バスカヴィル家の犬41

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プレイ回数1652難易度(4.2) 5063打 長文 かな 長文モード可
シャーロックホームズシリーズ
アーサーコナンドイルの作品です。句読点以外の記号は省いています。

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問題文

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(そのばしょはすうまいるはなれていたが、わたしはにぶいみどりとはいいろのなかにくろいちいさなてんを)

その場所は数マイル離れていたが、私は鈍い緑と灰色の中に黒い小さな点を

(はっきりみることができた。きなさい、きなさい!ふらんくらんどはじょうかいに)

はっきり見ることができた。「来なさい、来なさい!」フランクランドは上階に

(かけあがりながらさけんだ。きみのめでみて、きみじしんではんだんすればよい)

駆け上がりながら叫んだ。「君の目で見て、君自身で判断すればよい」

(そのぼうえんきょうは、さんきゃくにすえられ、たいらなとたんやねのうえにたてられた)

その望遠鏡は、三脚に据えられ、平らなトタン屋根の上に立てられた

(ものものしいききだった。ふらんくらんどはぼうえんきょうにめをさっとあてて、)

ものものしい機器だった。フランクランドは望遠鏡に目をさっと当てて、

(まんぞくそうなさけびをあげた。いそいで、わとそんせんせい、いそいで、こどもがおかをこえる)

満足そうな叫びを上げた。「急いで、ワトソン先生、急いで、子供が丘を越える

(まえに!たしかにちいさなこどもが、かたにちいさなつつみをもって、ゆっくりおかを)

前に!」確かに小さな子供が、肩に小さな包みを持って、ゆっくり丘を

(のぼっていた。しょうねんがおかのちょうじょうにきたとき、いっしゅんぼろをまとったあらっぽいかんじの)

登っていた。少年が丘の頂上に来た時、一瞬ボロをまとった荒っぽい感じの

(ひとかげがさむざむしいあおぞらにうかびあがるのがみえた。しょうねんはついせきをけいかいして)

人影が寒々しい青空に浮かび上がるのが見えた。少年は追跡を警戒して

(いるかのように、ひとめをはばかるこそこそとしたたいどであたりをみまわした。)

いるかのように、人目をはばかるコソコソとした態度であたりを見回した。

(そのあと、しょうねんはおかのむこうにきえた。どうだ!わたしのいったとおりだろう?)

その後、少年は丘の向こうに消えた。「どうだ!私の言ったとおりだろう?」

(たしかに、なにかひみつのつかいをしているようなしょうねんがいました そしてその)

「確かに、何か秘密の使いをしているような少年がいました」「そしてその

(つかいのもくてきはむらのじゅんさでもそうぞうがつく。しかしわたしはけいさつにひとことももらさない。)

使いの目的は村の巡査でも想像がつく。しかし私は警察に一言も漏らさない。

(そしてあなたにもひみつをまもってもらいたい、わとそんせんせい。ひとことも!)

そしてあなたにも秘密を守ってもらいたい、ワトソン先生。一言も!

(いいですな!そうします けいさつはわたしにはじをかかせた、 はじをな。)

いいですな!」「そうします」「警察は私に恥をかかせた、―恥をな。

(ふらんくらんどたいれじーなのじじつかんけいがあきらかになったとき、わたしはきっとこの)

フランクランド対レジーナの事実関係が明らかになった時、私はきっとこの

(しゅうぜんたいがふんがいするだろうとかんがえている。どちらにしても、わたしはけいさつをたすけるきは)

州全体が憤慨するだろうと考えている。どちらにしても、私は警察を助ける気は

(もうとうない。あのごろつきどもがひあぶりにしたのが、わたしのにんぎょうでなくわたしじしんで)

毛頭ない。あのゴロツキどもが火あぶりにしたのが、私の人形でなく私自身で

(あっても、けいさつはかんよしないとでもいわんばかりのたいどだった。まさか)

あっても、警察は関与しないとでも言わんばかりの態度だった。まさか

(かえるのではないでしょうな!このすばらしいひをいわっていっしょにでかんたをからに)

帰るのではないでしょうな!この素晴らしい日を祝って一緒にデカンタを空に

など

(しましょう!しかしわたしはなんとか、かれのいりゅうをふりきり、やかたまでいっしょに)

しましょう!」しかし私はなんとか、彼の慰留を振り切り、館まで一緒に

(あるいていくといいはるのも、おもいとどまらせた。ろうじんのめがとどくあいだ、わたしはみちを)

