吸血鬼4

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プレイ回数2405難易度(5.0) 5009打 長文 長文モード可
明智小五郎シリーズ
江戸川乱歩の作品です。句読点以外の記号は省いています。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 zero 6180 A++ 6.3 96.8% 784.4 5013 165 71 2024/03/10
2 みき 6178 A++ 6.3 98.0% 787.4 4963 98 71 2024/03/21
3 ねね 4216 C 4.3 97.1% 1155.8 5023 150 71 2024/03/10

関連タイピング

問題文

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(それはにまいのしゃしんであった。いちまいはおとこ、いちまいはおんな。だがあたりまえのしゃしんではない。)

それは二枚の写真であった。一枚は男、一枚は女。だが当り前の写真ではない。

(しずこがとびしさったのももっともだ。これよりむごたらしくころしようは)

倭文子が飛びしさったのも尤もだ。これよりむごたらしく殺しようは

(ないとおもわれるほど、ざんこくにきりさいなまれた、しにんのしゃしんなのだ。)

ないと思われる程、残酷に斬りさいなまれた、死人の写真なのだ。

(はんざいがくのしょもつのさしえをみなれたひとには、さしてめずらしいすがたではないが、)

犯罪学の書物の挿絵を見慣れた人には、さして珍しい姿ではないが、

(おんなのしずこには、えそらごとでないしゃしんであるだけに、ほんとうのざんしたいをみたとおなじ、)

女の倭文子には、絵空事でない写真であるだけに、本当の惨死体を見たと同じ、

(むねのわるくなるようなこわさであった。おとこもおんなも、くびがはなれてしまうほど、ふかいきりきずを)

胸の悪くなる様な怖さであった。男も女も、首が放れてしまう程、深い斬り傷を

(うけて、そのきずぐちがぽっかりと、ものすごく、くちをひらいていた。めは、きょうふのために、)

受けて、その傷口がポッカリと、物凄く、口を開いていた。目は、恐怖の為に、

(がんかをとびだすほども、みひらかれ、くちからはおびただしいまっくろなちのりが、あごをつたわって)

眼窩を飛び出す程も、見開かれ、口からは夥しい真黒な血のりが、顎を伝わって

(むねまでそめていた。なんでもないんですよ。あのおとこ、まるでこどもみたいないたずらを)

胸まで染めていた。「何でもないんですよ。あの男、まるで子供みたいな悪戯を

(するじゃありませんか みたにがいうので、しずこはこわいものみたさに、)

するじゃありませんか」三谷がいうので、倭文子は怖いもの見たさに、

(またちかよって、ぶきみなすがたをのぞきこんだ。でも、なんだかへんねえ。こんなに)

また近寄って、不気味な姿を覗き込んだ。「でも、なんだか変ねえ。こんなに

(きちんとこしかけてころされているなんて いわれてみると、なるほどへんだ。)

キチンと腰かけて殺されているなんて」いわれて見ると、なる程変だ。

(ざんしたいのしゃしんは、といたのうえかなんかにころがっているのがふつうなのに、このしたいは)

惨死体の写真は、戸板の上かなんかに転がっているのが普通なのに、この死体は

(いきにんぎょうみたいに、ぎょうぎよくいすにこしかけている。くびをきられながら、ちゃんと)

生き人形みたいに、行儀よく椅子に腰かけている。首を斬られながら、チャンと

(しょうめんをむいている。ふしぜんなだけに、いっそうこわいかんじだ。みたにもしずこも、せなかを)

正面を向いている。不自然なだけに、一層怖い感じだ。三谷も倭文子も、背中を

(ぞーっと、こおりのようにつめたいものがはいあがるのをおぼえた。みているとなんだか)

ゾーッと、氷の様に冷たいものが這い上るのを覚えた。見ていると何だか

(えたいのしれぬ、ひじょうにぶきみなものが、じわじわと、しゃしんのなかから、)

えたいの知れぬ、非常に不気味なものが、ジワジワと、写真の中から、

(にじみだしてくるようなきがする。きずやちのりでよごれたうしろから、ぞっとするような)

滲み出して来る様な気がする。傷や血のりで汚れたうしろから、ゾッとする様な

(ものが、こちらにわらいかけているのをかんじる。あ。いけない。)

ものが、こちらに笑いかけているのを感じる。「ア。いけない。

(あなたみるんじゃありません とつぜん、みたにはさけんで、しゃしんをうらがえしに)

あなた見るんじゃありません」突然、三谷は叫んで、写真を裏返しに

など

(してしまった。やっとかれはそのしゃしんのおそろしいいみを、さとることができたのだ。)

してしまった。やっと彼はその写真の恐ろしい意味を、悟ることが出来たのだ。

(だが、もうおそかった。まあ、やっぱり、そうですの?しずこはまっさおなかおだ。)

だが、もう遅かった。「マア、やっぱり、そうですの?」倭文子は真青な顔だ。

(そうなのです。・・・・・・あいつはなんというしゅうあくなかいぶつだろう?)

