかね。)

子どもの落書きかね!」と私は大声で言った。「ほう、そう考えるかね。」

(ではなんだというんだ?まさにそれを、のーふぉーくしゅうりどりんぐそーぷ)

「では何だと言うんだ?」「まさにそれを、ノーフォーク州リドリング・ソープ

(しょうえんのひるとんきゅーびっとしが、しきりにしりたがっている。このなぞかけが)

荘園のヒルトン・キュービット氏が、しきりに知りたがっている。この謎かけが

(けさのだいいちびんできて、ほんにんはそのつぎのれっしゃでくることになっている。)

今朝の第一便で来て、本人はその次の列車で来ることになっている。

(べるのおとだ、わとそん。そのひとだとしても、ぼくはおどろかぬよ。おもおもしいあしどりが)

ベルの音だ、ワトソン。その人だとしても、僕は驚かぬよ。」重々しい足取りが

(かいだんにきこえたかとおもううちに、ひとりのしんしがはいってきた。せがたかく、)

階段に聞こえたかと思ううちに、一人の紳士が入ってきた。背が高く、

(けっしょくもよい、ひげもきれいにそったしんしで、そのすんだめ、けんこうてきなほおは、)

血色も良い、ひげも綺麗に剃った紳士で、その澄んだ目、健康的なほおは、

(べいかーがいのきりのなかからはるかはなれたところでくらすひとをおもわせた。そのしんしが)

ベイカー街の霧の中からはるか離れたところで暮らす人を思わせた。その紳士が

(へやのなかにはいってきたとき、どこか、きつくさわやかですがすがしい、ひがしかいがん)

部屋の中に入ってきたとき、どこか、きつくさわやかですがすがしい、東海岸

(どくとくのかおりがただよってくるようだった。しんしがわれわれふたりとあくしゅをかわし、さて)

独特の香りが漂ってくるようだった。紳士が我々ふたりと握手を交わし、さて

(こしかけようとしたとき、ふしぎなきごうのかかれたかみにめをとめた。)

腰掛けようとしたとき、不思議な記号の書かれた紙に目をとめた。

(わたしがみたあと、つくえのうえにおきっぱなしにしてあったのだ。ああほーむずさん、)

私が見たあと、机の上に置きっぱなしにしてあったのだ。「ああホームズさん、

(これをどうおかんがえですか?としんしはこえをふりしぼる。あなたはきみょうきてれつな)

これをどうお考えですか?」と紳士は声を振り絞る。「あなたは奇妙奇天烈な

(ことがたいへんおすきだそうですが、きっとこれよりきみょうなものはごらんになった)

ことがたいへんお好きだそうですが、きっとこれより奇妙なものはご覧になった

(ことがないでしょう。まえもっておおくりすれば、あらかじめかんがえになられるだろう)

ことがないでしょう。前もってお送りすれば、あらかじめ考えになられるだろう

(とおもったのです。たしかに、いくぶんみょうではあります。とほーむずがいう。)

と思ったのです。」「確かに、いくぶん妙ではあります。」とホームズが言う。

(しょけんでは、こどものいたずらがきのようにもみえる。でたらめなにんぎょうが)

「初見では、子どものいたずら描きのようにも見える。でたらめな人形が

(おおぜいで、かかれたかみのうえをならんでおどっているようでもある。なにゆえ、かくも)

大勢で、書かれた紙の上を並んで踊っているようでもある。なにゆえ、かくも

(いぎょうなおぶじぇを、おもくおかんがえになるのですか?それはわたしじゃないんです、)

異形なオブジェを、重くお考えになるのですか?」「それは私じゃないんです、

(ほーむずさん。その、わたしのつまが。これをみて、つまがそっとうしまして。あれはなにも)

ホームズさん。その、私の妻が。これを見て、妻が卒倒しまして。あれは何も

(いいませんが、めがおびえているのです、ですから、わたしはこれをさいごまで)

言いませんが、目がおびえているのです、ですから、私はこれを最後まで

(しらべたいとおもったのです。ほーむずはかみきれをとりあげて、ひのひかりに)

調べたいと思ったのです。」ホームズは紙切れを取り上げて、日の光に

(すかしてみせた。それはめもちょうからやぶりとったもので、えんぴつでつぎのようなえが)

