バスカヴィル家の犬31

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シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

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問題文

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(ここでなにをしている、ばりもあ?なにも かれのどうようはひじょうにはげしくほとんど)

「ここで何をしている、バリモア?」「何も」彼の動揺は非常に激しくほとんど

(くちがきけなかった。そしてかれのもったろうそくはゆれ、はげしくかげがじょうげした。)

口がきけなかった。そして彼の持ったロウソクは揺れ、激しく影が上下した。

(まどです。わたしはかぎがかかっているかよまわりをしています さんかいのか?)

「窓です。私は鍵がかかっているか夜回りをしています」「三階のか?」

(はい、ぜんぶのまどを いいか、ばりもあ さーへんりーはきびしくいった。)

「はい、全部の窓を」「いいか、バリモア」サー・ヘンリーは厳しく言った。

(おまえがほんとうのことをはなすまではようしゃしないぞ。てまをかけさせずにはやく)

「お前が本当の事を話すまでは容赦しないぞ。手間をかけさせずに早く

(しゃべったほうがみのためだ。さあ!うそはやめろ!そのまどでなにをしていた?)

しゃべった方が身のためだ。さあ!嘘はやめろ!その窓で何をしていた?」

(かれはおろおろしたようすでわたしたちをみると、ぜつぼうのあまりどうすることもできず)

彼はおろおろした様子で私たちを見ると、絶望のあまりどうすることもできず

(りょうてをもみしぼった。なにもやましいことはしていませんでした。ろうそくをまどに)

両手を揉み絞った。「何もやましいことはしていませんでした。ロウソクを窓に

(かざしていただけです なぜろうそくをまどにかざしていたんだ?)

かざしていただけです」「なぜロウソクを窓にかざしていたんだ?」

(きかないでください、さーへんりー、きかないでください。しんじて)

「訊かないでください、サー・ヘンリー、訊かないでください。信じて

(ください。これはじぶんのひみつではないのではなせないんです。もしじぶんだけのこと)

ください。これは自分の秘密ではないので話せないんです。もし自分だけのこと

(なら、だんなさまにかくしだてはしません わたしはふとおもいつくことがあり、しつじの)

なら、旦那様に隠し立てはしません」私はふと思いつくことがあり、執事の

(ふるえるてからろうそくをとりあげた。これをかざすのはあいずにちがいない わたしは)

震える手からロウソクを取り上げた。「これをかざすのは合図に違いない」私は

(いった。へんとうがあるかみてみましょう わたしはろうそくをかれのようにもち、よるの)

言った。「返答があるか見てみましょう」私はロウソクを彼のように持ち、夜の

(くらやみをじっとのぞきこんだ。つきはくもにかくれていたが、わたしはぼんやりときぎのくろい)

暗闇をじっと覗き込んだ。月は雲に隠れていたが、私はぼんやりと木々の黒い

(かたまりと、それよりあかるいこうやのひろがりをみわけることができた。とつぜん、くらやみの)

固まりと、それより明るい荒野の広がりを見分ける事が出来た。突然、暗闇の

(むこうにきいろいひかりがあらわれ、まどでくぎられたくろいしかくのまんなかにあざやかなちいさいひかりの)

向こうに黄色い光が現れ、窓で区切られた黒い四角の真中に鮮やかな小さい光の

(てんがうかびあがった。わたしはかちほこってさけびごえをあげた。これだ!わたしは)

点が浮かび上がった。私は勝ち誇って叫び声を上げた。「これだ!」私は

(さけんだ。ちがいます、ちがいます、なんでもありません、 ほんとうになんでも)

叫んだ。「違います、違います、何でもありません、―本当に何でも

(ないんです!しつじがわりこんだ。ほんとうです まどのよこほうこうにひかりを)

ないんです!」執事が割り込んだ。「本当です・・・・」「窓の横方向に光を

など

(うごかしてみろ、わとそん!じゅんだんしゃくがさけんだ。みろ、むこうもおなじように)

動かしてみろ、ワトソン!」準男爵が叫んだ。「見ろ、向こうも同じように

(うごくぞ!さあ、あくとう、これがあいずだということをみとめないのか?さあ、はっきり)

