血 後篇-1-
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Shion | 3254 | D | 3.3 | 97.9% | 1706.1 | 5671 | 119 | 99 | 2024/10/04 |
関連タイピング
-
プレイ回数2.7万歌詞1030打
-
プレイ回数10万歌詞200打
-
プレイ回数25万長文786打
-
プレイ回数74万長文300秒
-
プレイ回数1.1万長文1569打
-
プレイ回数6.7万長文かな313打
-
プレイ回数5.7万長文1159打
-
プレイ回数1197連打360打
問題文
(はじまりはただのうらないだったという。)
はじまりはただの占いだったという。
(おんなのこであれば、しょうがくせいやちゅうがくせいのときにはまったけいけんはあるだろう。)
女の子であれば、小学生や中学生のときにハマッた経験はあるだろう。
(こうこうになってもうらないにこっていることなれば、うらないのほうほうも)
高校になっても占いに凝っている子となれば、占いの方法も
(まにあっくなものになり、ちょっとはためにはきもいといわれたりする。)
マニアックなものになり、ちょっと傍目にはキモいと言われたりする。
(きょうすけさんもそのきもいこのひとりで、たろっとをおもにつかったしんぷるな)
京介さんもそのキモい子の1人で、タロットを主に使ったシンプルな
(うらないをやすみじかんのたびにしていたそうだ。)
占を休み時間のたびにしていたそうだ。
(やがてこうないでいっかせいのうらないぶーむがおきて、あちこちでうらないぐるーぷが)
やがて校内で一過性の占いブームが起きて、あちこちで占いグループが
(うまれた。こどものころからうらないすきだったきょうすけさんはそのちしきもほうふで、)
生まれた。子どもの頃から占い好きだった京介さんはその知識も豊富で、
(おおくのせいとにしたわれるようになった。たろっとやとらんぷうらないから、)
多くの生徒に慕われるようになった。タロットやトランプ占いから、
(ほろすこーぷやかばらなどをつかう、こったぐるーぷもでてきはじめた。)
ホロスコープやカバラなどを使う、凝ったグループも出てきはじめた。
(そのなかで、くろまじゅつけいといっていいようないんしつなことをするしゅうだんがあらわれる。)
その中で、黒魔術系と言っていいような陰湿なことをする集団が現れる。
(そのぼすがまさききょうこというせいとだった。きょうすけさんとまさききょうこはおたがいに)
そのボスが間崎京子という生徒だった。京介さんと間崎京子はお互いに
(みとめあい、またけんせいしあった。なかがよかったともいえるし、)
認め合い、また牽制しあった。仲が良かったとも言えるし、
(にくみあっていたともいえる、ひとことではあらわせないかんけいだったそうだ。)
憎みあっていたとも言える、一言では表せない関係だったそうだ。
(そんなあるひ、きょうすけさんはあるくらすめーとのてくびにきずがあるのに)
そんなある日、京介さんはあるクラスメートの手首に傷があるのに
(きがついた。といただすと、まさききょうこにうらなってもらうのに)
気がついた。問いただすと、間崎京子に占ってもらうのに
(ひつようだったという。まさききょうこほんにんのところにとんでいくと、)
必要だったという。間崎京子本人のところに飛んでいくと、
(「まるでうらなうのよ」とすずしいかおでいうのだった。)
「○で占うのよ」と涼しい顔でいうのだった。
(ゆびさきやてくびをかみそりなどでまるって、かみのうえにまるをたらし、)
指先や手首をカミソリなどで○って、紙の上に○をたらし、
(そのもようのいみをよみとくのだそうだ。)
その模様の意味を読み解くのだそうだ。
(そんなのうらないとはみとめない、といったが、とりまきたちに)
