バスカヴィル家の犬30

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シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。

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問題文

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(わたしはなにか、もっともらしいせつめいをひとつ、ふたつかんがえようとした。しかしもちろん)

私は何か、もっともらしい説明を一つ、二つ考えようとした。しかしもちろん

(わたしもかんぜんにわけがわからなかった。さーちゃーるずのかたがき、ざいさん、ねんれい、)

私も完全に訳が分からなかった。サー・チャールズの肩書き、財産、年齢、

(せいかく、ふうぼう、すべてもんくのつけようがない。そして、かれのかけいにおこるふきつな)

性格、風貌、全て文句のつけようがない。そして、彼の家系に起こる不吉な

(うんめいをのぞけば、かれにふりなじょうけんはまったくおもいつかない。じょせいのいしをいっさい)

運命を除けば、彼に不利な条件はまったく思いつかない。女性の意思を一切

(かくにんすることもないまま、これほどぞんざいにかれのもうしいれがきょひされたこと、)

確認することもないまま、これほどぞんざいに彼の申し入れが拒否されたこと、

(そしてじょせいがだまってこのじょうきょうをうけいれていることは、ひじょうにおどろくべきことだ。)

そして女性が黙ってこの状況を受け入れていることは、非常に驚くべき事だ。

(しかし、そのひのごご、すていぷるとんがやってきて、こういうすいそくには)

しかし、その日の午後、ステイプルトンがやって来て、こういう推測には

(ひとまずけっちゃくがついた。かれはごぜんちゅうのぶれいをあやまるためにやってきた。そして)

ひとまず決着がついた。彼は午前中の無礼を謝るためにやって来た。そして

(さーへんりーとしょさいでながいあいだこじんてきにはなしたあと、ふたりはかんぜんになかなおりを)

サー・ヘンリーと書斎で長い間個人的に話した後、二人は完全に仲直りを

(することになった。そしてそのしるしとして、わたしたちはめりぴっとはうすでつぎの)

することになった。そしてその印として、私たちはメリピット・ハウスで次の

(きんようびにしょくじをすることになった。いまだに、かれのきがくるっていないか、)

金曜日に食事をする事になった。「いまだに、彼の気が狂っていないか、

(かくしょうがもてない さーへんりーはいった。けさわたしにむかってはしってきたときの)

確証がもてない」サー・ヘンリーは言った。「今朝私に向かって走ってきた時の

(めつきはわすれられない。しかしあれほどみごとにしゃざいできるにんげんはいないということは)

目つきは忘れられない。しかし彼ほど見事に謝罪できる人間はいないという事は

(みとめるしかないな かれはあんなたいどをとったりゆうをせつめいしたのか?)

認めるしかないな」「彼はあんな態度を取った理由を説明したのか?」

(いもうとはじぶんのじんせいにとってすべてだといっている。それはよくわかるし、いもうとの)

「妹は自分の人生にとって全てだと言っている。それは良く分かるし、妹の

(すばらしさをきちんとりかいしていることはよろこばしい。ふたりはずっといっしょに)

素晴らしさをきちんと理解している事は喜ばしい。二人はずっと一緒に

(くらしてきた。そしてかれのせつめいによれば、かれはいもうとだけをたよりにしているひじょうに)

暮らしてきた。そして彼の説明によれば、彼は妹だけを頼りにしている非常に

(こどくなおとこだったらしい。だからいもうとをうしなうとかんがえたとき、かれはほんとうにどうようした。かれは)

孤独な男だったらしい。だから妹を失うと考えた時、彼は本当に動揺した。彼は

(わたしがかのじょにあいじょうをかんじはじめていたとはおもっていなかったといった。しかしそれが)

私が彼女に愛情を感じ始めていたとは思っていなかったと言った。しかしそれが

(じじつであり、いもうとがつれさられるかもしれないことをじぶんのめでかくにんしたとき、かれは)

事実であり、妹が連れ去られるかもしれないことを自分の目で確認した時、彼は

など

(ひじょうにしょうげきをうけ、しばらくのあいだ、じぶんのげんどうやこうどうにたいしてぜんあくのくべつが)

非常に衝撃を受け、しばらくの間、自分の言動や行動に対して善悪の区別が

(つかなかったといった。かれはあのときのことはぜんぶひじょうにすまなくおもっていると)

つかなかったと言った。彼はあの時の事は全部非常にすまなく思っていると

(しゃざいし、いっしょうがい、いもうとのようなうつくしいじょせいをじぶんのてもとにおいておけると)

謝罪し、一生涯、妹のような美しい女性を自分の手元に置いておけると

(そうぞうするのがいかにばかばかしくじぶんかってなことだったかということにきづいたと)

