天使-6-

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってしまっていたので、作成しました。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 daifuku 3751 D++ 4.0 93.9% 988.6 3966 257 74 2024/11/03

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問題文

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(がっこうはまったくじさつみすいのことにふれようとしない。)

学校はまったく自殺未遂のことに触れようとしない。

(わたしたちがしているうわさばなしをもれきいていないはずはないのに。)

私たちがしている噂話を漏れ聞いていないはずはないのに。

(あるいはがっこうとのかかわりがかくにんされないかぎり、)

あるいは学校との関わりが確認されない限り、

(むしをきめこんでいるのかもしれない。)

無視を決め込んでいるのかも知れない。

(けれどわたしはどうしてもこのままにはしておけなかった。)

けれど私はどうしてもこのままにはしておけなかった。

(たかのしほにはなしかけたくてうずうずしていた。)

高野志穂に話しかけたくてうずうずしていた。

(そのきもちをみすかされたのか、よーこがまゆをよせてわたしをみる。)

その気持ちを見透かされたのか、ヨーコが眉を寄せて私を見る。

(「ちょっとちひろ。なんかかぎまわってるみたいだけど、やめときなよ。)

「ちょっとちひろ。なんか嗅ぎまわってるみたいだけど、やめときなよ。

(こんなことにかかわらないほうがいいよ」)

こんなことに関わらない方がいいよ」

(めんとむかってそういわれると、たしかにそうだというりょうしきがわたしのなかでうなずく。)

面と向かってそう言われると、確かにそうだという良識が私の中で頷く。

(このすうじつで、かなりのことがわかっていた。)

この数日で、かなりのことが分かっていた。

(おなじちゅうがくで、ふたりともいじめをうけていたこと。)

同じ中学で、二人とも苛めを受けていたこと。

(そしていまのがっこうでの、そしてくらすでのたちば。)

そして今の学校での、そしてクラスでの立場。

(これいじょうなにをしってもふかいなだけだ。)

これ以上何を知っても不快なだけだ。

(わたしじしんくらすでういているみであり、そのわたしがなにかできることなどないし、)

私自身クラスで浮いている身であり、その私がなにか出来ることなどないし、

(なによりめんどうくさい、どうでもいいというなげやりなきもちのほうがつよかった。)

なにより面倒くさい、どうでもいいという投げやりな気持ちの方が強かった。

(やすみじかんにもうつむいてつくえのうえにひろげたのーとをじっとみているたかのしほのすがたに、)

休み時間にも俯いて机の上に広げたノートをじっと見ている高野志穂の姿に、

(こうきしんいがいのきもちがわかないじぶんにきづく。)

好奇心以外の気持ちが湧かない自分に気づく。

(かのじょはしきりにかおのばんそうこうをきにしてさわっている。)

彼女はしきりに顔の絆創膏を気にして触っている。

(このあいだよりまたふえていた。)

このあいだよりまた増えていた。

など

(そのようすをみていて、おりんぴっくせいしんということばがいっしゅんあたまをよぎる。)

その様子を見ていて、オリンピック精神という言葉が一瞬頭をよぎる。

(これだけはいみがわからない。このいちれんのできごとにそぐわないひびきだ。)

これだけは意味が分からない。この一連の出来事にそぐわない響きだ。

(まさききょうこはいったいなにをおもってそんなことをいったのか。)

間崎京子は一体なにを思ってそんなことを言ったのか。

(あれからなんどかあのきょうしつをのぞいたが、かのじょはすでにそうたいしたあとか)

あれから何度かあの教室を覗いたが、彼女はすでに早退した後か

(やすみかのどちらかで、けっきょくあえなかった。)

休みかのどちらかで、結局会えなかった。

(もともとやすみがちだったというが、これはどういうことなのか。)

もともと休みがちだったというが、これはどういうことなのか。

(すけるようないろじろで、すらりとのびたほそすぎるからだに)

透けるような色白で、スラリと伸びた細すぎる身体に

(びょうじゃくそうなふんいきはかんじとったが・・・・・・)

病弱そうな雰囲気は感じ取ったが……

(ともあれ、おりんぴっくせいしんときけば「さんかすることにいぎがある」とかいう)

ともあれ、オリンピック精神と聞けば「参加することに意義がある」とかいう

(ちんぷなふれーずしかうかばない。それがじさつみすいにどうつながるのだろう。)

陳腐なフレーズしか浮かばない。それが自殺未遂にどう繋がるのだろう。

(たかのしほがざいせきしているというばれーぶとなにかかんけいがあるのだろうか。)

高野志穂が在籍しているというバレー部となにか関係があるのだろうか。

(そういえば、しまざきいずみのほうはいわゆるきたくぶで、)

そう言えば、島崎いずみの方はいわゆる帰宅部で、

(ちゅうがくじだいからなんのくらぶかつどうもしていなかったらしい。)

中学時代からなんのクラブ活動もしていなかったらしい。

(まいにちのほうかご、ばれーぶのれんしゅうのためにがっこうにのこるたかのしほとわかれ、)

毎日の放課後、バレー部の練習のために学校に残る高野志穂と別れ、

(さびしそうにひとりでかえるすがたをいつももくげきされている。)

寂しそうに一人で帰る姿をいつも目撃されている。

(「おりんぴっくせいしん」ちいさくくちにしても、しんじつにせまるような)

「オリンピック精神」小さく口にしても、真実に迫るような

(いんすぴれーしょんはなにもわいてこない。)

インスピレーションはなにも湧いてこない。

(じさつみすいにはそぐわない、けんこうてきないめーじばかりがうかんではきえる。)

