踊る人形4
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問題文
(われわれがきたうぉーるしゃむでげしゃし、いきさきをいうやいなや、えきちょうがわれわれのまえに)
我々が北ウォールシャムで下車し、行き先をいうやいなや、駅長が我々の前に
(はしってきた。ろんどんからおいでのけいさつのかたがたですね?ほーむずのかおに、)
走ってきた。「ロンドンからおいでの警察の方々ですね?」ホームズの顔に、
(とうわくのいろがさす。いったいなにゆえそうおおもいに?じつはさきほど、)
当惑の色がさす。「いったいなにゆえそうお思いに?」「実はさきほど、
(まーてぃんけいぶがのりっじからおこしになったものですから。ですがおいしゃさま)
マーティン警部がノリッジからお越しになったものですから。ですがお医者さま
(でいらっしゃるかもしれませんね。おくさまはまだいきてます さっきうかがった)
でいらっしゃるかもしれませんね。奥さまはまだ生きてます―さっきうかがった
(ところでは。まだまにあいます まあ、いずれくびをくくられるでしょうが...)
ところでは。まだ間に合います―まあ、いずれ首を括られるでしょうが...」
(ほーむずのかおがふあんにかげる。じつはりどりんぐそーぷしょうえんにむかうとちゅうで、)
ホームズの顔が不安にかげる。「実はリドリング・ソープ荘園に向かう途中で、
(なにがおこったのかまだしらないのです。おそろしいじけんですよ。とえきちょうが)
何が起こったのかまだ知らないのです。」「恐ろしい事件ですよ。」と駅長が
(いう。ひるとんきゅーびっとしとそのおくさんがうたれたのです。おくさんが)
言う。「ヒルトン・キュービット氏とその奥さんが撃たれたのです。奥さんが
(だんなさんをうって、それからじぶんもうったというのが、めしつかいのはなしです。)
旦那さんを撃って、それから自分も撃ったというのが、召使いの話です。
(だんなさんのほうはいきがなく、おくさんももうだめでしょう。どうもまったく、)
旦那さんの方は息がなく、奥さんももうだめでしょう。どうもまったく、
(のーふぉーくのきゅうか、めいもんのまつえいだというのに...ほーむずはいちごもはっせず)
ノーフォークの旧家、名門の末裔だというのに...」ホームズは一語も発せず
(ばしゃへかけこみ、それからななまいるいじょうのどうちゅう、けっしてくちをひらかなかった。)
馬車へ駆け込み、それから七マイル以上の道中、決して口を開かなかった。
(わたしは、ほーむずがこれほどらくたんしているのを、そうみたことがない。まちから)
私は、ホームズがこれほど落胆しているのを、そう見たことがない。町から
(くるまにゆられているあいだずっとおちつかないようすで、ちょうかんにただじっとふあんな)
車に揺られているあいだずっと落ち着かない様子で、朝刊にただじっと不安な
(しせんをおとすほーむずを、わたしはよこからながめていた。そしてよそうしたなかでも)
視線を落とすホームズを、私は横からながめていた。そして予想した中でも
(さいあくのけっかにいたっていることがわかったしゅんかんには、ぼうぜんじしつのていであった。)
最悪の結果に至っていることがわかった瞬間には、呆然自失のていであった。
(ざせきにもたれかかり、ほーむずはさきのみえないものおもいにしずむ。もちろんばしゃの)
座席にもたれかかり、ホームズは先の見えない物思いに沈む。もちろん馬車の
(りょうがわには、きょうみぶかいちょうぼうがひろがってはいる。つまり、われわれがいまはしっているのは、)
両側には、興味深い眺望が広がってはいる。つまり、我々が今走っているのは、
(いんぐらんどでも、ゆうすうのでんえんちたいである。まばらなじんかがそのげんざいのじんこうを)
イングランドでも、有数の田園地帯である。まばらな人家がその現在の人口を
