天使-8-
関連タイピング
-
プレイ回数2.7万歌詞1030打
-
プレイ回数10万歌詞200打
-
プレイ回数25万長文786打
-
プレイ回数74万長文300秒
-
プレイ回数16万歌詞かな861打
-
プレイ回数1695歌詞465打
-
プレイ回数15万長文2381打
-
プレイ回数741長文かな374打
問題文
(わめくよーこのめのまえでたかのしほはいまにもたおれそうなかおつきをしながら、)
わめくヨーコの目の前で高野志穂は今にも倒れそうな顔つきをしながら、
(しかしはをくいしばるようにひっしでうなずいていた。)
しかし歯を食いしばるように必死で頷いていた。
(わたしはつめたいしんぞうがおくりだすちが、たいないでちろちろと)
私は冷たい心臓が送り出す血が、体内でチロチロと
(ていおんのひをともしているようないめーじをいだきながら、ことばをつづけた。)
低温の火を点しているようなイメージを抱きながら、言葉を続けた。
(「あなたたちがわたしのほうをおびえたようなめでみていたのは、)
「あなたたちが私の方を怯えたような目で見ていたのは、
(いつもとなりにいたこいつをおそれていたからだったんだな」)
いつも隣にいたこいつを恐れていたからだったんだな」
(またよーこがひめいをあげる。あばれるうでをえんりょないちからでひねりあげた。)
またヨーコが悲鳴をあげる。暴れる腕を遠慮ない力で捻りあげた。
(「わたしはあなたたちがそうぞうしたようなにんげんじゃないからあんしんしろ。)
「私はあなたたちが想像したような人間じゃないから安心しろ。
(こいつをいまこうしているのがしょうこだ。だからこたえてくれ。)
こいつを今こうしているのが証拠だ。だから答えてくれ。
(いつからだ。どうしてこいつに?」)
いつからだ。どうしてこいつに?」
(たかのしほはふるえながらもやがてぼそり、ぼそりとかたりはじめた。)
高野志穂は震えながらもやがてボソリ、ボソリと語り始めた。
(じぶんとしまざきさんはおくさんとおなじしょうがっこうだった。)
自分と島崎さんは奥さんと同じ小学校だった。
(そのころ、ふたりはおくさんとそのぐるーぷからひどいいじめをうけていた。)
その頃、二人は奥さんとそのグループから酷い苛めを受けていた。
(ちゅうがっこうにあがって、おくさんとはべつのがっこうになれたが、)
中学校に上がって、奥さんとは別の学校になれたが、
(やっぱりそこでもべつのひとたちからいじめをうけた。)
やっぱりそこでも別の人たちから苛めを受けた。
(もう、このわからぬけだすにはじぶんがかわるしかないとおもった。)
もう、この輪から抜け出すには自分が変わるしかないと思った。
(こうこうにあがったらうんどうぶにはいって、ひっこみじあんなじぶんのからをやぶりたい。)
高校に上ったら運動部に入って、引っ込み思案な自分の殻を破りたい。
(そうおもっていた。しかしそのうまれかわるばしょのであるはずのこうこうには、)
そう思っていた。しかしその生まれ変わる場所のであるはずの高校には、
(あのおくさんがいた。あのころのらんぼうなだけのしょうじょとはすこしちがう、こうかつなかおで。)
あの奥さんがいた。あの頃の乱暴なだけの少女とは少し違う、狡猾な顔で。
(しょうがっこうのころにめいれいされるままにやったせっとうのことをばらすなどと)
小学校の頃に命令されるままにやった窃盗のことをバラすなどと
(りふじんなことでおどされ、おかねをようきゅうされた。)
理不尽なことで脅され、お金を要求された。
(じぶんもしまざきさんも、ていこうするきさえおきなかった。)
自分も島崎さんも、抵抗する気さえ起きなかった。
