引き出し-3-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(「いっかげつくらいまえから。に、さんにちにいっぺん。)

「一ヶ月くらい前から。二、三日にいっぺん。

(あ、でもさいきんはまいにちかも、だって」)

あ、でも最近は毎日かも、だって」

(おれはすこしかんがえた。かんかんと、つかわなかったすぷーんのえでつくえをたたく。)

俺は少し考えた。カンカンと、使わなかったスプーンの柄で机を叩く。

(「ほんとうになにかがへやからきえているのか、しるほうほうがある」)

「本当に何かが部屋から消えているのか、知る方法がある」

(ふたりのしょうじょがこちらをじっとみている。)

二人の少女がこちらをじっと見ている。

(すぷーんでめのまえをはらうまねをして、つづけた。)

スプーンで目の前を払う真似をして、続けた。

(「そのへやから、べっどとひきだしいがい、ぜんぶそとにだす」)

「その部屋から、ベッドと引き出し以外、全部外に出す」

(すこしして、いきをすうおとがかすかにきこえた。)

少しして、息を吸う音がかすかに聞こえた。

(「そうすれば、もしてがでてきて、「なにか」をつかんでひきだしに)

「そうすれば、もし手が出てきて、『何か』を掴んで引き出しに

(きえていったとかんじたなら、そのそうしつかんはさっかくだ、ということになる」)

消えていったと感じたなら、その喪失感は錯覚だ、ということになる」

(なにもへやになかったことはかくにんずみなのだから。)

何も部屋になかったことは確認済みなのだから。

(おれは、うまいことをいったつもりだった。われながらよいあいであだとおもった。)

俺は、上手いことを言ったつもりだった。我ながら良いアイデアだと思った。

(けれど、るりがたいけんしたというそのふかかいなできごとをゆめ、)

けれど、瑠璃が体験したというその不可解な出来事を夢、

(もしくはなんらかのげんかくだとなかばきめつけていたおれと、)

もしくはなんらかの幻覚だと半ば決め付けていた俺と、

(そうではないかのじょじしんとのあいだにはおおきなはっそうのへだたりがあったのだ。)

そうではない彼女自身との間には大きな発想の隔たりがあったのだ。

(るりはふるふるとふるえながら、おんきょうのみみもとにくちをよせる。)

瑠璃はふるふると震えながら、音響の耳元に口を寄せる。

(「そんなことをして、てがどこまでものびてきて、)

「そんなことをして、手がどこまでも伸びてきて、

(べっどのうえのわたしをつかんだら・・・・・・」ぞくりとした。)

ベッドの上の私を掴んだら…・・・」ゾクリとした。

(くうきがはりつめる。しまった。ゆだんした。)

空気が張り詰める。しまった。油断した。

(けいけんじょう、かじょうなおびえはほんにんとしゅういのにんげんによくないえいきょうをおよぼす。)

経験上、過剰な怯えは本人と周囲の人間に良くない影響を及ぼす。

など

(なかでもいちばんこまるのは、なかれること。「ひどい」)

中でも一番困るのは、泣かれること。「ひどい」

(といって、おんきょうがとなりのしょうじょをかばうようなしぐさをした。)

と言って、音響が隣の少女をかばうような仕草をした。

(そして「どういうつもり」とつめたくいいはなち、おれをかるくにらむ。)

そして「どういうつもり」と冷たく言い放ち、俺を軽く睨む。

(どういうつもりもなにも、おれはきょうりょくてきにかいけつさくをていしゅつしたつもりだった。)

どういうつもりも何も、俺は協力的に解決策を提出したつもりだった。

(だがそれは、たにんのなやみをしんけんにかんがえないおとこ、)

だがそれは、他人の悩みを真剣に考えないオトコ、

(というふほんいなれってるをあいてかたにはらせただけだった。また、おいめだ。)