そんなの占いとは認めない、と言ったが、取り巻きたちに
(「あなたのはふるいのよ」とあしらわれた。)
「あなたのは古いのよ」とあしらわれた。
(そのあと、てくびやゆびさきなどにきずをのこすせいとはいなくなったが、)
その後、手首や指先などに傷を残す生徒はいなくなったが、
(まるまるうらないはつづいているようだった。)
〇〇占いは続いているようだった。
(ようするにめだつところからまるをとらなくなった、というだけのことだ。)
ようするに目立つところから○を採らなくなった、というだけのことだ。
(これだけうらないがはやるとほかのことはちがうことをしたいという)
これだけ占いが流行ると他の子とは違うことをしたいという
(じいしきがうまれ、よりでぃーぷなものをもとめたけっか、それにこたえてくれる)
自意識が生まれ、よりディープなものを求めた結果、それに応えてくれる
(まさききょうこというじゅうりょくげんにつぎつぎとすいこまれていくかのようだった。)
間崎京子という重力源に次々と吸い込まれていくかのようだった。
(がっこうないでのまさききょうこのそんざいかんは、あるしゅのかるときょうそてきでありそのげんどうは)
学校内での間崎京子の存在感は、ある種のカルト教祖的でありその言動は
(いふのたいしょうですらあった。「なまえをだしただけでのろわれる」といううわさは、)
畏怖の対象ですらあった。「名前を出しただけで呪われる」という噂は、
(たんにかのじょのじごくみみをおそれたものではなく、じっさいにかのじょのしゅうへんでふかかいな)
単に彼女の地獄耳を怖れたものではなく、実際に彼女の周辺で不可解な
(じこがたはつしているじじつからきていたそうだ。)
事故が多発している事実からきていたそうだ。
(まるまるうらないのことをきょうすけさんがはあくしてからすうしゅうかんがたったあるひ、)
〇〇占いのことを京介さんが把握してから数週間が経ったある日、
(やすみじかんちゅうにくらすめーとのひとりがきゅうにたおれた。)
休み時間中にクラスメートの一人が急に倒れた。
(そばにいたきょうすけさんがだきおこすと、そのこは「だいじょうぶ、だいじょうぶ。)
そばにいた京介さんが抱き起こすと、その子は「大丈夫、大丈夫。
(ちょっとたちくらみ」といってなにごともなかったかのように)
ちょっと立ちくらみ」と言って何事もなかったかのように
(たちさろうとする。「だいじょうぶじゃないだろう」というきょうすけさんのてを、)
立ち去ろうとする。「大丈夫じゃないだろう」と言う京介さんの手を、
(かのじょはつよいちからでふりはらった。)
彼女は強い力で振り払った。
(「ほっておいてよ」といわれてもほっておけるものでもなかった。)
「放っておいてよ」と言われても放っておけるものでもなかった。
(そのこはまさききょうこしんじゃだったから。)
その子は間崎京子信者だったから。
(そのひのほうかご、きょうすけさんはだいにりかしつへむかった。)
その日の放課後、京介さんは第二理科室へ向かった。
(そこはまさききょうこがめいもくじょうぶちょうをつとめるせいぶつくらぶのぶしつにもなっていたのだが、)
そこは間崎京子が名目上部長を務める生物クラブの部室にもなっていたのだが、
(せいとたちはだれもがそのいっかくにはあしをふみいれたがらなかった。)
生徒たちは誰もがその一角には足を踏み入れたがらなかった。
(ときによるおそくまでひとかげがまどにうつっているにもかかわらず、せいぶつくらぶとしての)
時に夜遅くまで人影が窓に映っているにも関わらず、生物クラブとしての
(かつどうなど、そこではおこなわれてはいないことをだれしもうすうすしっていたから。)
活動など、そこでは行われてはいないことを誰しも薄々知っていたから。
(だいにりかしつにちかづくごとに、いようないあつかんがうすぐらいろうかのくうかんを)
