引き出し-2-
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | じゅん | 4302 | C+ | 4.4 | 95.9% | 971.9 | 4365 | 183 | 78 | 2024/09/30 |
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問題文
(そのふしぎないろのひとみをみていて、ふいにおもいだすたんごがあった。)
その不思議な色の瞳を見ていて、ふいに思い出す単語があった。
(「みどりのめのれいじょう」)
『緑の目の令嬢』
(なんだっけこれは。あたまのなかですうかいくりかえす。みどりのめのれいじょう。)
なんだっけこれは。頭の中で数回繰り返す。みどりのめのれいじょう。
(そうだおもいだした。もーりするぶらんのしょうせつ、るぱんしりーずのいっぺんだ。)
そうだ思い出した。モーリス・ルブランの小説、ルパンシリーズの一編だ。
(かいとうあるせーぬるぱんがみどりのめのしょうじょにであい、かのじょのうけつぐばくだいな)
怪盗アルセーヌ・ルパンが緑の目の少女に出会い、彼女の受け継ぐ莫大な
(いさんをめぐるじけんにかかわっていくはなしで、たしかみずうみのそこにかくされた)
遺産をめぐる事件に関わっていく話で、確か湖の底に隠された
(こだいろーまのいせきなんかがでてきたきおくがある。)
古代ローマの遺跡なんかが出てきた記憶がある。
(そういえばむかしよんだときには、あたまのなかでかってにみどりのめのしょうじょのびじゅあるに)
そう言えば昔読んだ時には、頭の中で勝手に緑の目の少女のビジュアルに
(まごのほうの「かりおすとろのしろ」にでてくるひろいん、)
孫の方の『カリオストロの城』に出てくるヒロイン、
(くらりすひめをはめこんでいた。そのしょうじょは、なまえをなんといっただろう。)
クラリス姫を嵌め込んでいた。その少女は、名前を何といっただろう。
(わすれてしまった。けっこうすきだったのに。)
忘れてしまった。結構好きだったのに。
(かれーをすぷーんですくい、すーぷのようにすすることしばし。)
カレーをスプーンで掬い、スープのように啜ることしばし。
(おもいだした。「おーれりーか」ぼそりとくちをついてでてしまった。)
思い出した。「オーレリーか」ボソリと口をついて出てしまった。
(おんきょうがそれをきいて、おどろいたかおをする。「どうしてしってるの」)
音響がそれを聞いて、驚いた顔をする。「どうして知ってるの」
(そのおどろきざまにこっちのほうがおどろく。「おれがるぱんよんでちゃわるいのか」)
その驚き様にこっちの方が驚く。「俺がルパン読んでちゃ悪いのか」
(「べつにわるくはないけど」なんなんだ、こいつ。)
「別に悪くはないけど」なんなんだ、こいつ。
(どらえもんのだいちょうへんはみてないくせに、るぱんしりーずはよんでるのか。)
ドラえもんの大長編は見てないくせに、ルパンシリーズは読んでるのか。
(たしかに、べつにわるくはないが。なんだかしゃくぜんとしないかんじだけがのこった。)
確かに、別に悪くはないが。なんだか釈然としない感じだけが残った。
(「で、なにがあった」たべおわって、みずにてをのばす。)
「で、なにがあった」食べ終わって、水に手を伸ばす。
(おんきょうがるりをひじでこづく。るりがおんきょうのみみもとにくちびるをよせて)
音響が瑠璃を肘で小突く。瑠璃が音響の耳元に唇をよせて
(ぼそぼそとはなす。やがておんきょうがこちらをむく。)
ボソボソと話す。やがて音響がこちらを向く。
(「るりちゃんはていけつあつなのよ。で、あさおきたときにしばらくうごけないんだって。)
「瑠璃ちゃんは低血圧なのよ。で、朝起きた時にしばらく動けないんだって。
(そのめがさめてぼーっとしてるときに、へやでへんなことがおきるんだって」)
その目が覚めてボーっとしてる時に、部屋で変なことが起きるんだって」
(またつづきをおんきょうにみみうちする。)
また続きを音響に耳打ちする。
(「るりちゃんのべっどのそばにちいさいたんすがあって、)
