バスカヴィル家の犬33

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プレイ回数2050難易度(4.2) 5653打 長文 かな 長文モード可
シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

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問題文

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(われわれはつまずきながらゆっくりとやみのなかをすすんだ。あたりは、くろくつきでた)

我々は躓きながらゆっくりと闇の中を進んだ。あたりは、黒く突き出た

(ごつごつしたおかにかこまれてまっくらだったが、きいろいひかりのちいさなてんはかんだんなくまえに)

ゴツゴツした丘に囲まれて真っ暗だったが、黄色い光の小さな点は間断なく前に

(かがやいていた。やみよのひかりのきょりほどあてにならないものはない。そのかがやきは)

輝いていた。闇夜の光の距離ほど当てにならないものはない。その輝きは

(すいへいせんじょうのはるかとおくにみえたときもあれば、すうやーどさきにあるかのように)

水平線上のはるか遠くに見えた時もあれば、数ヤード先にあるかのように

(おもえたときもあった。とうとうひかりのでどころをかくにんすることができたとき、わたしたちは)

思えた時もあった。とうとう光の出所を確認することができた時、私たちは

(そこからほとんどめとはなのさきのきょりまできていた。ろうがたれたろうそくがいわの)

そこからほとんど眼と鼻の先の距離まで来ていた。ロウが垂れたロウソクが岩の

(すきまにたてられていた。いわはろうそくのりょうがわをかこい、かぜをふせぎながら、ひかりが)

隙間に立てられていた。岩はロウソクの両側を囲い、風を防ぎながら、光が

(ばすかヴぃるかんのほうこういがいにもれないようになっていた。めのまえにかこうがんの)

バスカヴィル館の方向以外に漏れないようになっていた。目の前に花崗岩の

(おおきないわがあり、わたしたちのすがたはむこうからしかくになっていた。いわのかげに)

大きな岩があり、私たちの姿は向こうから死角になっていた。岩の陰に

(うずくまり、そこからそっとあたまをだしてあいずのひかりをのぞきこんだ。こうやのまんなかの)

うずくまり、そこからそっと頭を出して合図の光を覗き込んだ。荒野の真ん中の

(こんなばしょでろうそくがいっぽん、ぽつんとかがやいているのはきみょうなこうけいだった。)

こんな場所でロウソクが一本、ぽつんと輝いているのは奇妙な光景だった。

(ろうそくのちかくにはひとかげはなく、まっすぐにたちのぼるほのおにりょうがわのいわがてらされて)

ロウソクの近くには人影はなく、真っ直ぐに立ち上る炎に両側の岩が照らされて

(いるだけだった。これからどうする?さーへんりーがささやいた。)

いるだけだった。「これからどうする?」サー・ヘンリーがささやいた。

(ここでまとう。あかりのちかくにいるはずだ。かれのすがたをみることができないか)

「ここで待とう。灯りの近くにいるはずだ。彼の姿を見る事ができないか

(かくにんしてみよう わたしがこうこたえたしゅんかん、おとこのすがたがめにはいった。ろうそくが)

確認してみよう」私がこう答えた瞬間、男の姿が目に入った。ロウソクが

(もえているわれめのいわのうえに、あくいにみちたきいろいかおがつきでていた。いやしい)

燃えている割れ目の岩の上に、悪意に満ちた黄色い顔が突き出ていた。卑しい

(じょうねんにあふれた、おそろしいどうぶつてきなかおだった。おとこは、どろにまみれ、ぼさぼさの)

情念に溢れた、恐ろしい動物的な顔だった。男は、泥にまみれ、ボサボサの

(あごひげをはやし、もじゃもじゃのかみをたらしていた。おかのちゅうふくにあるあなのなかで)

顎鬚を生やし、もじゃもじゃの髪を垂らしていた。丘の中腹にある穴の中で

(くらしていたかこのやばんじんのすがただといってもよいほどだった。ちいさくずるそうな)

暮らしていた過去の野蛮人の姿だと言っても良いほどだった。小さくずるそうな

(めに、したのひかりがはんしゃしていた。くらやみをみとおそうと、いっしょうけんめいさゆうにめをひからせて)

目に、下の光が反射していた。暗闇を見通そうと、一生懸命左右に目を光らせて

など

(いた。まるで、かりうどのあしおとがきこえた、ずるがしこくどうもうなどうぶつのようにみえた。)

いた。まるで、狩人の足音が聞こえた、ずる賢く獰猛な動物のように見えた。

(あきらかにかれは、なにかがおかしいとかんじていたようだった。ばりもあがひみつの)

明らかに彼は、何かがおかしいと感じていたようだった。バリモアが秘密の

(しんごうをしっていて、わたしたちがそれをおくらなかったせいかもしれないし、)

信号を知っていて、私たちがそれを送らなかったせいかもしれないし、

(それいがいになんらかのりゆうでいつもとはようすがちがうとかんじたのかもしれない。)

それ以外に何らかの理由でいつもとは様子が違うと感じたのかもしれない。

(どちらにせよ、わたしはそのじゃあくなかおにおそれがうかんでいるのをみることができた。)

