黒蜥蜴28
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 123 | 6292 | S | 6.5 | 96.7% | 537.0 | 3497 | 118 | 52 | 2024/10/08 |
2 | ひま | 5239 | B+ | 5.6 | 93.5% | 635.4 | 3577 | 248 | 52 | 2024/10/14 |
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問題文
(ごしきのほのお、ほんとうにごしきのほのおがもえているようでございますわ。ああ、)
「五色の焔、ほんとうに五色の焔が燃えているようでございますわ。ああ、
(わたくし、どんなにこいこがれていたことでしょう。この えじぷとのほし に)
わたくし、どんなに恋いこがれていたことでしょう。この『エジプトの星』に
(くらべては、わたくしがながねんしゅうしゅうしましたせんかにちかいだいやもんども、まるで)
比べては、わたくしが長年収集しました千顆に近いダイヤモンドも、まるで
(いしころどうぜんでございますわ。ほんとうにありがとうございました そしてまた、)
石ころ同然でございますわ。ほんとうにありがとうございました」そしてまた、
(かのじょはうやうやしくいちれいをするのであった。あいてがよろこべばよろこぶだけ、)
彼女はうやうやしく一礼をするのであった。相手が喜べば喜ぶだけ、
(いわせしのほうでは、いのちからにばんめとまでたいせつにしていたたからものを、むざむざこのおんなに)
岩瀬氏の方では、命から二番目とまで大切にしていた宝物を、むざむざこの女に
(うばわれてしまうのかとおもうと、かくごはしながらも、いいしれぬにくしみが)
奪われてしまうのかと思うと、覚悟はしながらも、言い知れぬ憎しみが
(かんじられて、めのまえにとりすましているおんなが、いっそうにくにくしくみえてくる。)
感じられて、眼の前にとりすましている女が、一そう憎々しく見えてくる。
(すると、れいのしょうべえろうじんのくせで、こんなばあいにも、ついにくまれぐちが)
すると、例の庄兵衛老人のくせで、こんな場合にも、つい憎まれ口が
(ききたくなるのだ。さあ、これでだいきんのしはらいはすんだ。あとはきみのほうから)
ききたくなるのだ。「さあ、これで代金の支払いはすんだ。あとは君の方から
(しなものがとどくのをまつばかりだが、わしはきみをこんなにしんようしていいのか)
品物がとどくのを待つばかりだが、わしは君をこんなに信用していいのか
(しらん。あいてはどろぼうなんだからね。どろぼうとまえきんとりひきをするなんて、じつに)
しらん。相手は泥棒なんだからね。泥棒と前金取引をするなんて、実に
(きけんせんばんなはなしだ ほほほほほ、それはもうまちがいなく......では、)
危険千万な話だ」「ホホホホホ、それはもう間違いなく......では、
(おさきにおひきとりを、わたくし、ひとあしあとからかえらせていただきます)
お先にお引き取りを、わたくし、一と足あとから帰らせていただきます」
(おんなはあいてのどくぐちにとりあわず、このきみょうなかいけんをうちきろうとした。ふふん、)
女は相手の毒口にとりあわず、この奇妙な会見を打ち切ろうとした。「フフン、
(しなものをうけとってしまえば、ごようはないとおっしゃるのだね......だが、)
品物を受け取ってしまえば、御用はないとおっしゃるのだね......だが、
(きみもいっしょにかえったらいいじゃないか。わしといっしょにえれべーたーに)
君もいっしょに帰ったらいいじゃないか。わしといっしょにエレベーターに
(のるのはいやかね ええ、わたくしもごいっしょしたいのはやまやま)
乗るのはいやかね」「ええ、わたくしもごいっしょしたいのは山々
(なんですけれど、なにをもうすにも、おたずねもののからだでございますから、あなたが)
なんですけれど、何を申すにも、お尋ね者のからだでございますから、あなたが
(ぶじにおかえりなさるのを、よくみとどけましたうえでなくては......)
