黒蜥蜴42
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ひま | 5221 | B+ | 5.6 | 93.1% | 630.9 | 3556 | 262 | 51 | 2024/10/18 |
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問題文
(きみたち、ここをどうかしたんじゃないのかい。ほんとうのことを)
「君たち、ここをどうかしたんじゃないのかい。ほんとうのことを
(いってくれたまえね。あんないたずらしたの、きみたちなんだろう くろこふじんが、)
いってくれたまえね。あんないたずらしたの、君たちなんだろう」黒衣婦人が、
(かんだかいこえでよびかけた。そこにはおりのなかのあだむといヴとが、なかよく)
かん高い声で呼びかけた。そこには檻の中のアダムとイヴとが、仲よく
(むかいあって、なにかしきりとささやきかわしていたのだが、とつぜんにょぞくのしゅうらいに)
向かい合って、何かしきりとささやき交わしていたのだが、突然女賊の襲来に
(あって、たちまちそれぞれのみがまえをした。さなえさんはすみっこのほうで、)
あって、たちまちそれぞれの身構えをした。早苗さんは隅っこの方で、
(またくくりざるのかたちになるし、せいねんはやにわにたちあがって、こぶしをふりながら)
またくくり猿の形になるし、青年はやにわに立ち上がって、拳を振りながら
(くろこふじんのほうへちかづいていく。なぜ、へんじをしないの。おまえだろうにんぎょうに)
黒衣婦人の方へ近づいて行く。「なぜ、返事をしないの。お前だろう人形に
(きものをきせたのは ばかなことをいえ、おれはおりのなかにとじこめられて)
着物を着せたのは」「ばかなことをいえ、おれは檻の中にとじこめられて
(いるんじゃないか、きさまはきでもちがったのか せいねんがまんしんにどきをふくんで)
いるんじゃないか、貴様は気でも違ったのか」青年が満身に怒気をふくんで
(どなりかえした。ほほほほほ、まだいばっているのね。きみでなけりゃそれで)
どなり返した。「ホホホホホ、まだいばっているのね。君でなけりゃそれで
(いいのよ。ぼくのほうにもかんがえがあるんだから。ときに、そのおよめさんおきに)
いいのよ。僕の方にも考えがあるんだから。時に、そのお嫁さんお気に
(めしたかい くろこふじんはなぜかべつのことをいいだした。せいねんがだまっているので)
召したかい」黒衣婦人はなぜか別のことを言い出した。青年がだまっているので
(ふたたびいう。おきにめしたかってきいているのよ せいねんはすみっこのさなえさんと、)
再びいう。「お気に召したかって聞いているのよ」青年は隅っこの早苗さんと、
(ちらっとめをみかわしたが、うん、きにいった。きにいったから、)
チラッと眼を見かわしたが、「ウン、気に入った。気に入ったから、
(このひとだけは、おれがほごするんだ。きさまなんかにゆびいっぽんだってささせは)
この人だけは、おれが保護するんだ。貴様なんかに指一本だって差させは
(しないぞ とさけんだ。ほほほほほ、たぶんそんなことだろうとおもった。それじゃ)
しないぞ」と叫んだ。「ホホホホホ、多分そんなことだろうと思った。それじゃ
(せいぜいほごしてやるがいい くろこふじんはあざわらいながら、ちょうどそこへ)
せいぜい保護してやるがいい」黒衣婦人はあざ笑いながら、ちょうどそこへ
(やってきたしょっこうふくのあまみやせいねんをふりかえった。じゅんちゃん、あのむすめさんをひきずり)
やってきた職工服の雨宮青年を振り返った。「潤ちゃん、あの娘さんを引きずり
(だしてね、たんくへぶちこんでおしまい はげしくめいじて、おりのかぎをせいねんに)
出してね、タンクへぶちこんでおしまい」烈しく命じて、檻の鍵を青年に
(てわたしした。すこしはやすぎやしませんか。まだひとばんたったきりですぜ)
手渡しした。「少し早過ぎやしませんか。まだ一と晩たったきりですぜ」
(あまみやせいねんはかおいっぱいのもじゃもじゃのつけひげのなかから、めをみはって)
雨宮青年は顔一ぱいのモジャモジャの付けひげの中から、眼をみはって
(ききかえした。いいのよ。あたしのきまぐれはいまはじまったことじゃない。)
聞き返した。「いいのよ。あたしの気まぐれは今はじまったことじゃない。
(すぐやっつけておしまい・・・・・・いいかい、あたしはへやでしょくじをしているからね。)
すぐやっつけておしまい……いいかい、あたしは部屋で食事をしているからね。
(そのあいだにちゃんとよういをしておくのよ。それから、あのほうせきなんかを、)
そのあいだにちゃんと用意をしておくのよ。それから、あの宝石なんかを、
(ちんれつばこへもとどおりかえしておくようにいいつけといてください。たのんでよ)