(おもわせ、いっぽうで、どちらをむいても、せんとうをもつきょうかいが、みどりひろがるふうけいのなかに)
思わせ、一方で、どちらを向いても、尖塔を持つ教会が、緑広がる風景のなかに
(やがてほっかいのむらさきがかったすいめんが、のーふぉーくのみどりのかいがんせんのむこうに)
やがて北海の紫がかった水面が、ノーフォークの緑の海岸線の向こうに
(いくつもそびえたっている。きゅうひがしあんぐりあおうこくのえいこせいすいをものがたるながめだ。)
いくつもそびえ立っている。旧東アングリア王国の栄枯盛衰を物語るながめだ。
(みえてくる。するとぎょしゃは、むちでじゅもくからつきでているれんがときでできた)
見えてくる。すると御者は、むちで樹木から突き出ている煉瓦と木でできた
(ふたつのはふをさして、あれがりどりんぐそーぷしょうえんですといった。)
二つの破風をさして、「あれがリドリング・ソープ荘園です」と言った。
(ぽるちこがたのげんかんさきへのりつけると、わたしはそのやしきをしょうめんからみやった。)
ポルチコ型の玄関先へ乗り付けると、私はその屋敷を正面から見やった。
(わきにはてにすのできるしばふとくろいものおきごや、だいざつきのひどけいがあり、こんかいの)
わきにはテニスのできる芝生と黒い物置小屋、台座付きの日時計があり、今回の
(ふしぎなじけんをおもいおこさせた。となりでは、くちひげをととのえた、みのこなしの)
不思議な事件を思い起こさせた。隣では、口ひげをととのえた、身のこなしの
(かるいひとりのこがらなおとこが、ちょうどにりんばしゃをおりたところであった。)
軽いひとりの小柄な男が、ちょうど二輪馬車を降りたところであった。
(そのおとこは、のーふぉーくけいさつのまーてぃんけいぶであるとじこしょうかいしたが、)
その男は、ノーフォーク警察のマーティン警部であると自己紹介したが、
(わがとものなをきいたときはかなりおどろいたようすだった。これはほーむずせんせい、)
我が友の名を聞いたときはかなり驚いた様子だった。「これはホームズ先生、
(はんざいはけささんじにおこなわれたばかりなのですが、ろんどんからききつけて)
犯罪は今朝三時に行われたばかりなのですが、ロンドンから聞きつけて
(わたしとどうじにげんばにつくなんて、いったいどうやって?さきをよんだのです。)
私と同時に現場に着くなんて、いったいどうやって?」「先を読んだのです。
(ふせげればとおもいやってきました。ではだいじなしょうこをすでにおもちで。)
防げればと思いやってきました。」「では大事な証拠をすでにお持ちで。
(わからんのですよ、ふたりはたいへんむつまじいふうふだとひょうばんなので。)
わからんのですよ、ふたりはたいへんむつまじい夫婦だと評判なので。」
(しょうこといっても、おどるにんぎょうがあるのみです。とほーむずはこたえ、いずれ)
「証拠と言っても、踊る人形があるのみです。」とホームズは答え、「いずれ
(ごせつめいにおよびましょう。なんにせよ、このひげきにはておくれですが、せいぎがおこなわれる)
ご説明に及びましょう。何にせよ、この悲劇には手遅れですが、正義が行われる
(ためにも、いまもっているちしきをかつようしたいとおもいます。けいぶのおきもちは、)
ためにも、今持っている知識を活用したいと思います。警部のお気持ちは、
(そうさはきょうどう、べつべつ、どちらがよろしいです?いっしょにやらせていただける)
捜査は共同、別々、どちらがよろしいです?」「一緒にやらせていただける
(なんて、とてもこうえいです、ほーむずせんせい。けいぶはねついをこめていった。)
なんて、とても光栄です、ホームズ先生。」警部は熱意を込めて言った。
(ぐずぐずせず、さっそくききとりとていないのそうさをはじめましょう。)
「ぐずぐずせず、早速聞き取りと邸内の捜査を始めましょう。」
(まーてぃんけいぶはものわかりもよく、わがゆうじんをじゆうにやらせてくれ、ただ)