「瑠璃ちゃんのベッドのそばに小さいタンスがあって、
(なかにしたぎとかこものとかがはいってるんだけど、そのひきだしのひとつが)
中に下着とか小物とかが入ってるんだけど、その引き出しのひとつが
(ひらいてるのね。よるねるまえにはぜんぶしまってたはずなのに」)
開いてるのね。夜寝る前には全部閉まってたはずなのに」
(この「しょたいめんのひとにはこえをきかせません」とでもいいたげなきゃらづくりに、)
この「初対面の人には声を聞かせません」とでもいいたげなキャラ作りに、
(だんだんといらだってきた。かっこうといい、じぶんがふつうじゃないことを)
だんだんと苛立ってきた。格好といい、自分が普通じゃないことを
(そんなにあぴーるしたいのか。おれのいらだちをきにもせず、おんきょうのつうやくはつづく。)
そんなにアピールしたいのか。俺の苛立ちを気にもせず、音響の通訳は続く。
(おれはどっちのかおをみながらきいていればいいのかまよいながら、)
俺はどっちの顔を見ながら聞いていればいいのか迷いながら、
(こうごにしせんをむけた。「あれっ?へんだなっておもってると、)
交互に視線を向けた。「あれっ? 変だなって思ってると、
(そのひらいたひきだしからなにかがちらっとうごくのがみえて、)
その開いた引き出しから何かがチラッと動くのが見えて、
(そこにいしきをしゅうちゅうしているとゆっくりじわじわ、なにかしろいものが)
そこに意識を集中しているとゆっくりじわじわ、なにか白いものが
(なかからでてくるのよ。すぐににんげんのてだってことはわかるんだけど、)
中から出てくるのよ。すぐに人間の手だってことはわかるんだけど、
(もちろんだれかがなかにかくれちゃえるようなひきだしじゃないし、)
もちろん誰かが中に隠れちゃえるような引き出しじゃないし、
(ゆびがみえててのひらがみえててくびがみえてうでがみえてひじがなくて)
指が見えて・手のひらが見えて・手首が見えて・腕が見えて・肘が無くて・
(ずるずるありえないくらいのびて。でもうごけなくて。めがそらせなくて。)
ズルズルありえないくらい伸びて。でも動けなくて。目が逸らせなくて。
(こわくて。それからそのてがなにかをつかんでまたずるずるひきだしにもどっていって、)
怖くて。それからその手が何かを掴んでまたズルズル引き出しに戻っていって、
(ずるってぜんぶかくれてみえなくなったらやっとおきられるの」でじゃヴをかんじた。)
ズルって全部隠れて見えなくなったらやっと起きられるの」デジャヴを感じた。
(なぜだろう。ぞくぞくした。このはなしは、まるでかなしばりちゅうにおきる)
何故だろう。ゾクゾクした。この話は、まるで金縛中に起きる
(ばっどとりっぷのようだ。もしくはただのゆめか。)
バッドトリップのようだ。もしくはただの夢か。
(「それ、おきられるようになるまでは、ほんとにうごけないのか?)
「それ、起きられるようになるまでは、ほんとに動けないのか?
(それからおきられるようになるのって、きゅうに?そこで、あけてたはずのめが、)
それから起きられるようになるのって、急に? そこで、開けてたはずの目が、
(もういちどひらいたようなかんかくがない?」)
もう一度開いたような感覚がない?」
(おんきょうがつうやくする。うごけないというよりは、)
音響が通訳する。動けないというよりは、
(うごきたくないってかんじのじゅうばいのうしゅくばん。おきるのはきゅうに。そんなかんかくない。)
動きたくないって感じの十倍濃縮版。起きるのは急に。そんな感覚ない。
(「うごきたくない」というかんかくは、かなしばりのぱたーんからははずれるようだ。)
「動きたくない」という感覚は、金縛りのパターンからは外れるようだ。
(かなしばりはたいていのばあい「うごきたい」はずだ。それににゅうみんじげんかくのたぐいにしても、)
金縛りはたいていの場合「動きたい」はずだ。それに入眠時幻覚の類にしても、
(あさのめざめのときにおこるというのはよくわからない。)
朝の目覚めの時におこるというのはよくわからない。
(そんなこともあるのだろうか。かくせいじげんかくとでもいうのか?)