陳列箱へ元通り返しておくように言いつけといてください。頼んでよ」
(くろこふじんはそういいすてたまま、ふりむきもしないで、じぶんのへやへひきあげて)
黒衣婦人はそう言い捨てたまま、振り向きもしないで、自分の部屋へ引き上げて
(いった。かのじょはげきどしていたのだ。えたいのしれぬにんぎょうのいへんが、かのじょをきょくどに)
行った。彼女は激怒していたのだ。えたいの知れぬ人形の異変が、彼女を極度に
(ふかいにしたうえに、いままた、おりのなかのだんじょがさもむつまじくはなしあっている)
不快にした上に、いままた、檻の中の男女がさもむつまじく話し合っている
(ありさまをみせつけられて、かんしゃくがはれつしたのだ。にょぞくはけっして、さなえさんを)
有様を見せつけられて、かんしゃくが破裂したのだ。女賊は決して、早苗さんを
(ほんとうにおよめいりさせるつもりはなかった。ただ、かのじょをこわがらせはずかしめ、)
ほんとうにお嫁入りさせるつもりはなかった。ただ、彼女を怖がらせ恥かしめ、
(おびえかなしむようすをみてたのしもうとしたのだ。それがまったくあてがはずれて、)
おびえ悲しむ様子を見て楽しもうとしたのだ。それが全く当てがはずれて、
(おとこはみをもってさなえさんをまもろうとし、さなえさんはさなえさんで、それをさも)
男は身を以て早苗さんを守ろうとし、早苗さんは早苗さんで、それをさも
(うれしげに、かんしゃにたえぬまなざしでみあげていたではないか。くろこふじんが、)
嬉しげに、感謝にたえぬまなざしで見上げていたではないか。黒衣婦人が、
(しっとにもにたはげしいふかいをかんじたのはむりではなかった。なんぎなしごとを)
嫉妬にも似たはげしい不快を感じたのは無理ではなかった。難儀な仕事を
(おおせつかったじゅんいちせいねんは、めいわくらしく、しばらくためらっていたが、やがて)
おおせつかった潤一青年は、迷惑らしく、しばらくためらっていたが、やがて
(しかたなくおりのでいりぐちにちかづいていった。きさま、このむすめさんをどうしようと)
仕方なく檻の出入口に近づいて行った。「貴様、この娘さんをどうしようと
(いうのだ おりのなかのせいねんは、おそろしいぎょうそうでどなりながら、はいってきたら)
いうのだ」檻の中の青年は、恐ろしい形相でどなりながら、はいってきたら
(つかみころすぞといわぬばかりのみがまえで、いりぐちのまえにたちはだかった。だが、)
つかみ殺すぞといわぬばかりの身構えで、入り口の前に立ちはだかった。だが、
(さすがはけんとうせいねん、あまみやはべつにおそれるようすもなく、じょうまえにかぎをいれて)
さすがは拳闘青年、雨宮は別に恐れる様子もなく、錠前に鍵を入れて
(がちゃがちゃいわせたかとおもうと、さっととをひらいておりのなかへとびこんで)
ガチャガチャいわせたかと思うと、サッと戸をひらいて檻の中へ飛びこんで
(いった。ひげもじゃのしょっこうふくと、ぜんらのびせいねんとが、たがいのうでをつかみあい)
いった。ひげモジャの職工服と、ぜんらの美青年とが、互いの腕をつかみ合い
(ながら、おそろしいけんまくでにらみあった。どっこい、そうはいかぬぞ。おれが)
ながら、恐ろしい権幕でにらみ合った。「どっこい、そうはいかぬぞ。おれが
(いきてるあいだは、むすめさんにゆびもささせない。つれだせるものならつれだして)
生きてるあいだは、娘さんに指も差させない。連れ出せるものなら連れ出して
(みろ。だが、そのまえに、きさましめころされないようじんをするがいい せいねんの)
みろ。だが、その前に、貴様しめ殺されない用心をするがいい」青年の
(しにものぐるいのりょううでが、あまみやじゅんいちのくびへ、きみわるくからんできた。すると、)
死にもの狂いの両腕が、雨宮潤一の首へ、気味わるくからんできた。すると、
(ふしぎなことに、あまみやはいっこうていこうするようすもなく、うでをからまれたまま、)
不思議なことに、雨宮はいっこう抵抗する様子もなく、腕をからまれたまま、
(くびをぐっとまえへつきだして、せいねんのみみもとへくちをもっていったかとおもうと、)
首をグッと前へ突き出して、青年の耳元へ口を持って行ったかと思うと、
(なにかしらひそひそとささやきはじめた。せいねんは、さいしょのあいだは、くびをふって)
何かしらヒソヒソとささやきはじめた。青年は、最初のあいだは、首を振って
(きこうともしなかったが、やがて、かれのかおになんともいえぬおどろきのいろがうかんで)
聞こうともしなかったが、やがて、彼の顔になんともいえぬ驚きの色が浮かんで
(きた。それとどうじに、かれはうってかわったようにおとなしくなり、あいてのくびに)
きた。それと同時に、彼はうって変ったようにおとなしくなり、相手の首に
(まきつけていたりょううでを、だらりとたれてしまった。)
巻きつけていた両腕を、ダラリとたれてしまった。