透かしてみせた。それはメモ帳から破り取ったもので、鉛筆で次のような絵が

(えがかれていた。ほーむずはしばらくのあいだ、それをしらべていたが、やがて)

描かれていた。ホームズはしばらくのあいだ、それを調べていたが、やがて

(ていねいにおりたたみ、じぶんのてちょうのあいだにはさんだ。これはじつにきょうみぶかい、)

丁寧に折りたたみ、自分の手帳のあいだに挟んだ。「これは実に興味深い、

(まれなじけんとなりましょう。ほーむずがいった。)

まれな事件となりましょう。」ホームズが言った。

(ひるとんきゅーびっとさん、おてがみのうちで、にさん、ぐたいてきなことを)

「ヒルトン・キュービットさん、お手紙のうちで、二三、具体的なことを

(かいておいででしたが、このゆうじん、わとそんはかせのためにもういちど)

書いておいででしたが、この友人、ワトソン博士のためにもう一度

(おはなしいただけるとさいわいです。どうもわたしははなしべたでして、そのいらいにんは)

お話いただけると幸いです。」「どうも私は話し下手でして、」その依頼人は

(きんちょうのため、そのかたくおおきなてをもじもじさせながらはなしをはじめた。)

緊張のため、その硬く大きな手をもじもじさせながら話を始めた。

(わかりにくいところは、そのつどおたずねください。さくねん、わたしがけっこんした)

「わかりにくいところは、その都度お訊ねください。昨年、私が結婚した

(ところからはじめましょう いえ、まずそのまえにおみみにいれておきたいのですが、)

ところから始めましょう―いえ、まずその前にお耳に入れておきたいのですが、

(わたしのいえは、けっしてゆうふくではありませんが、ここやくごせいきのあいだはいまの)

私の家は、決して裕福ではありませんが、ここ約五世紀の間は今の

(りどりんぐそーぷにすんでいて、のーふぉーくのあたりではだいいちのきゅうかだと)

リドリング・ソープに住んでいて、ノーフォークのあたりでは第一の旧家だと

(いうことです。さくねんのきねんさいのおり、わたしはろんどんへきて、らっせるすくえあの)

いうことです。昨年の記念祭の折、私はロンドンへ来て、ラッセル・スクエアの

(しゅくはくじょにたいざいしました。それはわたしのきょうくでぼくしをやっているぱーかーさんが)

宿泊所に滞在しました。それは私の教区で牧師をやっているパーカーさんが

(たいざいしていたかんけいからです。そうするとそこに、あめりかのわかいごふじんがいて)

滞在していた関係からです。そうするとそこに、アメリカの若いご婦人がいて―

(ぱとりっくというなまえで えるしぃぱとりっくです。いろいろあってわたしどもは)

パトリックという名前で―エルシィ・パトリックです。いろいろあって私どもは

(しりあい、かえらねばならぬころには、もう、これでもかというくらいにこいに)

知り合い、帰らねばならぬころには、もう、これでもかというくらいに恋に

(おちておりました。それでわたしどもはさっそく、けっこんのてつづきをすませ、ふうふとして)

落ちておりました。それで私どもは早速、結婚の手続きをすませ、夫婦として

(のーふぉーくにかえりました。おかしいとおもわれるでしょう、ほーむずさん。)

ノーフォークに帰りました。おかしいと思われるでしょう、ホームズさん。

(こんなきゅうかのにんげんが、こんなふうにして、あいてのかこもかぞくもしらないままに)

こんな旧家の人間が、こんなふうにして、相手の過去も家族も知らないままに

(けっこんしてしまうなんて...しかし、つまをごらんになり、ひととなりを)

結婚してしまうなんて...しかし、妻をご覧になり、人となりを

(しってくだされば、ごりかいいただけるかとおもいます。とにかくまじめです、)

知ってくだされば、ご理解いただけるかと思います。とにかく真面目です、

(えるしぃは。わたしがたずねさえすれば、つつみかくさずいってくれたとおもっています。)

エルシィは。私が訊ねさえすれば、包み隠さず言ってくれたと思っています。

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