動くぞ!さあ、悪党、これが合図だという事を認めないのか?さあ、はっきり

(こたえろ!むこうにいるおまえのれんらくあいてはだれだ。そしてどんないんぼうをたくらんで)

答えろ!向こうにいるお前の連絡相手はだれだ。そしてどんな陰謀を企んで

(いるんだ?おとこのかおははっきりとはんこうてきになった。これはわたしのもんだいで、)

いるんだ?」男の顔ははっきりと反抗的になった。「これは私の問題で、

(あなたはかんけいありません。いうつもりはありません ではおまえはただちにくびだ)

あなたは関係ありません。言うつもりはありません」「ではお前は直ちに首だ」

(けっこうです。そうしなければならないのでしたら おまえはかめいにどろをぬった。)

「結構です。そうしなければならないのでしたら」「お前は家名に泥を塗った。

(じぶんをはずかしくおもうがよい。おまえたちかぞくは100ねんいじょうこのやねのしたに)

自分を恥ずかしく思うがよい。お前たち家族は100年以上この屋根の下に

(すんできた。それなのに、おまえはわたしにたいしてなにかいんぼうをたくらんでいた いいえ、)

住んで来た。それなのに、お前は私に対して何か陰謀を企んでいた」「いいえ、

(ちがいます。だんなさまにたいしてではございません!それはじょせいのこえだった。きょうふに)

違います。旦那様に対してではございません!」それは女性の声だった。恐怖に

(おびえ、おっとよりいっそうあおざめたばりもあふじんが、とぐちにたっていた。しょーると)

怯え、夫よりいっそう青ざめたバリモア夫人が、戸口に立っていた。ショールと

(すかーとできぶくれたそのすがたは、もしかおにはげしいかんじょうがうかんでいなかったら)

スカートで着膨れたその姿は、もし顔に激しい感情が浮かんでいなかったら

(こっけいだったかもしれない。でていかねばならん、いらいざ。もう)

こっけいだったかもしれない。「出て行かねばならん、イライザ。もう

(おしまいだ。にもつをまとめなさい しつじはいった。おお、じょん、じょん、)

おしまいだ。荷物をまとめなさい」執事は言った。「おお、ジョン、ジョン、

(わたしがこうさせたのね?これはわたしのせきにんです、さーへんりー、 すべてわたしが)

私がこうさせたのね?これは私の責任です、サー・ヘンリー、-すべて私が

(わるいんです。すべておっとがわたしのためをおもってやったことです。わたしがおっとにそうたのんだ)

悪いんです。すべて夫が私のためを思ってやった事です。私が夫にそう頼んだ

(からです では、はっきりといってくれ!これはどういうことなんだ?)

からです」「では、はっきりと言ってくれ!これはどういうことなんだ?」

(わたしのふこうなおとうとがこうやでうえています。わたしたちはめのまえでおとうとをうえじに)

「私の不幸な弟が荒野で飢えています。私達は目の前で弟を飢え死に

(させることはできません。このひかりはしょくもつがよういできたことをしめすあいずです。)

させることは出来ません。この光は食物が用意できたことを示す合図です。

(そしてむこうのひかりは、もっていくばしょをしめしています では、おまえのおとうと)

そして向こうの光は、持って行く場所を示しています」「では、お前の弟

(とは だつごくしたしゅうじんです、 さつじんはんのせるでんです そのとおりです)

とは・・・」「脱獄した囚人です、―殺人犯のセルデンです」「その通りです」

(ばりもあがいった。わたしはさっき、じぶんのひみつではないためにはなせないと)

バリモアが言った。「私はさっき、自分の秘密ではないために話せないと

(もうしあげました。しかしいま、おききになったとおりです。だんなさまにたいする)

申し上げました。しかし今、お聞きになった通りです。旦那様に対する

(はかりごとではないことは、おわかりになったとおもいます ひとめをはばかって)

はかりごとではない事は、お分かりになったと思います」人目をはばかって

(ここまできてまどにひかりをかかげたのは、こういうわけだったのか。さーへんりーと)

ここまで来て窓に光を掲げたのは、こういう訳だったのか。サー・ヘンリーと

(わたしはおどろいてじょせいをじっとみつめた。このむひょうじょうなそんけいすべきじょせいに、いぎりすで)