どちらにせよ、私はその邪悪な顔に恐れが浮かんでいるのを見る事ができた。

(かれはつぎのしゅんかんにも、あかりのあるばしょからにげだしてくらやみにすがたをけすかも)

彼は次の瞬間にも、灯りのある場所から逃げ出して暗闇に姿を消すかも

(しれなかった。こうかんがえたので、わたしはぱっとまえにとびだした。さーへんりーも)

しれなかった。こう考えたので、私はぱっと前に飛び出した。サー・ヘンリーも

(わたしにつづいた。わたしたちがあらわれるとどうじに、しゅうじんはののしりのさけびをあげ、いしを)

私に続いた。私たちが現れると同時に、囚人は罵りの叫びを上げ、石を

(なげつけた。そのいしは、わたしたちがかくれていたおおきないわにあたってくだけた。かれは)

投げつけた。その石は、私達が隠れていた大きな岩に当たって砕けた。彼は

(さっとたちあがるとふりかえってはしりだしたが、そのときちらりと、せのひくい、せなかを)

さっと立ち上ると振り返って走り出したが、その時ちらりと、背の低い、背中を

(まるめたがんじょうそうなからだがみえた。こううんにもこのとき、つきがくもからあらわれた。わたしたちは)

丸めた頑丈そうな体が見えた。幸運にもこの時、月が雲から現われた。私たちは

(おかをかけあがった。おとこはそのむこうがわを、やせいやぎのようなえねるぎーで)

丘を駆け上がった。男はその向こう側を、野生ヤギのようなエネルギーで

(とおりみちのいしをはじきとばしながら、たいへんなはやさではしりおりていた。もしかすると、)

通り道の石を弾き飛ばしながら、大変な速さで走り降りていた。もしかすると、

(けんじゅうをうてばおとこをたおすことができたかもしれない。しかしわたしがけんじゅうをもって)

拳銃を撃てば男を倒す事が出来たかもしれない。しかし私が拳銃を持って

(きたのは、こうげきされたときにじぶんのみをまもるためだけだったので、にげさっていく)

きたのは、攻撃された時に自分の身を守るためだけだったので、逃げ去って行く

(まるごしのおとこをうつことはできなかった。わたしたちは、ふたりともあしがはやく、たいちょうも)

丸腰の男を撃つことはできなかった。私たちは、二人とも足が速く、体調も

(ばんぜんだった。しかし、かれにおいつくちゃんすがないことはすぐにわかった。げっこうの)

万全だった。しかし、彼に追いつくチャンスがない事はすぐに分かった。月光の

(したで、かれのすがたはとおくはなれたおかのちゅうふくにあるきょせきのあいだをすばやくうごくちいさなてんに)

下で、彼の姿は遠く離れた丘の中腹にある巨石の間を素早く動く小さな点に

(なるまで、ながいあいだみえていた。わたしたちはへとへとになるまではしったが、あいてとの)

なるまで、長い間見えていた。私たちはへとへとになるまで走ったが、相手との

(きょりはどんどんおおきくなり、ついにたちどまっていわにこしをおろし、あえぎながら)

距離はどんどん大きくなり、ついに立ち止まって岩に腰を下ろし、あえぎながら

(おとこがとおくにきえていくのをみおくった。ひじょうにきみょうでよそうもしないできごとが)

男が遠くに消えていくのを見送った。非常に奇妙で予想もしない出来事が

(おきたのはこのしゅんかんだった。わたしたちはみこみのないついせきをあきらめ、すわっていた)

起きたのはこの瞬間だった。私たちは見込みのない追跡を諦め、座っていた

(いしからたちあがり、やかたにもどろうとふりかえった。みぎてにひくいつきがでていた。ぎんいろに)

石から立ち上り、館に戻ろうと振り返った。右手に低い月が出ていた。銀色に

(かがやくつきのかぶをさえぎるように、かこうがんのいわやまのぎざぎざしたちょうじょうがそびえたって)

輝く月の下部を遮るように、花崗岩の岩山のギザギザした頂上がそびえ立って

(いた。そこに、ぎゃっこうのこくたんちょうぞうのようにくろいしるえっとになったおとこがひとり、)

いた。そこに、逆光の黒檀彫像のように黒いシルエットになった男が一人、

(いわやまのうえにたっているすがたがみえた。さっかくとはおもわないでくれ、ほーむず。わたしは)

岩山の上に立っている姿が見えた。錯覚とは思わないでくれ、ホームズ。私は

(じんせいであれほどはっきりとみたことはないとやくそくする。わたしのみたところ、せのたかい)

人生であれほどはっきりと見た事はないと約束する。私の見たところ、背の高い

(やせたおとこのようだった。そのおとこはあしをちょっとひろげてたち、うでをくみ、あたかも)

痩せた男のようだった。その男は脚をちょっと広げて立ち、腕を組み、あたかも

(がんぜんにひろがるでいたんとかこうがんのはてしないあれちについて、なにかおもいをめぐらして)

眼前に広がる泥炭と花崗岩の果てしない荒地について、何か思いを巡らして

(いるかのように、うつむいていた。このおそろしいちのせいれいのようにみえた。)

