《海角七号》手紙その七
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問題文
(ともこ、ぶじにじょうりくしたよ。)
友子、無事に上陸したよ。
(なのかかんのこうかいで、)
七日間の航海で、
(せんごのこうはいしたとちにようやくたてたというのに、)
戦後の荒廃した土地にようやく立てたというのに、
(うみがなつかしいんだ。)
海が懐かしいんだ。
(うみはどうしてきぼうとぜつぼうのりょうたんにあるんだ。)
海はどうして希望と絶望の両端にあるんだ。
(これがさいごのてがみだ。)
これが最後の手紙だ。
(あとでだしにいくよ。)
後で出しに行くよ。
(うみにこばまれたぼくたちのあい。)
海に拒まれた僕たちの愛。
(でも、おもうだけならゆるされるだろう。)
でも、思うだけなら許されるだろう。
(ともこ、ぼくのおもいをうけとっておくれ!)
友子、僕の思いを受け取っておくれ!
(そうすれば、すこしはぼくをゆるすことができるだろう。)
そうすれば、少しは僕を許すことができるだろう。
(きみはいっしょうぼくのこころのなかにいるよ。)
君は一生僕の心の中にいるよ。
(けっこんしてこどもができても、)
結婚して子供ができても、
(じんせいのじゅうようなぶんきてんにくるたび、)
人生の重要な分岐点に来る度、
(きみのすがたがうかびあがる。)
君の姿が浮かび上がる。
(おもいにもつをもっていえでしたきみ、)
重い荷物を持って家出した君、
(ゆきかうひとごみのなかにぽっつんとたたずむきみ、)
行き交う人混みの中にぽっつんと佇む君、
(おかねをためてやっとかったしろのめりやすぼうをかぶってきたのは、)
お金を貯めてやっと買った白のメリヤス帽をかぶって来たのは、
(ひとごみのなかできみのそんざいをしらしめるためだったのかい?)
人混みの中で君の存在を知らしめる為だったのかい?
(みえたよ!)
見えたよ!
(ぼくにはみえたよ!)
僕には見えたよ!
(きみはしずかにたっていた。)
君は静かに立っていた。
(しちがつのはげしいたいようのように、)
七月の激しい太陽のように、
(それいじょうちょくしすることはできなかった。)
それ以上直視する事は出来なかった。
(きみはそんなにもしずかにたっていた。)
君はそんなにも静かに立っていた。
(れいせいにつとめたこころがいっしゅんあつくなった。)
冷静に努めた心が一瞬熱くなった。
(だけど、こころのいたみをかくし、)
だけど、心の痛みを隠し、
(こころのこえをのみこんだ。)
心の声を呑み込んだ。
(ぼくはしっている。)
僕は知っている。
(しぼというていぞくのことばがたいようのしたのかげのように、)
思慕という低俗の言葉が太陽の下の影のように、
(おえばにげ、にげればおわれ、)
追えば逃げ、逃げれば追われ、
(いっしょう・・・。)
一生…。