マーティン警部は物わかりもよく、我が友人を自由にやらせてくれ、ただ
(そのけっかをみまもるだけでまんぞくのようだった。じもとのいしゃであるしらがのろうじんが、)
その結果を見守るだけで満足のようだった。地元の医者である白髪の老人が、
(ちょうどひるとんきゅーびっとふじんのへやからおりてきた。そのはなしによれば、)
ちょうどヒルトン・キュービット夫人の部屋から降りてきた。その話によれば、
(きずはふかいがいのちにべつじょうはないとのこと。たまがひたいをわっており、いしきをとりもどすには)
傷は深いが命に別状はないとのこと。弾が額を割っており、意識を取り戻すには
(しばらくじかんがかかるそうだ。だれかにうたれたのか、かのじょがじぶんでうったのか、)
しばらく時間がかかるそうだ。誰かに撃たれたのか、彼女が自分で撃ったのか、
(いしゃははっきりとしたしょけんをのべなかった。しかししきんきょりからはっぽうされた)
医者ははっきりとした所見を述べなかった。しかし至近距離から発砲された
(ことはたしかだった。しつないにはけんじゅうがいっちょうだけあり、だんそうがふたつ)
ことは確かだった。室内には拳銃が一丁だけあり、弾倉がふたつ
(からになっていた。ひるとんきゅーびっとしはしんぞうをうちぬかれていた。)
空になっていた。ヒルトン・キュービット氏は心臓を撃ち抜かれていた。
(はんだんしがたいのは、だんながつまをうってからじさつしたのか、それともつまが)
判断しがたいのは、旦那が妻を撃ってから自殺したのか、それとも妻が
(はんにんなのか、ということだ。なぜなら、りヴぉるヴぁはふたりのあいだのゆかに)
犯人なのか、ということだ。なぜなら、リヴォルヴァはふたりのあいだの床に
(おちていたからである。いたいはそのまま?とほーむずはいしゃにたずねた。)
落ちていたからである。「遺体はそのまま?」とホームズは医者に訊ねた。
(はい、おくさんのほかはなにも。けがにんをゆかのうえにほうってはおけませんからの。)
「はい、奥さんのほかは何も。けが人を床の上に放ってはおけませんからの。」
(せんせいはいつごろおいでです?よじですな。だれかといっしょに?ええ、)
「先生はいつ頃おいでです?」「四時ですな。」「誰かと一緒に?」「ええ、
(そこのおまわりと。で、なにもふれていない。そうですとも。けんめいな)
そこのお巡りと。」「で、何も触れていない。」「そうですとも。」「懸命な
(しょちです。だれによばれました?じょちゅうのそーんだずです。そのおんなが)
処置です。誰に呼ばれました?」「女中のソーンダズです。」「その女が
(だいいちはっけんしゃですか?そのおんなと、すいじをやっとるきんぐのおかみです。)
第一発見者ですか?」「その女と、炊事をやっとるキングのおかみです。」
(ふたりはいまどこに?だいどころじゃないかの。では、さっそくふたりのはなしを)
「ふたりは今どこに?」「台所じゃないかの。」「では、早速ふたりの話を
(うかがわねば。かしのいたかべとたかいまどのあるふるいひろまが、ちょうしゅのばしょに)
うかがわねば。」樫の板壁と高い窓のある古い広間が、聴取の場所に
(あてられた。こふうなおおがたのいすにほーむずはこしかけ、そのやつれたかおにするどい)
あてられた。古風な大型の椅子にホームズは腰掛け、そのやつれた顔に鋭い
(がんこうをひからせる。わたしはそのめに、ついにすくえなかったいらいにんにむくいるまでは、)
眼光を光らせる。私はその目に、ついに救えなかった依頼人に報いるまでは、
(いのちをかけてもそうさにのぞむというけついのいろをよみとった。そこへ、みだしなみの)
命をかけても捜査にのぞむという決意の色を読み取った。そこへ、身だしなみの
(よいまーてぃんけいぶ、しらがのろういし、わたし、ぼんやりしたじゅんさが、みょうなどうせきじん)
よいマーティン警部、白髪の老医師、私、ぼんやりした巡査が、妙な同席人