そんなこともあるのだろうか。覚醒時幻覚とでもいうのか?
(ていけつあつというのがそもそもあまりいめーじがわかない。)
低血圧というのがそもそもあまりイメージがわかない。
(それにその「て」はなんだ。)
それにその「手」はなんだ。
(「うごけるようになってから、ひきだしをみたらどうなってる?」)
「動けるようになってから、引き出しを見たらどうなってる?」
(「ひらいたまま。なかをのぞいてみてもなにもない。したぎとかくつしたとかだけ」)
「開いたまま。中を覗いてみても何もない。下着とか靴下とかだけ」
(「そのてがつかんでたんすのなかにひきずりこんだものって、なに?」)
「その手が掴んでタンスの中に引きずり込んだものって、なに?」
(「わからない。おぼえてない。たぶん、それをみているときには)
「わからない。覚えてない。多分、それを見ている時には
(しってたはずなのに、きえたときにはおもいだせなくなってる」)
知ってたはずなのに、消えた時には思い出せなくなってる」
(なるほど。なにがなくなったかもわからないわけだ。)
なるほど。何が無くなったかも分からないわけだ。
(つまり、このできごとはなにもきえたものがなくてもせいりつする。)
つまり、この出来事は何も消えたものがなくても成立する。
(ふと、いぜんよんだほんのことをおもいだした。そこには、ゆめはふようなたんききおくを)
ふと、以前読んだ本のことを思い出した。そこには、夢は不要な短期記憶を
(のうのひきだしのおくふかくにしずめて、あたまのなかをせいりしているさいちゅうにさいせいされる)
脳の引き出しの奥深くに沈めて、頭の中を整理している最中に再生される
(ふぃるむのだんぺんなのだとかいてあった。)
フィルムの断片なのだと書いてあった。
(だんぺんのなかにはのうをかっせいかさせるつよいきおくもあり、)
断片の中には脳を活性化させる強い記憶もあり、
(それらをごうせいしりかいしうるものにさいこうちくされたものがれむすいみんじに)
それらを合成し理解しうるものに再構築されたものがレム睡眠時に
(じょうえいされているもので、そこからかっとされただんぺんはのうのきおくのを)
上映されているもので、そこからカットされた断片は脳の記憶野を
(あっぱくしないように「わすれられていく」のだと。)
圧迫しないように「忘れられていく」のだと。
(それがほんとうのことかはしらない。ただおれは「ひきだしのて」に)
それが本当のことかは知らない。ただ俺は「引き出しの手」に
(なにかぐういてきなものをかんじざるをえなかった。)
なにか寓意的なものを感じざるを得なかった。
(「もしかして、そのてがつかんでいったものって、じぶんにとって)
「もしかして、その手が掴んでいったものって、自分にとって
(いらないものだったんじゃない?」)
要らないものだったんじゃない?」
(ふたりでぼそぼそとそうだんでもするようにみみうちしあってから、)
二人でボソボソと相談でもするように耳打ちしあってから、
(るりはくびをさゆうにふる。「たいせつなものだったかもしれない。)
瑠璃は首を左右に振る。「大切なものだったかも知れない。
(それさえわからない。べっどからからだをおこして、じぶんのへやをみまわしたら、)
それさえ分からない。ベッドから体を起こして、自分の部屋を見回したら、
(なにかだいじなものをなくしてしまったようなきがして、とってもかなしくなる」)
何か大事なものを無くしてしまったような気がして、とっても悲しくなる」
(いまきいているこのはなしがたんじゅんにかのじょたちのうそではないとしたら、)
今聞いているこの話が単純に彼女たちの嘘ではないとしたら、
(きもちのわるいはなしだ。ますますぞくぞくしてくる。きらいではない。このかんかくは。)
気持ちの悪い話だ。ますますゾクゾクしてくる。嫌いではない。この感覚は。
(「それがなんどもつづけておこるのか」)
「それが何度も続けて起こるのか」