想像するのがいかに馬鹿馬鹿しく自分勝手な事だったかという事に気づいたと

(はなした。かれはこんなふうにいった。もしかのじょがじぶんのてをはなれなければ)

話した。彼はこんな風に言った。もし彼女が自分の手を離れなければ

(ならないのなら、ほかのにんげんよりわたしのようにきんじょのにんげんのほうがありがたいとおもう。)

ならないのなら、他の人間より私のように近所の人間の方がありがたいと思う。

(しかしいずれにしてもそれはあにとしてつらいことなので、このじたいを)

しかしいずれにしてもそれは兄として辛いことなので、この事態を

(うけいれることができるまでには、まだしばらくじかんがかかるだろう。)

受け入れる事ができるまでには、まだしばらく時間がかかるだろう。

(もしさんかげつ、いままでどおりのかんけいをたもち、そのあいだ、いもうととはしんこうをふかめるが、)

もし三ヶ月、今までどおりの関係を保ち、その間、妹とは親交を深めるが、

(あいじょうをようきゅうしないとやくそくするなら、どんなてきたいこういもしない。このじょうけんをわたしが)

愛情を要求しないと約束するなら、どんな敵対行為もしない。この条件を私が

(しょうだくして、じたいはおさまった このようにしてひとつのちいさななぞがかいめいされた。)

承諾して、事態は収まった」このようにして一つの小さな謎が解明された。

(これはわれわれがおちこんでもがいているぬまちのどこかでかたいじめんがあるのを)

これは我々が落ち込んでもがいている沼地のどこかで硬い地面があるのを

(はっけんしたようなものだ。すていぷるとんがなぜいもうとのきゅうこんしゃ そのきゅうこんしゃが)

発見したようなものだ。ステイプルトンがなぜ妹の求婚者 ―その求婚者が

(さーへんりーのようにひじょうにりっぱなおとこであっても 、をふゆかいにおもうかは)

サー・ヘンリーのように非常に立派な男であっても―、を不愉快に思うかは

(ようやくわかった。それでは、このへんでべつのいとにうつろう。よるのしのびなきのなぞ、)

ようやく分かった。それでは、この辺で別の糸に移ろう。夜の忍び泣きの謎、

(ばりもあふじんのなみだのあと、にしがわのこうしまどへばりもあがしのんでいくこと、 わたしはこの)

バリモア婦人の涙の跡、西側の格子窓へバリモアが忍んで行く事、―私はこの

(もつれたいとをときだした。よくやったといってほしい、ほーむず。そしてわたしが)

もつれた糸を解き出した。よくやったと言って欲しい、ホームズ。そして私が

(だいりにんとしてきみをしつぼうさせなかったといってほしい。わたしをおくりだすときに)

代理人として君を失望させなかったと言って欲しい。私を送り出す時に

(みせてくれたきみのしんらいにはみごとにこたえられたとおもう。たったいちやで、)

見せてくれた君の信頼には見事にこたえられたと思う。たった一夜で、

(こういったなぞがすべてかんぜんにめいはくとなったのだ。いちやといまかいたが、じっさいは)

こういった謎がすべて完全に明白となったのだ。「一夜」と今書いたが、実際は

(にやにわたるしごとだった。さいしょのよるはかんぜんにむだぼねだったからだ。わたしは)

二夜にわたる仕事だった。最初の夜は完全に無駄骨だったからだ。私は

(さーへんりーといっしょにごぜんさんじちかくになるまでかれのへやでよあかしした。)

サー・ヘンリーと一緒に午前三時近くになるまで彼の部屋で夜明かしした。

(しかしかいだんのとけいがなるばかりで、なんのおともきこえなかった。けっきょく、われわれは)

しかし階段の時計が鳴るばかりで、何の音も聞こえなかった。結局、我々は

(ふたりともいすでねこんでしまった。ほんとうにがっかりしたねずばんだったよ。)

二人とも椅子で寝込んでしまった。本当にがっかりした不寝番だったよ。

(だがさいわいにもわれわれはくじけなかった。そしてもうひとばんまってみようときめた。)

だが幸いにも我々はくじけなかった。そしてもう一晩待ってみようと決めた。

(つぎのよる、われわれはらんぷのあかりをよわめ、たばこをすいながら、どんなちいさなものおとも)

次の夜、我々はランプの灯を弱め、煙草を吸いながら、どんな小さな物音も

(たてずにすわっていた。じかんがたつのがどれほどおそいか、しんじられないほど)

立てずに座っていた。時間がたつのがどれほど遅いか、信じられないほど

(だった。しかし、かりうどがわなにかかるえものをじっとみはっているときのような、)