「そうなのです。・・・・・・あいつは何という醜悪な怪物だろう?」

(しゃしんのなかで、むごたらしくきりころされているのは、だれでもない、みたにと)

写真の中で、むごたらしく斬り殺されているのは、誰でもない、三谷と

(しずこであったのだ。おもいだすと、いつかおかだとさんにんで、まちへさんぽにでたとき、)

倭文子であったのだ。思い出すと、いつか岡田と三人で、町へ散歩に出た時、

(しゃしんやをみつけて、さんにんいっしょのや、ひとりずつのや、いくまいもしゃしんをとったことが)

写真屋を見つけて、三人一緒のや、一人ずつのや、幾枚も写真を撮ったことが

(ある。そのときおたがいにこうかんしあったしゃしんに、おかだはたくみなかひつをして、むざんな)

ある。その時お互に交換し合った写真に、岡田は巧みな加筆をして、無残な

(したいをつくりあげたのだ。ようがかのかれには、そんなことはなんでもないしごとである。)

死体を作り上げたのだ。洋画家の彼には、そんなことは何でもない仕事である。

(さすがに、ちょっとしたかひつで、そうごうがまるでかわり、ぞっとするようなしそうが)

流石に、一寸した加筆で、相好がまるで変り、ゾッとする様な死相が

(あらわれている。ふたりがじぶんのすがたときづかなかったのもむりはない。)

現れている。二人が自分の姿と気附かなかったのも無理はない。

(おかだはどこにいるかときくと、ちょっととうきょうへいって、にもつなどはそのままのこし、)

岡田はどこにいるかと聞くと、一寸東京へいって、荷物などはそのまま残し、

(いそいでしゅっぱつしたということであった。とけいをみれば、さいぜんおかだがたちさってから)

急いで出発したということであった。時計を見れば、さい前岡田が立去ってから

(ゆめのうちににじかんほどもたっていた。ああ、なんというふきつなおきみやげだ。あまりにも)

夢の内に二時間程もたっていた。アア、何という不吉な置土産だ。余りにも

(ねんいりなこのいたずらが、なにかおそろしいできごとのまえぶれでなければよいが。)

念入りなこの悪戯が、何か恐ろしい出来事の前ぶれでなければよいが。

(くちびるのないおとこ)

唇のない男

(こいびとたちのこのふきつなよかんは、ふこうにして、まもなくてきちゅうするときがきた。)

恋人達のこの不吉な予感は、不幸にして、間もなく適中する時が来た。

(まったくそうぞうさえしなかったおそろしいじけんがおこった。おかだみちひこがかいしゃしんをのこして)

全く想像さえしなかった恐ろしい事件が起った。岡田道彦が怪写真を残して

(たちさってから、はんつきほどたったあるひ)

立去ってから、半月ほどたったある日(彼はその間も一度も鹽原へ

(みたにやしずこのとまっているおなじやどへ、よにもきかいないちじんぶつが)

帰って来なかった)三谷や倭文子の泊っている同じ宿へ、世にも奇怪な一人物が

(とうしゅくした。ちんじというのは、まるでそのじんぶつがあくまのつかわしめでも)

投宿した。椿事というのは、まるでその人物が悪魔のつかわしめでも

(あったように、かれがやどについたちょうどそのひにとっぱつしたのだ。ぐうぜんのいっちには)

あった様に、彼が宿についた丁度その日に突発したのだ。偶然の一致には

(そういない。だが、なにかしらいようないんねんをかんじないではいられぬ。そのじんぶつは、)

相違ない。だが、何かしら異様な因縁を感じないではいられぬ。その人物は、

(あとあとまで、このものがたりにじゅうようなかんけいをもっているので、ここにややくわしく)

後々まで、この物語に重要な関係を持っているので、ここにやや詳しく

(そのふうぼうをしるしておくひつようがある。こうようがいろづきはじめ、ゆさんきゃくもひごとに)

その風ぼうを記しておく必要がある。紅葉が色づき始め、遊山客も日毎に

(ふえていくきせつなのに、そのひは、しょぼしょぼあめがふっていたせいもあるが、)

ふえて行く季節なのに、その日は、しょぼしょぼ雨が降っていたせいもあるが、

(まひともいうのか、しおのゆaかんには、みょうにきゃくのすくないひであった。ゆうがたになって、)

魔日ともいうのか、鹽の湯A館には、妙に客の少い日であった。夕方になって、

(やっといちだい、かしきりじどうしゃがげんかんによこづけになった。なかから、ちょっとみたのでは、)

