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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(だいがくさんかいせいのなつだった。そうそうにそのとしのだいがくにおけるぜんこうぎふじゅこうを)

大学三回生の夏だった。早々にその年の大学における全講義不受講を

(きめてしまったおれは、ばいとのないひにはひまをもてあましていた。とくにいみもなく)

決めてしまった俺は、バイトのない日には暇を持て余していた。特に意味もなく

(こうじえんをいちぺーじめからはんぶんくらいまでどくはしてしまったほどだ。)

広辞苑を一ページ目から半分くらいまで読破してしまったほどだ。

(ぜんぶをやりとげないあたりがまたおれらしい。)

全部をやりとげないあたりがまた俺らしい。

(ともかくそんなくっせつしたまいにちにもんもんとしていたあるひ、)

ともかくそんな屈折した毎日に悶々としていたある日、

(しりあいからよびだしをうけた。かつて、としでんせつなどをかたらう)

知り合いから呼び出しを受けた。かつて、都市伝説などを語らう

(じもとのうわさけいふぉーらむにでいりしていたときにであった、)

地元の噂系フォーラムに出入りしていた時に出会った、

(おんきょうというはんどるねーむのしょうじょだ。このあいだまでべつのなまえで)

音響というハンドルネームの少女だ。このあいだまで別の名前で

(ねっとじょうにいたらしいが、「おんきょう」じだいをしるおれとにねんぶりに)

ネット上にいたらしいが、「音響」時代を知る俺と二年振りに

(さいかいしてからなにかおもうところがあったらしく、)

再会してからなにか思う所があったらしく、

(またそのはんどるねーむをなのっているようだった。)

またそのハンドルネームを名乗っているようだった。

(いったいなんのようだといぶかしくおもうきもちもあったが、)

いったい何の用だと訝しく思う気持ちもあったが、

(だまってすわっているとしゅういのおとこどもがちらちらしせんをむけてくるていどには)

黙って座っていると周囲の男どもがチラチラ視線を向けてくる程度には

(かわいらしいようしをしているかのじょなので、わるいきはしない。)

可愛らしい容姿をしている彼女なので、悪い気はしない。

(ただそのしせんのはんぶんはごしっくちょうでかためたそのふぁっしょんにむけられる)

ただその視線の半分はゴシック調で固めたそのファッションに向けられる

(こうきのめであったかもしれないのだが。)

好奇の目であったかもしれないのだが。

(していされたかれーやでまちあわせ、すこしおくれてやってきた)

指定されたカレー屋で待ち合わせ、少し遅れてやってきた

(かのじょととりとめもないはなしをする。)

彼女ととりとめもない話をする。

(かれーやいんぼうろんというあたまのいたくなりそうなりろんをたんたんとかたるかのじょに、)

カレー屋陰謀論という頭の痛くなりそうな理論を淡々と語る彼女に、

(「かれーをたべたあとにはんざいをおかすひとがおおいというのは、)

「カレーを食べた後に犯罪を犯す人が多いというのは、

など

(たんなるがいぜんせいのもんだい。それだけしょくされるきかいのおおいりょうりだということ」と)

単なる蓋然性の問題。それだけ食される機会の多い料理だということ」と

(はんろんすると、「がいぜんせいってなに」ときいてくる。)

反論すると、「蓋然性ってなに」と聞いてくる。

(「がいぜんせいってのはつまり、ねじにたとえるなら、)

「蓋然性ってのはつまり、ネジにたとえるなら、

(そのぜったいりょうからしてばぎーちゃんのかけらというよりは)

その絶対量からしてバギーちゃんのかけらというよりは

(ぽせいどんのぶひんなんじゃないかなってことだ」というと、)

ポセイドンの部品なんじゃないかなってことだ」と言うと、

(「ばぎーちゃんってだれ」とかえされる。)

「バギーちゃんってだれ」と返される。

(「どらえもんのだいちょうへんってみたことない?」ときくと、)