自殺未遂にはそぐわない、健康的なイメージばかりが浮かんでは消える。

(そういえば、まさききょうこはなにかくらぶかつどうをしているのだろうか。)

そう言えば、間崎京子はなにかクラブ活動をしているのだろうか。

(そうおもったとき、よこからよーこにこづかれた。)

そう思った時、横からヨーコに小突かれた。

(「ちょっと、ちひろ。じゅうしょうね。もうそんなことわすれてぱーっといきましょう。)

「ちょっと、ちひろ。重症ね。もうそんなこと忘れてパーッといきましょう。

(きょう、ほうかご、わたしとあそぶ、ok?」)

今日、放課後、私と遊ぶ、OK?」

(よーこはすっかりいつものちょうしだった。くしょうして、うなずいた。)

ヨーコはすっかりいつもの調子だった。苦笑して、頷いた。

(せなかにたかのしほのおびえたようなしせんをかすかにかんじながら。)

背中に高野志穂の怯えたような視線を微かに感じながら。

(「ねこがふぇんすでふにゃふにゃふにゃ~」)

「ねこがフェンスでふにゃふにゃふにゃ~」

(というよーこのでたらめなうたをききながらあきちのかなあみのそばをあるく。)

というヨーコのでたらめな歌を聴きながら空き地の金網のそばを歩く。

(「とむきゃっとのふぇんすって、よいきょくだよ。)

「トムキャットのフェンスって、良い曲だよ。

(でもからおけにはいってないんだよね」)

でもカラオケに入ってないんだよね」

(くるりとふりむいたかとおもうと、そううったえる。よーこはいつもとうとつだ。)

くるりと振り向いたかと思うと、そう訴える。ヨーコはいつも唐突だ。

(いっしょにいるとつかれることもあるが、いつもたのしげなかのじょをみていると)

一緒にいると疲れることもあるが、いつも楽しげな彼女を見ていると

(こちらもげんきづけられる。「そうそう、さいきんおーぷんした)

こちらも元気づけられる。「そうそう、最近オープンした

(おしゃれなきっさてんがちかくにあるんだけどいかない?」)

おしゃれな喫茶店が近くにあるんだけど行かない?」

(つれられるままごふんほどあるくと、ふるぎややれこーどしょっぷなど)

連れられるまま5分ほど歩くと、古着屋やレコードショップなど

(からふるながいかんのみせがたちならぶとおりにもくてきのきっさてんがあらわれた。)

カラフルな外観の店が立ち並ぶ通りに目的の喫茶店が現れた。

(さすがにまあたらしくせいけつかんのあるみせさきだ。)

さすがに真新しく清潔感のある店先だ。

(ちゅうこうせいなどのわかいじょせいきゃくがおおくはいっているのがういんどうごしにみてとれた。)

中高生などの若い女性客が多く入っているのがウインドウ越しに見てとれた。

(てんないにはいると、しろをきちょうにしたかべにかわいらしいてんしのえがいちめんにえがかれている。)

店内に入ると、白を基調にした壁に可愛らしい天使の絵が一面に描かれている。

(「おすすめけーきふたつ。あとあいすてぃーもふたつ」)

「おすすめケーキふたつ。あとアイスティーもふたつ」

(とかってにちゅうもんするよーこをしりめに、わたしはなにかひっかかるものを)

と勝手に注文するヨーコを尻目に、私はなにか引っ掛かるものを

(てんないからかんじていた。せきについて、いついつのじょうほうしに)

店内から感じていた。席について、いついつの情報誌に

(ここがでていたなどとかたるよーこのはなしにもうわのそらで、)

ここが出ていたなどと語るヨーコの話にも上の空で、

(わたしはかべのえばかりをみていた。)

私は壁の絵ばかりを見ていた。

(「あー、これなんかみたことある」そういってよーこはひとつのえをゆびさした。)

「あー、これなんか見たことある」そう言ってヨーコは一つの絵を指さした。

(いすにこしかけてりょうてをむねにあてるじょせいに、)

椅子に腰掛けて両手を胸にあてる女性に、

(はねのはえたじんぶつがなにかをかたりかけている。)

羽の生えた人物が何かを語りかけている。

(しょじょであるはずのまりあに、てんしがじゅたいをこくちするせいしょのわんしーんだ。)

処女であるはずのマリアに、天使が受胎を告知する聖書のワンシーンだ。

(しかしずいぶんでふぉるめされてしまっていて、こどもじみたえになっている。)

しかし随分デフォルメされてしまっていて、子どもじみた絵になっている。

(「がぶりえる」わたしのことばによーこが「え?」とききかえす。)

「ガブリエル」私の言葉にヨーコが「え?」と聞き返す。

(「このてんしのなまえ」よーこはかんしんしたひょうじょうで、)

「この天使の名前」ヨーコは感心した表情で、

(「てんしになまえなんてあるんだ。みんないっしょかとおもってた」とつぶやく。)

「天使に名前なんてあるんだ。みんな一緒かと思ってた」とつぶやく。

(わたしはしんぞうがさけそうにどきどきとみゃくうつのをかんじていた。)

私は心臓が裂けそうにドキドキと脈打つのを感じていた。

(そしてあたまのなかでことばがかねのようになる。)

そして頭の中で言葉が鐘のように鳴る。

(てんし。てんしのなまえ。そうだよ、よーこ。てんしになまえはあるんだ。)

天使。天使の名前。そうだよ、ヨーコ。天使に名前はあるんだ。

(わたしはいすのあしをならせて、せきをたった。)

私は椅子の足を鳴らせて、席を立った。

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