やっと一台、貸切自動車が玄関に横づけになった。中から、一寸見たのでは、

(ろくじゅっさいいじょうの、よぼよぼのじいさんが、うんてんしゅのうでにすがっておりてきた。)

六十歳以上の、ヨボヨボの爺さんが、運転手の腕にすがって降りて来た。

(なるべくきんじょにきゃくのないへやへね ろうじんはふがふがとはなへぬける、)

「なるべく近所に客のない部屋へね」老人はフガフガと鼻へ抜ける、

(ふめいりょうなこえで、ぶっきらぼうにいって、しきだいをあがった。ひどくあしがわるいらしく)

不明瞭な声で、ぶっきら棒にいって、敷台を上った。ひどく足が悪いらしく

(ろうかのうえでも、すてっきをはなさない。びっこで、はなくたの、うすきみわるい)

廊下の上でも、ステッキを離さない。びっこで、鼻くたの、薄気味悪い

(おきゃくさまだ。しかし、したておろしのあいとんびをはじめ、ふくそうがなかなかりっぱなので、)

お客さまだ。しかし、仕立卸しの合いトンビを初め、服装が仲々立派なので、

(しょうしょうかたわものでも、やどのものはていちょうにとりあつかった。かいかのいっしつへとおされると、かれは)

少々片輪者でも、宿の者は鄭重に取扱った。階下の一室へ通されると、彼は

(なによりもさきに、なんどもききかえさなければならない、ふめいりょうなことばで、)

何よりも先に、何度も聞き返さなければならない、不明瞭な言葉で、

(こんなことをたずねた。ねえさん、ここにやなぎしずこといううつくしいおんなが)

こんなことをたずねた。「姉さん、ここに柳倭文子という美しい女が

(とまっているかね おとまりですと、しょうじきにこたえると、そのへやはどこだとか、)

泊っているかね」お泊りですと、正直に答えると、その部屋はどこだとか、

(おとこともだちのみたにせいねんとは、どんなふうにしているかと、ふがふがとねほりはほり)

男友達の三谷青年とは、どんな風にしているかと、フガフガと根掘り葉掘り

(たずねたうえ、しずこたちに、わしがこんなことをたずねたといってはいけない。)

たずねた上、倭文子達に、わしがこんなことをたずねたといってはいけない。

(くちどめりょうだ、とじゅうえんしへいをほうりだした。あれはなんでしょう。きみがわるいわ)

口止料だ、と十円紙幣を抛り出した。「あれは何でしょう。気味が悪いわ」

(ろうじんのしょくじがすんで、おぜんをさげてきたじょちゅうが、ろうかのすみで、べつのじょちゅうをとらえて)

老人の食事が済んで、お膳をさげて来た女中が、廊下の隅で、別の女中を捕えて

(ひそひそささやいた。あのひと、いくつくらいだとおもって!そうね、もちろんろくじゅううえだわ)

ヒソヒソ囁いた。「あの人、幾つ位だと思って!」「そうね、勿論六十上だわ」

(いいえ、それがほんとうはずっとわかいらしいのよ だってあんなまっしろなあたまを)

「イイエ、それが本当はずっと若いらしいのよ」「だってあんな真白な頭を

(しているじゃないの?ええ、だから、なおさらおかしいのよ、あのしらがだって、)

しているじゃないの?」「エエ、だから、猶更おかしいのよ、あの白髪だって、

(ほんとうにじぶんのかみだかどうだか。それからいろめがねでめをかくしているでしょう。)

本当に自分の髪だかどうだか。それから色眼鏡で目を隠しているでしょう。

(へやのなかでもますくをかけて、くちのあたりをかくしているでしょう そのうえ、ぎしゅと)

部屋の中でもマスクをかけて、口の辺を隠しているでしょう」「その上、義手と

(ぎそくね そうそう、ひだりのてとみぎのあしが、じぶんのではないのよ。ごはんを)

義足ね」「そうそう、左の手と右の足が、自分のではないのよ。ご飯を

(たべるのだって、それやふじゆうなの あのますく、ごはんのときには)

たべるのだって、それや不自由なの」「あのマスク、ご飯の時には

(とったでしょう ええ、とったわ。まあ、あたし、ぞーっとしてしまった。)

取ったでしょう」「エエ、取ったわ。マア、あたし、ゾーッとしてしまった。

(ますくのしたになにがあったとおもって?なにがあったの?あいてのじょちゅうは、)

マスクの下に何があったと思って?」「何があったの?」相手の女中は、

(かのじょじしんぞっとしたように、うすぐらいろうかのすみをみまわした。なにもないの。いきなり)

彼女自身ゾッとした様に、薄暗い廊下の隅を見廻した。「何もないの。いきなり

(あかいはぐきとしろいはがむきだしになっているの。つまりあのひとはくちびるがないのよ)

赤い歯ぐきと白い歯がむき出しになっているの。つまりあの人は唇がないのよ」

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