吸血鬼15
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | kuma | 4789 | B | 5.2 | 92.0% | 926.0 | 4857 | 422 | 66 | 2024/10/27 |
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問題文
(だが、いまのよに、そんなばかばかしいことがあるだろうか。あ、あんた、ちょっと)
だが、今の世に、そんな馬鹿馬鹿しいことがあるだろうか。「ア、あんた、一寸
(まってください つねかわけいぶは、さいぜんのとおりがかりのひとが、すれちがっていくのを)
待って下さい」恒川警部は、さい前の通りがかりの人が、すれ違って行くのを
(よびとめた。かれはじつにへんなことをかんがえたのだった。さっきのかいぶつが、とっさのあいだに)
呼びとめた。彼は実に変なことを考えたのだった。さっきの怪物が、咄嗟の間に
(ふうていをかえて、つうこうにんにばけて、なにげなくにげさるのではないかとおもったのだ。)
風体を変えて、通行人に化けて、何気なく逃去るのではないかと思ったのだ。
(え、なにかごようですか そのおとこは、びっくりしたようにふりかえる。けいぶはぶえんりょに)
「エ、何か御用ですか」その男は、びっくりしたように振返る。警部は無遠慮に
(おとこのかおをのぞきこんだが、むろん、かいぶつとはにてもにつかぬ、ととのったようぼうのせいねんだ。)
男の顔を覗き込んだが、無論、怪物とは似ても似つかぬ、整った容貌の青年だ。
(からだのかっこうから、ふくそうから、なにひとつにかよったところはない。だいいち、そのせいねんが)
身体の格好から、服装から、何一つ似通った所はない。第一、その青年が
(かいぶつでないしょうこには、ひだりてみぎあしともにかんぜんで、ぎしゅもぎそくもつけていないのだ。)
怪物でない証拠には、左手右足共に完全で、義手も義足もつけていないのだ。
(いやいや、もっとたしかなしょうこがある。というのは、つねかわしがねんのために、そのおとこの)
いやいや、もっと確な証拠がある。というのは、恒川氏が念の為に、その男の
(せいめいをたずねると、かれはじつにいがいなこたえをしたのである。ぼくですか。ぼくは)
姓名を尋ねると、彼は実に意外な答えをしたのである。「僕ですか。僕は
(みたにふさおというものです それをきくと、おってにくわわっていた、こうじまちしょのじゅんさが)
三谷房夫というものです」それを聞くと、追手に加わっていた、麹町署の巡査が
(びっくりしてこえをかけた。ああ、みたにさんでしたか。あなたはこのへんにおすまい)
びっくりして声をかけた。「アア、三谷さんでしたか。あなたはこの辺にお住い
(なんですか ええ、ついこのさきのあおやまあぱーとにいるんです このひとなら、)
なんですか」「エエ、ついこの先の青山アパートにいるんです」「この人なら、
(はたやなぎけのしりあいのひとですよ、ほら、せんだって、うえのこうえんのじけんのとき、はたやなぎふじんに)
畑柳家の知合の人ですよ、ホラ、先だって、上野公園の事件のとき、畑柳夫人に
(ばけて、こどもをとりもどしにいった、あのみたにさんです じゅんさはせいねんをみおぼえていて)
化けて、子供を取り戻しに行った、あの三谷さんです」巡査は青年を見覚ていて
(いちどうにしょうかいした。つねかわしもみたにのなはきいていた。きょうもゆうがたまではたやなぎにいて)
一同に紹介した。恒川氏も三谷の名は聞いていた。「今日も夕方まで畑柳にいて
(さっきかえってしょくじとにゅうよくをすませたばかりです。それにしても、あなたがたは、)
さっき帰って食事と入浴をすませたばかりです。それにしても、あなた方は、
(やっぱりはたやなぎのじけんで・・・・・・そうです。またきみょうなさつじんじけんがあって、)
やっぱり畑柳の事件で……」「そうです。また奇妙な殺人事件があって、
(そのはんにんとおぼしきかいぶつをここまでおいつめたのですが・・・・・・とつねかわしは、)
その犯人と覚しき怪物をここまで追いつめたのですが……」と恒川氏は、
(てみじかにしさいをかたった。ああ、そのばけものなら、しずこさんが、いちどしおばらおんせんで)
