泡沫

(よくをのぞくはむくなるうつろ)

慾を覘くは無垢なる虚ろ

(あやしかげろうしらきぬのそで)

妖し影ろふ白絹の袖

(つきかげのぼんのうになりあわぬかかはひらき)

月影の煩悩に成り合わぬ華々は開き

(からみあうはこちょうのまい)

絡み合ふは胡蝶の舞

(せつなのうみにあそび)

刹那の海に遊び

(たわむれのめいあんはかさなりて)

戯れの冥闇は重なりて

(ここまでおいで)

此処まで御出で

(みだれひらひら)

乱れひらひら

(かげんのつきようようとゆれる)

下弦の月 夭夭と揺れる

(とこわかなぶればはなびらほころび)

常若舐れば花弁綻び

(ごくらくじょうどへいざなううたげ)

極楽浄土へ誘う宴

(とこよいひらけばうきたつほおずき)

常宵開けば浮き立つ鬼灯

(つやめくけわいえつらくのえみ)

艶めく化粧 悦楽の笑み

(うしみつどきからはじまるこいは)

丑三つ時から始まる恋は

(らいぎょのまいにてくるいだす)

雷魚の舞にて狂い出す

(しおのかおりとこころえたがえば)

潮の香りと心得違えば

(ましょうのさなか)

魔性の最中

(たからのがびのゆうわくにうかれ)

宝の蛾眉の誘惑に浮かれ

(ろうばのはかりごとにおちて)

老婆の謀に堕ちて

(うきよばなれしたゆえつかいらくは)

浮世離れした愉悦快楽は

(ゆめうつつのはざま)

夢現の狭間

(まがきのはてはしえのあさつゆ)

籬の果ては死穢の朝露

(うたかたのゆめはまんげきょう)

泡沫の夢は万華鏡

(まどいのあおはあおきついおく)

惑いの蒼は青き追憶

(りんどうのうたがとうとうとああ)

竜胆の唄が滔々と 嗚呼…

(かいこうそれはいざないりそうきょう)

邂逅其れは誘い理想卿

(あまたのつきひもむのごとく)

数多の月日も無の如く

(はかなくちりはてる)

儚く散り果てる

(たいくむしばみてせいしんのこうさくは)

体躯蝕みて精神の交錯は

(いんがおうほうむげんとたわむれる)

因果応報夢幻と戯れる

(りせいのないむしょうのあい)

理性のない無償の靄

(ましょうのあいあわとなり)

魔性の愛 泡となり

(ねがえどついえてかぎりなし)

願えど潰えて限り無し

(いのちちりゆくそのひまで)

命、散り逝く其の日まで

(まがきのはてはしえのあさつゆ)

籬の果ては死穢の朝露

(うたかたのゆめはまんげきょう)

泡沫の夢は万華鏡

(まどいのあおはあおきついおく)

惑いの蒼は青き追憶

(りんどうのうたがとうとうと)

竜胆の唄が滔々と

(いとしきはなよもうあきがすみ)

愛しき花よ もう秋霞

(ゆめうつつただりんりんと)

夢…現…ただ鱗々と…