第二理科室に近づくごとに、異様な威圧感が薄暗い廊下の空間を
(ゆがませているようなさっかくをかんじる。おそらくこれはきょういんたちにはわからない、)
歪ませているような錯覚を感じる。おそらくこれは教員たちにはわからない、
(せいとだけのかんかくなのだろう。「きょうこ、はいるぞ」)
生徒だけの感覚なのだろう。「京子、入るぞ」
(そんなへやのどあをきょうすけさんはむぞうさにあけはなった。)
そんな部屋のドアを京介さんは無造作に開け放った。
(あんまくがまどにおろされたくらいしつないで、みじかいかみをさらにへあばんどで)
暗幕が窓に下ろされた暗い室内で、短い髪をさらにヘアバンドで
(あげたじょせいとが、しゃふつされるふらすこをのぞきこんでいた。)
上げた女生徒が、煮沸されるフラスコを覗き込んでいた。
(「あら、めずらしいわね」「ひとりか」おくのてーぶるへむかうあしが、いっしゅんとまる。)
「あら、珍しいわね」「一人か」奥のテーブルへ向かう足が、一瞬止まる。
(このにおいは。「おい、なにをにてる」「ほむんくるす」)
この匂いは。「おい、何を煮てる」「ホムンクルス」
(あっさりいいはなつまさききょうこに、きょうすけさんはまゆをしかめる。)
あっさり言い放つ間崎京子に、京介さんは眉をしかめる。
(「まるまるとまるまるをまぜることで、にんげんをはっせいさせようなんてどこのばかが)
「〇〇と○○をまぜることで、人間を発生させようなんてどこのバカが
(いいだしたのかしら」まさききょうこはくちびるだけでわらって、ひをとめた。)
言い出したのかしら」間崎京子は唇だけで笑って、火を止めた。
(「じょうだんよ」「じょうだんなものか、このにおいは」)
「冗談よ」「冗談なものか、この匂いは」
(きょうすけさんはてーぶるのまえにたちはだかった。)
京介さんはテーブルの前に立ちはだかった。
(「うらないすきのれんちゅうにきいた。おまえ、あつめたちをどうしてるんだ」)
「占い好きの連中に聞いた。おまえ、集めた血をどうしてるんだ」
(きょうめのまえでたおれたじょせいとは、ひだりてのひじのうらにちゅうしゃばりのあとがあった。)
今日目の前で倒れた女生徒は、左手の肘の裏に注射針の跡があった。
(まるみゃくからまるをぬいたこんせきだ。それもはりのあとはいっかしょではなかった。)
○脈から○を抜いた痕跡だ。それも針の跡は一箇所ではなかった。
(とてもうらないとやらでひつようなりょうとはおもえない。)
とても占いとやらで必要な量とは思えない。
(まさききょうこはきれながのめできょうすけさんをましょうめんからみつめた。)
間崎京子は切れ長の目で京介さんを真正面から見つめた。
(おたがいなにもはっしなかったが、はりつめたくうきのなかじかんだけがたった。)
お互い何も発しなかったが、張り詰めた空気のなか時間だけが経った。
(やがてまさききょうこがむなもとのぽけっとからちいさながらすびんをとりだし、)
やがて間崎京子が胸元のポケットから小さなガラス瓶を取り出し、
(くびをかしげた。びんはまるまるいいろをしている。「のんでるだけよ」)
首をかしげた。瓶は〇〇い色をしている。「飲んでるだけよ」
(おもわずこえをあらげかけたきょうすけさんをせいして、つづけた。)
思わず声を荒げかけた京介さんを制して、続けた。
(「しろいかみにおとすより、よほどおおくのことがわかるわ。ねぶそくも、)
「白い紙に落とすより、よほど多くのことがわかるわ。寝不足も、
(かしょくも、なやみも、こいびととのなかだって」「それがうらないだって?」)
過食も、悩みも、恋人との仲だって」「それが占いだって?」
(かたをすくめてみせるまさききょうこをにらみつけたまま、はきすてるようにいった。)
肩を竦めて見せる間崎京子を睨み付けたまま、吐き捨てるように言った。
(「こうまるしょうってやつですか」)
「好○症ってやつですか」
