黒蜥蜴
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | daifuku | 3401 | D | 3.6 | 93.8% | 1159.6 | 4221 | 277 | 60 | 2024/10/24 |
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問題文
(あんこくがいのじょおう)
暗黒街の女王
(このくにでもいちやにすうせんばのしちめんちょうがしめられるという、あるくりすます・いヴの)
この国でも一夜に数千羽の七面鳥がしめられるという、あるクリスマス・イヴの
(できごとだ。ていとさいだいのいんしんちたい、ねおん・らいとのやみよのにじが、いくまんのつうこうしゃを)
出来事だ。帝都最大の殷賑地帯、ネオン・ライトの闇夜の虹が、幾万の通行者を
(ごしきにそめるgがい、そのおもてどおりをいっぽうらへはいると、そこにこのみやこのあんこくがいが)
五色にそめるG街、その表通りを一歩裏へ入ると、そこにこの都の暗黒街が
(よこたわっている。gがいのほうは、ごごじゅういちじともなれば、よるのじんしゅにとっては)
横たわっている。G街の方は、午後十一時ともなれば、夜の人種にとっては
(まことにあっけなく、しかしていとのだいひょうがいにふさわしいぎょうぎよさで、ほとんど)
まことにあっけなく、しかし帝都の代表街にふさわしい行儀よさで、ほとんど
(ひとどおりがとだえてしまうのだが、それとひきちがいに、せなかあわせのあんこくがいが)
人通りがとだえてしまうのだが、それと引き違いに、背中合わせの暗黒街が
(にぎわいはじめ、ごぜんにじさんじごろまでも、だんじょのあくなききょうらくじどもが、まどを)
にぎわい始め、午前二時三時頃までも、男女のあくなき享楽児どもが、窓を
(とざしたたてもののうすくらがりのなかに、うようよとうごめきつづける。いまもいうある)
とざした建物の薄くらがりの中に、ウヨウヨとうごめきつづける。今もいうある
(くりすます・いヴのごぜんいちじごろ、そのあんこくがいのとあるきょだいなたてもの、がいぶから)
クリスマス・イヴの午前一時頃、その暗黒街のとある巨大な建物、外部から
(みたのではまるであきやのようなまっくらなたてもののなかに、けたはずれな、きょうきめいた)
見たのではまるで空家のようなまっ暗な建物の中に、けたはずれな、狂喜めいた
(だいやかいが、いま、さいこうちょうにたっしていた。ないとくらぶのひろびろとしたふろあに、)
大夜会が、今、最高潮に達していた。ナイトクラブの広々としたフロアに、
(すうじゅうにんのだんじょが、あるものはさかずきをあげてぶらぼーをさけび、あるものはだんだらぞめの)
数十人の男女が、或る者は盃をあげてブラボーを叫び、或る者はだんだら染めの
(とがりぼうしをよこっちょにしておどりくるい、あるものはにげまどうしょうじょをごりらの)
尖り帽子を横っちょにして躍りくるい、或る者はにげまどう少女をゴリラの
(かっこうでおいまわし、あるものはなきわめき、あるものはいかりくるっているうえを、)
格好で追いまわし、或る者は泣きわめき、或る者は怒りくるっている上を、
(ごしきにふんしがゆきとまい、ごしきのてーぷがたきとおち、かずしれぬあおあかのふうせんだまが、)
五色に粉紙が雪と舞い、五色のテープが滝と落ち、数知れぬ青赤の風船玉が、
(むせかえるたばこのけむりのくものなかを、とまどいをしてみだれとんでいた。)
むせかえる煙草のけむりの雲の中を、とまどいをしてみだれ飛んでいた。
(やあ、だーく・えんじぇるだ。だーく・えんじぇるだ くろてんしの)
「やあ、ダーク・エンジェルだ。ダーク・エンジェルだ」「黒天使の
(ごにゅうらいだぞ ぶらぼー、じょおうさまばんざい!くちぐちにわめくよいどれのこえごえが)
