天使-9-(完)

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師匠シリーズ
マイタイピングに師匠シリーズが沢山あったと思ったのですが、なくなってまっていたので、作成しました。

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問題文

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(あのひ、としょかんでわたしはてんしのなまえがもうらされたじてんをひらいていた。)

あの日、図書館で私は天使の名前が網羅された事典を開いていた。

(そこにおぼろげだったきおくのとおりのなまえがでてきたときに、)

そこにおぼろげだった記憶の通りの名前が出てきた時に、

(わたしはすべてをしってしまったのだ。)

私はすべてを知ってしまったのだ。

(てんしとはゆだやきょうやきりすときょう、いすらむきょうなどにあらわれる)

天使とはユダヤ教やキリスト教、イスラム教などに現れる

(かみのつかいのそうしょうだ。それらのてんしにはかいきゅうがあるとされ、)

神の使いの総称だ。それらの天使には階級があるとされ、

(おおくのてんしがそのひえらるきーにとりこまれている。)

多くの天使がそのヒエラルキーに取り込まれている。

(みかえるやがぶりえるなどのゆうめいなしだいてんしは、)

ミカエルやガブリエルなどの有名な四大天使は、

(そのなのとおりだいてんしとしてだいはちかいい、つまりしたからにばんめのていいに)

その名の通り大天使として第8階位、つまり下から2番目の低位に

(つけられていたりする。そのきゅうかいいにぞくさないてんしもかずおおくあり、)

つけられていたりする。その9階位に属さない天使も数多くあり、

(さまざまなしゅうはによってそのやくわりもしょうちょうするいみもことなる。)

様々な宗派によってその役割も象徴する意味も異なる。

(そのなかに、おりんぴあのてんしとよばれるぐるーぷがある。)

その中に、オリンピアの天使と呼ばれるグループがある。

(せいしょではなく、まじゅつしょにあらわれるてんしだ。)

聖書ではなく、魔術書に現れる天使だ。

(その、にんげんのやくにたてるためにつかわれるというせいしつは、)

その、人間の役に立てるために使われるという性質は、

(どちらかといえばてんしというよりでーもんにちかい。)

どちらかと言えば天使というよりデーモンに近い。

(にほんごにやくされるときも「おりんぴあのてんし」とするばあいもあれば)

日本語に訳される時も「オリンピアの天使」とする場合もあれば

(「おりんぴあのれい」などとひょうきされるばあいもある。えいごでは、)

「オリンピアの霊」などと表記される場合もある。英語では、

(「olympicspirits(おりんぴっくすぴりっつ)」とも。)

「Olympic spirits(オリンピック・スピリッツ)」とも。

(それらはわくせいをしはいするそんざいとされ、それぞれにしょうちょうされる)

それらは惑星を支配する存在とされ、それぞれに象徴される

(ななつのほしがあてられる。すいせいはおふぃえる。きんせいははぎと。かせいはふぁれぐ。)

7つの星が当てられる。水星はオフィエル。金星はハギト。火星はファレグ。

(もくせいはべとーる。どせいはあらとろん。つきはふる。)

木星はベトール。土星はアラトロン。月はフル。

など

(そしてたいようはおく。)

そして太陽はオク。

(おくようこ。そのなまえをあげつらって、まさききょうこはいったのだ。)

奥陽子。その名前をあげつらって、間崎京子は言ったのだ。

(おりんぴあのてんし、おりんぴっくすぴりっつと。)

オリンピアの天使、オリンピック・スピリッツと。

(くろまじゅつなどのおかるとにくわしいにんげんでないとぜったいにわからないだろう。)

黒魔術などのオカルトに詳しい人間でないと絶対に分からないだろう。

(そういうにんげんだけにむけてかのじょはしんそうをはっしんしたのだ。すべてをしりながら。)

そういう人間だけに向けて彼女は真相を発信したのだ。すべてを知りながら。

(たよってきたしまざきいずみをいわばみごろしにして。)

頼ってきた島崎いずみを言わば見殺しにして。

(あまつさえ、けんの10というさいあくのけつまつのあんじをほんにんにつげて。)

あまつさえ、剣の10という最悪の結末の暗示を本人に告げて。

(わたしにはそれがゆるせなかった。)

私にはそれが許せなかった。

(しっていたならば、なにかできることがあったはずだ。)

知っていたならば、なにか出来ることがあったはずだ。

(ぼうかんしゃとしてなにもこうどうしなかったわたしじぶんにもそのいかりのははむいて、)

傍観者としてなにも行動しなかった私自分にもその怒りの刃は向いて、

(からだのなかのどこかをきずつけた。)

身体の中のどこかを傷つけた。

(「たいようは。たいようのかーどは、けるとじゅうじのにまいめにでていたんだな」)

「太陽は。太陽のカードは、ケルト十字の2枚目に出ていたんだな」

(こたえない。けるとじゅうじすぷれっどにおけるにまいめのかーどは)

答えない。ケルト十字スプレッドにおける2枚目のカードは

(いちまいめのうえにこうさされるようにおかれる。)

1枚目の上に交差されるように置かれる。

(それはやがてしゅういにてんかいされるかーどのならびのなかで、)

それはやがて周囲に展開されるカードの並びの中で、

(じゅうじかのまんなかのいちとなる。あらわすものは「しょうがいとなるもの」。)

十字架の真ん中の位置となる。表すものは「障害となるもの」。

(だいあるかな22まいのうちの19ばんめのかーどであるたいよう(thesun)は、)

大アルカナ22枚のうちの19番目のカードである太陽(The Sun)は、

(せいいちならば<そうぞう><こうふく><たんじょう>etc.)

