踊る人形6

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シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

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問題文

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(そのしょうねんがしゅっぱつすると、つぎにしゃーろっくほーむずはめしつかいたちにしじを)

その少年が出発すると、次にシャーロック・ホームズは召使いたちに指示を

(あたえた。もしひるとんきゅーびっとしをたずねてくるものがあっても、けっして)

与えた。もしヒルトン・キュービット氏を訪ねて来る者があっても、決して

(そのようだいをしらせてはならないこと、そしてそのものをさっそくおうせつまへ)

その容態を知らせてはならないこと、そしてその者を早速応接間へ

(とおすこと こういったことをねっしんにいいふくめた。それがおわると、もうしごとも)

通すこと―こういったことを熱心に言い含めた。それが終わると、もう仕事も

(てをはなれたから、いずれまたなにかがでてくるまであんらくにすごそう、)

手を離れたから、いずれまた何かが出てくるまで安楽に過ごそう、

(といいながら、われわれをおうせつまのほうへみちびいた。ろういしはおうしんにでたので、)

と言いながら、我々を応接間の方へ導いた。老医師は往診に出たので、

(のこったのはけいぶとわたしだけだった。では、これからいちじかんばかり、たのしく)

残ったのは警部と私だけだった。「では、これから一時間ばかり、楽しく

(ゆういぎにすごすおてつだいをいたしましょう。ほーむずはこういって、つくえにいすを)

有意義に過ごすお手伝いを致しましょう。」ホームズはこう言って、机に椅子を

(ひきよせ、おどるにんぎょうのおふざけをきろくしたかみきれを、さいしょからさいごまですべて)

引き寄せ、踊る人形のおふざけを記録した紙切れを、最初から最後まですべて

(そのまえにひろげた。わとそん、ゆうじんであるきみに、ぼくはつぐなわなければ)

その前に広げた。「ワトソン、友人である君に、ぼくはつぐなわなければ

(ならぬ。もちまえのこうきしんをまんぞくさせずにまたせてしまった。そしてけいぶ、)

ならぬ。持ち前の好奇心を満足させずに待たせてしまった。そして警部、

(あなたにとって、このじけんのぜんようは、けいじとしてたいへんしりたいとおかんじに)

あなたにとって、この事件の全容は、刑事としてたいへん知りたいとお感じに

(なっているはずです。ですからまずは、そのものめずらしいはいけいから)

なっているはずです。ですからまずは、その物珍しい背景から

(おはなししましょう。そのかんけいで、じけんまえにひるとんきゅーびっとしが)

お話ししましょう。その関係で、事件前にヒルトン・キュービット氏が

(べいかーがいのわたしのところへごそうだんにこられたのです。そしてほーむずは、)

ベイカー街の私のところへご相談に来られたのです。」そしてホームズは、

(ここまでかいたようなじじつをてみじかにせつめいした。わたしのめのまえに、このような)

ここまで書いたような事実を手短に説明した。「私の目の前に、このような

(きみょうなものがあります。だれだってわらいます。これが、あのおそろしいひげきの)

奇妙なものがあります。誰だって笑います。これが、あの恐ろしい悲劇の

(まえぶれだとわからなければ。わたしはそれなりにあんごうのるいけいをじゅくちしておりまして、)

前触れだとわからなければ。私はそれなりに暗号の類型を熟知しておりまして、

(そのしゅだいでつまらないしょうろんをかいたこともあり、そのなかでひゃくろくじゅっしゅのあんごうほうを)

その主題でつまらない小論を書いたこともあり、その中で百六十種の暗号法を

(ぶんせきしてはいたのですが、しょうじき、こんかいのものはわたしもはじめてみました。このほうほうを)

分析してはいたのですが、正直、今回のものは私も初めて見ました。この方法を

など

(かんがえたれんちゅうのいととしては、このえがなにかをつたえるということはかくして、たんに)

考えた連中の意図としては、この絵が何かを伝えるということは隠して、単に

(こどもがきまぐれにえがいたものだとおもわせたいというのがあるのでしょう。)

子どもが気まぐれに描いたものだと思わせたいというのがあるのでしょう。

(しかし、いったんきごうがもじのだいようとわかれば、あとはあんごうのどんなるいけいにも)