手短に仔細を語った。「アア、その化物なら、倭文子さんが、一度鹽原温泉で
(すがたをみたことがありますよ。すると、あれはやっぱりまぼろしではなかったのだ。)
姿を見たことがありますよ。すると、あれはやっぱり幻ではなかったのだ。
(こんどのじけんには、さいしょから、そいつがかんけいしていたにちがいありません)
今度の事件には、最初から、そいつが関係していたに違いありません」
(ほう、そんなことがあったのですか。それではなおさら、あのばけものを)
「ホウ、そんなことがあったのですか。それでは猶更、あの化物を
(ひっとらえなければならん。しかし、いったいどうしてきえうせてしまったのか、すこしも)
引捕えなければならん。しかし、一体どうして消失せてしまったのか、少しも
(けんとうがつかぬのです いや。それについて、おもいあたることがあります みたには)
見当がつかぬのです」「イヤ。それについて、思い当ることがあります」三谷は
(いっぽうのこんくりーとべいをみあげながら、ちょうしをかえていった。このへいのむこうに)
一方のコンクリート塀を見上げながら、調子を変えていった。「この塀の向うに
(みょうないえがあるのです。ぼくはよくこのへんをとおるので、きをつけてみているのですが)
妙な家があるのです。僕はよくこの辺を通るので、気をつけて見ているのですが
(いつもとがしめてあってあきやかとおもうと、よなかにともしびがもれていたりする、)
いつも戸が締めてあって空家かと思うと、夜中に燈火が漏れていたりする、
(じつにへんないえです。ひとのなきさけぶこえをきいたというものもあるくらいで、きんじょでは)
実に変な家です。人の泣き叫ぶ声を聞いたという者もある位で、近所では
(ばけものやしきだといっているのです。もしや、そのかいぶつは、どうかしてこのへいを)
化物屋敷だといっているのです。若しや、その怪物は、どうかしてこの塀を
(のりこして、いまいうばけものやしきへはいったのではないでしょうか。そこが、)
乗り越して、今いう化物屋敷へはいったのではないでしょうか。そこが、
(あくにんたちのそうくつではありますまいか あとになって、かんがえると、このへいがいで、)
悪人達の巣窟ではありますまいか」あとになって、考えると、この塀外で、
(けいかんたちがぐうぜんにもみたにせいねんにであったのが、あくまのうんのつきであった。)
警官達が偶然にも三谷青年に出会ったのが、悪魔の運の尽きであった。
(ともかくも、みたにのいったかいやをしらべてみることにして、ひとりのじゅんさを、ねんのために)
とも角も、三谷のいった怪屋を検べて見ることにして、一人の巡査を、念の為に
(へいのところへのこしておいて、みたにせいねんをせんとうに、つねかわけいぶともうひとりのじゅんさとが)
塀の所へ残して置いて、三谷青年を先頭に、恒川警部ともう一人の巡査とが
(うかいして、そのいえのおもてぐちにまわった。おなじようなもんがまえで、いっけんだちの、)
迂廻して、その家の表口に廻った。同じ様な門構えで、一軒立ちの、
(さしてひろくないていがならんでいる。かいやというのは、そのいっぽうのはしにあるのだ。)
さして広くない邸が並んでいる。怪屋というのは、その一方の端にあるのだ。
(もんのとはあけっぱなしだ。さんにんはかまわずもんないにはいって、げんかんのこうしどをひいて)
門の戸は開っ放しだ。三人はかまわず門内に入って、玄関の格子戸を引いて
(みると、なんのてごたえもなく、がらがらとひらいた。なかはまっくらだ。こえをかけても、)
見ると、何の手答えもなく、ガラガラと開いた。中は真暗だ。声をかけても、
(だれもでてくるものはない。なるほどへんないえである。まだよいのうちとはいえ、なんという)
誰も出て来るものはない。なる程変な家である。まだ宵の内とはいえ、何という
(ぶようじんなことであろう。あくにんのそうくつだとすれば、なおさらのことだ。それとも、)
不用心なことであろう。悪人の巣窟だとすれば、なお更のことだ。それとも、
(こうしてあけっぱなしにしておくのが、きゃつのふかいたくらみなのだろうか。)
こうして開けっ放しにしておくのが、彼奴の深いたくらみなのだろうか。
(さすがに、むやみにふみこむわけにもいかぬので、いちどうげんかんのどまにためらっていると、)
