古事記上巻・伊邪那美伊邪那岐7
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問題文
(ここにひだりのみめをあらひたまふときに、なれるかみのなは、あまてらすおほみかみ。)
ここに左の御目を洗ひたまふ時に、成れる神の名は、天照大御神。
(つぎにみぎのみめをあらひたまふときに、なれるかみのなは、つくよみのみこと。)
次に右の御目を洗ひたまふ時に、成れる神の名は、月読命。
(つぎにみはなをあらひたまふときに、なれるかみのなは、たけはやすさのをのみこと。)
次に御鼻を洗ひたまふ時に、成れる神の名は、建速須佐乃男命。
(みぎのくだりのやそまがつひのかみよりしも、はやすさのをのみことよりさきのとはしらあまりよはしらのかみは、)
右の件の八十禍津日神以下、速須佐之男命以前の十四柱の神は、
(みみをすすぐによりてなれるかみなり。)
御身を滌ぐによりて生れるかみなり。
(このときいざなぎのみこと、いたくよろこびてのたりたまひしく、)
この時伊邪那伎命、大く歓喜びて詔りたまひしく、
(あはこをうみうみて、うみのはてにみはしらのたふときこをえてありとのりたまひて、)
吾は子を生み生みて、生みの終に三はしらの貴き子を得てありとのりたまひて、
(すなはちみくびたまのたまのをもゆらにとりてゆらかして、)
すなはち御頚珠の玉の緒もゆらに取りてゆらかして、
(あまてらすおほみかみにたまひてのたりたまひしく、)
天照大御神に賜ひて詔りたまひしく、
(いましみことは、たかまがはらをしらせとことよさしてたまひき。)
汝命は、高天原を知らせと事依さして賜ひき。
(かれ、そのみくびたまのなは、みくらたなのかみといふ。)
故、その御頚珠の名は、御倉板挙之神と謂ふ。
(つぎにつくよみのみことにのたりたまひしく、いましみことは、よるのをすくにをしらせとことよさしき。)
次に月読命に詔りたまひしく、汝命は、夜の食国を知らせと事依さしき。
(つぎにたてはやすさのをのみことにのたりたまひしく、いましみことは、うなばらをしらせとことよさしき。)
次に建速須佐之男命に詔りたまひしく、汝命は、海原を知らせと事依さしき。
(かれ、おのおのよさしたまひしみことのまにまに、しらしめすなかにはやすさのをのみこと、)
故、各依さしたまひし命の随に、知らしめす中に速須佐之男命、
(よさせしくにをしらさずて、やつかひげむねのさきにいたるまで、なきいさちき。)
命させし国を治らさずて、八拳須心の前に至るまで、啼きいさちき。
(そのなくさまは、あをやまはからやまのごとくなきからし、かはうみはことごとになきほしき。)
その泣く状は、青山は枯山の如く泣き枯らし、河海は悉に泣き乾しき。
(ここをもちてあしきかみのこえは、さばへなすみなみち、よろずのもののわざはひことごとにおこりき。)
ここをもちて悪しき神の音は、さ蠅如す皆満ち、万の物の妖悉に発りき。
(かれ、いざなぎのおほみかみ、はやすさのをのみことにのたりたまひしく、)
故、伊邪那岐大御神、速須佐之男命に詔りたまひしく、
(なにしかもいましはことよさせしくにをしらさずて、なきいさちるとのりたまひき。)
何由かも汝は事依させし国を治らさずて、哭きいさちるとのりたまひき
(ここにこたへまをししく、あはははのくにねのかたすくににまからむとおもふ。)
ここに答へ白ししく、僕は妣の国根の堅州国に罷らむと欲ふ。
(かれ、なくなりとまをしき。)
故、哭くなりとまをしき。
(ここにいざなぎのおほみかみ、いたくいかりてのたりたまひしく、)
ここに伊邪那岐大御神、大き忿怒りて詔りたまひしく、
(しからばいましはこのくににすむべからずとのりたまひて、)
然らば汝はこの国に住むべからずとのりたまひて、
(すなはちかむやらひにやらひたまひき。)
すなはち神逐らひに逐らひたまひき。
(かれ、そのいざなぎのおほかみは、あふみのたがにますなり。)
故、その伊邪那岐大神は、淡海の多賀に坐すなり。