しかし、いったん記号が文字の代用とわかれば、あとは暗号のどんな類型にも

(つうようするきそくをあてはめるだけで、よういにとくことがかのうです。)

通用する規則を当てはめるだけで、容易に解くことが可能です。

(さいしょにみせられたあんごうはみじかすぎたので、ただこうとしかいいきれませんでした。)

最初に見せられた暗号は短すぎたので、ただこうとしか言い切れませんでした。

(つまり、りょうてをあげたこのにんぎょうは、あるふぁべっとのeであると。)

つまり、両手をあげたこの人形は、アルファベットのEであると。

(ごぞんじのとおり、eというのはえいごのあるふぁべっとでもっともよくつかわれ、)

ご存じの通り、Eというのは英語のアルファベットで最もよく使われ、

(そのひんどは、どんなたんぶんにもたくさんみつかるほどです。さいしょのでんごんにある)

その頻度は、どんな短文にもたくさん見つかるほどです。最初の伝言にある

(じゅうごのもじのうち、おなじものがよっつ、さすればこれをeとするのがごうりてきです。)

十五の文字のうち、同じものが四つ、さすればこれをEとするのが合理的です。

(また、みると、あるばあいにははたをもつきごうがあり、あるばあいにはもっていない。)

また、見ると、ある場合には旗を持つ記号があり、ある場合には持っていない。

(するとかんがえられるのは、このはたのあらわれかたをこうりょすると、はたにはぶんをたんごに)

すると考えられるのは、この旗の現れ方を考慮すると、旗には文を単語に

(くぎるやくわりがあるのかもしれぬ。わたしはこのかせつをうけいれ、ひとまず)

区切る役割があるのかもしれぬ。私はこの仮説を受け入れ、ひとまず

(eをあらわすのは、りょうてをあげたにんぎょうであることをかんがえました。しかしここからが)

Eを表すのは、両手を挙げた人形であることを考えました。しかしここからが

(ほんとうにむずかしいところです。えいごのごじゅんでは、eのあとにきまってこれがくる)

本当に難しいところです。英語の語順では、Eのあとに決まってこれが来る

(というものがない。あるいんさつようしいちまいのぶんしょうでとったへいきんじゅんいも、)

というものがない。ある印刷用紙一枚の文章でとった平均順位も、

(みじかいぶんのなかではぎゃくてんするかもしれない。およそのことをいえば、t、a、o、)

短い文の中では逆転するかもしれない。およそのことを言えば、T、A、O、

(i、n、s、h、r、d、lというのがでやすいじゅんだ。だが、t、a、o、i)

I、N、S、H、R、D、Lというのが出やすい順だ。だが、T、A、O、I

(などはたいへんきっこうしている。ここでくみあわせをかんがえていみをみいだそう)

などはたいへん拮抗している。ここで組み合わせを考えて意味を見いだそう

(としてはきりがない。そこでわたしはあらたなでーたをまった。)

としてはきりがない。そこで私は新たなデータを待った。

(ひるとんきゅーびっとしにあったにかいめ、ふたつのたんぶんと、ひとつのでんごんを)

ヒルトン・キュービット氏に会った二回目、二つの短文と、ひとつの伝言を

(いただいたが、こうしゃにははたがないので、たんごだとふんだ。このようなならびです。)

いただいたが、後者には旗がないので、単語だと踏んだ。このような並びです。

(さて、たんごとしてはこれまでのかていから、eがにばんめよんばんめにある、)

さて、単語としてはこれまでの仮定から、Eが二番目と四番目にある、

(ごもじのことばだとわかります。きりはなすといういみのseverか、)

五文字の言葉だとわかります。切り離すという意味のSEVERか、

(はしごのlever、もしくはうちけしのnever。いろんないかとおもいますが、)

梯子のLEVER、もしくは打ち消しのNEVER。異論ないかと思いますが、

(さいごのねヴぁーがなにかのへんじとして、もっともありそうですし、じょうきょうから)

最後のネヴァーが何かの返事として、もっともありそうですし、状況から

(かんがえて、あのごふじんがえがいたへんじかもしれません。これらがすべてただしい)

