古事記上巻・大国主命1

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古事記上巻・大国主命の読み下し文
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1 奈良の子 3520 D+ 3.8 92.7% 483.4 1846 144 30 2024/11/30

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問題文

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(かれ、このおほくにぬしのかみのあにおと、やそかみましき。しかれどもみなくにはおほくにぬしのかみさりき。)

故、この大国主神の兄弟、八十神坐しき。然れども皆国は大国主神に避りき。

(さりしゆえは、そのやそかみ、おのおのいなばのやがみひめをよばはむこころありて、)

避りし所以は、その八十神、各稲羽の八上比売を婚はむ心ありて、

(ともいいなばにいきしとき、おほなむぢのかみにふくろをおほせ、ともびととしていてゆきき。)

共に稲羽に行きし時、大穴牟遅神に袋を負せ、従者として率て往きき。

(ここにけたのさきにいたりしとき、あかはだのうさぎふせき。ここにやそかみ、そのうさぎにいひしく、)

ここに気多の前に到りし時、裸の兎伏せき。ここに八十神、その兎に謂ひしく、

(なれせむは、このうしほをあみ、かぜのふくにあたりて、)

汝為むは、この海塩を浴み、風の吹くに当たりて、

(たかやまのをのへにふせれといひき。)

高山の尾の上に伏せれといひき。

(かれ、そのうさぎ、やそかみのおしへにしたがひてふしき。ここにそのしほかはくまにまに、)

故、この兎、八十神の教へに従ひて伏しき。ここにその塩乾く随に、

(そのみのかはことごとにかぜにふきさかえき。)

その身の皮悉に風に吹き拆かえき。

(かれ、いたみくるしみてなきふせれば、いやはてにきたりしおほなむぢのかみそのうさぎをみて、)

故、痛み苦しみて泣き伏せれば、最後に来たりし大穴牟遅神その兎を見て、

(なにしかもなはなきふせるといひしに、うさぎこたへまをししく、)

何由も汝は泣き伏せると言ひしに、兎答へ言ししく、

(われおきのしまにありて、このところにわたらむとすれども、わたらむよしなかりき。)

僕淤岐の島にありて、この地に度らむとすれども、度らむ因無かりき。

(かれ、うみにわにをあざむきていひしく、あとなとくらべて、うがらのおほきすくなきをかぞへてむ。)

故、海に鮫を欺きて言ひしく、吾と汝と競べて、族の多き少なきを計へてむ。

(かれ、なはそのうがらのありのまにまに、ことごとにいてきて、このしまよりけたのさきまで、)

故、汝はその族のありの随に、悉に率て来て、この島より気多の前まで、

(みななみふしわたれ。ここにあれそのへをふみて、はしりつつよみわたらむ。)

皆列み伏し度れ。ここに吾その上を踏みて、走りつつ読み度らむ。

(ここにあがうがらといづれかおほきをしらむといひき。)

ここに吾が族と孰れか多きを知らむといひき。

(かくいひしかば、あざむかえてなみふせりしとき、あれそのへをふみて、)

かく言ひしかば、欺かえて列み伏せりし時、吾その上を踏みて、

(よみわたりきて、いまつちにおりむとせしとき、あれいひしく、)

読み度り来て、今地に下りむとせし時、吾云ひしく、

(なはわれにあざむかえつといひをはるすなはち、)

汝は我に欺かえつと言ひ竟はる即ち、

(いやはしにふせりしわに、あをとらへてことごとにわがきものをはいぎき。)

最端に伏せりし鮫、我を捕へて悉に我が衣服を剥ぎき。

(これによりてなきうれひしかば、さきにゆきしやそかみのみこともちて、)

これによりて泣き患ひしかば、先に行きし八十神の命もちて、

など

(うしほをあみ、かぜにあたりてふせれとをしへのりき。)

海塩を浴み、風に当たりて伏せれと誨へ告りき。

(かれ、おしへのごとくせしかば、わがみことごとにそこなはえつとまをしき。)

故、教への如くせしかば、我が身悉に傷はえつとまをしき。

(ここにおほなむぢのかみは、そのうさぎにおしへのりたまひしく、)

ここに大穴牟遅神は、その兎に教へ告りたまひしく、

(いますみやかにこのみなとにゆき、みずをもちてながみをあらひて、)

今急かにこの水門に往き、水をもちて汝が身を洗ひて、

(すなはちそのみなとのかまのはなをとりて、しきちらして、そのへにこいまろべば、)

すなはちその水門の蒲黄を取りて、敷き散らして、その上に輾転べば、

(ながみもとのはだのごと、かならずいえむとのりたまひき。)

汝が身本の膚の如、必ず差えむとのりたまひき。

(かれ、おしへのごとせしに、そのみもとのごとくになりき。)

故、教への如せしに、その身本の如くになりき。

(これいなばのしろうさぎなり。いまにうさぎのかみといふ。)

これ稲羽の素兎なり。今に兎神と謂ふ。

(かれ、そのうさぎ、おほなむちのかみにまをししく、やそかみは、かならずやかみひめをえじ。)

故、その兎、大穴牟遅神に白ししく、八十神は、必ず八上比売を得じ。

(ふくろをおへども、いましみことえたまはむとまをしき。)

袋を負へども、汝命獲たまはむとまをしき。

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