「心理試験」18 江戸川乱歩
江戸川乱歩の小説「心理試験」です。
今はあまり使われていない漢字や、読み方、表現などがありますが、原文のままです。
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問題文
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(「はんじさんはよくごしょうちですが、ぼくはあのへやへはいったのはたったいちどきり)
「判事さんはよく御承知ですが、僕はあの部屋へ入ったのはたった一度切り
(なんです。それも、じけんのふつやまえにね」かれはにやにやわらいながらいった。)
なんです。それも、事件の二日前にね」彼はニヤニヤ笑いながら云った。
(こうしたいいかたをするのがゆかいでたまらないのだ。「しかし、そのびょうぶなら)
こうした云い方をするのが愉快でたまらないのだ。「併し、その屏風なら
(おぼえてますよ。ぼくのみたときにはたしかきずなんかありませんでした」)
覚えてますよ。僕の見た時には確か傷なんかありませんでした」
(「そうですか。まちがいないでしょうね。あのおののこまちのかおのところに、ほんの)
「そうですか。間違いないでしょうね。あの小野の小町の顔の所に、ほんの
(ちょっとしたきずがあるだけなんですが」「そうそう、おもいだしましたよ」)
一寸した傷がある丈けなんですが」「そうそう、思出しましたよ」
(ふきやはどうにもいまおもいだしたかぜをよそおっていった。「あれはろっかせんのえでしたね。)
蕗谷は如何にも今思出した風を装って云った。「あれは六歌仙の絵でしたね。
(おののこまちもおぼえてますよ。しかし、もしそのとききずがついていたとすれば、)
小野の小町も覚えてますよ。併し、もしその時傷がついていたとすれば、
(みおとしたはずがありません。だって、ごくさいしきのこまちのかおにきずがあれば、)
見落とした筈がありません。だって、極彩色の小町の顔に傷があれば、
(ひとめでわかりますからね」「じゃごめいわくでも、しょうげんをしていただくわけにはいきません)
一目で分りますからね」「じゃ御迷惑でも、証言をして頂く訳には行きません
(かしら、びょうぶのもちぬしというのが、じつによくのふかいやつでしまつにいけないのですよ」)
かしら、屏風の持主というのが、実に慾の深い奴で始末にいけないのですよ」
(「ええ、よござんすとも、いつでもごつごうのいいときに」ふきやはいささかとくいに)
「エエ、よござんすとも、いつでも御都合のいい時に」蕗谷はいささか得意に
(なって、べんごしとしんずるおとこのたのみをしょうだくした。「ありがとう」あけちは)
なって、弁護士と信ずる男の頼みを承諾した。「ありがとう」明智は
(もじゃもじゃにのばしたあたまをゆびでかきまわしながら、うれしそうにいった。これは、)
モジャモジャに延ばした頭を指でかき廻しながら、嬉し相に云った。これは、
(かれがたしょうこうふんしたさいにやるいっしゅのくせなのだ。「じつは、ぼくはさいしょから、)
彼が多少亢奮した際にやる一種の癖なのだ。「実は、僕は最初から、
(あなたがびょうぶのことをしっておられるにそういないとおもったのですよ。)
あなたが屏風のことを知って居られるに相違ないと思ったのですよ。
(というのはね、このきのうのしんりしけんのきろくのなかで「え」というといにたいして、)
というのはね、この昨日の心理試験の記録の中で「絵」という問に対して、
(あなたは「びょうぶ」というとくべつのこたえかたをしていますね。これですよ。)
あなたは「屏風」という特別の答え方をしていますね。これですよ。
(げしゅくやにはあんまりびょうぶなんてそなえてありませんし、あなたはさいとうのほかには)
下宿屋にはあんまり屏風なんて備えてありませんし、あなたは斉藤の外には
(とくだんしたしいおともだちもないようですから、これはさしずめろうばのざしきのびょうぶが、)
特段親しいお友達もない様ですから、これはさしずめ老婆の座敷の屏風が、
など
(なにかのりゆうでとくべつにふかいいんしょうになってのこっていたのだろうとそうぞうしたの)
何かの理由で特別に深い印象になって残っていたのだろうと想像したの
(ですよ」ふきやはちょっとおどろいた。それはたしかにこのべんごしのいうとおりに)
ですよ」蕗谷は一寸驚いた。それは確かにこの弁護士のいう通りに
(そういなかった。でも、かれはきのうどうしてびょうぶなんてことをくちばしったのだろう。)
相違なかった。でも、彼は昨日どうして屏風なんてことを口走ったのだろう。
(そして、ふしぎにもいままでまるでそれにきづかないとは、これは)
そして、不思議にも今までまるでそれに気附かないとは、これは
(きけんじゃないかな。しかし、どういうてんがきけんなのだろう。あのときかれは、)
危険じゃないかな。併し、どういう点が危険なのだろう。あの時彼は、
(そのきずあとをよくしらべて、なにのてがかりにもならぬことをたしかめておいたでは)
その傷跡をよく検べて、何の手掛かりにもならぬことを確かめて置いたでは
(ないか。なあに、へいきだへいきだ。かれはいちおうかんがえてみてやっとあんしんした。)
ないか。なあに、平気だ平気だ。彼は一応考えて見てやっと安心した。
(ところが、ほんとうは、かれはめいはくすぎるほどめいはくなおおまちがいをやっていたことを)
ところが、ほんとうは、彼は明白すぎる程明白な大間違をやっていたことを
(すこしもきがつかなかったのだ。「なるほど、ぼくはきっともきづきませんでした)
少しも気がつかなかったのだ。「なる程、僕はきっとも気附きませんでした
(けれど、たしかにおっしゃるとおりですよ。なかなかするどいごかんさつですね」)
けれど、確かにおっしゃる通りですよ。却々鋭い御観察ですね」
(ふきやは、あくまでむぎこうしゅぎをわすれないでへいぜんとしてこたえた。)
蕗谷は、あくまで無技功主義を忘れないで平然として答えた。