考えて、あのご婦人が描いた返事かもしれません。これらがすべて正しい

(とすれば、のこりみっつのきごうは、n、v、rということになる。これでもまだ)

とすれば、残り三つの記号は、N、V、Rということになる。これでもまだ

(むずかしいところがのこっているのだが、いくつかのもじについてよいことを)

難しいところが残っているのだが、いくつかの文字についてよいことを

(おもいついた。つまりこうだ、もしわたしのよみどおり、これがあのごふじんとむかししんみつに)

思いついた。つまりこうだ、もし私の読み通り、これがあのご婦人と昔親密に

(していたものからのめっせーじだとすれば、このりょうたんにeがあり、なかにさんもじある)

していた者からのメッセージだとすれば、この両端にEがあり、中に三文字ある

(くみあわせは、elsie、えるしぃというなまえをまさにさしているかも)

組み合わせは、ELSIE、『エルシィ』という名前をまさに指しているかも

(しれぬ。よくしらべてみれば、このくみあわせがさんど、でんごんのまつびにあらわれている。)

しれぬ。よく調べてみれば、この組み合わせが三度、伝言の末尾に現れている。

(とすれば、これはえるしぃあてのぶんしょうにまちがいない。こうしてl、s、iが)

とすれば、これはエルシィ宛の文章に間違いない。こうしてL、S、Iが

(わかった。しかしなにをつたえようとしているのか? たったよんもじだけが、)

わかった。しかし何を伝えようとしているのか? たった四文字だけが、

(えるしぃというなのまえにえがかれていて、まつびはe。きっとcome、こいと)

エルシィという名の前に描かれていて、末尾はE。きっとCOME、『来い』と

(いういみにそういない。ほかにもまつびがeのよんもじをかんがえたが、このじょうきょうに)

いう意味に相違ない。他にも末尾がEの四文字を考えたが、この状況に

(みあうものはほかにない。そうしてさらにc、o、mがものになったので、ふたたび)

見合うものは他にない。そうしてさらにC、O、Mがものになったので、再び

(さいしょのでんごんにいどんでみた。たんごにくぎって、みちのもじをてんにおきかえてみると)

最初の伝言に挑んでみた。単語に区切って、未知の文字を点に置き換えてみると

(つぎのようなものになる。・m ・ere ・・e sl・ne・)

次のようなものになる。・M ・ERE ・・E SL・NE・

(すると、さいしょのもじはaしかありえない。このみじかいぶんしょうのなかでさんども)

すると、最初の文字はAしかありえない。この短い文章の中で三度も

(でるのだから。これはたいへんゆうえきなはっけんだ。さらにふたつめのことばには、)

出るのだから。これはたいへん有益な発見だ。さらに二つ目の言葉には、

(あきらかにhがはいる。そうするとこうなる。)

明らかにHがはいる。そうするとこうなる。

(am here a・e slane・)

AM HERE A・E SLANE・

(つまり、このあなにわかっているなをうめると、)

つまり、この穴にわかっている名をうめると、

(am here abe slaney)

AM HERE ABE SLANEY

(えいぶすれいにさんじょうといういみだ。かなりもじがわかったので、そうとうの)

『エイブ・スレイニ参上』という意味だ。かなり文字がわかったので、相当の

(かくしんをもって、だいにのぶんしょうにすすもう。こんなふうになる。)

確信を持って、第二の文章に進もう。こんなふうになる。

(a・ elri・es ここで、tとgをうめると、なんとかいみがつうじる。)

A・ ELRI・ES ここで、TとGをうめると、何とか意味が通じる。

(あっとえるりっじおそらくこのなはかきてのいるいえのなか、やどのなで)

『アット・エルリッジ』おそらくこの名は書き手のいる家の名か、宿の名で

(あろう。まーてぃんけいぶとわたしは、このわかりやすくかんぺきなせつめいを、)

あろう。」マーティン警部と私は、このわかりやすく完璧な説明を、

(のめりこまんばかりにききいっていた。わがともは、このなんじけんをかんぜんに)

のめり込まんばかりに聞き入っていた。我が友は、この難事件を完全に

(みとおせるだけのけつろんを、かくもみせつけたのだ。)

見とおせるだけの結論を、かくも見せつけたのだ。

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