通夜 -4-

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問題文
(ふりむいて、どうしたんですといおうとすると、)
振り向いて、どうしたんですと言おうとすると、
(そのめがよこのくらやみのほうへむけられているのにきづいてくちをつぐんだ。)
その目が横の暗闇の方へ向けられているのに気付いて口をつぐんだ。
(きもちあしおとをころしてちかづいていき、)
気持ち足音を殺して近づいて行き、
(しせんのさきをおうとそこにはあかりのないせまいろじがのびていた。)
視線の先を追うとそこには灯りのない狭い路地が伸びていた。
(おつやをしていたいえをぐるりととりかこむへいと、)
お通夜をしていた家をぐるりと取り囲む塀と、
(となりのいえのかきねにはさまれたちいさなくうかんだった。)
隣の家の垣根に挟まれた小さな空間だった。
(がいとうからはなれていてよめにもしかいがはっきりしなかったが、)
街灯から離れていて夜目にも視界がはっきりしなかったが、
(そのろじをふさぐようになにかのこばこやそだいごみにしかおもえないようなものが)
その路地を塞ぐようになにかの小箱や粗大ごみにしか思えないようなものが
(おかれているようだった。)
置かれているようだった。
(たまたまおきばにこまったものをひとまずおいてあるようにもおもえたし、)
たまたま置き場に困ったものをひとまず置いてあるようにも思えたし、
(ここをとおしたくないというあんもくのいしひょうじにもおもえた。)
ここを通したくないという暗黙の意思表示にも思えた。
(そのきばこのおくに、かすかにあわいげっこうをはんしゃするものがみえた。)
その木箱の奥に、微かに淡い月光を反射するものが見えた。
(なんだろうとおもってくびをのばそうとするよこで、)
なんだろうと思って首を伸ばそうとする横で、
(かなこさんがゆっくりとちかづいていった。)
加奈子さんがゆっくりと近づいて行った。
(ふるぼけたそふぁーがななめにへいにたてかけられていてみちをふさいでいる。)
古ボケたソファーが斜めに塀に立てかけられていて道を塞いでいる。
(そのてまえまでくると、)
その手前まで来ると、
(ひかりがそのむこうのきばこのうしろにかくれるだれかのひとみだとわかる。)
光がその向こうの木箱の後ろに隠れる誰かの瞳だと分かる。
(おびえたようにまたたいたひかりが、それでもぼくらがこれいじょうちかづいてこないと)
怯えたように瞬いた光が、それでも僕らがこれ以上近づいてこないと
(わかったのか、しずかにこちらをむいている。)
分かったのか、静かにこちらを向いている。
(「どうしたの」)
「どうしたの」
(かなこさんがよびかける。)
加奈子さんが呼びかける。
(しばらくして「かくれてるの」という、かぼそいこえがした。)
しばらくして「隠れてるの」という、か細い声がした。
(おんなのこのこえだった。)
女の子の声だった。
(「どうして」)
「どうして」
(そのといにはこたえはかえってこなかった。)
その問いには答えは返ってこなかった。
(かぜがつめたい。だれもうごかず、ただしずかなときがながれた。)
風が冷たい。誰も動かず、ただ静かな時が流れた。
(やがてそのくうきをきりさくように、)
やがてその空気を切り裂くように、
(へいのむこうからおおきなどなりごえがひびいてきた。)
塀の向こうから大きな怒鳴り声が響いてきた。
(「さちこっ、どこいったの。さちこ!」)
「サチコッ、どこ行ったの。サチコ!」
(そのこえにびくりとはんのうして、)
その声にビクリと反応して、
(きばこのうしろにさらにしんたいをちぢこませるけはいがあった。)
木箱の後ろにさらに身体を縮こませる気配があった。
(へいのほうにめをやったかなこさんがぽつりという。)
塀の方に目をやった加奈子さんがぽつりと言う。
(「いまのはおかあさん?おかあさんからかくれてるの?」)
「今のはお母さん?お母さんから隠れてるの?」
(じっとまっていると、やがてほうともれるようにちいさなこえがした。)
じっと待っていると、やがてほうと漏れるように小さな声がした。
(「こわいの」)
「怖いの」
(「こわい?おかあさんが?」)
「怖い?お母さんが?」
(かぶりをふるけはい。)
かぶりを振る気配。
(まってもへんじはなかった。かなこさんはこしにてをあてながらつづける。)
待っても返事はなかった。加奈子さんは腰に手を当てながら続ける。
(「こんなとこにずっといたらかぜひくよ。)
「こんなとこにずっといたら風邪引くよ。
(いま、おつやをやってるよね。いかないの?」)
今、お通夜をやってるよね。行かないの?」
(おつや。)
お通夜。
(そうか。このこはおつやがこわいんだ。ぼくはひとりがてんした。)
そうか。この子はお通夜が怖いんだ。僕は一人合点した。
(じぶんにもけいけんがある。しんだにんげんのかおみたり、そのそばでよるをあかすという)
自分にも経験がある。死んだ人間の顔見たり、そのそばで夜を明かすという
(ふうしゅうをはじめてしったときはわけもなくこわくなったおぼえがある。)
風習をはじめて知った時はわけもなく怖くなった覚えがある。
(きのうまでいきをしていたにくしんがもううごかないしたいになってそこにあるという、)
昨日まで息をしていた肉親がもう動かないしたいになってそこにあるという、
(きょうふ。)
恐怖。
(このちいさなおんなのこのしんちゅうをおもうと、)
この小さな女の子の心中を思うと、
(なんだかこっちまでいんうつなきもちになってきた。)
なんだかこっちまで陰鬱な気持ちになってきた。
(「ねえ、なにがこわいの。おしえてくれない?」)
「ねえ、なにが怖いの。教えてくれない?」
(かなこさんはそのばにかがみこんで、おしえてくれるまでうごかないぞという)
加奈子さんはその場に屈み込んで、教えてくれるまで動かないぞという
(いしをしめした。しかたなくぼくもそれにならう。)
意思を示した。仕方なく僕もそれに習う。
(ほんとうははやくかえりたかった。さむい。もっとあつぎしてくればよかったと)
本当は早く帰りたかった。寒い。もっと厚着してくれば良かったと
(いまさらこうかいする。)
今さら後悔する。
(やがてきばこのうしろにかくれたまま、ぽつりぽつりとふるえるこえで)
やがて木箱の後ろに隠れたまま、ぽつりぽつりと震える声で
(おんなのこはかたりはじめた。)
女の子は語り始めた。
(つめたいかぜにしんたいをちいさくしてしかたなくそれをきいていると、)
冷たい風に身体を小さくして仕方なくそれを聞いていると、
(ふいにぴたりとひざのふるえがとまった。)
ふいにぴたりと膝の震えが止まった。
(かわりにからだのなかからもっとつめたいなにかがじわりじわりと)
かわりに身体の中からもっと冷たいなにかがじわりじわりと
(わいてくるのをかんじていた。)
湧いてくるのを感じていた。