流石に、無暗に踏込む訳にも行かぬので、一同玄関の土間にためらっていると、
(おくのほうから、かすかにだれかのなきじゃくるこえがもれてきた。ないている。)
奥の方から、幽かに誰かの泣きじゃくる声が漏れて来た。「泣いている。
(こどものようだね つねかわしがききみみをたてた。ああ、あのこえははたやなぎのしげるさんじゃ)
子供の様だね」恒川氏が聞き耳を立てた。「アア、あの声は畑柳の茂さんじゃ
(ないでしょうか みたにがふときづいてささやいた。しげる?はたやなぎふじんのこどもですね。)
ないでしょうか」三谷がふと気づいて囁いた。「茂?畑柳夫人の子供ですね。
(そうだ。ここがはたしてはんにんのすみかだとすれば、そのこどもも、はたやなぎふじんも、)
そうだ。ここが果して犯人の住家だとすれば、その子供も、畑柳夫人も、
(このいえのどこかにとじこめられているはずだ。・・・・・・ふんこんでみましょう)
この家のどこかにとじこめられている筈だ。……踏ん込んで見ましょう」
(つねかわけいぶはりんきのしょちをとるけっしんをした。きみはもんのそとへでて、にげだすやつが)
恒川警部は臨機の所置をとる決心をした。「君は門の外へ出て、逃げ出す奴が
(あったら、ひっとらえてくれたまえ かれはかたわらのじゅんさにめいじておいて、みたにとともに、)
あったら、引捕えてくれ給え」彼は傍らの巡査に命じて置いて、三谷と共に、
(げんかんのしきだいをあがった。まっくらなへやべやを、てさぐりでさがしまわったが、ひとのけはいも)
玄関の式台を上った。真暗な部屋部屋を、手探りで探し廻ったが、人の気配も
(せぬ。ふたりはおもいきって、てわけをして、ひとへやひとへや、でんとうをつけてまわる)
せぬ。二人は思い切って、手分けをして、一部屋一部屋、電燈をつけて廻る
(ことにした。つねかわけいぶは、さいごに、もっともおくまったざしきへふみこんだが、)
ことにした。恒川警部は、最後に、最も奥まった座敷へ踏み込んだが、
(どのへやも、どのへやも、からっぽなので、ここもどうせあきべやであろうと、)
どの部屋も、どの部屋も、空っぽなので、ここもどうせ空部屋であろうと、
(たかをくくって、なにげなくすいっちをひねると!あっとおもうあいだに、くろいかぜのような)
高を括って、何気なくスイッチをひねると!アッと思う間に、黒い風の様な
(ものが、へやをよこぎって、いっぽうのろうかへとびだした。や、くせもの!けいぶの)
ものが、部屋を横切って、一方の廊下へ飛び出した。「ヤ、曲者!」警部の
(こえに、あやしいおとこは、しきいをまたぎながら、ひょいとふりかえった。そのかお!はたやなぎけの)
声に、怪しい男は、敷居をまたぎながら、ひょいと振返った。その顔!畑柳家の
(へいのうえでわらっていた、あのがいこつみたいなやつだ。くちびるのないおとこだ。みたにくん、)
塀の上で笑っていた、あの骸骨みたいな奴だ。唇のない男だ。「三谷君、
(あいつだ。あいつがそちらへにげた。ひっとらえてくれ けいぶはわめきながら、)
あいつだ。あいつがそちらへ逃げた。ひっとらえてくれ」警部はわめきながら、
(ろうかへとびだしてかいぶつをおいかけた。どこです。どこです ろうかのいきどまりの)
廊下へ飛出して怪物を追駈けた。「どこです。どこです」廊下の行止りの
(へやからみたにのこえがきこえた。とびだしてくるひとかげ。つねかわしは、ろうかのまんなかで)
部屋から三谷の声が聞えた。飛び出して来る人影。恒川氏は、廊下の真中で
(みたにせいねんにぶつかった。あのがいこつみたいなやつだ。きみはすれちがわなかったか)
三谷青年にぶつかった。「あの骸骨みたいな奴だ。君はすれ違わなかったか」
(いいえ、こちらのへやへはだれもきませんよ かいぶつはたしかに、ろうかをひだりへまがった。)
「イイエ、こちらの部屋へは誰も来ませんよ」怪物は確に、廊下を左へ曲った。
(そのほうがくにはみたにのでてきたへやがあるばかりで、りょうがわはしめきったあまどと)
その方角には三谷の出て来た部屋があるばかりで、両側は閉め切った雨戸と
(かべだ。かいぶつはふたたび、いちしゅんかんにしてきえうせてしまったのである。またしても)
壁だ。怪物は再び、一瞬間にして消え失せてしまったのである。またしても
(あくまのようじゅつだ!)
悪魔の妖術だ!