だった。しかし、狩人が罠に掛かる獲物をじっと見張っている時のような、

(がまんがむくわれるしゅんかんへのきたいがわたしたちのささえとなった。いちじがなった、そして)

我慢が報われる瞬間への期待が私たちの支えとなった。一時が鳴った、そして

(にじが。まただめかとぜつぼうしてあきらめようとしたそのしゅんかん、ふたりともどうじに)

二時が。また駄目かと絶望して諦めようとしたその瞬間、二人とも同時に

(あたまをもたげた。ひろうにまひしかけていくかんかくが、みがまえるとともにまた)

頭をもたげた。疲労に麻痺しかけていく感覚が、身構えると共にまた

(とぎすまされた。ろうかをあるくきしみがきこえてきた。そのおとは、ひじょうにこそこそと)

研ぎ澄まされた。廊下を歩く軋みが聞こえてきた。その音は、非常にこそこそと

(とびらをとおりすぎ、とおくにきえていった。それから、さーへんりーがそっととびらを)

扉を通り過ぎ、遠くに消えて行った。それから、サー・ヘンリーがそっと扉を

(あけ、わたしたちはあとをおいはじめた。かれはすでにかいろうへはいっており、ろうかはどこも)

開け、私たちは後を追い始めた。彼は既に回廊へ入っており、廊下はどこも

(まっくらだった。わたしたちは、はんたいがわのとうにつくまでゆっくりとあるいていった。)

真っ暗だった。私たちは、反対側の棟に着くまでゆっくりと歩いていった。

(せのたかくくろひげをはやしたまるいせなかのひとかげが、つまさきだってろうかをあるいている)

背の高く黒髭を生やした丸い背中の人影が、爪先立って廊下を歩いている

(ところがみえた。そのあと、かれはまえとおなじとびらのなかにはいった。くらやみのなか、ろうそくの)

ところが見えた。その後、彼は前と同じ扉の中に入った。暗闇の中、ロウソクの

(ひかりがとぐちをてらし、まっくらなろうかにひとすじのきいろいひかりがおちていた。わたしたちは)

光が戸口を照らし、真っ暗な廊下に一筋の黄色い光が落ちていた。私達は

(すすむさきのきにぜんたいじゅうをのせないようにしながら、しんちょうにそのとびらまでしのびよろうと)

進む先の木に全体重を乗せないようにしながら、慎重にその扉まで忍び寄ろうと

(とした。ようじんしてくつははいてこなかったが、それでも、あしのしたでふるいきが)

とした。用心して靴は履いてこなかったが、それでも、足の下で古い木が

(ぱきっとなったりきーきーとおとをたてた。かれにきづかれずにせっきんするのは)

パキッと鳴ったりキーキーと音を立てた。彼に気づかれずに接近するのは

(ふかのうにおもえるときもあった。しかし、かれはさいわいにもちょっとみみがとおく、かんぜんに)

不可能に思える時もあった。しかし、彼は幸いにもちょっと耳が遠く、完全に

(じぶんのさぎょうにぼっとうしていた。ついにわたしたちがとぐちについてなかをのぞきこんだとき、かれが)

自分の作業に没頭していた。ついに私達が戸口に着いて中を覗きこんだ時、彼が

(まどぎわにろうそくをてにかがみこみ、しろいねっしんなかおをまどわくにおしつけているすがたが)

窓際にロウソクを手にかがみ込み、白い熱心な顔を窓枠に押し付けている姿が

(みえた。わたしがふたばんまえにみたのとまったくおなじだった。このあとどうするかというけいかくは)

見えた。私が二晩前に見たのと全く同じだった。この後どうするかという計画は

(たてていなかったが、さーへんりーはなんじでも、いちばんちょくせつてきなしゅだんにうったえる)

立てていなかったが、サー・ヘンリーは何時でも、一番直接的な手段に訴える

(おとこだった。かれはへやのなかにふみこんだ。そのとき、ばりもあははっといきをのんで、)

男だった。彼は部屋の中に踏み込んだ。その時、バリモアはハッと息を飲んで、

(まどのそばからとびはねるようにみをおこした。かれはちのけがひき、ふるえながら)

窓の側から飛び跳ねるように身を起こした。彼は血の気が引き、震えながら

(わたしたちのまえにたっていた。まっしろになったかおに、くろいめがぎらぎらとかがやいていたが)

私達の前に立っていた。真っ白になった顔に、黒い目がギラギラと輝いていたが

(かれがさーへんりーとわたしをみまわしたとき、そのめにはきょうふとおどろきがあふれていた。)

彼がサー・ヘンリーと私を見回した時、その目には恐怖と驚きが溢れていた。

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