「ドラえもんの大長編って見たことない?」と聞くと、

(「ない」そこでかいわがおわった。としはたしかおれのよっつしたのはずだ。)

「ない」そこで会話が終わった。歳は確か俺の四つ下のはずだ。

(これもじぇねれーしょんぎゃっぷなのか。)

これもジェネレーションギャップなのか。

(おれもりあるたいむではないが、ふつうどらえもんのえいがばんは)

俺もリアルタイムではないが、普通ドラえもんの映画版は

(びでおやまんがでみているのものだとおもいこんでいた。)

ビデオや漫画で見ているのものだと思い込んでいた。

(なかなかほんだいにはいらない。いらいらしてくる。)

なかなか本題に入らない。イライラしてくる。

(そういえば、いまさらのようだが、このおんなはしんようならない。)

そう言えば、いまさらのようだが、この女は信用ならない。

(かこに、だまされておそろしいめにあったことがいちどならずあったからだ。)

過去に、騙されて恐ろしい目にあったことが一度ならずあったからだ。

(でーとしよう、などというめーるのぶんめんは、こんにちはていどのいみに)

デートしよう、などというメールの文面は、こんにちは程度の意味に

(とるべきだろう。しんりてきなかべをつくろうと、すこしみをひいたときだった。)

取るべきだろう。心理的な壁を作ろうと、少し身を引いた時だった。

(きゅうにおんきょうがたちあがり、「こっちこっち」といりぐちにむかっててをふった。)

急に音響が立ち上がり、「こっちこっち」と入り口に向かって手を振った。

(くろい。おれにはりかいできないくろいふぁっしょんにみをつつんだじゅうろく、ななさいとおぼしき)

黒い。俺には理解できない黒いファッションに身を包んだ十六、七歳と思しき

(しょうじょがやってきた。おんきょうとどうしつのかっこうだが、もっとくろい。)

少女がやってきた。音響と同質の格好だが、もっと黒い。

(そしてあろうことかかみはぎんいろ。うすっすらぱーぷるのくちべに。)

そしてあろうことか髪は銀色。薄っすらパープルの口紅。

(そしてえめらるどぐりーんのからーこんたくと。)

そしてエメラルドグリーンのカラーコンタクト。

(しょうじょはおもそうなすかーとをひるがえしておれのまえのせきについた。)

少女は重そうなスカートを翻して俺の前の席についた。

(「るりちゃん。なんかこむづかしいじをかく」)

「るりちゃん。なんかこむづかしい字を書く」

(しょうじょはしょうかいにかるくあたまをさげてから、そのおんきょうにかおをよせて)

少女は紹介に軽く頭を下げてから、その音響に顔を寄せて

(ひそひそとみみうちをする。「おうはとどまり、おうははなれる、って」)

ひそひそと耳打ちをする。「王は留まり、王は離れる、って」

(おんきょうはうなずきながらそういった。あたまのなかでじをおもいうかべる。「るり」か。)

音響は頷きながらそう言った。頭の中で字を思い浮かべる。『瑠璃』か。

(それがほんみょうなのかなんとかねーむなのかわからないが、)

それが本名なのかナントカネームなのかわからないが、

(とりあえずこちらもえしゃくせざるをえない。)

とりあえずこちらも会釈せざるを得ない。

(「で、なにこれ」おれのことばにおんきょうがあっけらかんという。)

「で、なにこれ」俺の言葉に音響があっけらかんと言う。

(「しょうかいするっていったでしょ」あたまをかかえそうになる。)

「紹介するって言ったでしょ」頭を抱えそうになる。

(あれか、ともだちをしょうかいするってやつ。たしかにそんなはなしをしたおぼえがあるが、)

あれか、ともだちを紹介するってやつ。確かにそんな話をした覚えがあるが、

(おれはべつのせかいのにんげんとつきあうじしんはない。)

俺は別の世界の人間とつきあう自信はない。

(なによりおれにはいま、とくていのあいてがいる。)