歩いていくと言い張るのも、思いとどまらせた。老人の目が届く間、私は道を

(はずれなかったが、そのあとでこうやにあしをふみいれ、しょうねんがこえてきえていった)

外れなかったが、その後で荒野に足を踏み入れ、少年が越えて消えていった

(いわだらけのおかをめざした。すべてはおもいどおりにはこんだ。そしてわたしは、こううんがわたしに)

岩だらけの丘を目指した。全ては思い通りに運んだ。そして私は、幸運が私に

(もたらしたこのちゃんすをのがさないため、すべてのかつりょくとにんたいりょくをふりしぼると)

もたらしたこのチャンスを逃さないため、すべての活力と忍耐力を振り絞ると

(こころにちかった。わたしがおかのいただきについたとき、たいようはすでにしずみかけていた。そしてがんかの)

心に誓った。私が丘の頂に着いた時、太陽は既に沈みかけていた。そして眼下の

(しゃめんは、かたがわがきんいろにかがやくみどりで、そのはんたいがわははいいろのかげになっていた。とおくの)

斜面は、片側が金色に輝く緑で、その反対側は灰色の陰になっていた。遠くの

(すいへいせんにはもやがひくくたれこめ、そこからきみょうなかたちのべりヴぃあいわと)

水平線にはもやが低く垂れ込め、そこから奇妙な形のベリヴィア岩と

(ヴぃくせんいわがつきだしていた。こうだいはこうけいはしずまりかえり、うごくものは)

ヴィクセン岩が突き出していた。広大は光景は静まり返り、動くものは

(なかった。かもめかしぎのようなおおきなはいいろのとりがいちわ、あおいそらたかく)

なかった。カモメかシギのような大きな灰色の鳥が一羽、青い空高く

(とんでいた。きょだいなてんがいとそのしたのあれはてただいちに、せいめいをはぐくむものは、)

飛んでいた。巨大な天蓋とその下の荒れ果てた大地に、生命を育むものは、

(そのとりとわたしだけのようにかんじられた。このこうりょうとしたふうけい、こどくだというじっかん、)

その鳥と私だけのように感じられた。この荒涼とした風景、孤独だという実感、

(そしてわたしのしごとのなぞときんきゅうせい、すべてがさむざむしくわたしのこころをうった。しょうねんのすがたは)

そして私の仕事の謎と緊急性、全てが寒々しく私の心を打った。少年の姿は

(どこにもみえなかった。しかしわたしのがんかにおかのさけめがあり、そこにふるいいしの)

どこにも見えなかった。しかし私の眼下に丘の裂け目があり、そこに古い石の

(こやがわになっていた。そしてそのちゅうしんに、なんとかあまかぜをしのげるやねが)

小屋が環になっていた。そしてその中心に、何とか雨風をしのげる屋根が

(のこっているこやがあった。そのこやをめにしてわたしのしんぞうはたかなった。これが)

残っている小屋があった。その小屋を目にして私の心臓は高鳴った。これが

(あのふしんしゃがひそんでいるかくれがにちがいない。ついにわたしはかれのかくれがのとぐちに)

あの不審者が潜んでいる隠れ家に違いない。ついに私は彼の隠れ家の戸口に

(たった、 かれのひみつはわたしのてのとどくところにあった。まるですていぷるとんが)

立った、―彼の秘密は私の手の届くところにあった。まるでステイプルトンが

(むしとりもうをてにしてとまったちょうににじりよるように、わたしはしんちょうにほをすすめながら)

虫取り網を手にして止まった蝶ににじり寄るように、私は慎重に歩を進めながら

(そのこやにちかづいた。そして、わたしはそのこやがじっさいにじゅうきょとしてつかわれていると)

その小屋に近づいた。そして、私はその小屋が実際に住居として使われていると

(かくしんした。きょせきのあいだにはなんとなくみちのようなものがあり、とびらとなっている)

確信した。巨石の間にはなんとなく道のようなものがあり、扉となっている

(あれはてたかいこうぶまでつづいていた。なかはしずまりかえっていた。みちのじんぶつがそこに)

荒れ果てた開口部まで続いていた。中は静まり返っていた。未知の人物がそこに

(ひそんでいるか、こうやをうろついているかはわからなかった。これからなにが)

潜んでいるか、荒野をうろついているかは分からなかった。これから何が

(おきるかをそうぞうすると、せすじがぞくぞくした。わたしは、わきにたばこをなげすて、)

起きるかを想像すると、背筋がゾクゾクした。私は、脇に煙草を投げ捨て、

(けんじゅうをにぎると、とびらにむかってすばやくあるきながらなかをのぞきこんだ。だれも)