無事にお帰りなさるのを、よく見届けました上でなくては......」
(きけんだというのだね。わしがびこうでもするとおもっていなさるのか。)
「危険だというのだね。わしが尾行でもすると思っていなさるのか。
(ははははは、これはおかしい、きみはわしがこわいのかね。それでよく、)
ハハハハハ、これはおかしい、君はわしが怖いのかね。それでよく、
(こんなさびしいばしょで、わしとふたりきりでかいけんしなすったね。わしはおとこだよ。)
こんなさびしい場所で、わしと二人きりで会見しなすったね。わしは男だよ。
(もし、もしだね、わしがむすめのいちめいをぎせいにして、てんかにどくがいをながすにょぞくを)
もし、もしだね、わしが娘の一命を犠牲にして、天下に毒害を流す女賊を
(とらえようとおもえば、なんのわけもないことだぜ いわせしはおんなのこづらにくさに、)
捕えようと思えば、なんのわけもないことだぜ」岩瀬氏は女の小面憎さに、
(ついいやがらせをいってみたくなった。ええ、ですから、わたくし、ちゃんと)
ついいやがらせをいってみたくなった。「ええ、ですから、わたくし、ちゃんと
(よういがしてございますの ぴすとるでもとりだすのかとおもうと、そうではなくて)
用意がしてございますの」ピストルでも取り出すのかと思うと、そうではなくて
(かのじょはつかつかとばいてんのみせのほうへあるいていって、そこにならべてあったちんがしの)
彼女はツカツカと売店の店の方へ歩いて行って、そこに並べてあった賃貸しの
(そうがんきょうをもってきた。あすこにおゆやのえんとつがございますわね。あのえんとつの)
双眼鏡を持ってきた。「あすこにお湯屋の煙突がございますわね。あの煙突の
(すぐうしろのやねのうえをごらんなすってくださいまし かのじょはそのほうを)
すぐうしろの屋根の上をごらんなすってくださいまし」彼女はその方を
(さししめして、そうがんきょうをいわせしにてわたすのであった。ほう、やねのうえになにか)
指し示して、双眼鏡を岩瀬氏に手渡すのであった。「ホウ、屋根の上に何か
(あるのかね いわせしはふとこうきしんにかられて、そうがんきょうをめにあてた。とうから)
あるのかね」岩瀬氏はふと好奇心にかられて、双眼鏡を眼に当てた。塔から
(さんちょうほどへだたった、ながやのおおやねである。ゆやのえんとつのすぐうしろにものほしだいが)
三町ほどへだたった、長屋の大屋根である。湯屋の煙突のすぐうしろに物干台が
(みえ、そのものほしだいのうえに、ひとりのろうどうしゃみたいなおとこが、うずくまっているのが)
見え、その物干台の上に、一人の労働者みたいな男が、うずくまっているのが
(はっきりながめられる。ものほしだいにようふくをきたおとこがおりますでしょう うん、)
ハッキリ眺められる。「物干台に洋服を着た男がおりますでしょう」「ウン、
(いるいる。あれがどうかしたのかね よくごらんくださいまし。そのおとこが)
いるいる。あれがどうかしたのかね」「よくごらんくださいまし。その男が
(なにをしていますか や、これはふしぎじゃ。せんぽうでもそうがんきょうをもって、)
何をしていますか」「や、これは不思議じゃ。先方でも双眼鏡を持って、
(こちらをながめているわい それから、かたほうのてになにかもっておりません)
こちらを眺めているわい」「それから、片方の手に何か持っておりません
(ですか うんうん、もっている。あかいぬののようなものじゃ。あのおとこは)
ですか」「ウンウン、持っている。赤い布のようなものじゃ。あの男は
(わしたちをみているようだね ええ、そうですの。あれはわたくしのぶかで)
わしたちを見ているようだね」「ええ、そうですの。あれはわたくしの部下で
(ございますのよ。ああしてわたくしたちのいっきょいちどうをみはっていて、)
ございますのよ。ああしてわたくしたちの一挙一動を見張っていて、
(もしわたくしにきけんなことでもおこりましたばあいには、あかいぬのをふって、)
もしわたくしに危険なことでも起こりました場合には、赤い布を振って、
(べつのばしょからあのおおやねをみつめているもうひとりのぶかにつうしんします。すると、)
別の場所からあの大屋根を見つめているもう一人の部下に通信します。すると、
(そのぶかが、おじょうさんのいらっしゃるえんぽうのいえへでんわでしらせます。そのでんわと)
その部下が、お嬢さんのいらっしゃる遠方の家へ電話で知らせます。その電話と
(いっしょにさなえさんのおいのちがなくなるというしかけなのでございます。)
一しょに早苗さんのお命がなくなるという仕かけなのでございます。
(ほほほほほ、ぞくなどともうすものは、ちょっとしたしごとにも、これだけのよういを)
ホホホホホ、賊などと申すものは、ちょっとした仕事にも、これだけの用意を
(してかからなければならないのでございますわ なるほどじつにうまいおもいつき)
してかからなければならないのでございますわ」なるほど実にうまい思いつき
(である。にょぞくがふべんなとうのうえを、かいけんのばしょにえらんだひとつのいみはここに)
である。女賊が不便な塔の上を、会見の場所に選んだ一つの意味はここに
(あったのだ。まったくあんぜんなえんぽうからみはりをさせておくなんて、へいちでは)
あったのだ。まったく安全な遠方から見張りをさせておくなんて、平地では
(ふかのうなことなのだから。ふん、ごくろうせんばんなことじゃ いわせしはへらずぐちを)
不可能なことなのだから。「フン、ご苦労千万なことじゃ」岩瀬氏はへらず口を
(たたいたものの、ないしんでは、すんぶんもぬけめのないにょぞくのようじんをさんたんしないでは)
たたいたものの、内心では、寸分も抜け目のない女賊の用心を讃嘆しないでは
(いられなかった。)
いられなかった。