御入来だぞ」「ブラボー、女王様ばんざい!」口々にわめく酔いどれの声々が
(こんらんして、たちまちきゅうさんのはくしゅがおこった。しぜんにひらかれたひとがきのなかを、)
混乱して、たちまち急霰の拍手が起こった。自然に開かれた人垣の中を、
(うきうきとすてっぷをふむようにして、むろのちゅうおうにすすみでるひとりのふじん。)
浮き浮きとステップをふむようにして、室の中央に進みでる一人の婦人。
(まっくろないぶにんぐ・どれすに、まっくろなぼうし、まっくろなてぶくろ、まっくろなくつした、)
まっ黒なイブニング・ドレスに、まっ黒な帽子、まっ黒な手袋、まっ黒な靴下、
(まっくろなくつ、くろずくめのなかに、かがやくばかりのびぼうが、どきどきとじょうきして、)
まっ黒な靴、黒ずくめの中に、かがやくばかりの美貌が、ドキドキと上気して、
(あかいばらのようにさきほこっている。しょくん、ごきげんよう。ぼくはもう)
赤いばらのように咲きほこっている。「諸君、御機嫌よう。僕はもう
(よっぱらってるんです。しかし、のみましょう。そして、おどりましょう)
酔っぱらってるんです。しかし、飲みましょう。そして、踊りましょう」
(うつくしいふじんは、みぎてをひらひらとずじょうにうちふりながら、かわいらしいまきじたで)
美しい婦人は、右手をヒラヒラと頭上に打ち振りながら、可愛らしい巻舌で
(さけんだ。のみましょう。そして、おどりましょう。だーく・えんじぇる)
叫んだ。「飲みましょう。そして、踊りましょう。ダーク・エンジェル
(ばんざい!おーい、ぼーいさん、しゃんぱんだ、しゃんぱんだ やがて、)
ばんざい!」「オーイ、ボーイさん、シャンパンだ、シャンパンだ」やがて、
(ぽん、ぽんとはなやかなしょうじゅうがなりひびいて、こるくのだんがんがごしきのふうせんだまを)
ポン、ポンと花やかな小銃が鳴りひびいて、コルクの弾丸が五色の風船玉を
(ぬってしょうてんした。そこにも、ここにも、かちかちとぐらすのふれるおと、そして、)
ぬって昇天した。そこにも、ここにも、カチカチとグラスのふれる音、そして、
(またしても、ぶらぼー、だーく・えんじぇる!のがっしょうだ。あんこくがいのじょおうの)
またしても、「ブラボー、ダーク・エンジェル!」の合唱だ。暗黒街の女王の
(このにんきは、いったいどこからわいてでたのか。たとえかのじょのすじょうはすこしも)
この人気は、一体どこからわいて出たのか。たとえ彼女の素性は少しも
(わからなくても、そのびぼう、そのずばぬけたふるまい、そこしれぬぜいたく、)
わからなくても、その美貌、そのズバぬけたふるまい、底知れぬ贅沢、
(おびただしいほうせきのそうしんぐ、それらのどのひとつをとっても、じょおうのしかくは)
おびただしい宝石の装身具、それらのどの一つを取っても、女王の資格は
(じゅうぶんすぎるほどであったが、かのじょはさらにもっともっとすばらしいみりょくを)
十分すぎるほどであったが、彼女はさらにもっともっとすばらしい魅力を
(そなえていた。かのじょはだいたんふてきなえきじびじょにすとであったのだ。)
そなえていた。彼女は大胆不敵なエキジビジョニストであったのだ。
(くろてんし、いつものほうせきおどりをしょもうします!だれかがくちをきると、わーっと)
「黒天使、いつもの宝石躍りを所望します!」だれかが口を切ると、ワーッと
(いうどよめき、そしていっせいのはくしゅ。かたすみのばんどがおんがくをはじめた。)
いうドヨメキ、そして一せいの拍手。片隅のバンドが音楽を始めた。
(わ/いせつなさきそふぉんが、いようにひとびとのみみをくすぐった。ひとびとのえんじんの)
わ/いせつなサキソフォンが、異様に人々の耳をくすぐった。人々の円陣の