私は驚いて女性をじっと見つめた。この無表情な尊敬すべき女性に、イギリスで

(いちばんあくみょうだかいはんざいしゃとおなじちがながれているということがあるのだろうか。)

一番悪名高い犯罪者と同じ血が流れているということがあるのだろうか。

(そうです。わたしのきゅうせいはせるでんです。かれはわたしのおとうとです。おとうとがこどものころ、かぞくが)

「そうです。私の旧姓はセルデンです。彼は私の弟です。弟が子供の頃、家族が

(あまやかせすぎたのです。なんでもおもうようにさせてきました。そのため、せかいは)

甘やかせ過ぎたのです。何でも思うようにさせてきました。そのため、世界は

(じぶんをよろこばせるためにそんざいし、なんでもすきなことをしていいとおもうようになって)

自分を喜ばせるために存在し、何でも好きな事をしていいと思うようになって

(しまいました。おとなになって、わるいなかまとであいました。それからおとうとはあくまに)

しまいました。大人になって、悪い仲間と出会いました。それから弟は悪魔に

(とりつかれました。はははひたんにくれ、かめいはどろにまみれました。つみをおかすごとに)

とり付かれました。母は悲嘆にくれ、家名は泥にまみれました。罪を犯すごとに

(おとうとはどんどんみじめなことになり、とうとう、かみのじひだけでやっとこうしゅだいから)

弟はどんどん惨めなことになり、とうとう、神の慈悲だけでやっと絞首台から

(のがれられているというところまで、みをおとしました。しかしわたしにとっては、)

逃れられているというところまで、身を落としました。しかし私にとっては、

(おとうとはいまだにちいさなまきげのしょうねんなのです。わたしはあねらしくおとうとのめんどうをみて、)

弟はいまだに小さな巻き毛の少年なのです。私は姉らしく弟の面倒を見て、

(いっしょにあそびました。おとうとがだつごくしたのは、わたしがここにすんでいて、てだすけを)

一緒に遊びました。弟が脱獄したのは、私がここに住んでいて、手助けを

(もとめればこばめないことをしっていたからです。あるよる、おとうとがつかれはて、うえ、)

求めれば拒めないことを知っていたからです。ある夜、弟が疲れ果て、飢え、

(すぐあとをかんしゅにおわれ、からだをひきずってここにきたとき、わたしたちふうふになにができた)

すぐ後を看守に追われ、体をひきずってここに来た時、私たち夫婦に何ができた

(でしょうか?わたしたちはおとうとをいえにいれてたべものをあたえ、せわをしました。そのとき)

でしょうか?私たちは弟を家に入れて食べ物を与え、世話をしました。その時

(だんなさまがもどってきました。おとうとはほとぼりがさめるまではほかのどこにいくより)

旦那様が戻ってきました。弟はほとぼりが冷めるまでは他のどこに行くより

(こうやがあんぜんだとかんがえました。だからこうやにひそんでいます。にやにいちど、わたしたちは)

荒野が安全だと考えました。だから荒野に潜んでいます。二夜に一度、私達は

(まどにひかりをかざし、まだおとうとがこうやにいるかをかくにんしました。そしてもしおうとうが)

窓に光をかざし、まだ弟が荒野にいるかを確認しました。そしてもし応答が

(あれば、おっとがぱんとにくをもっていきました。まいにちわたしたちはどこかに)

あれば、夫がパンと肉を持っていきました。毎日私たちはどこかに

(いってくれることをねがっていました。しかしそこにいるかぎりは、みすてることが)

行ってくれる事を願っていました。しかしそこに居る限りは、見捨てる事が

(できませんでした。これはかんぜんなしんじつです。しんせいなかとりっくのじょせいとして)

できませんでした。これは完全な真実です。神聖なカトリックの女性として

(もうしあげます。そして、このけんでひなんされるべきてんがあれば、わるいのはおっとでは)

申し上げます。そして、この件で非難されるべき点があれば、悪いのは夫では

(なくわたしだとおわかりいただけるでしょう。おっとがやったことはすべてわたしのため)

なく私だとお分かりいただけるでしょう。夫がやった事はすべて私のため

(なのです じょせいはおどろくほどひっしで、そのことばにうそはまったくかんじられなかった。)

なのです」女性は驚くほど必死で、その言葉に嘘はまったく感じられなかった。

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