白痴 32

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問題文
(おがわはほのおのしたをではずれてくらやみのしたをながれはじめた。)
小川は炎の下を出外れて暗闇の下を流れはじめた。
(そらいちめんのひのいろでしんのくらやみはありえなかったが、)
空一面の火の色で真の暗闇は有り得なかったが、
(ふたたびいきてみることをえたくらやみに、)
再び生きて見ることを得た暗闇に、
(いざわはむしろえたいのしれないおおきなつかれと、)
伊沢はむしろ得体の知れない大きな疲れと、
(はてしれぬきょむとのために)
涯(はて)しれぬ虚無とのために
(ただほうしんがひろがるさまをみるのみだった。)
ただ放心がひろがる様を見るのみだった。
(そのていにちいさなあんどがあるのだが、)
その底に小さな安堵があるのだが、
(それはへんにけちくさい、ばかげたものにおもわれた。)
それは変にケチくさい、馬鹿げたものに思われた。
(なにもかもばかばかしくなっていた。)
何もかも馬鹿馬鹿しくなっていた。
(かわをあがると、むぎばたけがあった。)
川をあがると、麦畑があった。
(むぎばたけはさんぽうおかにかこまれて、さんちょうしほうぐらいのひろさがあり、)
麦畑は三方丘にかこまれて、三町四方ぐらいの広さがあり、
(そのまんなかをこくどうがおかをきりひらいてとおっている。)
そのまんなかを国道が丘を切りひらいて通っている。
(おかのうえのじゅうたくはもえており、)
丘の上の住宅は燃えており、
(むぎばたけのふちのせんとうとこうじょうとじいんとなにかがもえており、)
麦畑のふちの銭湯と工場と寺院と何かが燃えており、
(そのおのおののひのいろがしろ、あか、だいだい、あお、のうたん)
その各々の火の色が白、赤、橙、青、濃淡
(とりどりみんなちがっているのである。)
とりどりみんな違っているのである。
(にわかにかぜがふきだしてごうごうとくうきがなり、)
にわかに風が吹きだしてごうごうと空気が鳴り、
(きりのようなこまかいすいてきがいちめんにふりかかってきた。)
霧のようなこまかい水滴が一面にふりかかってきた。
(ぐんしゅうはなおえんえんとこくどうをながれていた。)
群集は尚蜿蜒(えんえん)と国道を流れていた。
(むぎばたけにやすんでいるのはすうひゃくにんで、)
麦畑に休んでいるのは数百人で、
(えんえんたるこくどうのぐんしゅうにくらべればもののかずではないのであった。)
蜿蜒たる国道の群集にくらべれば物の数ではないのであった。
(むぎばたけのつづきにぞうきばやしのおかがあった。)
麦畑のつづきに雑木林の丘があった。
(そのおかのはやしのなかにはほとんどひとがいなかった。)
その丘の林の中には殆ど人がいなかった。
(ふたりはこだちのしたへふとんをしいてねころんだ。)
二人は木立の下へ蒲団をしいてねころんだ。
(おかのしたのはたけのふちにいっけんののうかがもえており、)
丘の下の畑のふちに一軒の農家が燃えており、
(みずをかけているすうにんのひとのすがたがみえる。)
水をかけている数人の人の姿が見える。
(そのうらてにいどがあってひとりのおとこが)
その裏手に井戸があって一人の男が
(ぽんぷをがちゃがちゃやりみずをのんでいるのである。)
ポンプをガチャガチャやり水を飲んでいるのである。
(それをめがけてはたけのしほうから)
それを目がけて畑の四方から
(たちまちにじゅうにんぐらいのろうようだんじょがかけつどってきた。)
忽(たちまち)二十人ぐらいの老幼男女が駆け集ってきた。
(かれらはぽんぷをがちゃがちゃやり、かわるがわるみずをのんでいるのである。)
彼等はポンプをガチャガチャやり、代る代る水を飲んでいるのである。
(それからもえおちようとするいえのひにてをかざして、)
それから燃え落ちようとする家の火に手をかざして、
(ぐるりとならんでだんをとり、)
ぐるりと並んで煖をとり、
(くずれおちるひのかたまりにとびのいたり、)
崩れ落ちる火のかたまりに飛びのいたり、
(けむりにかおをそむけたり、はなしをしたりしている。)
煙に顔をそむけたり、話をしたりしている。
(だれもしょうかにてつだうものはいなかった。)
誰も消火に手伝う者はいなかった。