(あかるい、にこやかなひょうじょうで、じぶんたちのはらやせなかをなぐり、)
明るい、にこやかな表情で、自分たちの腹や背中を殴り、
(けりつけるかのじょにれいこくでむじひなあくまをだぶらせた。)
蹴りつける彼女に冷酷で無慈悲な悪魔をダブらせた。
(ばれーぶにはいったわたしには、きずがめだたないだろうとかおまでなぐった。)
バレー部に入った私には、傷が目立たないだろうと顔まで殴った。
(おかげでかおからばんそうこうがなとれるとはなかった。)
おかげで顔から絆創膏がな取れるとはなかった。
(おくさんは、わたしだからまだいいんだ、といった。)
奥さんは、私だからまだいいんだ、と言った。
(わたしのともだちがきれたら、おまえら「うり」をさせられるよ、といった。)
私の友だちがキレたら、おまえら「売り」をさせられるよ、と言った。
(そのともだちはたこうのふりょうとつるんで、そんなことばかりしている)
その友だちは他校の不良とつるんで、そんなことばかりしている
(ほんもののこわいひとだと。)
本物の怖い人だと。
(「うそよ、うそ。あんたなにうそいってんのよ。あやまりなさいよ。ふざけんなよ」)
「ウソよ、ウソ。あんたなにウソ言ってんのよ。謝りなさいよ。ふざけんなよ」
(わめくよーこをかべにおしつけ、みみもとにかおをよせた。)
わめくヨーコを壁に押し付け、耳元に顔を寄せた。
(「おい。わたしがふりょうだのなんだのと、うわさをながしたのはおまえじしんだな。)
「おい。私が不良だのなんだのと、噂を流したのはおまえ自身だな。
(わたしがそんなうわさにいちいちべんかいしてまわらないたいぷのにんげんだとはんだんしたうえで。)
私がそんな噂にいちいち弁解して回らないタイプの人間だと判断した上で。
(あのふたりのようすにわたしがふしんをいだいたとたんに、そんなうわさがあるとばらして、)
あの二人の様子に私が不審を抱いた途端に、そんな噂があるとバラして、
(きょうかつのひみつからとおざける・・・・・・ずいぶんとちえがまわるじゃないか。)
恐喝の秘密から遠ざける……ずいぶんと知恵が回るじゃないか。
(でもな、ずっとがっこうをやすんでいたこが、ばれーぶのれんしゅうにもでてないのに)
でもな、ずっと学校を休んでいた子が、バレー部の練習にも出てないのに
(ばんそうこうがふえてたってのはいただけないな。おまえらしくないみすだ」)
絆創膏が増えてたってのはいただけないな。おまえらしくないミスだ」
(がっこうをやすんでいるあいだにもよびだし、くちどめをはかっていたのだろう。)
学校を休んでいる間にも呼び出し、口止めを図っていたのだろう。
(わたしにうごきをふうじられたままよーこは、)
私に動きを封じられたままヨーコは、
(がちがちとはをならしてなみだをうかべている。)
ガチガチと歯を鳴らして涙を浮かべている。
(なによ。なによ。わたしをにくしみのこもっためでにらみつけながら、)
なによ。なによ。私を憎しみのこもった目で睨みつけながら、
(そんなことばをくちのなかでくりかえしている。)
そんな言葉を口の中で繰り返している。
(「かねがそんなにほしかったのか。ぶらんどもののふくをかって、)
「金がそんなに欲しかったのか。ブランドものの服を買って、
(すきなものをくって。それがたにんをふみつけてえたかねでも、)
好きなものを食って。それが他人を踏みつけて得た金でも、
(なにもかんじないのか」ぺっと、つばがほおにとんできた。)
なにも感じないのか」ぺっと、唾が頬に飛んできた。
(めをつぶり、あけたしゅんかん、おのれのなかのつめたいいかりのほのおが)
目をつぶり、開けた瞬間、己の中の冷たい怒りの炎が
(いつのまにかくらくかなしいいろにかわっていることにきづいた。)