(ちゅうおうには、もうほうせきおどりがはじまっていた。くろてんしはいまやしろてんしとへんじた。)
中央には、もう宝石躍りが始まっていた。黒天使は今や白天使と変じた。
(かのじょのうつくしくじょうきしたぜんにくたいをおおうものは、ふたすじのおおつぶなくびかざりと、みごとな)
彼女の美しく上気した全肉体をおおうものは、二筋の大粒な首飾りと、見事な
(ひすいのみみかざりと、むすうのだいやもんどをちりばめたさゆうのうでわと、さんかのゆびわの)
翡翠の耳飾りと、無数のダイヤモンドをちりばめた左右の腕環と、三箇の指環の
(ほかには、いっぽんのいと、いちまいのぬのきれさえもなかった。かのじょはいま、ちかちかと)
ほかには、一本の糸、一枚の布切れさえもなかった。彼女は今、チカチカと
(ひかりかがやく、ももいろのいちにくかいにすぎなかった。それがかたをゆすり、あしをあげて、)
光りかがやく、桃色の一肉塊にすぎなかった。それが肩をゆすり、足をあげて、
(えじぷときゅうていの、なまめかしきぶようを、たくみにもおどりつづけているのだ。)
エジプト宮廷の、なまめかしき舞踊を、たくみにも躍りつづけているのだ。
(おい、みろ、くろとかげがはいはじめたぜ。なんてすばらしいんだろう うん、)
「オイ、見ろ、黒トカゲが這い始めたぜ。なんてすばらしいんだろう」「ウン、
(ほんとうに、あのちいさなむしが、いきてうごきだすんだからね いきなたきしーどの)
ほんとうに、あの小さな虫が、生きて動きだすんだからね」意気なタキシードの
(せいねんがささやきかわした。うつくしいおんなのひだりのうでに、いっぴきのまっくろにみえるとかげが)
青年がささやき交わした。美しい女の左の腕に、一匹の真黒に見えるトカゲが
(はっていた。それがかのじょのうでのゆらぎにつれて、きゅうばんのあるあしをよたよたと)
這っていた。それが彼女の腕のゆらぎにつれて、吸盤のある足をヨタヨタと
(うごかして、はいだしたようにみえるのだ。いまにもそれが、かたからくび、くびからあご、)
動かして、這い出したように見えるのだ。今にもそれが、肩から頚、頚から顎、
(そしてかのじょのまっかなぬめぬめとした、くちびるまでも、はいあがっていきそうに)
そして彼女の真赤なヌメヌメとした、唇までも、這いあがって行きそうに
(みえながら、いつまでもおなじうでにうごめいている。しんにせまったいっぴきのとかげの)
見えながら、いつまでも同じ腕にうごめいている。真にせまった一匹のトカゲの
(いれずみであった。さすがにこのはじしらずのぶようはし、ごふんしかつづかなかったが、)
入墨であった。さすがにこの恥知らずの舞踊は四、五分しかつづかなかったが、
(それがおわると、かんげきしたよいどれしんしたちが、どっとおしよせて、なにかくちぐちに)
それが終ると、感激した酔いどれ紳士たちが、ドッと押し寄せて、何か口々に
(げきじょうのさけびをあげながら、いきなりらびじんをどうあげにして、おみこしのかけごえ)
激情の叫びをあげながら、いきなり裸美人を胴上げにして、お御輿のかけ声
(いさましく、しつないをぐるぐるとまわりだした。さむいわ、さむいわ、はやく)
勇ましく、室内をグルグルと廻り出した。「寒いわ、寒いわ、早く
(ばす・るーむへつれていって ごたくせんのまにまに、みこしはろうかへでて、)
バス・ルームへつれて行って」御託宣のまにまに、御輿は廊下へ出て、
(よういされたばす・るーむへとねっていった。あんこくがいのくりすます・いヴは、)
用意されたバス・ルームへと練って行った。暗黒街のクリスマス・イヴは、
(このふじんのほうせきおどりをさいごのうちどめにして、ひとびとはそれぞれのあいてと、)
この婦人の宝石躍りを最後の打ちどめにして、人々はそれぞれの相手と、
(ほてるへ、じたくへ、さんさんごごかえりさった。)
ホテルへ、自宅へ、三々五々帰り去った。