という不本意なレッテルを相手方に貼らせただけだった。また、負い目だ。

(このおんきょうというしょうじょには、いいようにふりまわされているようなきがする。)

この音響という少女には、いいように振り回されているような気がする。

(「わかった。それはなし」かたをすくめる。けっきょくおれはきがつくと、)

「わかった。それはナシ」肩を竦める。結局俺は気がつくと、

(そのてのでてくるというひきだしのあるしんしつでげんちちょうさすることを)

その手の出てくるという引き出しのある寝室で現地調査することを

(やくそくさせられていた。そのふつかごだ。ようびはどよう。)

約束させられていた。その二日後だ。曜日は土曜。

(おれはあくびをしながらじてんしゃをこいでいた。まだよるもあけやらぬはやいじかん。)

俺は欠伸をしながら自転車をこいでいた。まだ夜も明けやらぬ早い時間。

(くらいそらの、ふかみのあるびみょうなしきさいにめをうばわれながら、)

暗い空の、深みのある微妙な色彩に目を奪われながら、

(かすかなはださむさにしゃつのすそをきにする。)

微かな肌寒さにシャツの裾を気にする。

(きょうはあつくなるとにゅーすでやっていたはずなのに。)

今日は暑くなるとニュースでやっていたはずなのに。

(がさがさと、みょうにかさばるてがきのちずをくろうしてひろげ、もくてきちをたしかめる。)

ガサガサと、妙にかさ張る手書きの地図を苦労して広げ、目的地を確かめる。

(なんだ。もうすぐそこじゃないか。そうおもいながらかどのへいをまがると、)

なんだ。もうすぐそこじゃないか。そう思いながら角の塀を曲がると、

(うすやみのなかにうかびあがるこぎれいなしろいさんかいだてのまんしょんがめにはいった。)

薄闇の中に浮かび上がる小綺麗な白い三階建てのマンションが目に入った。

(おいおい。たかそうなところにすんでるじゃないか。)

おいおい。高そうな所に住んでるじゃないか。

(こうこうせいのみぶんでひとりぐらしときいて、)

高校生の身分で一人暮らしと聞いて、

(なにさまだ、とおもったがもしかするとおやがかなりのかねもちなのかもしれない。)

何様だ、と思ったがもしかすると親がかなりの金持ちなのかも知れない。

(ちゅうりんじょうにじてんしゃをとめ、かいだんをのぼる。むかうはさんかいのかどべやだ。)

駐輪場に自転車を停め、階段を上る。向かうは三階の角部屋だ。

(じつにけしからん。していされたどあのまえにたつが、まだおんきょうのすがたがみえない。)

実にけしからん。指定されたドアの前に立つが、まだ音響の姿が見えない。

(ちょうどまちあわせのじかんなのに。)

ちょうど待ち合わせの時間なのに。

(まだしゅういはくらく、あさのこんなはやいじかんにじょせいのへやのまえで)

まだ周囲は暗く、朝のこんな早い時間に女性の部屋の前で

(うろうろしているのはじつにきまずい。)

うろうろしているのは実に気まずい。

(あたりをきにしながらねんのためにどあのぶをひねってみたが、)

辺りを気にしながら念のためにドアノブを捻ってみたが、

(やはりかぎがかかっている。おんきょうをまつしかないようだ。そのばでしゃがみこむ。)

やはり鍵が掛かっている。音響を待つしかないようだ。その場でしゃがみこむ。

(なぜおれはこんなところでこんなことをしているのだろう。)

何故俺はこんなところでこんなことをしているのだろう。

(そうおもいながらゆううつなおもいでひたいにゆびをあてる。)

そう思いながら憂鬱な思いで額に指をあてる。

(ようは、ねおきにたんすのひきだしからてがでてくるげんかくをみるという)

要は、寝起きにタンスの引き出しから手が出てくる幻覚を見るという

(みどりのめのれいじょう、るりの、なやみかいけつのためのげんちちょうさだ。)

