日記帳4 江戸川乱歩

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プレイ回数1120難易度(5.0) 1922打 長文
タグ小説 長文
江戸川乱歩の小説「日記帳」です。
今はあまり使われていない、漢字や読み方、表現などがありますが、原文のままです。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 pechi 6194 A++ 6.8 90.9% 284.6 1958 195 30 2024/09/28
2 daifuku 3547 D+ 3.7 94.2% 508.3 1919 116 30 2024/10/01

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問題文

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(すると、わたしはたいへんなみおとしをしていたことにきづきました。)

すると、私は大変な見落としをしていたことに気附ました。

(いかにもそのひのじゅしんらんはくうはくのままのこされていましたけれど、)

如何にもその日の受信欄は空白のまま残されていましたけれど、

(ほんぶんのなかに、つぎのようなもんくがかいてあったではありませんか。)

本文の中に、次の様な文句が書いてあったではありませんか。

(「さいごのつうしんにたいしてyよりえはがきくる。しつぼう。おれはあんまりおくびょうすぎた。)

「最後の通信に対してYより絵葉書来る。失望。おれはあんまり臆病すぎた。

(いまになってはもうとりかえしがつかぬ。ああ。」)

今になってはもう取返しがつかぬ。ああ。」

(yというのはゆきえさんのいにしあるにそういありません。)

Yというのは雪枝さんのイニシアルに相違ありません。

(ほかにおなじかしらじのしりびとはないはずです。しかし、このもんくはいったいなにを)

外に同じ頭字の知り人はないはずです。しかし、この文句は一体何を

(いみするのでしょう。にっきによれば、かれはゆきえさんのところへはがきを)

意味するのでしょう。日記によれば、彼は雪枝さんの処へ葉書を

(かいているばかりです。まさかはがきにこいぶみをしたためるはずもありません。)

書いているばかりです。まさか葉書に恋文を認めるはずもありません。

(では、このにっきにはしるしていない、ふうしょを(それがいわゆるさいごの)

では、この日記には記していない、封書を(それがいわゆる最後の

(つうしんかもしれません)おくったことでもあるのでしょうか。そして、)

通信かも知れません)送ったことでもあるのでしょうか。そして、

(それにたいするへんじとして、このむいみなえはがきがかえってきたとでも)

それに対する返事として、この無意味な絵葉書が帰って来たとでも

(いうのでしょうか。なるほど、いらいかれからもゆきえさんからもこうつうを)

いうのでしょうか。なる程、以来彼からも雪枝さんからも交通を

(たっているのをみると、そうのようにもかんがえられます。)

絶っているのを見ると、そうの様にも考えられます。

(でも、それにしては、このゆきえさんからのさいごのはがきのぶんめんは、)

でも、それにしては、この雪枝さんからの最後の葉書の文面は、

(たといきょぜつのいみをふくませたものとしても、あまりにへんです。)

たとい拒絶の意味を含ませたものとしても、余りに変です。

(なぜといって、そこには、(もうそのじぶんからおとうとはやまいのとこについていたのです))

なぜといって、そこには、(もうその時分から弟は病の床についていたのです)

(びょうきみまいのもんくが、うつくしいしゅせきでかかれているだけなのですから。そして、)

病気見舞の文句が、美しい手蹟で書かれているだけなのですから。そして、

(またこんなにこくめいにはっしんじゅしんをしるしていたおとうとが、はっつうのはがきのほかに)

またこんなにこくめいに発信受診を記していた弟が、八通の葉書の外に

(ふうしょをおくったものとすれば、それをしるしていないはずはありません。)

封書を送ったものとすれば、それを記していないはずはありません。

など

(そんなふうにいろいろかんがえてみますと、そこには、どうもつじつまのあわせぬところが、)

そんな風に色々考えて見ますと、そこには、どうも辻つまの合ぬ所が、

(ひょうめんにあらわれているじじつだけではかいしゃくのできないひみつが、あるようにおもわれます。)

表面に現れている事実だけでは解釈の出来ない秘密が、ある様に思われます。

(これはぼうていがのこしていったひとつのなぞとして、そっとそのままにしておくべき)

これは亡弟が残して行った一つのなぞとして、そっとそのままにしておくべき

(ことがらだったかもしれません。しかし、なんのいんがかわたしには、すこしでも)

事柄だったかも知れません。しかし、なんの因果か私には、少しでも

(うたがわしいじじつにぶっつかると、まるでたんていがはんざいのあとをしらべまわるように、)

疑わしい事実にぶっつかると、まるで探偵が犯罪のあとを調べ廻る様に、

(あくまでそのしんそうをつきとめないではいられないせいしつがありました。)

あくまでその真相をつきとめないではいられない性質がありました。

(しかも、このばあいは、そのなぞがほんにんによってはえいきゅうにとかれるきかいが)

しかも、この場合は、そのなぞが本人によっては永久に解かれる機会が

(ないというじじょうがあったばかりでなく、そのことのじっぴはわたしじしんの)

ないという事情があったばかりでなく、その事の実否は私自身の

(みのうえにもあるおおきなかんけいをもっていたものですから、)

身の上にもある大きな関係を持っていたものですから、

(もちまえのたんていぐせがいっそうのちからづよさをもってわたしをとらえたのです。)

持前の探偵癖が一層の力強さを以て私をとらえたのです。

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