(そこまでいきをのんできいていたおれだが、おもわずくちをはさんだ。)
そこまで息を呑んで聞いていた俺だが、思わず口を挟んだ。
(きょうすけさんはびーるをあけながらくびをよこにふった。)
京介さんはビールを空けながら首を横に振った。
(「いや、そんなじょうとうなものじゃない。のーふぇいとだ」)
「いや、そんな上等なものじゃない。ノー・フェイトだ」
(え?なんですか?とききかえしたが、いまにしておもうとそのことばは)
え?なんですか?と聞き返したが、今にして思うとその言葉は
(きょうすけさんのくちぐせのようなもので、nofate、つまり<うんめいではない>)
京介さんの口癖のようなもので、no fate 、つまり《運命ではない》
(ということばを、きょうすけさんなりのいみあいでつかっていたようだ。)
という言葉を、京介さんなりの意味合いで使っていたようだ。
(それは<いし>といいかえることができるとおもう。)
それは《意思》と言い換えることができると思う。
(このばあいでいうなら、まさききょうこがちをのむのはおのれのいしの)
この場合で言うなら、間崎京子が血を飲むのは己の意思の
(たいげんだというのことだ。)
体現だというのことだ。
(「むかし、せいぶつのじゅぎょうちゅうにせんせいが「たまごがさきかにわとりがさきか」ってはなしを)
「昔、生物の授業中に先生が『卵が先か鶏が先か』って話を
(したことがある。うしろのせきだったきょうこがぼそっと、たまごがさきよね、っていうんだ。)
したことがある。後ろの席だった京子がボソッと、卵が先よね、って言うんだ。
(どうしてだってきいたら、なんていったとおもう?)
どうしてだって聞いたら、なんて言ったと思う?
(「たまごこそへんかそのものだから」」)
『卵こそ変化そのものだから』」
(きょうすけさんはつぎのびーるにてをのばした。)
京介さんは次のビールに手を伸ばした。
(おれはそふぁにせいざというへんなかっこうでそれをきいている。)
俺はソファに正座という変な格好でそれを聞いている。
(「あいつは「へんか」ってものにたいしていじょうなしょうけいをもっている。)
「あいつは『変化』ってものに対して異常な憧憬を持っている。
(それはじぶんをかえたい、なんていうししゅんきのじょしにありがちなおもいとは)
それは自分を変えたい、なんていう思春期の女子にありがちな思いとは
(じげんがちがう。たとえばあくまがめのまえにあらわれて、おまえをまものにしてやろう、)
次元が違う。例えば悪魔が目の前に現れて、お前を魔物にしてやろう、
(っていったらあいつはなんのまよいもなくことわるだろう。)
って言ったらあいつは何の迷いもなく断るだろう。
(そしてたぶんこういうんだ「なりかただけをおしえて」」)
そしてたぶんこう言うんだ『なりかただけを教えて』」
(まさききょうこはいしゅうのするるいてきがたのふらすこのなかみを、)
間崎京子は異臭のする涙滴型のフラスコの中身を、
(はいすいこうにまきながらくちをひらいた。)
排水溝に撒きながら口を開いた。
(「どらきゅらって、どらごんのむすこっていみなんですって。しってる?)
「ドラキュラって、ドラゴンの息子って意味なんですって。知ってる?
(わらきあのこうおうヴらどにせいってひとはりゅうこうとあだなされたしんせいろーまていこくの)
ワラキアの公王ヴラド2世って人は竜公とあだ名された神聖ローマ帝国の
(きしだったけど、そのむすこのヴらどさんせいはくしざしこうっていみょうの)
騎士だったけど、その息子のヴラド3世は串刺し公って異名の
(れきしてきぎゃくさつしゃよ。draculのこだからdracula。)
歴史的虐殺者よ。Draculの子だからDracula。
(でもかれはりゅうにはならなかった」)
でも彼は竜にはならなかった」
(こうこつのひょうじょうをうかべて、そういうのだ。)
恍惚の表情を浮かべて、そう言うのだ。