緑の目の令嬢、瑠璃の、悩み解決のための現地調査だ。

(かんぺきをきするならずっとへやのなかでねずのばんをしていたほうが)

完璧を期するならずっと部屋の中で寝ずの番をしていた方が

(よいのだろうが、はじめてあったうらわかきしょうじょのへやでよるをあかすなど、)

よいのだろうが、初めて会ったうら若き少女の部屋で夜を明かすなど、

(おれにしてもさけたいものがあった。)

俺にしても避けたいものがあった。

(きくところによると、めざましをかけなくともかのじょはいつもだいたい)

聞くところによると、目覚ましを掛けなくとも彼女はいつもだいたい

(きまったじかんにめがさめるのだという。ただていけつあつなもので、)

決まった時間に目が覚めるのだという。ただ低血圧なもので、

(そこからおきあがるまでがながいのだとか。)

そこから起き上がるまでが長いのだとか。

(そしておれとおんきょうは、そのめがさめるじかんのすこしまえにへやにいき、)

そして俺と音響は、その目が覚める時間の少し前に部屋に行き、

(じっさいにそのばでなにがおこっているのかたしかめる、というさくせんだった。)

実際にその場でなにが起こっているのか確かめる、という作戦だった。

(なのに、そのおんきょうがこない。きょうのためにあいかぎをわたされているのはやつなのに。)

なのに、その音響が来ない。今日のために合鍵を渡されているのはヤツなのに。

(ねぼうしやがったのか。)

寝坊しやがったのか。

(どあのまえでいらいらしながらまつことにじゅっぷん。)

ドアの前でイライラしながら待つこと二十分。

(ちいさなあしおととともに、ようやくおんきょうがすがたをあらわした。)

小さな足音とともに、ようやく音響が姿を現した。

(「あほか」おもわずどくづいていた。)

「アホか」思わず毒づいていた。

(ちかづいてくるそのすがたは、せんじつのかれーやのときとほとんどかわらない)

近づいてくるその姿は、先日のカレー屋の時とほとんど変わらない

(ごしっくなふうていだったのだ。)

ゴシックな風体だったのだ。

(まちあわせのじかんにおくれてまでゆずれないのか、そのかっこうは。)

待ち合わせの時間に遅れてまで譲れないのか、その格好は。

(といつめていいわけをきくのもむなしくなるだけなので、)

問い詰めて言い訳を聞くのも空しくなるだけなので、

(「いつもかわいいなあ」といやみだけいっておいてどあをゆびさし、)

「いつも可愛いなあ」と嫌味だけ言っておいてドアを指差し、

(あけろとじぇすちゃーをする。)

開けろとジェスチャーをする。

(おんきょうはろくにあやまりもせずにかぎをとりだすと、どあのぶにあてる。)

音響はロクに謝りもせずに鍵を取り出すと、ドアノブにあてる。

(きんぞくがすれるちいさなおととともにどあがひらかれ、ふたりしてそのなかにすべりこむ。)

金属が擦れる小さな音とともにドアが開かれ、二人してその中に滑り込む。

(げんかんからしてひろい。まずそこにおどろく。おれのへやとどうしてもひかくしてしまう。)

玄関からして広い。まずそこに驚く。俺の部屋とどうしても比較してしまう。

(くらいなかを、なかばてさぐりですすむ。もちろんあしおとをころして。)

暗い中を、半ば手探りで進む。もちろん足音を殺して。

(よけいなものおとをたてて、なかでねむるしょうじょのふつうのめざめをさまたげてはいけない)

余計な物音を立てて、中で眠る少女の普通の目覚めを妨げてはいけない

(というはいりょからだ。おんきょうがすりがらすのはめこまれたどあのまえにたち、)

という配慮からだ。音響が摺りガラスの嵌め込まれたドアの前に立ち、

(くちびるにひとさしゆびをたててみせる。)

唇に人差し指を立ててみせる。

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