「心理試験」7 江戸川乱歩

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タグ小説 長文
江戸川乱歩の小説「心理試験」です。
今はあまり使われていない漢字や、読み方、表現などがありますが、原文のままです。

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問題文

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(かれはじゅんさのしつもんにこたえて、ひろったばしょとじかんと(もちろんそれはかのうせいのある)

彼は巡査の質問に答えて、拾った場所と時間と(勿論それは可能性のある

(でたらめなのだ)じぶんのじゅうしょせいめいと(これはほんとうの)をこたえた。そして、)

出鱈目なのだ)自分の住所姓名と(これはほんとうの)を答えた。そして、

(いんさつしたかみにかれのせいめいやきんがくなどをかきいれたうけとりしょうみたいなものを)

印刷した紙に彼の姓名や金額などを書き入れた受取証見たいなものを

(もらった。なるほど、これはひじょうにうえんなほうほうにはそういない。)

貰った。なる程、これは非常に迂遠な方法には相違ない。

(しかしあんぜんというてんではさいじょうだ。ろうばのかねは(はんぶんになったことはだれもしらない))

併し安全という点では最上だ。老婆の金は(半分になったことは誰も知らない)

(ちゃんともとのばしょにあるのだから、このさいふのいしつぬしはぜったいにでるはずがない。)

ちゃんと元の場所にあるのだから、この財布の遺失主は絶対に出る筈がない。

(いちねんのあとにはまちがいなくふきやのてにおちるのだ。そして、だれはばからず)

一年の後には間違いなく蕗谷の手に落ちるのだ。そして、誰憚らず

(おおびらにつかえるのだ。かれはかんがえぬいたあげくこのしゅだんをとった。)

大びらに使えるのだ。彼は考え抜いた揚句この手段を採った。

(もししこれをどこかへかくしておくとするか、どうしたぐうぜんからたにんによこどり)

若しこれをどこかへ隠して置くとするか、どうした偶然から他人に横取り

(されまいものでもない。じぶんでもっているか、それはもうかんがえるまでもなく)

されまいものでもない。自分で持っているか、それはもう考えるまでもなく

(きけんなことだ。のみならず、このほうほうによれば、まんいちろうばがしへいのばんごうを)

危険なことだ。のみならず、この方法によれば、万一老婆が紙幣の番号を

(ひかえていたとしてもすこしもしんぱいがないのだ。(もっともこのてんはできるだけさぐって、)

控えていたとしても少しも心配がないのだ。(尤もこの点は出来る丈け探って、

(だいたいあんしんはしていたけれど)「まさか、じぶんのぬすんだしなものをけいさつへ)

大体安心はしていたけれど)「まさか、自分の盗んだ品物を警察へ

(とどけるやつがあろうとは、ほんとうにおしゃかさまでもごぞんじあるまいよ」)

届ける奴があろうとは、ほんとうにお釈迦様でも御存じあるまいよ」

(かれはわらいをかみころしながら、こころのなかでつぶやいた。)

彼は笑いをかみ殺しながら、心の中で呟いた。

(よくじつ、ふきやは、げしゅくのいっしつで、つねとかわらぬあんみんからめざめると、)

翌日、蕗谷は、下宿の一室で、常と変わらぬ安眠から目覚めると、

(あくびをしながら、まくらもとにはいたつされていたしんぶんをひろげて、しゃかいめんをみわたした。)

欠伸をしながら、枕許に配達されていた新聞を拡げて、社会面を見渡した。

(かれはそこにいがいなじじつをはっけんしてちょっとおどろいた。だが、それは、けっして)

彼はそこに意外な事実を発見して一寸驚いた。だが、それは、決して

(しんぱいするようなことがらではなく、かえってかれのためにはよきしないしあわせだった。)

心配する様な事柄ではなく、却って彼の為には予期しない仕合せだった。

(というのは、ゆうじんのさいとうがけんぎしゃとしてあげられたのだ。けんぎをうけたりゆうは、)

というのは、友人の斎藤が嫌疑者として挙げられたのだ。嫌疑を受けた理由は、

など

(かれがみぶんふそうおうのたいきんをしょじしていたからだとしるしてある。)

彼が身分不相応の大金を所持していたからだと記してある。

(「おれはさいとうのもっともしたしいともだちなのだから、ここでけいさつへしゅっとうして、)

「俺は斉藤の最も親しい友達なのだから、ここで警察へ出頭して、

(いろいろといただすのがしぜんだな」)

色々問い訊すのが自然だな」

(ふきやはさっそくきものをきがえると、あわててけいさつしょへでかけた。)

蕗谷は早速着物を着換えると、遽てて警察署へ出掛けた。

(それはかれがきのうさいふをとどけたのとおなじやくしょだ。なぜさいふをとどけるのを)

それは彼が昨日財布を届けたのと同じ役所だ。何故財布を届けるのを

(かんかつのちがうけいさつにしなかったか。いや、それとてもまた、かれいちりゅうのむぎこうしゅぎで)

管轄の違う警察にしなかったか。いや、それとても亦、彼一流の無技巧手技で

(わざとしたことなのだ。かれは、かぶそくのないていどにしんぱいそうなかおをして、)

態としたことなのだ。彼は、過不足のない程度に心配相な顔をして、

(さいとうにあわせてくれとたのんだ。しかし、それはよきしたとおりゆるされなかった。)

斉藤に逢わせて呉れと頼んだ。併し、それは予期した通り許されなかった。

(そこで、かれは、さいとうがけんぎをうけたわけをいろいろとといただして、あるていどまで)

そこで、彼は、斎藤が嫌疑を受けた訳を色々と問い訊して、ある程度まで

(じじょうをあきらかにすることができた。ふきやはつぎのようにそうぞうした。)

事情を明かにすることが出来た。蕗谷は次の様に想像した。

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