拳銃を握ると、扉に向かって素早く歩きながら中を覗きこんだ。誰も

(いなかった。しかしこやのなかには、ここがもくてきのばしょだというしょうこがたくさん)

いなかった。しかし小屋の中には、ここが目的の場所だという証拠が沢山

(のこされていた。たしかにあのおとこは、ここにすんでいる。もうふがなんまいかまるめたものが)

残されていた。確かにあの男は、ここに住んでいる。毛布が何枚か丸めたものが

(ぼうすいしにつつまれて、しんせっきじだいのにんげんがねていたいわのあついたのうえにおいてあった。)

防水紙に包まれて、新石器時代の人間が寝ていた岩の厚板の上に置いてあった。

(おおざっぱなひどこにはひのもえたあとがたいせきしていた。そのよこに、いくつかのちょうりどうぐと)

大雑把な火床には火の燃えた跡が堆積していた。その横に、幾つかの調理道具と

(みずがはんぶんはいったばけつがあった。あきかんがさんらんしており、このこやにかなりのきかん)

水が半分入ったバケツがあった。空缶が散乱しており、この小屋にかなりの期間

(ひとがすんでいたことをものがたっていた。そしてひかりとかげのあみめもようにめがなれて)

人が住んでいたことを物語っていた。そして光と影の網目模様に目が慣れて

(きたとき、きんぞくせいこっぷとはんぶんなかみのはいったさかびんがすみにおいてあるのがめに)

来た時、金属製コップと半分中身の入った酒瓶が隅に置いてあるのが目に

(とまった。こやのまんなかには、てーぶるとしてつかわれているたいらないしがあり、)

とまった。小屋の真中には、テーブルとして使われている平らな石があり、

(そのうえにちいさなぬののつつみがおいてあった。それは、まちがいなくわたしがぼうえんきょうで)

その上に小さな布の包みが置いてあった。それは、間違いなく私が望遠鏡で

(のぞいたとき、しょうねんがかたにかけていたつつみだった。そのなかにはぱんのかたまり、たんのかんづめ)

覗いた時、少年が肩にかけていた包みだった。その中にはパンの塊、タンの缶詰

(もものかんづめがにこはいっていた。そのつつみをしらべたあとで、もういちどおろそうとしたとき)

桃の缶詰が二個入っていた。その包みを調べた後で、もう一度下ろそうとした時

(じがかかれたかみがそこにはいっているのをみて、はっとした。わたしはそのかみを)

字が書かれた紙が底に入っているのを見て、ハッとした。私はその紙を

(とりだした。えんぴつであらあらしく、こうかきなぐられていた。わとそんはかせは)

取りだした。鉛筆で荒々しく、こう書きなぐられていた。「ワトソン博士は

(くーむとれーしーにいった わたしはこのみじかいぶんがなにをいみするのかをかんがえ、)

クーム・トレーシーに行った」私はこの短い文が何を意味するのかを考え、

(しばらくかみをてにしたままたっていた。ということは、なぞのおとこにつけまとわれて)

しばらく紙を手にしたまま立っていた。ということは、謎の男につけまとわれて

(いたのは、さーへんりーではなく、わたしだったのか。このじんぶつはじぶんでわたしを)

いたのは、サー・ヘンリーではなく、私だったのか。この人物は自分で私を

(つけるのではなく、だいりひとをつかって、 たぶんあのしょうねんだ 、わたしのあとを)

つけるのではなく、代理人を使って、―多分あの少年だ―、私の後を

(つけていた。そしてこれがだいりにんからのほうこくだ。もしかするとこうやにきていらい、)

つけていた。そしてこれが代理人からの報告だ。もしかすると荒野に来て以来、

(わたしのこうどうはちくいちかんしされ、ほうこくされていたのかもしれない。わたしは、ずっとこまかい)

私の行動は逐一監視され、報告されていたのかもしれない。私は、ずっと細かい

(あみがまわりはりめぐらされているような、めにみえないあつりょくをかんじていた。)

網が周り張り巡らされているような、目に見えない圧力を感じていた。

(はかりしれないこうみょうさとせんさいさでひじょうにかるくほういされているので、じぶんがじっさいに)

計り知れない巧妙さと繊細さで非常に軽く包囲されているので、自分が実際に

(そのあみにとらわれているときづくのは、ほんとうにとくべつなしゅんかんだけだ。)

その網に捕らわれていると気づくのは、本当に特別な瞬間だけだ。

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