いつの間にか暗く悲しい色に変わっていることに気づいた。
(「ともだちだと、おもっていたんだ、ようこ」)
「友だちだと、思っていたんだ、陽子」
(ゆっくりと、それだけをいうとわたしはかのじょのほおをおもいきりうった。)
ゆっくりと、それだけを言うと私は彼女の頬を思い切り打った。
(そのいきおいでからだをつよくかべにうち、よーこはくずれおちた。)
その勢いで身体を強く壁にうち、ヨーコは崩れ落ちた。
(おえつが、まるめたそのせなかからもれる。)
嗚咽が、丸めたその背中から漏れる。
(「おちついたら、たかのさんにあやまるんだ。それからしまざきさんにも)
「落ち着いたら、高野さんに謝るんだ。それから島崎さんにも
(あやまりにいこう。わたしもついていくから。それがすんだら・・・・・・ぜっこうだ」)
謝りに行こう。私もついていくから。それが済んだら……絶交だ」
(よーこのせなかにそんなことばをなげかけ、たかのしほには)
ヨーコの背中にそんな言葉を投げかけ、高野志穂には
(「もうきょうしつにもどりな」といった。)
「もう教室に戻りな」と言った。
(それからわたしはふたりをのこしてかけだし、こうしゃのなかにはいった。)
それから私は二人を残して駆け出し、校舎の中に入った。
(いっちょくせんにまさききょうこのきょうしつへむかう。)
一直線に間崎京子の教室へ向かう。
(ろうかですれちがうへいわぼけしたようなじょしせいとのかおがやけにいらつく。)
廊下でスレ違う平和ボケしたような女子生徒の顔がやけにイラつく。
(「どけ」そんなことばをはくと、あいてはおびえたようにみちをあける。)
「どけ」そんな言葉を吐くと、相手は怯えたように道をあける。
(じぶんはいまどんなかおをしているのだろう。)
自分は今どんな顔をしているのだろう。
(しまっていたどあをらんぼうにあけると、きょうしつのなかからはっと)
閉まっていたドアを乱暴に開けると、教室の中からハッと
(おどろいたようなけはいがかえってきた。かまわずに、まさききょうこのもとへあゆみよる。)
驚いたような気配が返って来た。かまわずに、間崎京子の元へ歩み寄る。
(かのじょはせきにすわったままひじをついたりょうてのゆびをからませ、まるでくることを)
彼女は席に座ったまま肘をついた両手の指を絡ませ、まるで来ることを
(しっていたかのようにへいぜんとわたしをみあげながら)
知っていたかのように平然と私を見上げながら
(うすっすらとほほえみをうかべている。)
薄っすらと微笑みを浮かべている。
(「しまざきいずみをおどしていたあいてをしっていたな」こたえない。)
「島崎いずみを脅していた相手を知っていたな」答えない。
(「じけんのことでいしかわさんにかまをかけられたとき、おまえはこういったな。)
「事件のことで石川さんにカマをかけられた時、おまえはこう言ったな。
(”おりんぴっくすぴりっつ”と」)
”オリンピック・スピリッツ”と」
(”おりんぴっくせいしん”と、またぎきでつたえられたわたしには)
“オリンピック精神”と、又聞きで伝えられた私には
(そのいみがわからなかった。)
その意味が分からなかった。
(しかしそういいかえたいしかわさんはせめられない。)
しかしそう言い換えた石川さんは責められない。
(そちらのほうがたしかになじみのあることばだからだ。)
そちらの方が確かに馴染みのある言葉だからだ。
(ただ”おりんぴっくすぴりっつ”にはおなじひびきで、)
ただ”オリンピック・スピリッツ”には同じ響きで、
(もうひとつべつのいみがあった。)
もう一つ別の意味があった。
(このじけんのしんそうをいいあてるいみが。)
この事件の真相を言い当てる意味が。