正位置ならば<創造><幸福><誕生>etc.

(ぎゃくいちならば<はきょく><ふあん><べつり>etc.)

逆位置ならば<破局><不安><別離>etc.

(しかしこのばあい、ようこというたいようをあんじさせるなまえそのものをさしている。)

しかしこの場合、陽子という太陽を暗示させる名前そのものを指している。

(すくなくとも、しまざきいずみじしんにとっては。)

少なくとも、島崎いずみ自身にとっては。

(かのじょのなやみのこんげんをなす「しょうがい」として。そしていつかのわたしにたいするけいこく。)

彼女の悩みの根源を成す「障害」として。そしていつかの私に対する警告。

(「うらみはなるべくかわないほうがいい」)

「恨みはなるべく買わないほうがいい」

(というあれは、すべてをみすかしたうえでのことばだったのか。)

というあれは、すべてを見透かした上での言葉だったのか。

(「かのじょのてにしたはものは、けっきょくじぶんにむかった。それはかのじょじしんのせんたくよ」)

「彼女の手にした刃物は、結局自分に向かった。それは彼女自身の選択よ」

(まさききょうこのくちからおんがくのようにことばがすべりだした。)

間崎京子の口から音楽のように言葉が滑り出した。

(「おまえはなにさまなんだ」しゅういから、かたずをのんでこのやりとりをちゅうししている)

「おまえは何様なんだ」周囲から、固唾を飲んでこのやりとりを注視している

(むすうのけはいをかんじる。だれもおもてだってこちらをみてはいない。)

無数の気配を感じる。誰も表立ってこちらを見てはいない。

(しかしそのむすうのあくいあるしせんは、かくじつにわたしのこころをけずりとっていった。)

しかしその無数の悪意ある視線は、確実に私の心を削り取っていった。

(「あなたも、まだあのこをすくえるきでいるなんて、おめでたいわね」)

「あなたも、まだあの子を救える気でいるなんて、おめでたいわね」

(よーこのことか。なぜそんなことをこいつにいわれなくてはならない。)

ヨーコのことか。なぜそんなことをこいつに言われなくてはならない。

(「ななつのほしにたいおうするかずおおくのしょうちょうのなかで、ななつのたいざいが)

「7つの星に対応する数多くの象徴の中で、7つの大罪が

(どういうはいちになっているかごぞんじ?」ひょうじょうはまったくかえていないのに、)

どういう配置になっているかご存知?」表情はまったく変えていないのに、

(びしょうが、ちょうしょうにかわったきがした。)

微笑が、嘲笑に変わった気がした。

(そのときわたしは、このおんなをはじめておそろしいとおもった。)

その時私は、この女をはじめて恐ろしいと思った。

(「すいせいはたいしょく。きんせいはよくじょう。かせいはふんぬ。もくせいはごうまん。どせいはたいだ。)

「水星は大食。金星は欲情。火星は憤怒。木星は傲慢。土星は怠惰。

(つきはしっと。それからたいようは」)

月は嫉妬。それから太陽は」

(しばいじみたうごきでかのじょはゆびをひとつ、ひとつとおり、)

芝居じみた動きで彼女は指をひとつ、ひとつと折り、

(ななばんめとなったひだりのひとさしゆびをゆっくりとおりたたみながらいった。)

7番目となった左の人差し指をゆっくりと折り畳みながら言った。

(「ごうよく」そのことばとどうじに、わたしはかのじょのつくえをりょうてでつよくたたいた。)

「強欲」その言葉と同時に、私は彼女の机を両手で強く叩いた。

(しゅういがびくりとして、いっしゅんしずかになる。)

周囲がビクリとして、一瞬静かになる。

(そこに、ひややかなことばがふってくる。)

そこに、冷ややかな言葉が降って来る。

(「ねえ、わかるでしょう。かのじょはかのじょじしんのほしからはのがれられないわ。)

「ねえ、わかるでしょう。彼女は彼女自身の星からは逃れられないわ。

(このせかいには、かわろうとするにんげんと、かわろうとしないにんげんしかいない。)

この世界には、変わろうとする人間と、変わろうとしない人間しかいない。

(それはあなたのせいでも、わたしのせいでもない」)

それはあなたのせいでも、わたしのせいでもない」

(いかりだとか、かなしさだとか、くやしさだとか、そんなさまざまなかんじょうがわたしのなかで)

怒りだとか、悲しさだとか、悔しさだとか、そんな様々な感情が私の中で

(あらしのようにうずまいて、めのまえにぱちぱちとかがやくひばなをはっしている。)

嵐のように渦巻いて、目の前にパチパチと輝く火花を発している。

(わたしはくちびるをかんで、このこおりざいくのようなおんなをなぐりたいきもちをひっしでおさえていた。)

私は唇を噛んで、この氷細工のような女を殴りたい気持ちを必死で抑えていた。

(そんなわたしのすがたをいっけんかわらぬえみでみすえながら、)

そんな私の姿を一見変わらぬ笑みで見据えながら、

(かのじょはゆうわくするようなあまいささやきでこういった。)

彼女は誘惑するような甘い囁きでこう言った。

(「かわりに、わたしがあなたのともだちになってあげる」)

「かわりに、わたしがあなたの友だちになってあげる」

(それが、まさききょうことのであいだった。)

それが、間崎京子との出会いだった。

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