いるかのように、うつむいていた。この恐ろしい地の聖霊のように見えた。

(あれはしゅうじんではなかった。このおとこはしゅうじんがいなくなったばしょからとおくはなれた)

あれは囚人ではなかった。この男は囚人が居なくなった場所から遠く離れた

(ばしょにいた。それに、このおとこはもっとせがたかかった。わたしはおどろいてさけびごえをあげ、)

場所にいた。それに、この男はもっと背が高かった。私は驚いて叫び声をあげ、

(おとこをゆびさしてさーへんりーをふりかえった。しかしわたしがかれのうでをつかんでいる)

男を指差してサー・ヘンリーを振り返った。しかし私が彼の腕をつかんでいる

(あいだに、おとこはきえていた。するどいかこうがんのちょうじょうは、まだつきのかたんをえぐりとって)

間に、男は消えていた。鋭い花崗岩の頂上は、まだ月の下端をえぐり取って

(いた。しかしそのちょうじょうにいた、あのしずかでふどうのじんぶつはあとかたもなかった。わたしは)

いた。しかしその頂上にいた、あの静かで不動の人物は跡形もなかった。私は

(そこまでいっていわやまをそうさくしたいとおもったが、かなりきょりがあった。じゅんだんしゃくは、)

そこまで行って岩山を捜索したいと思ったが、かなり距離があった。準男爵は、

(ばすかヴぃるけのくらいでんせつをおもいおこさせるあのさけびごえをきいて、まだきょうふに)

バスカヴィル家の暗い伝説を思い起こさせるあの叫び声を聞いて、まだ恐怖に

(おびえていたので、あたらしいぼうけんにでかけるせいしんじょうたいではなかった。かれはいわやまのうえの)

怯えていたので、新しい冒険に出かける精神状態ではなかった。彼は岩山の上の

(こどくなおとこをみていなかったので、わたしがそのきみょうなふうぼうとどうどうとしたたいどから)

孤独な男を見ていなかったので、私がその奇妙な風貌と堂々とした態度から

(うけたこうふんをきょうゆうすることができなかった。きっとかんしゅだ かれはいった。)

受けた興奮を共有することが出来なかった。「きっと看守だ」彼は言った。

(あのおとこがにげてからおおぜいこうやにきている おそらくかれのいうとおり)

「あの男が逃げてから大勢荒野に来ている」おそらく彼の言うとおり

(なのだろうが、わたしはもっとかくじつなしょうこをえたいとおもっている。きょう、わたしたちは)

なのだろうが、私はもっと確実な証拠を得たいと思っている。今日、私たちは

(だつごくはんのいばしょについて、ぷりんすたうんのかんけいしゃとれんらくをとるつもりだ。)

脱獄犯の居場所について、プリンスタウンの関係者と連絡をとるつもりだ。

(しかし、わたしたちじしんのてで、うまくだつごくはんをとらえてつれもどすのはかなりむずかしい)

しかし、私たち自身の手で、うまく脱獄犯を捕らえて連れ戻すのはかなり難しい

(ことだ。これがさくやのぼうけんだ。そして、ほーむず、きみもこんかいほうこくしたじけんに)

ことだ。これが昨夜の冒険だ。そして、ホームズ、君も今回報告した事件に

(ついては、ひじょうによくやったとひょうかしてくれるはずだ。わたしはきみにけんとうはずれのことを)

ついては、非常によくやったと評価してくれるはずだ。私は君に見当外れの事を

(たくさんかいているとおもう。しかしそれでも、わたしはすべてのじじつをきみにていきょうし、)

たくさん書いていると思う。しかしそれでも、私は全ての事実を君に提供し、

(きみがじぶんのけつろんをだすのにもっともやくだつじじつをしゅしゃせんたくできるようにするのが)

君が自分の結論を出すのに最も役立つ事実を取捨選択できるようにするのが

(いちばんだとかんがえている。じけんはかいけつにむけてすこしだがかくじつにしんてんした。)

一番だと考えている。事件は解決に向けて少しだが確実に進展した。

(ばりもあふさいのこうどうについては、ふたりのこうどうのどうきがみつかり、それによって)

バリモア夫妻の行動については、二人の行動の動機が見つかり、それによって

(じょうきょうはひじょうにめいはくになった。だが、こうやはあいかわらずふかかいで、そこにはなぞと、)

状況は非常に明白になった。だが、荒野は相変わらず不可解で、そこには謎と、

(きみょうなじゅうみんがひそんだままだ。たぶんつぎのれんらくで、これにもなんらかしんじじつが)

奇妙な住民が潜んだままだ。たぶん次の連絡で、これにも何らか新事実が

(みつかるだろうとおもう。もちろん、きみがここにくることができればそれがいちばん)

見つかるだろうと思う。もちろん、君がここに来る事ができればそれが一番

(なのだが。どちらにしても、すうじつのあいだにはもういちどてがみをかくつもりだ。)

なのだが。どちらにしても、数日の間にはもう一度手紙を書くつもりだ。

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