なにより俺には今、特定の相手がいる。

(こんわくしたかおをかくさないおれに、るりちゃんとやらはめをぱちぱちとまたたいて、)

困惑した顔を隠さない俺に、瑠璃ちゃんとやらは目をぱちぱちと瞬いて、

(かなしそうなひょうじょうをみせた。)

哀しそうな表情を見せた。

(もっともそれがおこっているかおだといわれたらそうとも)

もっともそれが怒っている顔だと言われたらそうとも

(みえてしまうだけの、びみょうなへんかにすぎなかったのであるが。)

見えてしまうだけの、微妙な変化に過ぎなかったのであるが。

(「しょうかいするっていったのわすれた?めちゃかわいくてこまってるともだち」)

「紹介するって言ったの忘れた? メチャ可愛くて困ってるともだち」

(ちょっとまった。しゅうしょくごがひとつふえてる。しょうかいされるのはたしか、)

ちょっと待った。修飾語が一つ増えてる。紹介されるのは確か、

(「めちゃかわいいともだち」だったはずだ。「こまりごとのそうだんがある?」)

「メチャ可愛いともだち」だったはずだ。「困りごとの相談がある?」

(くろいのがふたりしてうなずく。きた。こんなことだろうとおもった。)

黒いのが二人して頷く。きた。こんなことだろうと思った。

(おんきょうはおれのおかるとどうのししょうなみに、)

音響は俺のオカルト道の師匠並みに、

(あやしいものへくびをつっこみたがるふしがある。)

あやしいものへ首を突っ込みたがるフシがある。

(そしてそのしりぬぐいをこれまでににどしてしまったのがうんのつきで、)

そしてその尻拭いをこれまでに二度してしまったのが運の尽きで、

(どうやらなつかれてしまったのかもしれない。)

どうやら懐かれてしまったのかも知れない。

(「ちゃんといったでしょ。かわいくてめちゃこまってるともだちしょうかいするって」)

「ちゃんと言ったでしょ。可愛くてメチャ困ってるともだち紹介するって」

(しゅうしょくごのじゅんばんがかわった。もうれつにいやなよかんがする。)

修飾語の順番が変わった。猛烈に嫌な予感がする。

(ちゅうもんしたかれーがきたので、とりあえずたべることにした。)

注文したカレーが来たので、とりあえず食べることにした。

(これがほんかくてきというやつなのか、やたらぐがすくなく)

これが本格的というやつなのか、やたら具が少なく

(ふくざつなすぱいすのふうみがはなにくる。)

複雑なスパイスの風味が鼻に来る。

(おれはめのまえでもくもくとかれーをたべているふたりのしょうじょをうかがう。)

俺は目の前で黙々とカレーを食べている二人の少女を窺う。

(あんなふくどこでうっているのだろうか。それに、ふくにあわせた)

あんな服どこで売っているのだろうか。それに、服に合わせた

(けしょうをしているようだが、そとにでるたびにこれでは)

化粧をしているようだが、外に出るたびにこれでは

(さぞやじかんがかかることだろう。るりとなのるしょうじょが、)

さぞや時間が掛かることだろう。瑠璃と名乗る少女が、

(ふいにすぷーんをもつみぎてをとめて)

ふいにスプーンを持つ右手を止めて

(「めいわくですか」というめでといかけてきた。)

「迷惑ですか」という目で問いかけて来た。

(はっきり「そうだ」といえないあたり、じぶんでじぶんがきらいになる。)

はっきり「そうだ」と言えないあたり、自分で自分が嫌いになる。

(それにしても、そのくろずくめのふくそうにしろいはだ、ぎんいろのかみにみどりのめとそろうと)

それにしても、その黒ずくめの服装に白い肌、銀色の髪に緑の目と揃うと

(まるでにんぎょうのようだ。おんきょうのほうがまだしもふぁっしょんのわくのなかで)

まるで人形のようだ。音響の方がまだしもファッションの枠の中で

(とどまっているきがする。)

留まっている気がする。

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