(としてくわわるのだった。そのふたりのおんなはわかりやすくはなしてくれた。)
として加わるのだった。そのふたりの女はわかりやすく話してくれた。
(ふたりはなにかばーんというおとにめをさましたが、いっぷんほどしてさらにもういっぱつが)
ふたりは何かバーンという音に目を覚ましたが、一分ほどしてさらにもう一発が
(きこえた。ふたりはとなりあわせのへやでねており、きんぐのおかみが)
聞こえた。ふたりは隣り合わせの部屋で寝ており、キングのおかみが
(そーんだずのへやへかけこんだ。そしてふたりがいっしょにかいだんをおりると、)
ソーンダズの部屋へかけこんだ。そしてふたりが一緒に階段を下りると、
(しょさいのとびらがあいていて、ろーそくがいっぽん、たくじょうにともっていた。そしてふたりの)
書斎の扉が開いていて、ローソクが一本、卓上にともっていた。そしてふたりの
(やといぬしが、うつぶせになってへやのまんなかにたおれていた。いきはなかった。)
雇い主が、うつぶせになって部屋の真ん中に倒れていた。息はなかった。
(まどのそばにそのつまがうずくまっており、かべにあたまをもたせかけていた。じゅうしょうで)
窓のそばにその妻がうずくまっており、壁に頭をもたせかけていた。重傷で
(かおじゅうちでまっかだった。ぜいぜいいきをするだけで、なにもいえないじょうたい)
顔じゅう血で真っ赤だった。ぜいぜい息をするだけで、何も言えない状態
(だった。しつないはもちろん、ろうかにもけむりがじゅうまんし、かやくのにおいがした。へやのまどは)
だった。室内はもちろん、廊下にも煙が充満し、火薬の臭いがした。部屋の窓は
(たしかにしめられて、うちがわからかぎもかかっていた。ふたりのおんなは、このてんにかんして)
確かに閉められて、内側から鍵もかかっていた。ふたりの女は、この点に関して
(じしんをもってほしょうした。ふたりはすぐにいしゃとちゅうざいしょにひとをやって、それから)
自信をもって保証した。ふたりはすぐに医者と駐在所に人をやって、それから
(うまばんとてつだいのしょうねんのてをかりて、ふしょうしたおんなしゅじんをじしつへうつした。かのじょと)
馬番と手伝いの少年の手を借りて、負傷した女主人を自室へ移した。彼女と
(そのおっとは、いったんはとこについている。おんなのほうはふだんぎだが おとこのほうは)
その夫は、いったんは床についている。女の方は普段着だが―男の方は
(ねまきのうえに、どれっしんぐがうんをかさねていた。しょさいのなかはいっさいうごかされたけいせきが)
寝間着の上に、化粧着を重ねていた。書斎の中は一切動かされた形跡が
(なかった。ふたりのしるかぎり、ふうふのあいだにいさかいのあったためしはなく、)
なかった。ふたりの知る限り、夫婦のあいだにいさかいのあったためしはなく、
(ふたりはなかむつまじいとしかおもえなかった。いじょうのことはじょちゅうたちのしょうげんの)
ふたりは仲むつまじいとしか思えなかった。以上のことは女中たちの証言の
(たいようであるが、まーてぃんけいぶにこたえたことばでは、とびらというとびらはすべてうちがわから)
大要であるが、マーティン警部に答えた言葉では、扉という扉はすべて内側から
(しっかりとかぎがかけられてあって、だれかがいえのなかからにげだしたはずはない、)
しっかりと鍵がかけられてあって、誰かが家の中から逃げ出したはずはない、
(とのことであった。それからほーむずのといにたいしては、かやくのにおいがしたのは)
とのことであった。それからホームズの問いに対しては、火薬の臭いがしたのは
(いちばんうえのじぶんたちのへやをとびだしたときであった、とこたえた。)
一番上の自分たちの部屋を飛び出したときであった、と答えた。
(このじじつを、よくおぼえておいてください。とほーむずはそうさなかまにいった。)
「この事実を、よく覚えておいてください。」とホームズは捜査仲間に言った。